この記事でわかること
2025年12月18日、国土交通省は「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」を改正しました。この改正により、民間資格(航空局HP掲載講習団体の技能認証)による飛行許可申請時の書類省略優遇が廃止されました。
この記事では、改正の具体的な変更内容、廃止の背景、影響を受ける人、今後の対応策(国家資格の取得推奨)、経過措置までまとめて解説します。
審査要領改正の概要
改正の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改正日 | 2025年12月18日 |
| 正式名称 | 無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領 |
| 改正主体 | 国土交通省 航空局 |
| 施行日 | 改正日と同日(即日施行) |
改正のポイント(3つの廃止事項)
今回の改正で廃止された主な運用は以下の3つです。
| 廃止された運用 | 改正前の内容 | 改正後 |
|---|---|---|
| HP掲載機体による資料省略 | 航空局HPに掲載された機体は性能資料の省略可 | 型式認証・機体認証を受けた機体のみ省略可 |
| 民間技能認証による資料省略 | HP掲載講習団体の技能認証保有者は操縦者資料の省略可 | 国家資格(技能証明)保有者のみ省略可 |
| 民間団体の飛行マニュアル | 民間講習団体が発行するマニュアルを使用可 | 標準マニュアルまたはリスク評価ガイドラインに基づくマニュアルのみ |
廃止された「HP掲載」制度とは
HP掲載機体(資料省略制度)
改正前、国土交通省航空局のHPには「資料の一部を省略することができる無人航空機」のリストが掲載されていました。DJI Mavicシリーズをはじめとする主要メーカーの機体がリストに含まれており、リスト掲載機体を使用する場合は機体の性能に関する資料の提出を省略できました。
改正後、このリストは廃止されています。機体の性能資料を省略できるのは、型式認証または機体認証を受けた機体のみです。機体認証については「ドローンの機体認証とは?型式認証との違いとメリット」をご覧ください。
HP掲載講習団体(技能認証制度)
改正前、航空局HPに掲載された民間の講習団体(ドローンスクール等)が発行する技能認証を保有していれば、飛行許可申請時に操縦者の技能に関する資料の一部を省略できました。
改正後、この優遇は廃止されています。操縦者の技能資料を省略できるのは、国家資格(無人航空機操縦者技能証明)の保有者のみです。
改正の背景
国家資格制度への移行促進
2022年12月5日に無人航空機操縦者技能証明制度(国家資格制度)が開始されました。国家資格制度は、操縦者の技能を国が統一的に認定する仕組みであり、従来の民間資格に代わるものとして位置づけられています。
国土交通大臣は、無人航空機を飛行させるのに必要な技能(中略)を有するかどうかを判定するため、無人航空機操縦者技能証明に係る試験を行う。
― 航空法 第132条の43
国家資格制度の開始から約3年が経過し、制度が十分に浸透したと判断されたことが、今回の改正の主な背景です。
安全基準の統一
民間の講習団体は団体ごとに講習内容や修了試験の基準が異なっていました。国家資格に一本化することで、操縦者の技能水準を統一的に担保する狙いがあります。
機体の安全性評価の厳格化
HP掲載機体のリストは、メーカーからの申請に基づいて航空局が書面審査で掲載を判断していました。型式認証・機体認証は実機の検査を含む厳格な審査を経て認証されるため、機体の安全性評価がより確実になります。
影響を受ける人
影響が大きい人
以下に該当する方は、改正の影響を大きく受けます。
| 対象者 | 影響の内容 |
|---|---|
| 民間資格のみ保有(国家資格なし) | 操縦者の技能資料を全て提出する必要がある |
| HP掲載機体を使用(機体認証なし) | 機体の性能資料を全て提出する必要がある |
| 民間団体のマニュアルを使用 | 標準マニュアルまたは独自マニュアルの作成が必要 |
