電波申請ナビ

船舶局の免許申請|開局手順と必要書類

この記事でわかること

船舶に無線設備を設置して通信を行うには、船舶局の免許が必要です。船舶局とは電波法上「船舶に開設する無線局」を指し、海上における遭難・安全通信、港湾との連絡、船舶相互の通信を担います。

この記事では、船舶局の定義と法的根拠免許申請に必要な書類開局から運用開始までの手順、審査のポイント、費用の目安までを実務的に解説します。

船舶局とは

船舶局は、電波法施行規則第4条に定められた無線局の一種で、船舶に設置される無線局を指します。

無線局を開設しようとする者は、総務大臣の免許を受けなければならない。

― 電波法 第4条

船舶局は、海上における人命の安全と密接に関わるため、他の無線局と比べて厳格な基準が設けられています。船舶安全法や海上人命安全条約(SOLAS条約)で搭載が義務づけられている無線設備については、船舶局の免許なく運用することはできません。

船舶局と特定船舶局の違い

電波法では、船舶局のほかに特定船舶局という区分があります。

区分 対象 通信方式 根拠
船舶局 全般(義務船舶局を含む) 各種周波数帯 電波法第4条
特定船舶局 国際VHF等の包括免許対象 主にVHF帯 電波法第27条の29

特定船舶局はレジャーボートや小型漁船向けの簡易な手続きが特徴です。詳細は特定船舶局の開局申請|レジャーボート・漁船向けをご確認ください。

船舶局の免許が必要なケース

以下のような場合、船舶局の免許が必要です。

  • SOLAS条約適用船舶にGMDSS設備を搭載する場合
  • 内航船舶に無線電話や中短波無線設備を搭載する場合
  • 漁船に漁業無線を搭載する場合
  • 船舶レーダーを設置する場合(空中線電力が一定以上のもの)
  • AIS(船舶自動識別装置)のクラスA局を設置する場合

船舶の大きさや航行区域によって搭載義務のある設備が異なるため、船舶安全法施行規則の別表で確認する必要があります。

免許申請の手順

Step 1: 無線設備の選定

まず、船舶の種類・トン数・航行区域に応じて必要な無線設備を選定します。主な判断基準は以下のとおりです。

航行区域 主な必要設備
遠洋区域 GMDSS(A1〜A4海域対応)、EPIRB、SART、双方向VHF
近海区域 GMDSS(A1〜A2海域対応)、EPIRB、レーダー
沿海区域 国際VHF、レーダー(総トン数により)
平水区域 国際VHF(義務の有無は船舶の種類による)

設備選定にあたっては、技術基準適合証明(技適)を受けた機器を使用することが前提となります。

Step 2: 無線従事者の確保

船舶局の運用には、無線従事者の資格を持つ者を配置する必要があります。

無線局には、総務省令で定めるところにより、無線設備の操作を行う者として、無線従事者を置かなければならない。

― 電波法 第39条第1項

船舶局に必要な資格は設備の種類によって異なります。

設備・通信 必要な資格(主なもの)
GMDSS設備全般 第一級・第二級海上無線通信士
中短波無線電話 第一級〜第三級海上無線通信士
国際VHF 第三級海上無線通信士以上
レーダー 第三級海上特殊無線技士以上

資格の詳細は海上無線通信士の資格一覧|種類と取得方法を参照してください。

Step 3: 申請書類の準備

船舶局の免許申請には、以下の書類が必要です。

  1. 無線局免許申請書(総務省の所定様式)
  2. 無線局事項書(周波数、空中線電力、通信の相手方等を記載)
  3. 工事設計書(無線設備の技術的諸元を記載)
  4. 船舶の詳細を示す書類(船舶検査証書の写し等)
  5. 無線従事者の資格証明書の写し
  6. アンテナ配置図
  7. 手数料の納付を証する書類(収入印紙等)

