この記事でわかること
建設・測量・点検・農業・物流など、法人がドローンを業務に導入するケースが増えています。しかし、個人で趣味として飛ばす場合と異なり、法人の導入には機体登録・飛行許可・保険・運航管理体制など、組織として整備すべき項目が多くあります。
この記事では、法人がドローンを導入する際に必要な許可・申請の一覧、運航管理体制の構築方法、保険の選び方、導入の手順を解説します。
法人のドローン導入で必要な手続き一覧
法人がドローンを業務で使用するために必要な手続きの全体像を整理します。
| 手続き | 管轄 | 必須/推奨 | 概要 |
|---|---|---|---|
| 機体登録 | 国土交通省 | 必須 | 100g以上のドローンは登録義務 |
| 飛行許可・承認 | 国土交通省 | 必須(特定飛行の場合) | DID上空・夜間飛行等の特定飛行を行う場合 |
| 賠償責任保険 | 保険会社 | 強く推奨 | 第三者への損害賠償に備える |
| 機体保険 | 保険会社 | 推奨 | 高額な機体の破損・盗難に備える |
| 運航管理体制の構築 | 自社 | 強く推奨 | 操縦者の管理、飛行記録、安全管理規程の整備 |
| 操縦者の教育・訓練 | 自社/外部機関 | 強く推奨 | 操縦技能の確保と安全意識の教育 |
機体登録
法人名義での登録
法人がドローンを所有する場合、法人名義で機体登録を行います。登録はDIPS2.0(ドローン情報基盤システム)からオンラインで申請可能です。
法人の機体登録で必要な情報は以下のとおりです。
- 法人番号(国税庁の法人番号検索で確認可能)
- 法人の名称・所在地・代表者名
- 機体の製造者名・型式・製造番号・重量
- リモートIDの対応状況
法人の機体登録の詳しい手順は「法人のドローン機体登録|必要書類と手続きの流れ」をご覧ください。
登録手数料
機体登録手数料は1機あたり900円〜2,400円です(2026年3月時点)。オンライン申請(マイナンバーカードまたはgBizID利用)の方が書面申請より安くなります。
| 申請方法 | 手数料 |
|---|---|
| オンライン申請(マイナンバーカード) | 900円/機 |
| オンライン申請(gBizIDまたは運転免許証等) | 1,450円/機 |
| 書面申請 | 2,400円/機 |
法人で複数機を登録する場合は、gBizID(法人向けの認証サービス)を利用したオンライン申請が手数料と事務負担の両面で効率的です。
飛行許可・承認
法人としての飛行許可申請
法人がDIPS2.0で飛行許可を申請する場合、法人のアカウントで申請を行います。申請書には法人名・代表者名を記載し、使用する機体と操縦者の情報を登録します。
複数の操縦者が在籍する法人では、1件の申請に複数の操縦者を登録できます。包括申請と組み合わせることで、どの操縦者がどの現場で飛行しても許可の範囲内でカバーされる体制を構築できます。
包括申請の活用
法人が業務でドローンを使用する場合、包括申請で年間の飛行許可を一括取得するのが実務上の標準的な運用です。
包括申請で取得しておくべき承認の例は以下のとおりです。
- DID上空の飛行
- 人・物件から30m未満の飛行
- 夜間飛行
- 目視外飛行
包括申請の詳細は「ドローン包括申請とは?個別申請との違いと申請手順」をご覧ください。
飛行計画の通報
包括申請で許可を取得した場合でも、飛行のたびにDIPS2.0で飛行計画の通報(航空法第132条の88)が必要です。通報を忘れると航空法違反になるため、社内の運用ルールとして飛行前の通報を必須プロセスに組み込むことが重要です。
保険
賠償責任保険
法人の業務利用では、対人1億円以上(可能であれば3億〜5億円)の賠償責任保険への加入を強く推奨します。
法人が検討すべき保険のポイントは以下のとおりです。
- 業務利用が補償対象に含まれているか
- 複数の操縦者が法人全体でカバーされるか
- 機体の台数に制限がないか
- 示談交渉サービスが付帯しているか
- 既存の施設賠償責任保険の特約でカバーできないか
機体保険
業務で使用するドローンが高額な機体(数十万〜数百万円)の場合は、機体保険への加入も検討してください。墜落や盗難による機体の損失を補償します。
ドローン保険の選び方の詳細は「ドローンの保険は必要?賠償責任保険の選び方」をご覧ください。
運航管理体制の構築
法人がドローンを安全に運用するためには、組織としての運航管理体制を整備することが重要です。
安全管理規程の策定
社内でドローンの安全管理規程(運航マニュアル)を策定します。盛り込むべき内容は以下のとおりです。
- 運航管理者の任命と責任範囲
- 操縦者の資格要件と教育・訓練計画
- 飛行前・飛行中・飛行後のチェックリスト
- 気象条件の判断基準(飛行中止の風速基準など)
- 緊急時の対応手順(事故発生時の報告体制、連絡先一覧)
- 機体のメンテナンス計画
- 飛行記録の管理方法
操縦者の教育・訓練
法人内でドローンを操縦する従業員に対し、以下の教育・訓練を実施します。
- 航空法の基礎知識(飛行禁止区域、特定飛行の種類、罰則など)
- 機体の操作訓練(使用する機体での実技練習)
- 緊急時の対応訓練(通信途絶時、バッテリー異常時の操作)
- DIPS2.0の操作方法(飛行計画の通報、飛行日誌の記録)
