この記事でわかること
FPVドローンは、ゴーグルを通して一人称視点(First Person View)で操縦するドローンです。迫力ある空撮やレースなどで人気が高まっていますが、日本で合法的に飛ばすには電波法と航空法の両方の手続きが必要です。
「興味はあるけど、何から始めればいいかわからない」という方のために、この記事ではゼロからFPVドローンを飛ばすまでの全手順、費用の総額、始めるまでの期間をまとめて解説します。
FPVドローンと電波法の関係
FPVドローンは映像伝送に5.8GHz帯(一部は5.7GHz帯)の電波を使用します。この周波数帯は日本ではアマチュア無線の周波数帯に該当するため、使用するには以下の手続きが必要です。
- アマチュア無線技士の資格を取得する
- VTX(映像送信機)を無線局として開局申請する
一般的なドローンが使用する2.4GHz帯は技適マークがあれば免許不要ですが、FPVドローンの5.8GHz帯は免許が必要な周波数帯です。無免許で電波を発射すると、電波法違反で1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になります。
何人も、総務大臣の免許を受けなければ、無線局を開設してはならない。
― 電波法 第4条
必要な手続きの全体像
FPVドローンを飛ばすまでに必要な手続きは7つのステップに分かれます。
| Step | 手続き | 管轄 | 目安期間 |
|---|---|---|---|
| 1 | アマチュア無線4級の取得 | 総務省(日本無線協会) | 1〜3ヶ月 |
| 2 | FPV機体の選定・購入 | ― | 1〜2週間 |
| 3 | VTXの系統図作成 | ― | 数日 |
| 4 | JARD/TSS保証認定 | JARD or TSS | 2〜4週間 |
| 5 | 無線局開局申請 | 総合通信局 | 1〜2ヶ月 |
| 6 | ドローン機体登録 | 国土交通省 | 3〜10開庁日 |
| 7 | 飛行許可申請 | 国土交通省 | 10開庁日 |
全手続きを順番に進めると、最短でも約3〜4ヶ月かかります。Step 1の資格取得は他のステップと並行できないため、最初に着手してください。
手続きの詳細
Step 1: アマチュア無線4級を取得する
FPVドローンの5.8GHz帯VTXを使用するには、最低でも第四級アマチュア無線技士(アマチュア無線4級)の資格が必要です。
取得方法は2つあります。
| 方法 | 内容 | 費用 | 期間 |
|---|---|---|---|
| 国家試験を受験 | 日本無線協会の試験を受験(CBT方式) | 5,163円 | 試験日+1〜2ヶ月(免許証発行まで) |
| 養成課程を受講 | JARDなどの養成課程を受講し、修了試験に合格 | 23,150円〜 | 2日間の講習+1〜2ヶ月(免許証発行まで) |
国家試験は合格率約80%で、独学でも十分合格できます。養成課程は費用が高い分、体系的に学べるため確実です。
資格取得後は無線従事者免許証の申請を行い、免許証を受け取ってください。免許証がないと次のステップに進めません。
Step 2: FPV機体を選定・購入する
アマチュア無線4級の勉強中に、並行して機体の選定を進めましょう。
FPVドローンの機体選びでは、以下のポイントを確認してください。
- VTX(映像送信機)のスペック: 使用周波数、出力(空中線電力)、変調方式を確認
- 技適マークの有無: 2.4GHz帯の操縦用送信機(プロポ)に技適マークがあるか確認
- 機体重量: 100g以上なら機体登録が必要
- 完成品 or 自作キット: 初心者には完成品(BNF/RTF)がおすすめ
購入前にVTXの技術仕様を確認することが重要です。系統図の作成や保証認定で必要になります。技適マークの確認方法は「ドローンの技適マーク確認方法|確認できない場合の対処」をご覧ください。
Step 3: VTXの系統図を作成する
系統図とは、VTXの送信部から空中線(アンテナ)までの構成を図示したもので、無線局の開局申請に必要な書類です。
系統図に記載する主な項目は以下のとおりです。
| 記載項目 | 内容 |
|---|---|
| 発振器 | VTXの型番、発振方式 |
| 変調器 | 変調方式(FM等) |
| 終段増幅器 | 送信出力 |
| フィルタ | 帯域外不要輻射の除去 |
| 空中線(アンテナ) | 型式、利得 |
| 給電線 | 同軸ケーブルの種類 |
VTXメーカーが系統図を公開している場合はそれを使用できます。公開されていない場合は自分で作成するか、JARD/TSSに相談してください。
系統図の書き方の詳細は「FPVドローンVTXの系統図の書き方|開局申請に必要」で解説しています。
Step 4: JARD/TSSで保証認定を受ける
