目次
この記事でわかること
ドローンの飛行許可を取得する方法には個別申請と包括申請の2種類があります。包括申請なら最長1年間、日本全国を対象に、まとめて飛行許可・承認を受けられます。
この記事では、包括申請と個別申請の違い、対象となる飛行の種類、DIPS2.0での申請手順、更新方法、飛行日誌の義務までまとめて解説します。
包括申請とは
包括申請とは、同一の申請者が一定期間内に反復・継続して飛行する場合に、飛行の日時・場所を個別に特定せずにまとめて許可・承認を受ける申請方法です。
業務で空撮、測量、点検、農薬散布などを行う場合、飛行のたびに個別申請するのは現実的ではありません。包括申請を利用すれば、1回の申請で最長1年間の許可を取得できます。
無人航空機を飛行させる者は、(中略)国土交通大臣の許可を受けなければならない。
― 航空法 第132条の85第1項
包括申請は、この許可の取得を効率化するための仕組みです。飛行範囲を「日本全国」に設定し、飛行期間を「1年間」にすれば、期間中は許可の範囲内で何度でも飛行可能です。
包括申請と個別申請の違い
| 項目 | 包括申請 | 個別申請 |
|---|---|---|
| 飛行日時 | 期間で指定(最長1年) | 特定の日時を指定 |
| 飛行場所 | 日本全国または都道府県単位 | 特定の経路・場所を指定 |
| 飛行目的 | 業務目的のみ | 業務・趣味いずれも可 |
| 操縦者の飛行経験 | 10時間以上が必要 | 10時間未満でも申請可 |
| 費用 | 無料 | 無料 |
| 有効期間 | 最長1年 | 単発(その飛行のみ) |
注意: 包括申請は業務目的の飛行にのみ利用可能です。趣味・レジャー目的の飛行には個別申請を使用してください。
包括申請の対象となる飛行
包括申請が可能な飛行(6種類)
| 飛行の種類 | 根拠条文 |
|---|---|
| 人口集中地区(DID)上空 | 航空法 第132条の85第1項第2号 |
| 夜間飛行 | 航空法 第132条の86第2項第1号 |
| 目視外飛行 | 航空法 第132条の86第2項第2号 |
| 人・物件から30m未満 | 航空法 第132条の86第2項第3号 |
| 危険物の輸送 | 航空法 第132条の86第2項第5号 |
| 物件投下 | 航空法 第132条の86第2項第6号 |
個別申請が必須な飛行(包括不可)
以下の3種類は包括申請では対応できず、その都度個別申請が必要です。
- 空港等の周辺の空域(航空法 第132条の85第1項第1号)
- 地表から150m以上の空域(航空法 第132条の85第1項第1号)
- 催し場所(イベント等)の上空(航空法 第132条の86第2項第4号)
これらの飛行が必要な場合は、包括申請とは別に個別申請を行ってください。飛行許可申請の全体像は「ドローン飛行許可の申請方法|DIPS2.0での手順を解説」をご覧ください。
包括申請の条件
包括申請を行うには、以下の3つの条件を満たす必要があります。
- 業務目的であること(空撮、測量、点検、農薬散布、報道取材、警備等)
- 操縦者の飛行経験が10時間以上であること
- 機体登録が完了していること(登録記号の取得済み)
個人であっても業務目的であれば包括申請は可能です。飛行経験が10時間未満の場合は個別申請で経路を特定した申請のみ可能です。
有効期間と飛行範囲
有効期間
包括申請の有効期間は最長1年間です。実務上はほとんどの場合、1年間で申請します。3ヶ月や6ヶ月での申請も可能です。
飛行範囲の指定
飛行範囲は以下のいずれかで指定できます。
- 日本全国(最も一般的)
- 特定の都道府県を選択
実務上は「日本全国」で申請するケースがほとんどです。ただし、包括申請で全国の許可を取得しても、空港周辺や150m以上の空域では別途個別申請が必要です。
申請に必要なもの
包括申請に必要なものは以下の5つです。
- DIPS2.0のアカウント
- 機体登録番号(登録記号)
- 操縦者の飛行経歴(10時間以上の経験)
- 飛行マニュアル(標準マニュアルまたは独自マニュアル)
- 賠償責任保険の情報(推奨)
申請の手順(DIPS2.0)
Step 1: DIPS2.0にログイン
DIPS2.0(https://www.ossportal.dips.mlit.go.jp/)にアクセスし、ログインします。機体情報と操縦者情報が事前に登録されていることを確認してください。
Step 2: 飛行カテゴリーを判定
「飛行許可・承認申請」メニューから簡易カテゴリー判定を実施します。包括申請が可能な飛行かどうかを確認してください。
Step 3: 飛行概要を入力
以下の情報を入力します。
- 飛行目的: 空撮、測量、点検等を選択
- 飛行方法: DID上空、夜間、目視外、30m未満等を選択
