目次
この記事でわかること
ドローンを操縦者の目で直接見えない場所で飛ばす「目視外飛行」には、国土交通大臣の許可(承認)が必要です。空撮で山の裏側を飛ばしたい場合や、点検で構造物の死角に入る場合など、目視外飛行は実務で避けて通れない飛行方法です。
この記事では、目視外飛行の定義、許可が必要な理由、申請条件、補助者の配置、DIPS2.0での申請手順、包括申請との関係まで、まとめて解説します。
目視外飛行とは
目視外飛行(BVLOS: Beyond Visual Line of Sight)とは、操縦者が自分の目で直接ドローンを確認できない状態での飛行のことです。
無人航空機を飛行させる者は、次に掲げる方法により飛行させなければならない。(中略)当該無人航空機及びその周囲の状況を目視により常時監視して飛行させること。
― 航空法 第132条の86第2項第2号
航空法では、ドローンの飛行は原則として目視で常時監視しなければならないと定められています。この原則に対する例外の承認を得るのが、目視外飛行の許可申請です。
目視の定義
「目視」とは、操縦者本人が補助なしに自分の目で直接見ることを意味します。以下の状態はすべて目視外に該当します。
| 状態 | 目視 / 目視外 |
|---|---|
| 肉眼でドローンを見ながら操縦 | 目視 |
| 双眼鏡を使ってドローンを確認 | 目視外 |
| モニター映像のみで操縦(FPV) | 目視外 |
| 建物の陰にドローンが入った | 目視外 |
| 霧や雲でドローンが見えなくなった | 目視外 |
| 補助者がドローンを見ているが操縦者は見えない | 目視外 |
重要なのは、操縦者本人が見えているかどうかです。補助者が見えていても、操縦者が見えていなければ目視外飛行に該当します。
許可が必要な理由
目視外飛行では、操縦者がドローンの周囲の状況を直接確認できないため、以下のリスクが高まります。
- 有人機(ヘリコプター等)との衝突
- 他のドローンとの接触
- 建物・電線・樹木への衝突
- 人や車両の上空への意図しない飛行
- 機体の異常への対応遅れ
これらのリスクを踏まえ、国土交通大臣が安全性を審査したうえで承認を与える制度になっています。
申請の条件
目視外飛行の承認を得るには、以下の条件を満たす必要があります。
操縦者の要件
- 10時間以上の飛行経験があること
- 目視外飛行の訓練を行っていること(飛行日誌で証明)
- ドローンの国家資格(二等以上)を保有していることが望ましい(必須ではない)
無人航空機を目視外で飛行させる場合には、無人航空機の飛行経験が十時間以上であること。
― 無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領 5-4
機体の要件
- 自動操縦システムまたは操縦支援機能を備えていること
- カメラ等のモニタリング機器が搭載されていること
- バッテリー残量が確認できること
- フェールセーフ機能(通信途絶時の自動帰還等)を備えていること
安全対策
- 飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入らない措置を講じること
- 目視外飛行の際、必要に応じて補助者を配置すること(後述)
- 飛行マニュアルを作成すること
- 緊急時の連絡体制を整備すること
補助者の配置
目視外飛行では、原則として補助者を配置する必要があります。
補助者の役割
- 飛行経路の周辺でドローンの飛行状況を監視する
- 第三者の接近を操縦者に通報する
- 有人機の接近を操縦者に通報する
- 異常時に周囲の安全確保を行う
補助者なしの目視外飛行(レベル3・レベル3.5)
2023年12月以降、一定の条件を満たせば補助者を配置しない目視外飛行が可能になりました。
| 飛行レベル | 補助者 | 条件 |
|---|---|---|
| レベル2(目視外) | 必要 | 補助者が経路上を監視 |
| レベル3(無人地帯の目視外) | 不要 | 立入管理措置を実施 |
| レベル3.5 | 不要 | 操縦者技能証明+機体認証+保険加入 |
| レベル4(有人地帯の目視外) | 不要 | 一等技能証明+第一種機体認証 |
補助者なしの目視外飛行については、「ドローンの飛行禁止区域一覧|確認方法と許可の取り方」でもカテゴリー別の飛行レベルを解説しています。
飛行レベルと目視外飛行の分類
ドローンの飛行は、目視・目視外の区分や第三者の有無によってレベル1〜レベル4に分類されます。目視外飛行に該当するのはレベル2以上です。
飛行レベル一覧
