目次
この記事でわかること
ドローンを安全かつ合法的に飛ばすには、複数の法律を横断的に理解する必要があります。航空法だけでなく、電波法、小型無人機等飛行禁止法、民法、道路交通法、さらには各自治体の条例も関係します。
この記事では、2026年3月時点でドローンに関わるすべての主要な法律・規制を網羅的にまとめます。2025年12月に施行された審査要領改正(民間資格優遇の廃止)の影響も含めて解説します。
ドローンに関わる法律の全体像
ドローンの運用に関係する法律は以下のとおりです。
| 法律 | 所管 | 規制の対象 |
|---|---|---|
| 航空法 | 国土交通省 | 飛行許可・機体登録・国家資格・飛行空域 |
| 電波法 | 総務省 | 無線通信・技適・周波数帯 |
| 小型無人機等飛行禁止法 | 警察庁 | 重要施設周辺の飛行禁止 |
| 民法 | 法務省 | プライバシー・肖像権・所有権 |
| 道路交通法 | 警察庁 | 道路上空からの離着陸 |
| 各自治体の条例 | 各自治体 | 公園・河川敷等での飛行制限 |
以下、それぞれの法律について詳しく解説します。
航空法(国土交通省)
航空法はドローン規制の最も中心的な法律です。2015年の改正で無人航空機に関する規定が追加され、その後も機体登録制度(2022年)、国家資格制度(2022年12月)、レベル3.5飛行(2023年12月)と、段階的に制度が拡充されてきました。
対象となる機体
航空法の「無人航空機」に該当するのは、100g以上の機体です。
この法律において「無人航空機」とは、航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器であつて構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦(中略)により飛行させることができるもの(その重量その他の事由を勘案してその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通省令で定めるものを除く。)をいう。
― 航空法 第2条第22項
国土交通省令で100g未満の機体は除外されています。したがい、100g未満のトイドローン等には航空法の無人航空機に関する規定は適用されません(ただし、他の法律の適用はあり得ます)。
機体登録制度
2022年6月20日から、100g以上の全ドローンに機体登録が義務化されています。
- 登録先: DIPS2.0(ドローン情報基盤システム)
- 有効期間: 3年間(更新が必要)
- 登録記号: 機体に貼付が必要
- リモートID: 原則搭載義務(事前登録機体は免除)
無人航空機の所有者は、当該無人航空機について、国土交通大臣の登録を受けなければならない。
― 航空法 第132条の2第1項
未登録のドローンを飛行させた場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金です。機体登録の詳しい手順は「ドローン機体登録のやり方|100g以上は義務」をご覧ください。登録の更新については「ドローン機体登録の更新方法|手順・費用・注意点を解説」で解説しています。
飛行許可・承認制度
以下の特定飛行に該当する場合は、あらかじめ国土交通大臣の許可・承認が必要です。
許可が必要な飛行空域(空域の制限)
- 空港等の周辺空域
- 緊急用務空域
- 地表または水面から150m以上の高さの空域
- 人口集中地区(DID地区)の上空
承認が必要な飛行方法(方法の制限)
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 人・物件との距離30m未満での飛行
- 催し場所上空での飛行
- 危険物の輸送
- 物件投下
無人航空機を飛行させる者は、次に掲げる空域においては、国土交通大臣の許可を受けなければ、無人航空機を飛行させてはならない。
― 航空法 第132条の85第1項
飛行許可の申請方法は「ドローン飛行許可の申請方法|DIPS2.0での手順を解説」で解説しています。包括的な許可については「ドローン包括申請とは?個別申請との違いと申請手順」もご覧ください。
国家資格制度(操縦ライセンス)
2022年12月5日から、ドローンの国家資格(無人航空機操縦者技能証明)制度が開始されました。
| 資格 | 飛行できる範囲 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 二等無人航空機操縦士 | カテゴリーII飛行(特定飛行の一部) | レベル3.5飛行、一般的な業務利用 |
| 一等無人航空機操縦士 | カテゴリーIII飛行(レベル4を含む) | 有人地帯での目視外飛行 |
国家資格を持っていれば、一部の飛行について許可・承認手続きが不要になる場合があります。資格の詳細は「ドローン国家資格の種類と取得方法|一等・二等の違い」をご覧ください。
飛行レベルの分類
| レベル | 飛行形態 | 資格要件 |
|---|---|---|
| レベル1 | 目視内の手動操縦 | 特になし(飛行空域・方法による) |
| レベル2 | 目視内の自動飛行 | 特になし(飛行空域・方法による) |
| レベル3 | 無人地帯での目視外飛行 | 飛行許可・承認が必要 |
| レベル3.5 | 無人地帯での目視外飛行(立入管理措置簡略化) | 二等以上の国家資格 |
