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この記事でわかること
航空機に無線設備を搭載して通信を行うには、航空機局の免許が必要です。航空機局は電波法上「航空機に開設する無線局」を指し、管制塔との交信、航空機間の通信、緊急通信などを行います。
この記事では、航空機局の定義と法的根拠、免許申請の手順と必要書類、航空法との関係、必要な無線従事者資格、費用の目安までを実務的に解説します。
航空機局とは
航空機局は、電波法施行規則第4条に定められた無線局の一種で、航空機に設置される無線局です。
無線局を開設しようとする者は、総務大臣の免許を受けなければならない。
― 電波法 第4条
航空機局は、航空の安全に直結する無線局であるため、厳格な技術基準と運用規律が求められます。
航空機局の役割
航空機局は、以下の通信を行うために設置されます。
- 管制通信: 航空交通管制機関(管制塔、レーダー管制等)との交信
- カンパニー無線: 航空会社の運航管理部門との連絡
- 航空機間通信: 他の航空機との直接通信
- 遭難・緊急通信: 121.5MHz(国際航空遭難周波数)での緊急発信
- 気象情報の受信: ATIS(飛行場情報放送業務)等の受信
航空機局と航空局の違い
航空無線に関連する無線局には、航空機局と航空局があります。
| 無線局の種類 | 設置場所 | 通信の相手方 |
|---|---|---|
| 航空機局 | 航空機 | 航空局、他の航空機局 |
| 航空局 | 地上(空港・管制施設等) | 航空機局 |
航空局の免許については航空局の免許申請|空港・管制用無線の手続きを参照してください。
免許が必要な航空機
以下の航空機に無線設備を搭載する場合、航空機局の免許が必要です。
- 飛行機(固定翼機)
- 回転翼航空機(ヘリコプター)
- 滑空機(グライダー)で無線設備を搭載するもの
- 飛行船
- 超軽量動力機で無線設備を搭載するもの
なお、航空法第60条により、計器飛行方式で飛行する航空機や航空運送事業の用に供する航空機には無線電話の装備が義務づけられています。
航空機には、国土交通省令で定めるところにより、航空機の航行の安全を確保するために必要な無線設備を装備しなければならない。
― 航空法 第60条(趣旨要約)
免許申請の手順
Step 1: 無線設備の選定
航空機に搭載する無線設備を選定します。主な航空用無線設備は以下のとおりです。
| 設備の種類 | 周波数帯 | 用途 |
|---|---|---|
| VHF通信装置 | 118〜137MHz | 管制通信・カンパニー通信 |
| HF通信装置 | 2〜30MHz | 洋上飛行時の長距離通信 |
| ATCトランスポンダ | 1,030/1,090MHz | 二次レーダー応答 |
| ELT(航空機用救命無線機) | 121.5/406MHz | 遭難時の位置通報 |
| 気象レーダー | 9GHz帯 | 気象探知 |
| 電波高度計 | 4.3GHz帯 | 対地高度の測定 |
航空機用無線設備は、航空法に基づく型式承認を受けた機器を使用する必要があります。
Step 2: 無線従事者の確保
航空機局の操作には、航空無線通信士または航空特殊無線技士の資格が必要です。
| 設備・通信 | 必要な資格 |
|---|---|
| VHF通信装置(国内線) | 航空特殊無線技士以上 |
| VHF通信装置(国際線) | 航空無線通信士 |
| HF通信装置 | 航空無線通信士 |
航空無線通信士の資格については航空無線通信士の資格と試験|取得方法を解説を参照してください。
Step 3: 申請書類の準備
航空機局の免許申請には、以下の書類が必要です。
- 無線局免許申請書(総務省所定様式)
- 無線局事項書(周波数、空中線電力、通信の相手方等)
- 工事設計書(無線設備の技術的諸元)
- 航空機の登録証明書の写し
- 耐空証明書の写し
- 無線従事者の資格証明書の写し
- 手数料の納付を証する書類
Step 4: 総合通信局への提出
申請書類一式を、航空機の定置場を管轄する総合通信局に提出します。
提出方法は以下のとおりです。
- 窓口提出: 総合通信局に直接持参
- 郵送: 書留郵便等で郵送
- 電子申請: 総務省電波利用電子申請・届出システムLiteを利用
管轄の総合通信局については総合通信局を参照してください。
Step 5: 審査と予備免許
総合通信局は申請内容を審査し、基準に適合する場合は予備免許を交付します。審査のポイントは以下のとおりです。
- 電波法の技術基準に適合しているか
- 無線従事者の資格が操作する設備に対応しているか
- 航空法上の要件(耐空証明等)を満たしているか
- 他の無線局との混信が生じないか
Step 6: 落成検査と本免許
予備免許交付後、無線設備の設置工事を行い、落成検査を受けます。
落成検査では以下の事項が確認されます。
- 無線設備が工事設計書どおりに設置されているか
- 電波の質が技術基準に適合しているか
- EMI(電磁干渉)対策が適切に施されているか
- 備付書類が整備されているか
落成検査に合格すると本免許が交付され、運用を開始できます。検査の詳細は無線局検査を参照してください。
航空法との関係
航空機局の免許は電波法に基づく手続きですが、航空法上の要件も同時に満たす必要があります。
耐空証明との関係
航空機に無線設備を搭載するには、航空法に基づく耐空証明の要件を満たす必要があります。無線設備の追加や変更は、航空機の重量・重心位置に影響するため、耐空証明の変更手続きが必要になる場合があります。
航空法第60条の無線設備装備義務
航空法第60条では、以下の航空機に無線設備の装備が義務づけられています。
- 計器飛行方式により飛行する航空機
- 航空運送事業の用に供する航空機
- 国土交通省令で定める航空機
これらの航空機は、航空機局の免許なく運用することはできません。
費用の目安
航空機局の免許申請にかかる費用の目安は以下のとおりです。
| 手続き | 手数料 |
|---|---|
| 免許申請(新規) | 3,550円〜34,300円 |
| 変更申請 | 2,550円〜 |
| 再免許申請 | 1,950円〜 |
手数料は無線設備の数や種類によって異なります。また、免許取得後は毎年電波利用料を納付する必要があります。詳細は船舶・航空無線の電波利用料|料額一覧と納付をご確認ください。
免許の有効期間
航空機局の免許の有効期間は5年です。引き続き運用する場合は、有効期間満了前に再免許申請を行います。再免許申請の期限は有効期間満了の6か月前から1か月前までです。
まとめ
航空機局の免許申請は、航空の安全を確保するための重要な手続きです。要点を整理します。
- 航空機に無線設備を搭載するには航空機局の免許が必要
- 申請先は航空機の定置場を管轄する総合通信局
- 手順は「設備選定 → 従事者確保 → 申請 → 予備免許 → 工事 → 落成検査 → 本免許」
- 航空法上の耐空証明との整合性も確認が必要
- 操作には航空無線通信士又は航空特殊無線技士の資格が必要
- 免許の有効期間は5年で再免許申請が必要
航空機局の手続きは、電波法と航空法の両方にまたがる複雑なものです。不明点がある場合は、管轄の総合通信局または行政書士にご相談ください。
なお、近年はドローン(無人航空機)にも航空法に基づく飛行許可が必要です。ドローンの飛行許可・承認の手続きについては「ドローン飛行許可の申請方法|DIPS2.0での手順を解説」をご覧ください。