| レベル | 飛行方法 | 第三者の有無 | 補助者 | 必要な資格・認証 |
|---|---|---|---|---|
| レベル1 | 目視内の手動操縦 | 問わない | 不要 | 基本の許可のみ |
| レベル2 | 目視内の自動・自律飛行 | 問わない | 不要 | 基本の許可のみ |
| レベル3 | 無人地帯の目視外飛行 | 第三者なし | 不要 | 立入管理措置の実施 |
| レベル3.5 | 無人地帯の目視外飛行(道路等横断あり) | 一時的に第三者あり | 不要 | 技能証明+保険加入 |
| レベル4 | 有人地帯の目視外飛行 | 第三者あり | 不要 | 一等技能証明+第一種機体認証 |
目視外飛行の用途や飛行環境に応じて、どのレベルに該当するかが変わります。レベルが上がるほど求められる安全対策や資格が増えます。各レベルの詳細は「ドローンのカテゴリー・レベルとは?飛行分類を解説」をご覧ください。
レベル3.5飛行の詳細
2023年12月に新設されたレベル3.5は、補助者や看板を配置せずに無人地帯で目視外飛行ができる画期的な仕組みです。物流やインフラ点検での活用が期待されています。
レベル3.5飛行を行うための条件は以下のとおりです。
- 無人航空機操縦者技能証明(一等または二等、目視外限定解除済み)を保有
- 機体にカメラを搭載し、飛行中にリアルタイムで周囲の状況を確認可能
- 第三者賠償責任保険に加入
- メーカーが提示する落下距離データに基づいた安全確保措置を実施
- 飛行経路を特定した個別申請が必要(包括申請では取得不可)
レベル3.5は包括申請では取得できず、事前に航空局への運航概要宣言書の提出と事前相談が必要です。
目視外飛行に適した機体の選び方
目視外飛行を安全に行うためには、機体の性能が重要な要素となります。
目視外飛行に必要な機体の機能
| 機能 | 必要度 | 説明 |
|---|---|---|
| FPVカメラ | 必須 | 操縦者がモニターで周囲の状況を確認するため |
| 自動帰還(RTH)機能 | 必須 | 通信途絶時に自動で離陸地点に帰還する |
| 障害物検知センサー | 推奨 | 前方・側面・下方の障害物を自動検知して回避 |
| テレメトリ表示 | 必須 | 高度・速度・バッテリー残量などをリアルタイム表示 |
| 長距離映像伝送 | 推奨 | 安定した映像伝送が可能な通信システム |
| ADS-B受信機 | 推奨 | 有人航空機の接近を検知 |
主要メーカーの目視外飛行対応状況
多くのDJI製品は標準で目視外飛行に必要な機能を備えています。DJI Mavic 3シリーズ、DJI Air 3、DJI Matrice 300/350 RTKなどは、カメラ、自動帰還、障害物検知を搭載しています。
ただし、FPVドローン(レース用ドローン)は別の扱いとなります。FPVドローンでの目視外飛行には、航空法の承認に加えてアマチュア無線局の開局手続きが必要です。FPVドローンの手続きについては「FPVドローンに必要な免許|アマチュア無線4級の取り方」をご覧ください。
目視外飛行の訓練方法
目視外飛行の承認を得るには、目視外飛行の訓練実績が必要です。具体的な訓練方法を紹介します。
訓練の手順
- まず目視内で基本操作を習得: 離着陸、ホバリング、前後左右の移動を安定して行えるようにする
- 10時間以上の飛行経験を積む: 目視内での飛行経験を記録
- 目視外飛行の訓練を行う: 訓練目的で許可を取得するか、屋内施設で実施
- モニター操作の練習: FPVカメラの映像のみで機体を操縦する訓練
訓練場所
目視外飛行の訓練は以下の場所で行えます。
- 屋内施設: 航空法の適用外のため許可不要で訓練可能
- ドローンスクール: 訓練用の飛行場を備えたスクールで指導を受けられる
- 許可を取得した上での屋外訓練: 個別申請で訓練目的の飛行許可を取得
ドローンスクールでは、国家資格(二等無人航空機操縦士)の取得過程で目視外飛行の限定変更(限定解除)の訓練を受けられます。国家資格については「ドローン国家資格の種類と取得方法|一等・二等の違い」をご覧ください。
DIPS2.0での申請手順
目視外飛行の承認申請は、DIPS2.0(ドローン情報基盤システム)からオンラインで行えます。
Step 1: DIPS2.0にログイン
DIPS2.0(https://www.dips-reg.mlit.go.jp/)にアクセスし、アカウントでログインします。アカウントをまだ作成していない場合は新規登録を行ってください。DIPS2.0の操作方法は「DIPS2.0の使い方|飛行許可申請の操作手順ガイド」で詳しく解説しています。
