目次
この記事でわかること
FPVドローンの機体を売却・処分したり、VTXを交換して旧局が不要になったりしたとき、無線局の廃止届を提出する必要があります。届出を忘れると電波利用料の請求が続くため注意が必要です。
この記事では、廃止届が必要なケース、届出方法(電子申請・書面)、届出先、届出期限、届出しないとどうなるかをまとめて解説します。
FPVドローンと電波法の関係
FPVドローンのVTX(映像送信機)は5.8GHz帯のアマチュア無線局として開局しています。無線局を「開設」したときに免許を受けたのと同様に、無線局を「廃止」するときも電波法に基づく届出が義務付けられています。
免許人は、その無線局を廃止するときは、その旨を総務大臣に届け出なければならない。
― 電波法 第22条
廃止届は「届出」であり、許可や承認ではありません。届出を行えば手続きは完了します。
廃止届が必要なケース
以下のケースでは無線局の廃止届が必要です。
ケース1: FPVドローンの機体を売却・譲渡する
FPVドローンを他人に譲る場合、あなたの名義で開局した無線局は廃止しなければなりません。新しい所有者が同じVTXを使う場合でも、その方が自分の名義で新たに開局申請を行う必要があります。
ケース2: 機体を処分・廃棄する
FPVドローンが破損して修理不能になった場合や、不要になって処分する場合も廃止届が必要です。機体を捨てただけでは無線局の免許は消えません。
ケース3: VTXを交換して旧局が不要になった
VTXを別の機種に交換した場合、旧VTXの無線局は廃止届を提出し、新VTXで変更申請または新規の開局申請を行います。VTX交換時の手続きは「FPVドローンの無線局変更申請|VTX交換時の手続き」をご覧ください。
ケース4: アマチュア無線自体をやめる
FPVドローンだけでなくアマチュア無線全体をやめる場合は、全ての無線局について廃止届を提出します。
届出の手順
Step 1: 届出方法を選ぶ
廃止届の届出方法は2つあります。
| 方法 | 手数料 | 処理期間 |
|---|---|---|
| 電子申請(総務省 電子申請・届出システムLite) | 無料 | 数日〜2週間 |
| 書面申請(紙で郵送) | 無料 | 1〜3週間 |
廃止届に手数料はかかりません。電子申請のほうが手軽で処理も早いためおすすめです。
Step 2: 電子申請で届出する場合
- 総務省 電子申請・届出システムLite(https://www.denpa.soumu.go.jp/public2/)にアクセスする
- アカウントでログインする(開局申請時に作成したアカウントを使用)
- 「届出」メニューから「無線局廃止届」を選択する
- 廃止する無線局の免許番号(呼出符号)を入力する
- 廃止の年月日を入力する
- 内容を確認し、「届出」ボタンを押して送信する
Step 3: 書面で届出する場合
- 無線局廃止届の用紙をダウンロードまたは総合通信局で入手する
- 以下の項目を記入する
| 記入項目 | 内容 |
|---|---|
| 免許番号 | 無線局免許状に記載されている番号 |
| 呼出符号 | コールサイン(例: JA1ABC) |
| 無線局の種別 | アマチュア局 |
| 廃止の年月日 | 実際に無線局を廃止した日 |
| 届出人の住所・氏名 | 免許人の情報 |
- 記入済みの廃止届を管轄の総合通信局に郵送する
届出先(総合通信局)
届出先は、免許人の住所を管轄する総合通信局です。
| 管轄区域 | 総合通信局 |
|---|---|
| 北海道 | 北海道総合通信局 |
| 東北6県 | 東北総合通信局 |
| 関東甲信越(東京含む) | 関東総合通信局 |
| 東海4県 | 東海総合通信局 |