国家資格(無人航空機操縦士)の取得を従業員に推奨・支援することも有効です。国家資格の詳細は「ドローン国家資格の種類と取得方法|一等・二等の違い」をご覧ください。
飛行記録の管理
航空法により、特定飛行を行った場合は飛行日誌の記録が義務付けられています(航空法第132条の89)。飛行日誌には以下の3種類の情報を記録します。
- 飛行記録: 飛行日時、飛行場所、飛行時間、操縦者名
- 日常点検記録: 飛行前後の機体点検結果
- 点検整備記録: 定期的なメンテナンスの実施記録
法人では複数の操縦者・複数の機体を管理するため、飛行記録のフォーマットを統一し、一元管理できる仕組みを構築してください。
導入の手順
Step 1: 用途と必要な機体を決める
まず、ドローンの利用目的と業務内容を明確にします。
- 測量: 高精度カメラまたはLiDARセンサー搭載機
- 点検: 赤外線カメラ搭載機、構造物への接近飛行が可能な小型機
- 空撮: 高画質カメラ搭載機
- 農薬散布: 散布装置付きの農業用ドローン
- 物資輸送: 大型の輸送用ドローン
用途に応じた機体を選定し、必要な台数を決めます。
Step 2: 機体登録を行う
選定した機体を法人名義で機体登録します。複数機を同時に登録する場合でも、DIPS2.0から1機ずつ申請する必要があります。
Step 3: 操縦者の教育・訓練を実施する
従業員に対して、機体の操作訓練と航空法の教育を実施します。飛行許可申請には操縦者ごとに10時間以上の飛行経験が求められるため、十分な訓練時間を確保してください。
Step 4: 飛行許可を申請する
DIPS2.0で飛行許可・承認の包括申請を行います。
- 法人アカウントでDIPS2.0にログイン
- 機体情報・操縦者情報を登録
- 飛行許可・承認の新規申請を開始
- 業務に必要な特定飛行を全て選択
- 飛行期間(最長1年間)・飛行範囲を設定
- 飛行マニュアルを選択
- 申請内容を確認して提出
飛行許可の全体的な申請手順は「ドローン飛行許可の申請方法|DIPS2.0での手順を解説」をご覧ください。
Step 5: 保険に加入する
賠償責任保険(業務対応、法人向けプラン)に加入します。高額な機体を使用する場合は機体保険への加入も検討してください。
Step 6: 安全管理規程を策定し運用を開始する
安全管理規程を策定し、飛行記録のフォーマットを整備したら、実際の業務運用を開始します。飛行のたびにDIPS2.0で飛行計画の通報を行い、飛行日誌を記録することを社内の標準プロセスとしてください。
費用
法人のドローン導入に関わる許可・登録の費用の目安です(2026年3月時点)。
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 飛行許可・承認申請(DIPS2.0) | 無料 |
| 機体登録手数料 | 900円〜2,400円/機 |
| 賠償責任保険(法人・業務用) | 年額20,000円〜100,000円程度 |
| 行政書士への申請代行 | 3万円〜8万円程度 |
飛行許可申請の手数料は無料です。ドローンの機体購入費、操縦者の研修費、ソフトウェアのライセンス費などは業務内容と規模によって大きく異なります。
代行費用について詳しくは「ドローン飛行許可の申請代行|費用相場と依頼の流れ」をご覧ください。
よくある質問
Q. 法人で複数台のドローンを登録する場合、割引はありますか?
機体登録手数料は1機あたりの定額制で、複数台の割引制度はありません(2026年3月時点)。ただし、gBizIDを利用したオンライン申請であれば1機あたり1,450円で登録できるため、書面申請(2,400円/機)より安く済みます。
Q. 従業員が退職した場合、飛行許可はどうなりますか?
包括申請に登録された操縦者が退職した場合は、DIPS2.0で操縦者の変更届を提出してください。操縦者の削除・追加は飛行許可の有効期間中でも可能です。新たに追加する操縦者は10時間以上の飛行経験が必要です。
Q. 国家資格の取得を従業員に義務付けるべきですか?
国家資格は法律上の義務ではありません。ただし、二等無人航空機操縦士+第二種機体認証の組み合わせにより一部のカテゴリーII飛行で許可申請が不要になるメリットがあるほか、発注者や取引先への信頼性の向上にもつながります。業務の内容と頻度に応じて、主要な操縦者から段階的に取得を進める方法が現実的です。
Q. 行政書士に何を依頼できますか?
行政書士には、機体登録の申請、飛行許可・承認の申請、安全管理規程の作成支援などを依頼できます。特に、初めてドローンを導入する法人で社内に航空法の知識がない場合は、初回の申請を行政書士に依頼して手続きの全体像を把握するのが効率的です。
まとめ
法人がドローンを業務に導入するには、機体登録・飛行許可・保険・運航管理体制の4つを整備する必要があります。
- 機体登録は法人名義で行い、複数機はgBizIDでのオンライン申請が効率的
- 包括申請で業務に必要な特定飛行の許可を一括取得する
- 賠償責任保険は法人・業務対応のプランを選び、複数操縦者をカバーする
- 安全管理規程の策定と飛行日誌の管理を組織として運用する
- 従業員の教育・訓練と国家資格の取得支援を計画的に進める
飛行許可の基本は「ドローン飛行許可の申請方法|DIPS2.0での手順を解説」で確認できます。法人の機体登録は「法人のドローン機体登録|必要書類と手続きの流れ」をご覧ください。