Step 2: 「飛行許可・承認の申請」を選択
メニューから「飛行許可・承認の申請」を選び、「新規申請」を押します。
Step 3: 飛行の目的と方法を選択
申請画面で以下を入力します。
- 飛行の目的: 空撮、点検、測量など該当するものを選択
- 飛行の方法: 「目視外飛行」にチェックを入れる
- その他、夜間飛行やDID上空飛行など同時に申請する飛行方法があればチェック
Step 4: 機体情報を入力
使用するドローンの情報を入力します。DIPS2.0に登録済みの機体であれば一覧から選択できます。
Step 5: 操縦者情報を入力
操縦者の飛行経験時間(10時間以上)、目視外飛行の訓練経験を入力します。国家資格を保有している場合は技能証明書番号も入力します。
Step 6: 安全対策を記載
以下の安全対策を申請書に記載します。
- 補助者の配置計画(人数・位置)
- 第三者の立入防止措置の内容
- 緊急時の対応手順
- 飛行マニュアルの内容(標準マニュアルの使用可)
Step 7: 飛行経路・範囲を指定
地図上で飛行経路または飛行範囲を指定します。
- 個別申請: 具体的な飛行経路を線で描く
- 包括申請: 日本全国や都道府県単位で範囲を指定
Step 8: 申請内容を確認・提出
入力内容を確認し、「申請」ボタンを押して提出します。審査期間は通常10開庁日程度です。
包括申請との関係
目視外飛行の承認は、包括申請で取得するのが一般的です。
包括申請で目視外飛行を申請するメリット
- 1年間有効(毎回の申請が不要)
- 飛行範囲を広く設定できる(日本全国も可)
- 夜間飛行やDID上空飛行とまとめて申請できる
- 更新が容易(オンラインで更新手続き可能)
ドローンを業務で使用する場合、目視外飛行+夜間飛行+DID上空飛行+人物から30m未満の飛行の4つをまとめて包括申請するのが定番です。包括申請の詳細は「ドローン包括申請とは?個別申請との違いと申請手順」をご覧ください。
包括申請で目視外飛行を申請する場合の注意点
- 包括申請ではレベル3.5飛行やレベル4飛行は申請できない(個別申請が必要)
- 空港周辺・150m以上の空域での飛行は包括申請の対象外(個別申請が必要)
- 標準マニュアルを使用する場合、夜間の目視外飛行は実施できない(独自マニュアルが必要)
- 飛行前にDIPS2.0での飛行計画通報が必要
- 飛行日誌の記録・携行が義務
費用
目視外飛行の承認申請にかかる費用は以下のとおりです。
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| DIPS2.0での申請 | 0円(手数料なし) |
| 行政書士に代行を依頼 | 30,000円〜80,000円(包括申請の場合) |
DIPS2.0での申請は無料です。ただし、申請書類の作成に不安がある場合や時間がない場合は、行政書士への代行依頼も選択肢です。飛行許可の申請全般については「ドローン飛行許可の申請方法|DIPS2.0での手順を解説」で解説しています。
注意点
目視外飛行 × 夜間飛行の二重規制
目視外飛行と夜間飛行を同時に行う場合、両方の承認が必要です。夜間は視界がさらに制限されるため、追加の安全対策が求められます。
- 灯火の設置(ドローンの位置を視認できるライト)
- 補助者の照明器具の携行
- より詳細な飛行マニュアルの作成
夜間飛行の申請条件については「ドローンの夜間飛行許可|申請方法と注意点」をご覧ください。
飛行日誌の記録義務
目視外飛行を行った場合、飛行日誌への記録が義務です(航空法第132条の89)。記録すべき内容は以下のとおりです。
- 飛行日時・場所
- 飛行の目的
- 操縦者名
- 飛行方法(目視外飛行の旨を明記)
- 飛行高度・飛行範囲
- 異常の有無
承認の有効期間
- 個別申請: 申請した飛行期間(最長1年)
- 包括申請: 最長1年間(更新可能)
有効期間の満了前に更新手続きを行いましょう。更新を忘れると無許可飛行となり、50万円以下の罰金の対象になります。
よくある質問
Q. FPVゴーグルでの飛行は目視外飛行になる?
はい、目視外飛行に該当します。 FPVゴーグルやモニターのみで操縦する場合、操縦者は肉眼でドローンを見ていないため目視外飛行です。FPVドローンの飛行には、目視外飛行の承認に加えてアマチュア無線局の開局など別の手続きも必要になります。
Q. 補助者がドローンを見ていれば目視外飛行にならない?
いいえ、目視外飛行に該当します。 航空法で求められる「目視」は操縦者本人の目視です。補助者が見えていても、操縦者本人がドローンを直接視認できなければ目視外飛行です。
