目次
この記事でわかること
ドローンの夜間飛行(日没後から日出前の飛行)には、国土交通大臣の承認が必要です。夜景の空撮、夜間のインフラ点検、災害対応など、夜間にドローンを飛ばす場面は増えていますが、許可なしの夜間飛行は航空法違反です。
この記事では、夜間飛行の定義、許可が必要な理由、申請条件、灯火の設置義務、DIPS2.0での申請手順、包括申請との関係、そして夜間×目視外飛行の二重規制について解説します。
夜間飛行とは
航空法における夜間飛行とは、日没後から日出前までの間にドローンを飛行させることです。
無人航空機を飛行させる者は、次に掲げる方法により飛行させなければならない。(中略)日出から日没までの間において飛行させること。
― 航空法 第132条の86第2項第1号
航空法では、ドローンの飛行は原則として日出から日没までに限定されています。この時間外に飛行させるには、国土交通大臣の承認が必要です。
「日没」「日出」の定義
日没・日出の時刻は場所と日付によって異なります。国立天文台が公表する暦の日の出・日の入りの時刻が基準です。
| 時期 | 東京の日出(目安) | 東京の日没(目安) |
|---|---|---|
| 3月(春分頃) | 5:45頃 | 17:50頃 |
| 6月(夏至頃) | 4:25頃 | 19:00頃 |
| 9月(秋分頃) | 5:30頃 | 17:35頃 |
| 12月(冬至頃) | 6:45頃 | 16:30頃 |
飛行当日・飛行場所の正確な日の出・日の入り時刻を国立天文台のウェブサイトで確認してください。特に冬季は日没が早いため、16時30分以降の飛行が夜間飛行に該当する場合があります。
夜間飛行に該当する具体例
- 日没後の夜景空撮(18時以降の撮影など)
- 日出前の早朝飛行(日の出前のインフラ点検など)
- 冬場の夕方飛行(16時30分以降で日没を過ぎる場合)
- 災害時の夜間捜索(行方不明者の夜間捜索など)
「まだ明るいから大丈夫」は通用しません。あくまで国立天文台の公表する日没時刻が基準です。
許可が必要な理由
夜間飛行では、以下のリスクが昼間と比べて大幅に高まります。
- ドローンの視認困難: 暗闘の中で機体の位置・姿勢を把握しにくい
- 障害物の発見遅れ: 電線・樹木・建物など障害物に気づきにくい
- 第三者への危険: 周囲の人がドローンに気づかず、回避行動が取れない
- 緊急着陸の困難: 適切な着陸場所の確認が難しい
これらのリスクを管理するため、夜間飛行には灯火の設置や安全対策の審査が義務付けられています。
申請の条件
夜間飛行の承認を得るには、以下の条件を満たす必要があります。
操縦者の要件
- 10時間以上の飛行経験があること
- 夜間飛行の訓練を行っていること(飛行日誌で証明)
- 夜間の飛行特性を理解していること(暗所での距離感の喪失等)
無人航空機を夜間に飛行させる場合には、無人航空機の飛行経験が十時間以上であること。
― 無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領 5-3
機体の要件
- 灯火を装備していること(機体の位置・姿勢が確認できるもの)
- バッテリー残量が確認できること
- フェールセーフ機能(バッテリー低下時の自動帰還等)を備えていること
安全対策
- 照明器具を用意し、離着陸場所を照らすこと
- 補助者を配置し、周囲の監視を行うこと(原則)
- 飛行マニュアルを作成すること
- 緊急時の連絡体制を整備すること
灯火の設置義務
夜間飛行における灯火の設置は、航空法の審査要領で具体的に定められています。
灯火の要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 視認距離 | 地上から機体の姿勢・位置を視認できる明るさ |
| 点灯方式 | 飛行中は常時点灯(点滅のみは不可) |
| 設置位置 | 機体の上面または側面 |
| 色 | 特に指定なし(白色・緑色・赤色が一般的) |
DJI製品の灯火対応
多くのDJI製品にはストロボライト(点滅灯)が内蔵されていますが、点滅灯のみでは夜間飛行の灯火要件を満たさない場合があります。審査要領では常時点灯の灯火が求められるため、必要に応じて追加のLEDライトを装着してください。
灯火の種類と費用
| 種類 | 費用の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 機体内蔵LEDライト | 0円(対応機種の場合) | 明るさが十分か確認が必要 |