FPVドローンのVTXは技適を取得していない機器がほとんどです。技適のない無線設備で開局するには、保証認定を受ける必要があります。
保証認定とは、アマチュア無線の自作機器や技適未取得機器の技術基準適合性を保証する制度です。保証を行う機関は以下の2つです。
| 機関 | 正式名称 | 費用(基本料) | 審査期間 |
|---|---|---|---|
| JARD | 一般財団法人 日本アマチュア無線振興協会 | 4,100円〜 | 2〜3週間 |
| TSS | TSS株式会社 | 3,300円〜 | 2〜4週間 |
どちらに申請しても結果は同じです。JARDとTSSの違いについては「TSS保証認定とJARDの違い|FPV開局はどちらに申請?」で詳しく解説しています。
申請時に提出するもの:
- 無線従事者免許証のコピー
- 系統図(Step 3で作成)
- VTXの仕様書(出力、周波数等)
- 保証認定申請書
保証認定が完了すると「保証書」が発行されます。この保証書は次の開局申請で使用します。
Step 5: 無線局開局申請を行う
保証書を受け取ったら、総合通信局に無線局の開局申請を行います。
申請方法は2つあります。
| 方法 | 手数料 | 処理期間 |
|---|---|---|
| 電子申請(総務省 電子申請・届出システムLite) | 2,900円 | 1〜2ヶ月 |
| 書面申請(紙で郵送) | 4,300円 | 1〜3ヶ月 |
電子申請のほうが手数料が安く、処理も早いためおすすめです。
申請時に必要な書類:
- 無線局免許申請書
- 無線局事項書(送信機の諸元を記載)
- 工事設計書(系統図を含む)
- 保証書(Step 4で取得)
- 無線従事者免許証のコピー
審査が完了すると無線局免許状が発行されます。免許状を受け取って初めて、VTXから電波を発射できるようになります。
開局申請の詳しい手順は「FPVドローン5.8GHz帯の開局申請|手順と必要書類」をご覧ください。
Step 6: ドローン機体登録を行う
機体重量が100g以上のFPVドローンは、航空法に基づく機体登録が必要です。
機体登録はDIPS2.0(https://www.dips-reg.mlit.go.jp/)からオンラインで行います。
| 手続き | 費用 | 処理期間 |
|---|---|---|
| DIPS2.0での機体登録(マイナンバーカード) | 900円 | 1〜3開庁日 |
| DIPS2.0での機体登録(運転免許証等) | 1,450円 | 3〜5開庁日 |
登録が完了すると登録記号(JU+数字)が付与されます。この登録記号を機体に表示してください。
機体登録の詳しい手順は「ドローン機体登録のやり方|100g以上は義務」で解説しています。
Step 7: 飛行許可申請を行う
FPVドローンの飛行では、多くの場合飛行許可・承認が必要になります。FPVゴーグルを装着して操縦するため、目視外飛行に該当するケースが大半です。
また、飛行場所がDID(人口集中地区)に該当する場合は、DID上空の飛行許可も必要です。
| 飛行の種類 | 許可・承認の要否 |
|---|---|
| 目視外飛行 | 承認が必要 |
| DID上空 | 許可が必要 |
| 夜間飛行 | 承認が必要 |
| 人・物件から30m未満 | 承認が必要 |
飛行許可の申請はDIPS2.0から無料で行えます。業務で複数回飛行する場合は包括申請がおすすめです。
飛行許可の申請方法は「ドローン飛行許可の申請方法|DIPS2.0での手順を解説」で詳しく解説しています。DID上空の飛行については「DID地区でのドローン飛行許可|人口集中地区の確認方法」をご覧ください。
費用の総額
FPVドローンをゼロから始める場合の費用の総額目安をまとめます。
手続きにかかる費用
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| アマチュア無線4級 国家試験 | 5,163円 |
| 無線従事者免許証の申請 | 1,750円 |
| JARD保証認定 | 4,100円〜 |
| 無線局開局申請(電子申請) | 2,900円 |
| 電波利用料(年額) | 300円 |
| ドローン機体登録 | 900円〜1,450円 |
| 飛行許可申請 | 無料 |
| 手続き費用の合計 | 約15,000円〜16,000円 |
機材にかかる費用
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| FPVドローン本体(完成品) | 20,000円〜80,000円 |
| FPVゴーグル | 15,000円〜60,000円 |
| プロポ(送信機) | 10,000円〜30,000円 |