- 立入管理措置の有無を選択
- 「包括申請」を選択(ここが個別申請との分岐点)
Step 4: 飛行詳細を入力
- 飛行範囲: 「日本全国」または都道府県を選択
- 飛行期間: 開始日と終了日を入力(最長1年間)
- 申請先を選択
Step 5: 機体・操縦者を紐付け
事前登録した機体情報と操縦者情報を選択し、申請書に紐付けます。各基準への適合性を確認してください。
Step 6: マニュアルとその他情報を入力
- 飛行マニュアル: 国土交通省の標準マニュアルまたは独自マニュアル
- 保険情報: 賠償責任保険の加入状況
- 緊急連絡先
Step 7: 申請書を確認・提出
入力内容を確認し、電子申請として提出します。
Step 8: 許可書の発行
審査完了後、DIPS2.0上で電子許可書が発行されます。審査期間は通常数日〜2週間です。飛行開始予定日の少なくとも10開庁日前までに申請を完了させてください。
費用
包括申請の手数料は無料です。
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 包括申請(DIPS2.0) | 無料 |
| 機体登録手数料(別手続き) | 900円〜2,400円/機 |
| 行政書士への申請代行 | 2万〜5万円(相場) |
飛行日誌の義務
2022年12月5日の改正航空法施行により、特定飛行を行う場合は飛行日誌の作成・携行が義務化されました。
無人航空機を飛行させる者は、飛行日誌を備え、これに当該無人航空機の飛行に関し国土交通省令で定める事項を記載しなければならない。
― 航空法 第132条の89
飛行日誌に記載する内容
| 記録の種類 | 内容 |
|---|---|
| 飛行記録 | 飛行日時、場所、飛行時間、操縦者名 |
| 日常点検記録 | 飛行前の機体点検結果 |
| 点検整備記録 | 定期的な点検・整備の記録 |
飛行日誌は飛行時に携行する義務があります。国土交通省から飛行実績の報告を求められた場合は、速やかに提出してください。
補足: 以前は3ヶ月ごとの飛行実績報告書の提出義務がありましたが、2021年4月1日に廃止されました。現在は飛行日誌の記録・携行のみが義務です。
飛行日誌は紙でもデジタルでも構いません。国土交通省が様式を公開していますので、それを参考に作成してください。飛行日誌を携行せずに飛行した場合は航空法違反となるため、忘れずに持参しましょう。
更新方法
更新の手順
- DIPS2.0にログイン
- 「飛行許可・承認」メニューから「更新申請」を選択
- 更新対象の包括申請を選択
- 内容を確認・必要に応じて修正
- 申請書を提出
更新の注意点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 更新可能期間 | 満了日の40開庁日前〜10開庁日前 |
| 期限切れの場合 | 更新不可、新規申請が必要 |
| 10開庁日を切った場合 | 更新不可、新規申請が必要 |
| 2025年3月24日以前の許可 | 変更・更新不可、新規申請が必要 |
重要: 2025年3月24日のDIPS2.0改修により、それ以前に取得した包括申請は変更・更新ができなくなりました。該当する場合は新規申請をやり直してください。包括申請の更新については「ドローン包括申請の更新方法|有効期限と手続き」で詳しく解説しています。
標準マニュアルの制限事項
包括申請で国土交通省の標準飛行マニュアルを使用する場合、いくつかの重要な制限があります。これらの制限を超える飛行を行う場合は、独自マニュアルの作成が必要です。
標準マニュアルの主な制限
| 制限事項 | 標準マニュアルの規定 |
|---|---|
| 風速 | 風速5m/s以上では飛行させない |
| 雨天 | 雨の場合は飛行させない |
| 視程 | 十分な視程(目視で300m以上)が確保できない場合は飛行させない |
| 第三者からの距離 | 飛行高度と同じ距離の半径範囲内に第三者がいない状態で飛行 |
| 夜間のDID上空 | 夜間のDID地区上空飛行は実施しない |
| 夜間の目視外 | 夜間の目視外飛行は実施しない |
| 催し場所上空 | 催し場所上空の飛行には対応していない |
独自マニュアルが必要なケース
以下のような業務では、標準マニュアルの制限を超える場合が多く、独自の飛行マニュアルを作成して申請する必要があります。
- 建設現場での測量: 風速5m/sを超える日でも作業したい場合
- 夜間のDID上空での空撮: 都市部での夜景撮影など
- 夜間の目視外飛行: 夜間のインフラ点検など
- 降雨時の災害対応: 緊急性の高い飛行
独自マニュアルは、標準マニュアルをベースにしつつ追加の安全対策を記載することで作成できます。ただし、安全対策の内容が不十分だと審査で補正指示を受ける可能性があります。