| 申請代行を依頼していない個人事業者 | 書類作成の負担が増加 |
影響が小さい人
以下に該当する方は、改正の影響は限定的です。
| 対象者 | 理由 |
|---|---|
| 国家資格(技能証明)保有者 | 従来どおり操縦者資料の省略が可能 |
| 機体認証を受けた機体を使用 | 従来どおり機体資料の省略が可能 |
| 標準マニュアルを使用している方 | マニュアルの変更不要 |
| 二等+第二種機体認証でカテゴリーIIB | そもそも許可申請自体が不要 |
具体的な変更の詳細
機体に関する資料の変更
改正前後で、飛行許可申請時に提出が必要な機体関連の資料は以下のとおりです。
| 資料 | 改正前(HP掲載機体) | 改正後(機体認証なし) | 改正後(機体認証あり) |
|---|---|---|---|
| 機体の設計図・仕様書 | 省略可 | 提出が必要 | 省略可 |
| 機体の写真 | 省略可 | 提出が必要 | 省略可 |
| 操縦装置の仕様 | 省略可 | 提出が必要 | 省略可 |
| 追加装備の情報 | 追加分のみ提出 | 提出が必要 | 省略可 |
操縦者に関する資料の変更
| 資料 | 改正前(民間技能認証あり) | 改正後(国家資格なし) | 改正後(国家資格あり) |
|---|---|---|---|
| 飛行経歴 | 省略可 | 提出が必要 | 省略可 |
| 知識・能力の証明 | 省略可 | 提出が必要 | 省略可 |
| 飛行訓練の記録 | 省略可 | 提出が必要 | 省略可 |
| 追加限定の資料 | 場合により提出 | 提出が必要 | 場合により省略可 |
飛行マニュアルの変更
| マニュアルの種類 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 国交省の標準マニュアル | 使用可 | 使用可(推奨) |
| リスク評価ガイドラインに基づく独自マニュアル | 使用可 | 使用可 |
| 民間講習団体のマニュアル | 使用可 | 使用不可 |
民間講習団体が独自に発行していた飛行マニュアルは使用できなくなりました。今後は国土交通省の標準マニュアルを使用するか、国土交通省が公開するリスク評価ガイドラインに沿って独自マニュアルを作成する必要があります。
今後の対応策
対応策1: 国家資格の取得(最も推奨)
改正の影響を最も効果的に軽減する方法は、国家資格(無人航空機操縦者技能証明)の取得です。
| 資格 | 効果 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 二等操縦士 | 操縦者資料の省略、カテゴリーIIBの申請免除(機体認証とセットで) | 15万〜35万円 |
| 一等操縦士 | 上記に加え、カテゴリーIII飛行が可能 | 50万〜80万円 |
特に二等操縦士+第二種機体認証の組み合わせなら、DID上空、夜間飛行、目視外飛行、30m未満飛行において飛行許可申請自体が不要になります。国家資格の詳細は「ドローン国家資格の種類と取得方法|一等・二等の違い」をご覧ください。
対応策2: 機体認証の取得
HP掲載機体の優遇廃止への対応として、機体認証の取得が有効です。型式認証を受けた機体であれば、所有者が機体認証を申請することで認証を受けられます。
ただし、2025年時点で型式認証を受けた機体はまだ限られているため、使用機体が型式認証の対象かどうかを確認してください。
対応策3: 標準マニュアルへの切り替え
民間団体のマニュアルを使用していた場合は、国土交通省の標準マニュアルへの切り替えが最も手軽な対応策です。標準マニュアルはDIPS2.0の申請画面から選択するだけで使用できます。
ただし、標準マニュアルには飛行条件の制限(風速5m/s以上は飛行不可、補助者の配置が必要等)が含まれているため、業務内容によっては独自マニュアルの作成が必要になる場合があります。
対応策4: 行政書士への依頼
書類作成の負担が増えた場合は、行政書士への申請代行も選択肢です。特に以下のケースでは専門家への依頼が有効です。
- 複雑な飛行条件(目視外+夜間など)の申請
- 独自マニュアルの作成が必要な場合