| 北陸3県 | 北陸総合通信局 |
| 近畿2府4県 | 近畿総合通信局 |
| 中国5県 | 中国総合通信局 |
| 四国4県 | 四国総合通信局 |
| 九州7県 | 九州総合通信局 |
| 沖縄 | 沖縄総合通信事務所 |
電子申請の場合は自動的に管轄の総合通信局に届出されるため、届出先を意識する必要はありません。
届出期限
無線局の廃止届は、廃止の日から速やかに届出するのが原則です。法律上は「廃止するとき」に届出する義務があります。
免許人は、その無線局を廃止するときは、その旨を総務大臣に届け出なければならない。
― 電波法 第22条
免許状の返納について(2025年10月の制度変更)
従来は廃止届とあわせて紙の無線局免許状の返納が必要でしたが、2025年10月1日の電波法改正(免許状の電子化)により、制度が変更されました。
| 時期 | 免許状の取り扱い |
|---|---|
| 2025年9月30日まで | 廃止届の提出 + 紙の免許状を総合通信局に返納 |
| 2025年10月1日以降 | 廃止届の提出のみ。紙の免許状の返納は不要 |
2025年10月1日以降は、紙の無線局免許状が廃止され電子免許状に移行しています。そのため、廃止届を提出する際に紙の免許状を郵送で返納する手続きは不要になりました。手元に紙の免許状が残っている場合は、廃止後に自分で処分するか、無効であることが分かるように大きくバツ印を書いて保管してください。
届出が遅れた場合のリスク
廃止届の提出が遅れても、行政罰が直ちに科されるわけではありません。ただし、届出が遅れた期間の電波利用料は請求される可能性があります。機体を手放したら速やかに届出を行いましょう。
届出しないとどうなるか
廃止届を提出しないと、以下の問題が発生します。
電波利用料の請求が続く
無線局が免許されている限り、毎年の電波利用料(アマチュア局は年額300円)が請求されます。金額は小さいですが、何年も放置すると累積します。電波利用料の詳細は「電波利用料とは?無線局の維持費用を解説」をご覧ください。
免許の有効期限まで免許が残る
アマチュア局の免許の有効期間は5年間です。廃止届を出さなくても、免許の有効期限が来れば自動的に失効しますが、それまでの間は免許が残り続けます。
新規開局時のトラブル
同じコールサインで別の無線局を開局しようとした場合、旧局の免許が残っていると手続きが複雑になる可能性があります。
延滞金の発生
電波利用料を滞納すると、督促状が届き延滞金が加算されます。電波利用料は国の収入であり、国税滞納処分の例により強制徴収が行われる場合があります。
第103条の2 (略)免許人等は、電波利用料を納めなければならない。
― 電波法 第103条の2第1項
アマチュア局の年額300円は少額ですが、長年放置すると延滞金を含めた請求が届く可能性があります。使わなくなった無線局は早期に廃止届を提出してください。
廃止届を出す際の注意点
- ドローンの機体登録の抹消は別の手続きです。無線局の廃止届(総合通信局)と機体登録の抹消(国土交通省・DIPS2.0)を両方行ってください
- 飛行許可を包括申請で取得している場合、機体を減らしたときの手続きは飛行許可の変更ではなく機体登録側の対応です
- 無線従事者免許証(アマチュア無線の資格)は返納不要です。無線局の廃止届は「局」を閉じるだけで、資格自体は生涯有効です
- 複数のVTXで複数の無線局を開局している場合は、廃止する局ごとに個別に届出してください
廃止届と関連する他の手続きの整理
FPVドローンの機体を手放す際は、無線局の廃止届だけでなく複数の手続きを並行して行う必要があります。以下に全体像をまとめます。
手続きの一覧と届出先
| 手続き | 届出先 | 期限 | 手数料 |
|---|---|---|---|
