電波申請ナビ

農業用ドローンの飛行許可|農薬散布の申請まとめ

この記事でわかること

農業用ドローンで農薬散布肥料散布を行うには、航空法に基づく飛行許可・承認が必要です。農薬散布は「物件投下」と「危険物の輸送」に該当するため、通常の空撮よりも多くの手続きが求められます。

この記事では、農業用ドローンの飛行に必要な許可・申請の種類、DIPS2.0での申請手順、農薬取締法との関係、費用の目安を解説します。初めて農業用ドローンを導入する農業法人や個人農家の方に向けた内容です。

農業用ドローンとは

農業用ドローンとは、農薬散布・肥料散布・播種(はしゅ)・圃場のセンシングなどの農作業に使われる無人航空機のことです。従来の無人ヘリコプターと比べて導入コストが低く、操作も比較的容易なことから、全国の農業現場で急速に普及しています。

農業用ドローンで行う作業のうち、航空法上の手続きが特に重要になるのは農薬散布です。農薬散布では以下の2つの飛行方法に該当するため、国土交通大臣の承認が必要になります。

  • 危険物の輸送(航空法第132条の86第2項第5号): 農薬は航空法上の「危険物」に該当します
  • 物件投下(航空法第132条の86第2項第6号): 散布行為が「物件の投下」に該当します

農業用ドローンに必要な許可・申請

農業用ドローンで農薬散布を行うには、複数の手続きが必要です。全体像を整理します。

飛行許可・承認(航空法)

農薬散布で該当する可能性のある特定飛行は以下のとおりです。

特定飛行の種類 該当する場面 根拠条文
危険物の輸送 農薬を搭載して飛行する 航空法 第132条の86第2項第5号
物件投下 農薬を散布する 航空法 第132条の86第2項第6号
人口集中地区(DID)上空 圃場がDID内にある場合 航空法 第132条の85第1項第2号
人・物件から30m未満 家屋や電柱の近くで散布する場合 航空法 第132条の86第2項第3号
目視外飛行 広い圃場で操縦者の目視範囲を超える場合 航空法 第132条の86第2項第2号

危険物の輸送と物件投下は農薬散布では必ず該当します。それ以外は圃場の立地や飛行方法によって該当する場合があります。

機体登録(航空法)

100g以上のドローンは機体登録が義務です。農業用ドローンは通常100gを大きく超えるため、必ず機体登録を行い、登録記号を機体に表示する必要があります。

機体登録の手順は「ドローン機体登録のやり方|100g以上は義務」で詳しく解説しています。

農薬取締法に基づく使用基準の遵守

農薬散布にドローンを使用する場合、農薬取締法に基づく農薬の使用基準を遵守する必要があります。

  • 使用する農薬がドローン散布(無人航空機による散布)に対応した登録農薬であること
  • 農薬ラベルに記載された希釈倍率・散布量・使用回数を厳守すること
  • 散布区域外へのドリフト(飛散)防止策を講じること

使用できる農薬は農林水産省の農薬登録情報で確認できます。ドローン散布に対応していない農薬を使用することはできません。

都道府県への事前報告

多くの都道府県では、農薬の空中散布を行う前に都道府県の農政部門への事前報告を求めています。報告の様式や期限は都道府県ごとに異なるため、圃場がある都道府県の農政部門に確認してください。

申請の手順

Step 1: 機体登録を済ませる

まず、使用する農業用ドローンの機体登録を行います。DIPS2.0の「無人航空機登録」メニューから申請し、登録記号を取得してください。農業法人の場合は法人名義での登録となります。

法人の機体登録については「法人のドローン機体登録|必要書類と手続きの流れ」をご覧ください。

Step 2: 操縦者の技能を確認する

農薬散布を行うドローン操縦者には、以下の技能が求められます。

  • 10時間以上の飛行経験(飛行許可申請の条件)
  • 農薬散布に関する知識と技能(農薬の取扱い、散布装置の操作、ドリフト防止策など)
  • 使用する機体での散布訓練の実施

農業用ドローンのメーカーや販売代理店が実施する機体購入者向けの操作研修を受講しておくと、操縦者の技能を証明しやすくなります。国家資格(無人航空機操縦士)の取得も有効です。国家資格については「ドローン国家資格の種類と取得方法|一等・二等の違い」をご覧ください。

Step 3: 飛行マニュアルを準備する

農薬散布では、国土交通省の標準マニュアルの中でも「危険物の輸送及び物件投下を伴う飛行」に対応したマニュアルを使用するか、独自のマニュアルを作成する必要があります。

飛行マニュアルには以下の内容を盛り込みます。

  • 安全確認の手順(飛行前・飛行中・飛行後)
  • 散布区域と安全区域の設定方法
  • 第三者の立入りを防止する措置
  • 緊急時の対応手順(機体トラブル、農薬漏洩など)
  • 気象条件の判断基準(風速、降雨の制限)