| 外付けLEDストロボ | 約2,000円〜5,000円 | 軽量、取り付け簡単 |
| 高輝度LEDライト | 約5,000円〜15,000円 | 遠距離からも視認可能 |
夜間飛行の訓練方法
夜間飛行の承認を得るには、夜間飛行の訓練を実施済みであることが求められます。具体的にどのような訓練を行えばよいか解説します。
審査要領が求める訓練内容
国土交通省の審査要領では、夜間飛行の操縦者に対して以下の能力が求められています。
- 夜間において、灯火により機体の姿勢・位置・方向を把握できること
- 夜間の環境下で安定した離着陸ができること
- 夜間の環境下でホバリング・旋回・前後左右の移動が安定してできること
- 計器のみの情報で適切に機体を制御できること
訓練の実施方法
夜間飛行の訓練は、以下のいずれかの方法で実施します。
| 訓練方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| ドローンスクール | 指導者のもとで安全に訓練できる | 費用がかかる |
| 屋内施設での模擬訓練 | 航空法の許可不要で実施可能 | 屋外環境との差がある |
| 訓練目的の個別申請 | 実際の環境で訓練できる | 許可取得に時間がかかる |
実務上は、ドローンスクールでの国家資格取得コースに夜間飛行の訓練が含まれていることが多く、その過程で夜間飛行の訓練を済ませるのが効率的です。
訓練時の注意点
- 昼間のうちに飛行場所の障害物を確認しておく
- 灯火を装備した状態で訓練する
- 最初は低高度・短距離から始め、徐々に範囲を広げる
- 補助者を配置し、安全を確保した状態で実施する
- 訓練実績を飛行日誌に必ず記録する
標準マニュアルの制限と独自マニュアル
夜間飛行で国土交通省の標準飛行マニュアルを使用する場合、いくつかの重要な制限事項があります。
標準マニュアルにおける夜間飛行の制限
| 制限事項 | 内容 |
|---|---|
| 目視外飛行との併用 | 夜間の目視外飛行は実施しない |
| DID上空との併用 | 夜間のDID上空飛行は実施しない |
| 飛行高度 | 地上から150m未満 |
| 風速 | 5m/s以上では飛行しない |
| 視程 | 灯火で機体を視認できない場合は飛行しない |
| 第三者からの距離 | 飛行高度と同じ半径内に第三者がいないこと |
独自マニュアルが必要なケース
以下の飛行を行う場合は、標準マニュアルでは対応できず独自の飛行マニュアルの作成が必要です。
- 夜間のDID上空飛行: 都市部での夜景撮影、夜間のインフラ点検
- 夜間の目視外飛行: 夜間の広域点検、災害時の夜間捜索
- 風速5m/s以上での夜間飛行: 風が強い環境での緊急対応
独自マニュアルでは、標準マニュアルよりも詳細な安全対策を記載する必要があります。行政書士に作成を依頼する場合、追加費用(5万〜10万円程度)がかかることが一般的です。
夜間飛行の実務ケーススタディ
夜間飛行が必要になる代表的なシーンと対応方法をまとめます。
ケース1: 夜景の空撮
不動産プロモーションや観光PR用の夜景撮影は、夜間飛行の代表的な用途です。
- 申請方法: 包括申請(夜間飛行+DID上空は独自マニュアルが必要な場合あり)
- 灯火: 高輝度LEDライトを装備
- 安全対策: 離着陸場所を照明で照らし、補助者を配置
- 撮影のコツ: シャッタースピードを遅くするため、機体の安定性が特に重要
ケース2: 冬場の夕方撮影
冬季は日没が早く、16時30分以降で夜間飛行に該当する場合があります。建設現場の進捗撮影など、夕方の作業で意図せず夜間飛行になるケースが多発します。
- 対策: あらかじめ夜間飛行の承認を取得しておく(包括申請が便利)
- 注意点: 飛行当日の日没時刻を必ず確認する
ケース3: 災害時の夜間捜索
行方不明者の捜索や災害状況の把握など、緊急性の高い夜間飛行が必要になる場合があります。
- 申請方法: 緊急の場合は電話での許可取得も可能(航空局に連絡)
- 使用機体: 赤外線カメラ搭載機が有効
- 安全対策: 関係機関との連携、飛行空域の安全確認
ケース4: 夜間のインフラ点検
送電線や道路の夜間点検では、交通量の少ない夜間に作業を行うケースがあります。
- 申請方法: 個別申請または独自マニュアル付きの包括申請
- 灯火: 点検対象を照らすライトと、機体位置確認用の灯火が必要
- 安全対策: 作業区域の交通規制との連携
DIPS2.0での申請手順