| レベル4 | 有人地帯での目視外飛行 | 一等資格+第一種機体認証 |
レベル3.5については「ドローンのレベル3.5飛行とは?制度の概要と申請方法」で詳しく解説しています。
2025年12月の審査要領改正
2025年12月に無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領が改正され、飛行許可申請における民間資格(民間の技能認証)の優遇措置が廃止されました。
改正の主なポイント
- これまで民間資格保有者は飛行許可申請時に飛行実績の一部が免除されていたが、この優遇が廃止
- 今後は国家資格(技能証明)の保有が飛行許可取得を円滑にする唯一の公的手段
- 民間資格自体が無効になるわけではないが、行政手続き上のメリットがなくなった
この改正により、業務でドローンを飛ばす事業者は国家資格の取得がより重要になっています。
電波法(総務省)
ドローンは無線通信によって操縦するため、電波法の規制も受けます。
技適マーク(技術基準適合証明)
日本国内でドローンを飛ばすには、使用する無線機器が技適マーク(技術基準適合証明)を取得している必要があります。
技術基準適合証明を受けていない無線設備を使用して無線局を開設した場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
― 電波法 第110条第1号
DJIやAutelなど主要メーカーの国内正規品は技適を取得済みですが、海外から個人輸入した機体や自作機は技適がない場合があります。技適なしの機体を飛ばすと電波法違反になります。
ドローンで使用する主な周波数帯
| 周波数帯 | 用途 | 免許・資格 |
|---|---|---|
| 2.4GHz帯 | 操縦用・映像伝送(一般的なドローン) | 不要(技適取得済みの場合) |
| 5.7GHz帯 | 映像伝送(業務用FPV) | 第三級陸上特殊無線技士以上 |
| 5.8GHz帯 | 映像伝送(アマチュア無線用FPV) | アマチュア無線技士の資格+無線局免許 |
| 920MHz帯 | テレメトリー(遠距離データ通信) | 不要(特定小電力の場合) |
| 169MHz帯 | リモートID(一部の外付け機器) | 不要 |
一般的なドローンは2.4GHz帯を使用しており、技適マークがあれば追加の免許は不要です。ただし、FPVドローンで5.7GHz帯や5.8GHz帯を使用する場合は無線の資格・免許が必要です。
FPVドローンと電波法
FPV(First Person View)ドローンで5.8GHz帯のアナログVTXを使用する場合は、以下が必要です。
- アマチュア無線技士の資格(4級以上)
- 無線局の開局申請と免許取得
- JARD等の保証認定(自作機・改造機の場合)
FPVドローンの詳しい手続きは関連記事をご覧ください。
小型無人機等飛行禁止法(警察庁)
正式名称は「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」です。航空法とは別の法律であり、規制対象も異なります。
規制の概要
以下の重要施設の周辺おおむね300m以内でのドローン飛行が原則禁止されています。
- 国の重要な施設: 国会議事堂、内閣総理大臣官邸、最高裁判所、皇居等
- 対象外国公館等: 外国の大使館・領事館等
- 対象防衛関係施設: 自衛隊の基地・駐屯地等
- 対象空港: 成田空港、羽田空港、中部空港、関西空港、新千歳空港等
- 対象原子力事業所: 原子力発電所等
- 大会会場: 国際的なスポーツ大会等で一時的に指定される場合あり
航空法との違い
| 項目 | 航空法 | 小型無人機等飛行禁止法 |
|---|---|---|
| 所管 | 国土交通省 | 警察庁(管理者は施設管理者) |
| 対象機体 | 100g以上 | 重量制限なし(100g未満も対象) |
| 規制の内容 | 飛行空域・飛行方法の制限 | 特定施設周辺の飛行禁止 |
| 許可の取得先 | 国土交通大臣 | 施設管理者または都道府県公安委員会 |
| 違反時の罰則 | 50万円以下の罰金等 | 1年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
100g未満のトイドローンであっても、重要施設の周辺で飛ばせば小型無人機等飛行禁止法に違反します。航空法の規制対象外だからといって安心してはいけません。
飛行禁止区域の確認方法
警察庁のWebサイトで対象施設の一覧が公開されています。また、飛行禁止区域を地図上で確認できるアプリ(DJI Fly、AirMap等)も活用できます。飛行禁止区域の確認方法は「ドローンの飛行禁止区域一覧|確認方法と許可の取り方」で詳しく解説しています。
民法(プライバシー・肖像権)
ドローンによる空撮は民法上の権利にも関わります。
プライバシー権
ドローンで個人の住宅やプライベートな空間を撮影した場合、プライバシー権の侵害として損害賠償請求を受ける可能性があります。明確な法律の条文はありませんが、判例法上確立された権利です。
肖像権
本人の同意なく人物を撮影・公開した場合は肖像権侵害にあたる可能性があります。ドローンの空撮でも、個人が特定できる形で写り込んだ映像の取り扱いには注意が必要です。
所有権と上空の利用