Step 4: DIPS2.0で飛行許可・承認を申請する

DIPS2.0にログインし、飛行許可・承認の申請を行います。

  1. 機体情報・操縦者情報をDIPS2.0に登録する
  2. 「飛行許可・承認申請」メニューから新規申請を開始する
  3. 飛行の目的で「農薬散布」を選択する
  4. 飛行方法で「危険物の輸送」「物件投下」を選択する(その他該当する項目も選択)
  5. 飛行の期間・場所・高度を入力する
  6. 飛行マニュアルを選択・添付する
  7. 申請内容を確認して提出する

農薬散布は毎年同じ圃場で繰り返し行うケースが多いため、包括申請が便利です。包括申請なら1年間の許可を一度に取得でき、飛行のたびに個別申請する必要がありません。包括申請については「ドローン包括申請とは?個別申請との違いと申請手順」をご覧ください。

Step 5: 飛行前の準備と実施

飛行許可を取得したら、実際の散布作業の前に以下を行います。

  • DIPS2.0で飛行計画の通報を行う(航空法第132条の88)
  • 散布区域の周辺住民や関係者への事前周知
  • 都道府県の農政部門への散布計画の報告(必要に応じて)
  • 当日の気象条件の確認(風速、気温、降雨予報)
  • 散布区域内に第三者がいないことの確認と立入り防止措置

費用

農業用ドローンの飛行許可申請に関する費用の目安です(2026年3月時点)。

項目 費用の目安
飛行許可・承認申請(DIPS2.0) 無料
機体登録手数料 900円〜2,400円/機(オンライン申請か書面申請かで異なる)
行政書士への申請代行 3万円〜8万円程度(申請内容の複雑さによる)

飛行許可申請自体にかかる手数料は無料です。ただし、農業用ドローンの導入には機体の購入費用、操作研修の費用、農薬の購入費用なども別途発生します。

行政書士への代行費用について詳しくは「ドローン飛行許可の申請代行|費用相場と依頼の流れ」をご覧ください。

注意点

農薬の飛散(ドリフト)に注意

農薬散布では、散布区域外への農薬の飛散(ドリフト)が大きな問題になります。隣接する圃場や住宅地への飛散は、農作物への薬害や健康被害につながるおそれがあります。

  • 風速3m/s以上では散布を中止する(標準マニュアルの基準)
  • 散布区域の境界に緩衝地帯(バッファゾーン)を設定する
  • ドリフト低減ノズルを使用する

保険への加入

農薬散布中の事故は第三者への被害が大きくなる可能性があります。賠償責任保険への加入は法的義務ではありませんが、実務上は必須です。ドローン保険については「ドローンの保険は必要?賠償責任保険の選び方」で詳しく解説しています。

散布記録の保管

農薬取締法により、農薬を使用した場合は散布の記録を作成・保管する義務があります。以下の情報を記録してください。

  • 散布日時
  • 散布場所(圃場の所在地)
  • 使用した農薬の種類と量
  • 散布面積
  • 対象作物

よくある質問

Q. 農業用ドローンに国家資格は必要ですか?

国家資格(無人航空機操縦士)は農薬散布に必須ではありません。ただし、二等無人航空機操縦士と第二種機体認証の組み合わせにより、一定のカテゴリーII飛行で許可申請が不要になる場合があります。また、国家資格の取得は操縦者の技能を客観的に証明する手段としても有効です。

Q. 散布できる農薬に制限はありますか?

あります。 ドローン(無人航空機)による散布が認められている登録農薬のみ使用できます。農薬ラベルに「無人航空機」での使用が記載されているか必ず確認してください。対応していない農薬をドローンで散布することは農薬取締法違反となります。

Q. 他人の農地で散布する場合、追加の手続きは必要ですか?

飛行許可申請自体は、自分の農地でも他人の農地でも同じ手続きです。ただし、他人の農地で散布を行う場合は、農地の所有者・耕作者からの依頼を受けていることが前提です。また、散布代行を業として行う場合は、事業としての各種届出や保険の加入内容にも注意してください。

Q. 包括申請と個別申請のどちらが向いていますか?

農薬散布はシーズン中に同じ圃場で繰り返し行うことが多いため、包括申請が適しています。包括申請なら最長1年間の許可を一括で取得でき、飛行のたびに個別申請する必要がありません。

まとめ

農業用ドローンで農薬散布を行うには、航空法に基づく飛行許可・承認の取得が必須です。

  • 農薬散布は「危険物の輸送」と「物件投下」に該当し、国土交通大臣の承認が必要
  • 機体登録、飛行許可申請(DIPS2.0)、農薬取締法の遵守が3つの柱
  • 包括申請を利用すれば、シーズン中の散布作業を効率的にカバーできる
  • 飛行許可申請の手数料は無料だが、機体登録手数料は別途発生する
  • 農薬のドリフト防止散布記録の保管を忘れずに

申請手続きに不安がある場合は、行政書士への代行依頼も選択肢です。飛行許可の申請方法の全体像は「ドローン飛行許可の申請方法|DIPS2.0での手順を解説」をご覧ください。

この記事をシェア

このカテゴリの完全ガイドを見る

ドローン飛行許可の手続き 完全ガイド