| 無線局廃止届 | 総合通信局(電子申請または郵送) | 速やかに | 無料 |
| 機体登録の抹消 | DIPS2.0(国土交通省) | 機体の使用をやめたとき | 無料 |
| リモートIDの解除 | リモートID機器の登録解除 | 機体登録の抹消時 | 無料 |
| 飛行許可の機体削除(包括申請の場合) | DIPS2.0 | 必要に応じて | 無料 |
手続きの順序
以下の順序で手続きを進めると効率的です。
- 無線局の廃止届を提出(電子申請が最も手軽)
- DIPS2.0で機体登録を抹消
- 包括申請の機体リストから該当機体を削除(該当する場合)
- リモートID機器の登録を解除(外付けリモートIDの場合)
機体登録の詳細は「ドローン機体登録のやり方|100g以上は義務」、リモートIDについては「リモートIDとは?搭載義務と対応方法」をご覧ください。
機体を譲渡する場合の詳細手続き
FPVドローンを他の人に譲る場合は、無線局の廃止届と合わせて、譲渡先の方にも手続きが必要であることを伝える必要があります。
譲渡元(あなた)がやること
- 無線局の廃止届を提出する
- DIPS2.0で機体登録を抹消する
- 譲渡先にVTXの仕様書・系統図を渡す(譲渡先の開局申請に必要)
- 譲渡先に機体の情報(製造者名、型式、シリアル番号等)を伝える
譲渡先(相手)がやること
- アマチュア無線技士の資格を取得する(未取得の場合)
- JARD保証認定を申請する(自分の名義で)
- 総合通信局に開局申請を行う(自分の名義で)
- DIPS2.0で機体登録を行う(自分の名義で)
- 飛行許可を申請する
無線局の免許は個人に紐づくため、機体を譲渡しても免許は移転できません。譲渡先の方はゼロから開局手続きを行う必要があります。
この際、あなたが使っていたVTXの系統図をそのまま流用できるため、譲渡時に系統図のデータを渡しておくと相手の手続きがスムーズになります。
廃止届の電子申請の操作手順(詳細)
電子申請システム(Lite)での廃止届の操作手順をより詳しく解説します。
事前準備
- 総務省 電子申請・届出システムLiteのアカウント: 開局申請時に作成したアカウントを使用します。アカウントを忘れた場合は、システムのログイン画面からパスワード再設定が可能です
- 無線局の免許番号(呼出符号): 無線局免許状またはメールで通知された情報を確認してください
操作手順
- 電子申請・届出システムLite(https://www.denpa.soumu.go.jp/public2/)にアクセスし、ログインする
- メニューから「届出」を選択する
- 届出の種類から「無線局廃止届」を選択する
- 以下の項目を入力する
| 入力項目 | 入力内容 |
|---|---|
| 免許番号 | 無線局免許状に記載の番号 |
| 呼出符号 | コールサイン(例: JA1ABC) |
| 廃止の年月日 | 届出日以降の日付を入力 |
- 入力内容を確認し、「届出」ボタンを押して送信する
- 届出完了後、受付番号が画面に表示されるので控えておく
注意: 廃止届では、過去の日付(バックデート)を廃止日として指定することは原則としてできません。届出日以降の日付を指定してください。
届出後の確認
届出が正常に受理されると、電子申請システムのマイページで「処理中」から「処理済み」にステータスが変わります。処理完了までは通常数日〜2週間です。
よくある質問
Q. 廃止届を出すと資格もなくなる?
いいえ。廃止届で閉じるのは無線局(VTXの免許)だけです。アマチュア無線技士の資格(無線従事者免許証)は生涯有効で、返納する必要はありません。将来またFPVドローンを始めたくなったら、改めて開局申請を行えばOKです。