Q. 目視外飛行の許可なしで飛ばすとどうなる?
航空法第157条の6により、50万円以下の罰金の対象になります。業務での使用であれば許可を得ずに飛行することは絶対に避けてください。
Q. 100g未満のドローンでも目視外飛行の許可は必要?
いいえ、100g未満のドローンは航空法上の「無人航空機」に該当しないため、目視外飛行の許可は不要です。ただし、100g未満でも小型無人機等飛行禁止法の規制対象となる場所(国の重要施設周辺など)では飛行が禁止されています。
Q. 目視外飛行中に通信が途切れたらどうなる?
通信途絶時の対応は機体のフェールセーフ機能に依存します。多くの機体では自動帰還(RTH)が作動し、離陸地点に自動で帰還します。目視外飛行の許可申請では、通信途絶時の対応手順を飛行マニュアルに明記する必要があります。フェールセーフの設定は飛行前に必ず確認してください。
Q. 国家資格があれば目視外飛行の許可申請は不要になる?
条件つきで不要になるケースがあります。 二等無人航空機操縦士(目視外限定解除済み)+第二種機体認証を受けた機体の組み合わせであれば、カテゴリーIIBの目視外飛行では許可申請が不要です。ただし、レベル3.5やレベル4の飛行、空港周辺・150m以上での飛行には引き続き個別の許可が必要です。
Q. 包括申請で補助者なしの目視外飛行はできる?
原則として包括申請では補助者なしの目視外飛行(レベル3・レベル3.5)はできません。 包括申請で取得できる目視外飛行の承認は、補助者を配置するレベル2の飛行が基本です。補助者なしで目視外飛行を行いたい場合は、レベル3またはレベル3.5として個別申請を行う必要があります。ただし、国家資格+機体認証の組み合わせでカテゴリーIIBに該当する場合は許可不要で補助者なしの目視外飛行が可能です。レベル3.5については「ドローンのレベル3.5飛行とは?申請方法と条件」をご覧ください。
目視外飛行の実務ケーススタディ
実務で目視外飛行が必要になる代表的なシーンと、それぞれで求められる対応をまとめます。
ケース1: 太陽光パネルの点検
太陽光発電所でパネルの赤外線点検を行う場合、広大な敷地をドローンで自動飛行させます。操縦者の位置から機体が見えなくなる場面が多いため、目視外飛行の承認が必要です。
- 申請方法: 包括申請(DID上空+目視外飛行)
- 補助者: 飛行経路周辺に配置
- 安全対策: 自動飛行ルートの事前設定、フェールセーフの確認
ケース2: 建物の外壁点検
高層ビルや橋梁の外壁を点検する場合、構造物の裏側にドローンが入り込むため目視外飛行に該当します。
- 申請方法: 個別申請(飛行場所を特定)
- 補助者: 構造物の反対側に配置し、通信で操縦者と連絡
- 安全対策: 障害物検知センサーの活用、低速飛行
ケース3: 農薬散布
農薬散布は広大な農地を長時間飛行するため、操縦者の位置から機体が見えにくくなる場面が発生します。
- 申請方法: 包括申請(目視外飛行+危険物輸送+物件投下)
- 補助者: 農地の端に配置
- 安全対策: 自動飛行ルートの設定、散布エリアへの第三者立入防止
ケース4: 物流(荷物配送)
ドローンによる荷物配送は、長距離の目視外飛行が必要になります。
- 申請方法: 個別申請(レベル3またはレベル3.5)
- 補助者: レベル3.5では不要(条件あり)
- 安全対策: 第三者賠償責任保険、機上カメラによるリアルタイム監視
まとめ
目視外飛行は、ドローンの実務利用で避けて通れない飛行方法です。
- 操縦者が肉眼でドローンを見られない飛行はすべて目視外飛行
- 承認申請には10時間以上の飛行経験が必要
- 原則として補助者の配置が必要(レベル3以上は不要)
- DIPS2.0で無料で申請できる
- 包括申請で夜間飛行やDID上空飛行とまとめて取得するのが効率的
- 飛行レベルはレベル2〜レベル4に分類され、レベルが上がるほど高度な安全対策が必要
- レベル3.5では補助者なしの目視外飛行が可能(技能証明+保険加入が条件)
- 機体にはFPVカメラ、自動帰還、障害物検知などの機能が求められる
- 違反すると50万円以下の罰金
包括申請の手順は「ドローン包括申請とは?個別申請との違いと申請手順」をご覧ください。2025年12月の審査要領改正で民間資格の優遇が廃止されており、申請書類の準備に影響があります。詳細は「審査要領改正(2025年12月)|民間資格の申請簡略化が廃止」で確認してください。申請代行を検討している方は「ドローン飛行許可の申請代行|費用相場と依頼の流れ」も参考にしてください。