民法第207条は「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ」と定めています。他人の土地の上空をドローンで飛行させることが直ちに所有権侵害になるかは議論がありますが、低空で飛行する場合は所有者の承諾を得るのが望ましいです。
対策
- 空撮時は住宅の窓や人物を直接撮影しないよう配慮
- 映像を公開する場合は個人が特定できないよう加工
- 他人の敷地上空を飛行する場合は事前に承諾を得る
- 個人情報保護法にも注意(映像から個人を特定できる場合は個人情報に該当)
道路交通法(警察庁)
道路交通法は直接「ドローン」を規制していませんが、以下のケースで関係します。
道路からの離着陸
道路上でドローンを離着陸させる場合、道路使用許可(道路交通法第77条)が必要です。道路は車両と歩行者のための施設であり、ドローンの離着陸は「道路の一般的な使用」とはいえないためです。
道路上空の飛行
ドローンが道路上空を通過する程度の飛行であれば、道路交通法上の許可は原則不要です。ただし、道路上空でホバリングして撮影する場合や、道路上に物件を投下する場合は道路使用許可が必要になる場合があります。
道路使用許可の申請先
管轄の警察署に「道路使用許可申請書」を提出します。手数料は2,500円程度(都道府県により異なる)です。
各自治体の条例
航空法や小型無人機等飛行禁止法とは別に、各自治体が独自にドローンの飛行を規制している場合があります。
よくある条例規制
- 都市公園での飛行禁止: 多くの自治体が都市公園条例でドローンの飛行を禁止。例えば東京都立公園、大阪市内の公園では原則として飛行禁止
- 河川敷での飛行制限: 河川管理者(国土交通省の地方整備局、都道府県)が使用ルールを定めている場合あり
- 海岸での飛行制限: 海岸管理者が飛行を制限している場合あり
- 文化財周辺での飛行制限: 世界遺産や国宝周辺で飛行を制限している自治体あり
条例の確認方法
- 飛行予定地の自治体公式サイトを確認
- 自治体の公園管理課・環境課に問い合わせ
- 不明な場合は飛行前に自治体に確認するのが最も確実
注意点
航空法の飛行許可を取得していても、条例で禁止されている場所では飛行できません。航空法の許可と自治体の条例は別の規制であり、両方を遵守する必要があります。
その他の関連法令
外為法(外国為替及び外国貿易法)
高性能なドローンやその部品は、安全保障貿易管理の観点から輸出規制の対象になる場合があります。海外へドローンを持ち出す際は該当性を確認してください。
個人情報保護法
ドローンで撮影した映像に個人を特定できる情報(顔、車のナンバープレート等)が含まれる場合、個人情報保護法の適用を受けます。映像の保管・利用・第三者提供にあたっては、同法に基づいた適切な取り扱いが必要です。
航空法以外の飛行制限
- 自衛隊の訓練空域・演習場: 防衛省が飛行制限を設けている場合あり
- 米軍施設周辺: 日米地位協定に基づく制限あり
- 災害時の緊急用務空域: 災害発生時に国土交通大臣が指定。指定期間中は一切の飛行が禁止
2026年の注目ポイント
審査要領改正の影響が本格化
2025年12月の審査要領改正で民間資格の優遇が廃止されたことにより、2026年は国家資格の取得者が増加すると予測されています。業務でドローンを飛ばす事業者は、国家資格の取得を早めに検討すべきです。
レベル3.5の普及拡大
2023年12月に導入されたレベル3.5飛行は、2026年に入り物流・インフラ点検の分野で導入事例が増加しています。詳しくは「ドローンのレベル3.5飛行とは?制度の概要と申請方法」をご覧ください。
型式認証・機体認証の動向
レベル4飛行に必要な型式認証を取得する機体が増えつつあります。型式認証の取得が進めば、レベル4(有人地帯での目視外飛行)の実用化も加速する見込みです。
よくある質問
Q. 100g未満のドローンは法律の規制を受けない?
航空法の無人航空機に関する規定は適用されませんが、小型無人機等飛行禁止法は重量に関係なく適用されます。また、各自治体の条例も100g未満の機体に適用される場合があります。「規制なし」ではありません。
Q. 飛行許可を取れば、どこでも飛ばせる?
いいえ。 飛行許可は航空法に基づくものであり、小型無人機等飛行禁止法や自治体の条例による規制は別途遵守する必要があります。飛行許可を持っていても公園や重要施設周辺では飛ばせない場合があります。
Q. ドローンの保険は加入義務がある?
法律上の加入義務はありませんが、国土交通省は賠償責任保険への加入を強く推奨しています。万が一の事故による高額賠償に備えるため、実質的には必須です。保険の選び方は「ドローンの保険は必要?賠償責任保険の選び方」で解説しています。
まとめ
2026年時点でドローンに関わる主要な法律・規制は以下のとおりです。
- 航空法: 機体登録(100g以上義務)、飛行許可・承認、国家資格制度
- 電波法: 技適マークの取得義務、FPVドローンの無線局免許
- 小型無人機等飛行禁止法: 重要施設周辺300m以内の飛行禁止(重量制限なし)
- 民法: プライバシー権・肖像権・所有権への配慮
- 道路交通法: 道路上での離着陸には道路使用許可が必要
- 自治体の条例: 公園・河川敷等での独自の飛行制限
- 2025年12月改正: 民間資格の飛行許可における優遇廃止、国家資格の重要性が向上
ドローンを飛ばす前に、航空法だけでなく関連するすべての法令と条例を確認してください。不明な点がある場合は、専門の行政書士に相談するのも有効な選択肢です。