夜間飛行の承認申請は、DIPS2.0からオンラインで行えます。
Step 1: DIPS2.0にログイン
DIPS2.0(https://www.dips-reg.mlit.go.jp/)にアクセスし、アカウントでログインします。DIPS2.0の操作方法は「DIPS2.0の使い方|飛行許可申請の操作手順ガイド」で詳しく解説しています。
Step 2: 「飛行許可・承認の申請」を選択
メニューから「飛行許可・承認の申請」を選び、「新規申請」を押します。
Step 3: 飛行の目的と方法を選択
- 飛行の目的: 空撮、点検、測量など該当するものを選択
- 飛行の方法: 「夜間飛行」にチェックを入れる
- 目視外飛行やDID上空飛行も同時に行う場合は、該当するすべてにチェック
Step 4: 機体情報を入力
使用するドローンの情報を入力します。灯火の装備について記載する箇所があるため、どのような灯火を搭載しているか正確に記入してください。
Step 5: 操縦者情報を入力
操縦者の飛行経験時間(10時間以上)と、夜間飛行の訓練経験を入力します。
Step 6: 安全対策を記載
以下の安全対策を申請書に記載します。
- 灯火の種類・明るさ・設置位置
- 離着陸場所の照明計画
- 補助者の配置計画
- 緊急時の対応手順
- 飛行マニュアルの内容(標準マニュアル使用可)
Step 7: 飛行経路・範囲と飛行日時を指定
地図上で飛行経路または飛行範囲を指定し、飛行する日時(夜間の時間帯を含む)を記載します。
- 個別申請: 具体的な飛行場所と日時を指定
- 包括申請: 日本全国や都道府県単位で範囲を指定し、期間は最長1年
Step 8: 申請内容を確認・提出
入力内容を確認し、「申請」ボタンを押して提出します。審査期間は通常10開庁日程度です。
包括申請との関係
夜間飛行の承認は、包括申請で取得するのが効率的です。
なぜ包括申請がおすすめなのか
- 1年間有効で、期間中は何度でも夜間飛行が可能
- 目視外飛行・DID上空飛行・人物から30m未満の飛行とまとめて申請できる
- 飛行のたびに個別申請する手間が省ける
- 更新もオンラインで簡単に行える
ドローンを業務で使う場合、「夜間飛行+目視外飛行+DID上空+30m未満」の4項目を包括申請するのが標準的なやり方です。包括申請の詳細は「ドローン包括申請とは?個別申請との違いと申請手順」をご覧ください。
包括申請の注意点
- 空港周辺・150m以上の空域での夜間飛行は包括申請の対象外(個別申請が必要)
- 包括申請で取得した承認でも、飛行ごとの安全確認は必須
- 標準マニュアルでは夜間のDID上空飛行・夜間の目視外飛行は実施できない
- 飛行前にDIPS2.0で飛行計画の通報が必要
- 飛行日誌の記録・携行が義務
費用
夜間飛行の承認申請にかかる費用は以下のとおりです。
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| DIPS2.0での申請 | 0円(手数料なし) |
| 灯火の追加購入(必要な場合) | 約2,000円〜15,000円 |
| 行政書士に代行を依頼 | 30,000円〜80,000円(包括申請の場合) |
DIPS2.0での申請は無料です。費用がかかるのは灯火の追加装備と、必要に応じた行政書士への代行依頼です。飛行許可の申請全般については「ドローン飛行許可の申請方法|DIPS2.0での手順を解説」で解説しています。
夜間飛行 × 目視外飛行の二重規制
夜間飛行と目視外飛行を同時に行う場合は、両方の承認が必要です。夜間の目視外飛行は安全リスクが最も高い飛行形態の一つであり、追加の安全対策が求められます。
追加で求められる安全対策
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 灯火の強化 | 目視外飛行でもモニター上で機体位置を把握できる高輝度の灯火 |
| モニタリング体制 | カメラ映像のリアルタイム監視 |
| 補助者の装備 | 照明器具・反射材の着用 |
| 飛行範囲の制限 | 通常の目視外飛行より飛行範囲を限定 |
| 飛行マニュアル | 夜間目視外飛行専用の安全対策を記載 |
包括申請でまとめて取得する
夜間飛行と目視外飛行は包括申請で同時に承認を取得できます。申請時に「夜間飛行」と「目視外飛行」の両方にチェックを入れるだけです。目視外飛行の申請条件については「ドローンの目視外飛行に必要な許可|申請条件と手順」をご覧ください。