申請書類は、総務省の電波利用ホームページからダウンロードできます。また、電子申請システム(Lite)を使ったオンライン申請も可能です。

Step 4: 総合通信局への提出

申請書類一式を、船舶の主たる停泊港を管轄する総合通信局に提出します。管轄区域については総合通信局を参照してください。

提出方法は以下のとおりです。

  • 窓口提出: 総合通信局の窓口に直接持参
  • 郵送提出: 書留郵便等で郵送
  • 電子申請: 総務省電波利用電子申請・届出システムLiteを利用

Step 5: 審査と予備免許

総合通信局は申請内容を審査し、基準に適合する場合は予備免許を交付します。

総務大臣は、前条の申請書を受理したときは、遅滞なくその申請が第七条第一項各号又は第二項各号に適合しているかどうかを審査しなければならない。

― 電波法 第8条第1項

予備免許が交付されると、工事設計に基づいて無線設備の設置工事を進めることができます。

Step 6: 落成検査

無線設備の設置工事が完了したら、落成検査を受けます。落成検査では以下の項目が確認されます。

  • 無線設備が工事設計書どおりに設置されているか
  • 電波の質(周波数偏差、不要発射等)が基準に適合しているか
  • 空中線(アンテナ)の設置状況
  • 書類の整備状況(無線業務日誌、無線検査簿等)

落成検査に合格すると、本免許が交付され、運用を開始できます。検査の詳細は無線局検査を参照してください。

申請手数料

船舶局の免許申請にかかる手数料は、設備の種類と数量によって異なります。主な目安は以下のとおりです。

手続き 手数料(収入印紙)
免許申請(新規) 3,550円〜34,300円
変更申請 2,550円〜
再免許申請 1,950円〜

手数料は無線設備の数や種類、電子申請の利用の有無によって変動します。電子申請を利用すると手数料が軽減される場合があります。

また、免許取得後は毎年電波利用料の納付が必要です。電波利用料の詳細は船舶・航空無線の電波利用料|料額一覧と納付で解説しています。

免許の有効期間と再免許

船舶局の免許の有効期間は5年です。有効期間満了後も引き続き運用するには、再免許申請が必要です。

免許の有効期間は、免許の日から起算して五年を超えない範囲内において総務省令で定める。

― 電波法 第13条第1項

再免許申請は、有効期間満了の6か月前から1か月前までに行う必要があります。期限を過ぎると新規申請扱いとなり、改めて落成検査を受けなければなりません。

申請時の注意点

船舶検査との連携

船舶局の無線設備は、船舶安全法に基づく船舶検査の対象にもなります。国土交通省(日本海事協会等)の船舶検査と、総務省の無線局検査は別の手続きですが、設備の技術基準が連動しているため、両方の要件を満たす必要があります。

国際条約への対応

国際航海に従事する船舶の場合、SOLAS条約に基づくGMDSS設備の搭載が義務づけられます。この場合、船舶局免許の申請においても国際基準への適合が求められます。詳細はGMDSSの概要と搭載義務|国際海上遭難安全システムで解説しています。

行政書士への依頼

船舶局の免許申請は、技術的な記載事項が多く手続きが煩雑です。行政書士に代行を依頼することで、書類作成から提出、落成検査の立会いまでを一括して任せることができます。代行費用の目安については船舶・航空無線の行政書士代行|依頼するメリットをご覧ください。

まとめ

船舶局の免許申請は、安全な海上通信を確保するための重要な手続きです。要点を整理します。

  • 船舶に無線設備を設置するには船舶局の免許が必要
  • 申請先は船舶の主たる停泊港を管轄する総合通信局
  • 手順は「設備選定 → 従事者確保 → 申請 → 予備免許 → 工事 → 落成検査 → 本免許」
  • 免許の有効期間は5年、再免許申請を忘れずに行う
  • 船舶安全法の船舶検査と両方の要件を満たす必要がある
  • 手続きが煩雑な場合は行政書士への代行依頼も検討する

船舶の種類や航行区域によって必要な設備・手続きは異なります。不明点がある場合は、管轄の総合通信局または行政書士にご相談ください。

無線従事者資格の種類や取得方法の全体像については「無線従事者とは?資格の種類と取得方法を解説」も合わせてご確認ください。

この記事をシェア

このカテゴリの完全ガイドを見る

船舶・航空無線の手続き 完全ガイド