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人工衛星局の免許申請ガイド|制度の概要と手続きの流れ

この記事でわかること

人工衛星局とは、宇宙空間にある人工衛星に開設される無線局です。地球局とは異なり、衛星事業者が免許を取得するのが原則ですが、近年は日本企業による小型衛星の打ち上げも増加しており、免許制度の理解が重要になっています。

この記事では、人工衛星局の電波法上の位置づけ、免許申請の手続き、必要書類、国際調整の流れを解説します。衛星通信ビジネスに参入を検討している事業者の方にとって、実務的な参考となる内容を目指しています。

人工衛星局の定義と法的根拠

電波法における人工衛星局

電波法では、人工衛星局を次のように定めています。

「人工衛星局」とは、人工衛星に開設する無線局をいう。 ― 電波法施行規則 第4条

人工衛星局は、地球局との通信を中継する役割を担います。通信衛星、放送衛星、測位衛星など、その用途はさまざまですが、電波を発射する以上、すべて電波法の規律の対象です。

免許が必要な根拠

電波法第4条は、無線局の開設には原則として総務大臣の免許が必要であることを定めています。

無線局を開設しようとする者は、総務大臣の免許を受けなければならない。 ― 電波法 第4条

人工衛星局もこの規定の対象であり、日本の衛星事業者が人工衛星局を開設する場合は免許申請が必要です。なお、外国の衛星事業者が運用する衛星を日本国内の地球局から利用する場合は、地球局側の免許を取得する形になります。

人工衛星局の分類

人工衛星局は、軌道の種類や用途に応じて複数の種別に分類されます。

軌道による分類

軌道の種類 高度 周回周期 主な用途
静止軌道(GEO) 約36,000km 約24時間(地球自転と同期) 通信衛星、放送衛星、気象衛星
中軌道(MEO) 約2,000〜36,000km 数時間〜十数時間 測位衛星(GPS等)
低軌道(LEO) 約200〜2,000km 約90分〜2時間 地球観測、衛星コンステレーション

用途による分類

用途 概要 具体例
通信衛星 データ通信・電話の中継 JCSAT、Starlink
放送衛星 テレビ放送の配信 BSAT
測位衛星 位置情報の提供 みちびき(QZSS)
地球観測衛星 地表の撮影・データ収集 ALOS(だいち)

電波法上の免許手続きでは、衛星の用途に応じて技術基準や審査の観点が異なります。通信衛星の場合は、使用する周波数帯や出力のほか、通信の相手方となる地球局との干渉調整が重要なポイントになります。

免許申請の手続き

Step 1: 事前相談

人工衛星局の免許申請は、まず総務省(総合通信基盤局)への事前相談から始まります。衛星の概要、使用周波数、軌道計画などを説明し、申請手続きの進め方について協議します。

人工衛星局の申請は件数が少なく、個別性が高いため、書面提出の前に十分な事前調整を行うことが実務上不可欠です。

Step 2: 国際調整(ITU調整)

人工衛星局の使用する周波数は、国際電気通信連合(ITU)の無線通信規則に基づく国際調整が必要です。

手続き 内容
事前公表(API) 衛星システムの計画をITUに通知
調整手続き 周辺国・既存衛星システムとの干渉調整
通告・登録 調整完了後、ITUの国際周波数登録原簿に記載

国際調整は総務省が日本を代表して行いますが、事業者は技術的なデータを提供する必要があります。この手続きには数年を要する場合があります。

Step 3: 免許申請書類の作成

事前調整と並行して、免許申請に必要な書類を準備します。

書類 内容
無線局免許申請書 申請者情報、無線局の種別
無線局事項書 衛星の軌道要素、通信の相手方
工事設計書 衛星搭載機器の仕様、送信出力、周波数
軌道計画書 打ち上げ計画、軌道投入後の運用計画
干渉調査結果 他の無線局への干渉の有無

Step 4: 審査と予備免許

総務省は、以下の観点から審査を行います。

  • 技術基準適合性: 衛星搭載機器が電波法の技術基準を満たしているか
  • 周波数の割当可能性: 使用する周波数帯が利用可能か
  • 国際調整の状況: ITU調整が適切に進んでいるか
  • 宇宙活動法との整合性: 人工衛星の打ち上げ・管理に関する許可との関係

審査を通過すると、予備免許が交付されます。

Step 5: 衛星打ち上げと本免許

予備免許交付後、衛星の製造・打ち上げを行い、軌道上で機器の動作確認(IOT: In-Orbit Test)を実施します。動作確認の結果が良好であれば、本免許が交付されます。

宇宙活動法との関係

2016年に施行された人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(宇宙活動法)により、人工衛星の打ち上げや管理には内閣総理大臣の許可が別途必要です。

法律 所管 対象
電波法 総務省 人工衛星局としての無線局免許
宇宙活動法 内閣府 人工衛星の打ち上げ・管理の許可

両方の手続きを並行して進めるのが一般的です。電波法の免許と宇宙活動法の許可は、それぞれ独立した制度ですが、審査の過程で相互に情報共有が行われます。

小型衛星・CubeSatの免許

近年、大学や中小企業による小型衛星(CubeSat)の開発が活発化しています。CubeSatであっても電波を発射する場合は免許が必要ですが、以下の点で大型衛星とは異なる配慮があります。

  • 使用周波数: アマチュア衛星業務用の周波数帯を利用するケースがある
  • 出力: 小出力であるため、干渉調整が比較的容易
  • 審査期間: 大型通信衛星に比べて短い場合がある

ただし、国際調整(ITU調整)は同様に必要であり、打ち上げスケジュールとの兼ね合いから、早期に手続きを開始することが求められます。

外国衛星の利用と日本の免許制度

日本国内の地球局から外国事業者が運用する衛星を利用する場合、人工衛星局の免許は日本では不要です。この場合は、地球局側の免許を取得します。

地球局の免許申請では、通信の相手方として外国の人工衛星局を指定する必要があります。具体的な手続きは「衛星通信のライセンス取得|地球局免許の申請ガイド」で解説しています。

また、Starlinkのように外国事業者が日本国内で衛星通信サービスを提供する場合の制度については「衛星コンステレーション時代の電波法」もあわせてご覧ください。

費用の目安

人工衛星局の免許取得にかかる費用は、衛星の規模や用途によって大きく異なります。

費用項目 目安
免許申請手数料(収入印紙) 数万円程度
電波利用料(年額) 衛星の種類・周波数帯により異なる
国際調整関連費用 コンサルティング費用等を含め数百万円〜
行政書士報酬 案件の規模により個別見積もり

電波利用料の詳細は「電波利用料とは|免許人が毎年払う料金の仕組み」をご参照ください。

まとめ

人工衛星局の免許申請は、一般的な地球局の免許と比べて手続きが大規模かつ長期間にわたる点が特徴です。

  • 人工衛星局は電波法に基づく総務大臣の免許が必要
  • 国際調整(ITU調整)に数年を要する場合がある
  • 宇宙活動法の許可も並行して取得する必要がある
  • 小型衛星(CubeSat)でも、電波を発射する場合は免許が必要
  • 外国衛星を日本で利用する場合は、地球局側の免許で対応

人工衛星局の免許申請は専門性が高く、衛星事業者・通信事業者のみが関わる分野ですが、日本企業の宇宙ビジネス参入が増える中で、制度の理解はますます重要になっています。申請手続きにお困りの際は、電波法に精通した行政書士への相談をおすすめします。

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