標準マニュアルと独自マニュアルの比較
| 比較項目 | 標準マニュアル | 独自マニュアル |
|---|---|---|
| 作成の手間 | 不要(既存のものを使用) | 自分で作成が必要 |
| 審査の通りやすさ | 通りやすい | 内容次第 |
| 飛行の自由度 | 制限が多い | 柔軟に設定可能 |
| 費用 | 無料 | 行政書士に依頼する場合は追加費用 |
飛行計画の通報義務
包括申請の許可を取得しても、飛行のたびに飛行計画の通報が必要です。これは2022年12月5日の改正航空法で義務化されたもので、違反すると30万円以下の罰金の対象になります。
無人航空機を飛行させる者は、特定飛行を行う場合には、あらかじめ、(中略)飛行計画を国土交通大臣に通報しなければならない。
― 航空法 第132条の88第1項
飛行計画通報の方法
飛行計画の通報はDIPS2.0から行います。飛行開始前に以下の情報を入力して通報してください。
- 飛行日時(開始時刻と終了時刻)
- 飛行場所(地図上で飛行範囲を指定)
- 飛行高度
- 飛行の目的
- 使用する機体
- 操縦者名
飛行計画の通報は飛行開始前に行えば足りますが、余裕をもって前日までに済ませておくのが望ましいです。通報自体は数分で完了する簡単な手続きです。
飛行計画通報を忘れた場合
飛行計画を通報せずに飛行した場合、たとえ包括申請の許可を取得していても航空法違反です。飛行前のルーティンとして、必ず通報を行う習慣をつけてください。
包括申請の注意点・落とし穴
包括申請は便利ですが、取得しただけで「何でも飛ばせる」わけではありません。以下の注意点を押さえておきましょう。
包括申請でも飛ばせない場所・方法
包括申請の許可範囲内であっても、以下の飛行はできません。
- 空港等の周辺の空域: 空港やヘリポートの周辺は包括申請の対象外。個別に空港事務所へ申請が必要
- 地表から150m以上の空域: 個別に空港事務所への申請が必要
- 催し場所(イベント)上空: 大勢の人が集まるイベント上空は包括申請では対応不可
- 緊急用務空域: 災害時に指定される空域では飛行禁止
包括申請は、あくまでDID上空・夜間・目視外・30m未満・危険物輸送・物件投下の6種類の飛行方法に対する承認です。飛行場所に関する制限は別途確認してください。飛行禁止区域の詳細は「ドローンの飛行禁止区域一覧|確認方法と許可の取り方」をご覧ください。
2025年3月24日のDIPS2.0改修の影響
2025年3月24日にDIPS2.0が大幅に改修され、操縦者情報の登録方法が変更されました。この改修に伴い、以下の点に注意が必要です。
- 2025年3月24日より前に取得した包括申請は変更・更新ができない(新規申請が必要)
- DIPS2.0のすべてのユーザーは操縦者情報の更新が必要
- 申請時の操縦者の技能や機体情報の一部資料添付が省略可能に
現在有効な包括申請がある場合は、有効期限が切れるタイミングで新規申請として改めて手続きを行ってください。
許可書の携行義務
包括申請で取得した許可書は飛行時に携行する義務があります。DIPS2.0からダウンロードした電子許可書をスマートフォンに保存しておくか、印刷して持参してください。許可書を携行せずに飛行した場合も航空法違反となります。
包括申請の判断フロー
包括申請を行うべきかどうかの判断フローをまとめます。
包括申請を選ぶべきケース
- 業務で月に2回以上ドローンを飛ばす
- 飛行場所が毎回異なる(全国各地で飛行する)
- DID上空・夜間・目視外・30m未満の飛行が日常的に発生する
- 飛行経験が10時間以上ある
個別申請を選ぶべきケース
- 趣味・レジャーでの飛行(包括申請は業務目的のみ)
- 飛行経験が10時間未満
- 年に1〜2回しかドローンを飛ばさない
- 空港周辺・150m以上・催し場所上空で飛行する
両方必要なケース
業務で日常的に飛行し、かつ空港周辺や150m以上の空域でも飛ばす場合は、包括申請と個別申請の両方が必要です。たとえば、測量会社が通常の業務では包括申請を使い、空港付近の現場では個別申請を追加で取得するケースが典型です。
国家資格があれば申請不要になるケース
二等無人航空機操縦士+第二種機体認証を受けた機体であれば、以下の飛行は許可申請自体が不要になります(カテゴリーIIB)。
- DID上空の飛行
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 人・物件から30m未満の飛行
ただし、空港周辺・150m以上・催し場所上空・危険物輸送・物件投下は、国家資格があっても個別申請が必要です。国家資格については「ドローン国家資格の種類と取得方法|一等・二等の違い」をご覧ください。