- 補正指示を受けて対応に困っている場合
経過措置
改正日時点で有効な許可への影響
2025年12月18日時点で既に取得済みの飛行許可・承認については、有効期間中はそのまま有効です。改正によって既存の許可が取り消されることはありません。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 改正前に取得した許可(有効期間内) | そのまま有効、変更なし |
| 改正後に新規申請する場合 | 新しい審査要領が適用される |
| 改正後に既存の許可を更新する場合 | 新しい審査要領が適用される |
民間資格の扱い
改正後、民間資格は飛行許可申請における書類省略の根拠としては使用できません。ただし、民間資格自体が無効になるわけではなく、以下の場面では引き続き活用できます。
- 国家資格の受験要件の一部緩和(登録講習機関での講習を経験者として受講可能)
- クライアントへの技能証明(名刺や提案書での資格表記)
- 飛行経歴の証明資料としての参考情報
審査期間への影響
書類省略ができなくなったことで、改正後は審査に時間がかかる可能性があります。
| 条件 | 改正前の目安 | 改正後の目安 |
|---|---|---|
| HP掲載機体+民間技能認証 | 数日〜1週間 | 該当なし(省略不可) |
| 国家資格+機体認証あり | 数日〜1週間 | 数日〜1週間(変更なし) |
| 資格・認証なし(全資料提出) | 10開庁日以上 | 10開庁日以上(変更なし) |
飛行開始予定日から逆算して十分な余裕を持って申請することを推奨します。飛行許可申請の手順は「ドローン飛行許可の申請方法|DIPS2.0での手順を解説」をご覧ください。
よくある質問
Q. 民間資格は完全に意味がなくなった?
飛行許可申請の書類省略には使えなくなりましたが、民間資格自体が無効になるわけではありません。国家資格の取得に向けた登録講習機関での経験者コースの受講要件として活用できるほか、クライアントへの技能の証明としても引き続き有用です。
Q. HP掲載機体のリストはもう見られない?
廃止されています。改正後は、航空局HPの掲載機体リストは更新されず、参照先としても使用できません。今後は型式認証・機体認証が機体の安全性を証明する唯一の公的制度です。
Q. 改正前に取得した包括申請は影響を受ける?
有効期間中は影響を受けません。ただし、更新時には新しい審査要領が適用されるため、更新のタイミングで全資料の提出が必要になる場合があります。なお、2025年3月のDIPS2.0改修以前に取得した包括申請は更新自体ができないため、新規申請が必要です。DIPS2.0の改修については「DIPS2.0の2025年改修|変更点と新しい申請方法」をご覧ください。
Q. 今から国家資格を取るべき?
業務でドローンを飛行させる方には強く推奨します。特に二等操縦士は、取得すれば操縦者資料の省略が可能になり、第二種機体認証と組み合わせればカテゴリーIIBの飛行は許可申請自体が不要になります。費用は15万〜35万円程度で、登録講習機関で最短2日間の講習で受験準備ができます。
Q. 標準マニュアルで対応できない飛行はどうする?
標準マニュアルの条件(風速5m/s以下、補助者配置等)を超える飛行が必要な場合は、国土交通省のリスク評価ガイドラインに沿って独自マニュアルを作成してください。独自マニュアルの作成が難しい場合は、行政書士に依頼することも選択肢です。
まとめ
2025年12月の審査要領改正は、ドローンの飛行許可申請に大きな影響を与える改正です。
- 民間資格による書類省略が廃止、国家資格のみが優遇対象に
- HP掲載機体リストが廃止、機体認証のみが資料省略の根拠に
- 民間団体の飛行マニュアルが使用不可、標準マニュアルまたは独自マニュアルに切り替え
- 既存の許可は有効期間中は影響なし、更新・新規申請時に新基準が適用
- 最も効果的な対応策は国家資格(二等操縦士)の取得
国家資格の詳細は「ドローン国家資格の種類と取得方法|一等・二等の違い」、飛行許可申請の手順は「ドローン飛行許可の申請方法|DIPS2.0での手順を解説」をご覧ください。