| バッテリー・充電器 | 5,000円〜15,000円 |
| 予備パーツ | 3,000円〜10,000円 |
| 機材費用の合計 | 約53,000円〜195,000円 |
総額の目安
| 区分 | 最低限 | 中級 | ハイエンド |
|---|---|---|---|
| 手続き費用 | 15,000円 | 15,000円 | 16,000円 |
| 機材費用 | 53,000円 | 100,000円 | 195,000円 |
| 合計 | 約68,000円 | 約115,000円 | 約211,000円 |
養成課程でアマチュア無線4級を取得する場合は、さらに約18,000円追加になります。
飛ばすまでの期間の目安
全ての手続きを順番に進めた場合の所要期間は以下のとおりです。
| Step | 所要期間 | 並行可能 |
|---|---|---|
| Step 1: アマチュア無線4級取得 | 1〜3ヶ月 | ― |
| Step 2: 機体選定・購入 | 1〜2週間 | Step 1と並行可 |
| Step 3: 系統図作成 | 数日 | Step 1と並行可 |
| Step 4: JARD/TSS保証認定 | 2〜4週間 | Step 1完了後 |
| Step 5: 無線局開局申請 | 1〜2ヶ月 | Step 4完了後 |
| Step 6: 機体登録 | 1〜10開庁日 | Step 5と並行可 |
| Step 7: 飛行許可申請 | 10開庁日 | Step 6完了後 |
最短で約3ヶ月、余裕を持って4〜5ヶ月が現実的な目安です。
シミュレーターでの練習を推奨
手続きが完了するまでの期間は、FPVシミュレーターでの練習を強くおすすめします。
FPVドローンは通常のドローンとは操縦感覚が大きく異なります。いきなり実機を飛ばすと墜落・破損のリスクが高いため、シミュレーターで基本的な操縦を身につけてから実機に移行するのが安全です。
代表的なFPVシミュレーターには以下があります。
- Velocidrone: リアルな挙動で人気。有料
- Liftoff: Steam対応で導入しやすい。有料
- FPV Freerider: 無料版あり。入門向け
実際のプロポ(送信機)をPCに接続して練習できるため、実機とほぼ同じ感覚で操縦を学べます。
よくある質問
Q. FPVドローンを飛ばすのにアマチュア無線の資格は必須?
5.8GHz帯のアナログVTXを使用する場合は必須です。FPVドローンの映像伝送に使われる5.8GHz帯はアマチュア無線の周波数帯に該当するため、最低でもアマチュア無線4級の資格が必要です。ただし、2.4GHz帯で映像伝送するデジタルFPVシステムの中には技適取得済みで免許不要のものもあります。
Q. アマチュア無線の資格で業務利用できる?
できません。アマチュア無線は「金銭上の利益のためでなく、専ら個人的に無線技術に興味を持つ者」が行うものと定義されています。FPVドローンを業務(空撮の仕事、点検業務等)に使う場合は、アマチュア無線ではなく業務用の無線局免許が必要です。業務利用については「FPVドローンを業務利用する場合の無線局免許」をご覧ください。
Q. 免許なしでFPVドローンの練習はできる?
シミュレーターなら免許なしで練習できます。実際に電波を発射しないシミュレーターは電波法の規制対象外です。手続き完了を待つ間はシミュレーターで操縦を練習してください。
Q. 海外で購入したFPVドローンはそのまま使える?
使えません。海外製のVTXは日本の技術基準に適合していない場合がほとんどです。保証認定を受けて開局申請を行う必要があります。また、プロポ(操縦用送信機)に技適マークがない場合は、日本では使用できません。
Q. 機体を手放すときはどうすればいい?
FPVドローンの機体を売却・処分するときは、無線局の廃止届を総合通信局に提出する必要があります。廃止届を出さないと電波利用料の請求が続きます。詳しくは「FPVドローンの無線局廃止届|機体を手放すときの手続き」をご覧ください。
まとめ
FPVドローンを合法的に飛ばすには、電波法と航空法の両方の手続きが必要です。
- 7つのステップ: 資格取得 → 機体選定 → 系統図作成 → 保証認定 → 開局申請 → 機体登録 → 飛行許可
- 費用の総額: 手続き約15,000円+機材約53,000円〜で、最低約68,000円から
- 所要期間: 最短約3ヶ月、余裕を持って4〜5ヶ月
- 手続き期間中はFPVシミュレーターで練習しておくのがおすすめ
FPVドローンに必要な免許の全体像は「FPVドローンに必要な免許|アマチュア無線+開局申請ガイド」で解説しています。FPVドローンで空撮を楽しみたい方は「FPVドローンで空撮する際の注意点|電波法と航空法」も参考にしてください。