よくある質問
Q. 日没直後はまだ明るいが、夜間飛行に該当する?
はい、該当します。 航空法上の「夜間」は国立天文台の公表する日没時刻以降です。日没直後で空が明るくても、時刻が日没を過ぎていれば夜間飛行の承認が必要です。
Q. 冬場は何時から夜間飛行になる?
東京の場合、12月の日没は16時30分頃です。つまり、冬場は16時30分以降の飛行が夜間飛行に該当する可能性があります。飛行場所ごとの正確な日没時刻を確認してください。
Q. 夜間飛行の許可なしで飛ばすとどうなる?
航空法第157条の6により、50万円以下の罰金の対象になります。「知らなかった」「まだ明るかった」は通用しません。
Q. 室内での夜間飛行に許可は必要?
不要です。 航空法が適用されるのは屋外での飛行のみです。完全に屋根と壁で囲まれた屋内での飛行には、飛行許可・承認は不要です。
Q. 灯火は点滅式でもよい?
点滅のみでは不十分な場合があります。審査要領では、機体の位置・姿勢を常時視認できる灯火が求められています。点滅灯と常時点灯の灯火を併用するのが安全です。
Q. 国家資格があれば夜間飛行の許可は不要?
条件つきで不要になるケースがあります。 二等無人航空機操縦士+第二種機体認証を受けた機体の組み合わせであれば、カテゴリーIIBの夜間飛行では許可申請が不要です。ただし、空港周辺や150m以上の空域での夜間飛行には引き続き個別申請が必要です。国家資格の詳細は「ドローン国家資格の種類と取得方法|一等・二等の違い」をご覧ください。
Q. 夜間飛行中にバッテリーが低下したらどうする?
夜間飛行では昼間以上にバッテリー管理が重要です。灯火の点灯による電力消費があるため、昼間より飛行時間が短くなる傾向があります。飛行前にバッテリー残量のアラート設定を昼間より高め(30%程度)に設定し、余裕をもって帰還させてください。また、予備バッテリーを必ず用意しておきましょう。
Q. 照明が十分な場所(ライトアップされた公園など)でも許可は必要?
はい、必要です。 航空法上の「夜間」の定義は日没時刻以降かどうかで判断されます。照明の有無にかかわらず、日没後にドローンを飛行させる場合は夜間飛行の承認が必要です。ただし、完全に屋根と壁で囲まれた屋内は航空法の適用外です。
Q. 日没時刻はどこで確認できる?
国立天文台のウェブサイトで確認できます。「各地のこよみ」ページで、飛行日・飛行場所の正確な日の出・日の入り時刻を調べられます。スマートフォンの天気アプリでも日没時刻を確認できますが、航空法の基準は国立天文台の暦ですので、正確を期す場合は国立天文台の情報を使用してください。
夜間飛行に関連する保険
夜間飛行はリスクが高まるため、十分な保険に加入しておくことが重要です。
ドローン保険の種類
| 保険の種類 | 補償内容 | 夜間飛行との関係 |
|---|---|---|
| 賠償責任保険 | 第三者への損害賠償 | 加入を強く推奨(包括申請でも記入欄あり) |
| 機体保険 | ドローン本体の損害 | 夜間飛行では墜落リスクが高まるため推奨 |
| 動産総合保険 | 搭載カメラ等の損害 | 高額なカメラ搭載時に推奨 |
夜間飛行では視認性の低下による墜落リスクが昼間より高まります。賠償責任保険は少なくとも対人1億円以上の補償額で加入しておくことを推奨します。ドローン保険の詳細は「ドローン保険の種類と選び方|賠償責任保険と機体保険」をご覧ください。
まとめ
ドローンの夜間飛行は、適切な許可と安全対策があれば安全に行えます。
- 夜間飛行は日没後〜日出前の飛行(冬場は16時台から該当)
- 承認申請には10時間以上の飛行経験が必要
- 灯火の常時点灯が義務(点滅のみでは不十分)
- DIPS2.0で無料で申請できる
- 包括申請で目視外飛行やDID上空飛行とまとめて取得するのが効率的
- 夜間×目視外の二重規制に注意
- 標準マニュアルでは夜間のDID上空・夜間の目視外は実施不可(独自マニュアルが必要)
- 夜間飛行はバッテリー消費が増加するため余裕をもった運用を
- 賠償責任保険への加入を強く推奨
- 違反すると50万円以下の罰金
包括申請の手順は「ドローン包括申請とは?個別申請との違いと申請手順」をご覧ください。申請代行を検討している方は「ドローン飛行許可の申請代行|費用相場と依頼の流れ」も参考にしてください。