Q. 機体を譲った相手がそのまま使える?
使えません。無線局の免許は個人に紐づくものです。あなたが廃止届を出した後、譲渡先の方が自分の名義で保証認定と開局申請を行う必要があります。
Q. 電波利用料を滞納したらどうなる?
電波利用料を滞納すると、督促状が届き、延滞金が加算されます。最終的には強制徴収の対象になる可能性もあります。不要な無線局は速やかに廃止届を提出してください。
Q. VTXを壊してしまった場合も廃止届は必要?
はい、必要です。VTXが物理的に使用不能になっても、免許上は無線局が存続しています。廃止届を提出して免許を閉じてください。
Q. 廃止届を出す前に免許の有効期限が切れたらどうなる?
免許の有効期限(5年間)が満了すると、免許は自動的に失効します。この場合、廃止届を提出する必要はありません。ただし、有効期間中の電波利用料が未納であれば、有効期限が切れた後も未納分の電波利用料は請求されます。
Q. 再免許申請の期限を過ぎてしまった場合と廃止届の関係は?
再免許申請の期限(有効期限の6ヶ月前〜1ヶ月前)を過ぎると、原則として再免許が受けられません。その場合、免許の有効期限をもって免許が失効するため、廃止届は不要です。ただし、再び開局したい場合は新規に開局申請を行う必要があります。再免許については「アマチュア無線の再免許申請|期限と手続き方法」をご覧ください。
Q. 廃止届と変更申請の違いは?
廃止届は無線局そのものを閉じる手続きです。VTXを別の機種に交換する場合は、旧VTXの無線局を廃止して新VTXで新規開局するか、変更申請で対応するかの2択です。VTXが1台だけで交換する場合は変更申請のほうが効率的です。変更申請の詳細は「FPVドローンの無線局変更申請|VTX交換時の手続き」をご覧ください。
Q. 亡くなった家族のアマチュア無線局の廃止届はどうすればいい?
免許人が亡くなった場合は、ご家族が代わりに廃止届を提出できます。届出書には免許人の氏名と、届出者がご家族であることを記載し、管轄の総合通信局に提出してください。電子申請が難しい場合は、書面(郵送)での届出が便利です。事前に管轄の総合通信局に電話で相談すると、必要な書類や記載方法について案内を受けられます。
廃止届を出し忘れていた場合の対処法
過去にFPVドローンを処分したのに廃止届を出し忘れていた場合の対処法をまとめます。
確認すべきこと
- 免許の有効期間が残っているか確認する: 免許状に記載の有効期限を確認してください。有効期限が過ぎていれば、免許は自動的に失効しているため廃止届は不要です
- 電波利用料の未納がないか確認する: 総合通信局に問い合わせるか、過去に届いた納付書を確認してください
- 免許番号・コールサインを確認する: 廃止届の提出に必要な情報です
対処の手順
- 管轄の総合通信局に電話で相談する(免許状の情報が分からない場合は、氏名・住所で照会してもらえます)
- 免許がまだ有効であれば、電子申請または書面で廃止届を提出する
- 未納の電波利用料がある場合は納付する
総合通信局は廃止届の出し忘れについても丁寧に対応してくれます。恥ずかしがらずに早めに連絡することが大切です。管轄の総合通信局の連絡先は「総合通信局とは?管轄区域と問い合わせ先」で確認できます。
まとめ
FPVドローンの無線局廃止届は、機体を手放すときに忘れてはいけない手続きです。
- 機体の売却・処分、VTX交換時に廃止届が必要
- 届出は電子申請で無料、処理期間は数日〜2週間
- 届出しないと電波利用料の請求が続き、延滞金が加算される可能性
- 2025年10月以降は紙の免許状の返納が不要に(電子化に伴い)
- 無線従事者免許証(資格)は返納不要で生涯有効
- 機体を譲渡する場合は、譲渡先にVTXの系統図や仕様書を渡すと親切
- 廃止届と合わせて機体登録の抹消も忘れずに
FPVドローンの始め方全体については「FPVドローンの始め方|免許・機体・申請の全手順まとめ」をご覧ください。開局申請の手順は「FPVドローン5.8GHz帯の開局申請|手順と必要書類」で、無線局の廃止届の一般的な情報は「アマチュア無線局の廃止届|手続きの流れ」で解説しています。