よくある質問
Q. 趣味でドローンを飛ばすのに包括申請は使える?
使えません。包括申請は業務目的の飛行のみが対象です。趣味・レジャー目的の場合は、飛行の都度個別申請を行ってください。
Q. 包括申請を取れば毎回の飛行前に何もしなくていい?
いいえ。包括申請の許可を取得していても、飛行前にDIPS2.0で飛行計画の通報(航空法第132条の88)が必要です。また、飛行日誌の記録・携行も義務です。
Q. 包括申請で夜間の目視外飛行は申請できる?
可能です。DID上空+夜間+目視外など、複数の特定飛行を組み合わせた包括申請も可能です。ただし、組み合わせによって追加の安全対策や飛行マニュアルの記載が求められる場合があります。
Q. 包括申請中に機体を追加できる?
可能です。DIPS2.0で包括申請の変更申請を行い、機体を追加できます。ただし、2025年3月24日以前に取得した許可は変更申請ができないため、新規申請が必要です。
Q. 飛行経験10時間はどうやって証明する?
飛行経験は自己申告制です。証明書や飛行ログの提出は求められませんが、虚偽の申告は航空法違反となります。日頃から飛行日誌をつけて、正確な飛行時間を記録しておくことを推奨します。飛行経験が10時間未満の場合は、包括申請ではなく経路を特定した個別申請のみ可能です。
Q. 包括申請の審査で補正指示が出た場合はどうする?
航空局から補正指示(修正依頼)が出された場合は、DIPS2.0の「申請状況確認」画面から補正内容を確認し、指示に従って修正・再提出してください。補正指示が出ると審査期間が延びるため、正確な情報を入力して一発で通過することが重要です。不安がある場合は行政書士への代行依頼も検討してください。
Q. 包括申請と国家資格の関係は?
二等無人航空機操縦士+第二種機体認証を取得すると、DID上空・夜間・目視外・30m未満の飛行について許可申請自体が不要になります(カテゴリーIIB)。ただし、国家資格を取得していない場合でも、包括申請を取得すれば同じ飛行は可能です。国家資格は申請手続きの省略化が主なメリットであり、包括申請の代替手段として位置づけられます。国家資格の詳細は「ドローン国家資格の種類と取得方法|一等・二等の違い」をご覧ください。
Q. 包括申請の審査期間を短縮する方法はある?
審査期間は原則10開庁日ですが、以下の方法で実質的に短縮できます。国家資格を取得していると申請書類の一部が省略され、審査がスムーズに進むことがあります。また、標準マニュアルを使用することで審査の確認項目が減り、処理が早くなる傾向があります。いずれにしても、飛行開始予定日の少なくとも3週間前には申請を完了させることを推奨します。
Q. 個人事業主でも包括申請はできる?
はい、個人事業主でも業務目的であれば包括申請が可能です。空撮カメラマン、測量士、不動産業者、農業者など、個人事業として業務でドローンを使用する場合は包括申請の対象です。開業届の提出有無は問われませんが、申請書に業務内容を正確に記載してください。
まとめ
ドローンの包括申請は、業務で継続的に飛行する場合に最も効率的な申請方法です。
- 最長1年間、日本全国をカバーする許可を1回の申請で取得
- 対象は6種類の飛行(DID上空、夜間、目視外、30m未満、危険物輸送、物件投下)
- 費用は無料、審査期間は数日〜2週間
- 飛行前の飛行計画通報と飛行日誌の携行は毎回必要
- 更新は満了日の40開庁日前から可能
- 標準マニュアルには風速5m/s制限など制約があるため、業務内容によっては独自マニュアルの作成が必要
- 空港周辺・150m以上・催し場所上空は包括申請の対象外(個別申請が必要)
- 2025年3月24日以前の許可は変更・更新不可のため新規申請が必要
申請代行を検討している方は「ドローン飛行許可の申請代行|費用相場と依頼の流れ」もあわせてご覧ください。はじめてドローンの機体登録を行う方は「ドローン機体登録のやり方|100g以上は義務」もあわせてご覧ください。