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この記事でわかること
ロングレンジFPVは、通常のFPVドローンよりも長い距離を飛行させる運用方法です。広大な景色を撮影したり、広範囲を探索したりする楽しみ方がありますが、電波法と航空法の両面で注意すべき点が多くあります。この記事では、ロングレンジFPVに関わる法的な制約と必要な手続きを解説します。
ロングレンジFPVとは
通常のFPVとの違い
一般的なFPVドローンの映像伝送距離は数百m〜1km程度ですが、ロングレンジFPVでは数km以上の距離で映像伝送を行います。
| 項目 | 通常のFPV | ロングレンジFPV |
|---|---|---|
| 飛行距離 | 数百m〜1km | 数km〜10km以上 |
| VTXの出力 | 25mW〜200mW | 400mW〜800mW以上 |
| アンテナ | 無指向性が主流 | 指向性アンテナを併用 |
| 操縦伝送 | 2.4GHz帯が主流 | 900MHz帯等の低周波帯を使用することも |
| バッテリー | 4〜6分程度 | 15〜30分以上 |
ロングレンジFPVに関わる2つの法律
ロングレンジFPVは、以下の2つの法律の規制を受けます。
- 電波法: VTXの出力・周波数・免許に関する規制
- 航空法: 目視外飛行・飛行エリアに関する規制
どちらの法律にも適合していなければ、合法的な運用はできません。
電波法上の注意点
VTXの出力規制
ロングレンジFPVでは、映像伝送距離を伸ばすためにVTXの出力を上げたいというニーズがあります。しかし、電波法に基づく無線局免許で許可された出力を超えて運用することはできません。
注意すべきポイント:
- 開局申請で申請した空中線電力の範囲内で運用する
- 出力を変更する場合は変更申請が必要
- VTXの出力設定を免許の範囲内に正しく設定する
周波数帯と免許の種類
ロングレンジFPVで使用される主な周波数帯と、必要な手続きは以下の通りです。
| 周波数帯 | 用途 | 免許の要否 |
|---|---|---|
| 5.8GHz帯 | 映像伝送(VTX) | アマチュア無線免許 + 保証認定 + 開局申請が必要 |
| 2.4GHz帯 | 操縦信号 | 技適認証済み製品なら免許不要 |
| 900MHz帯 | 操縦信号(一部の海外製品) | 日本では使用できない周波数帯がある |
900MHz帯の使用に関する注意
海外では900MHz帯を操縦リンクに使用するロングレンジシステム(ExpressLRS 900MHz等)が普及していますが、日本では900MHz帯の利用には制限があります。技適を取得した製品であっても、使用可能な周波数帯と出力を必ず確認してください。
技適の確認方法は「ドローンの技適マーク確認方法」で解説しています。
海外製品の取り扱い
ロングレンジFPVの機材は海外製が多く、日本の技適を取得していない製品が数多くあります。
- 技適なしのVTXは保証認定が必須
- 技適なしの操縦送信機は日本では使用不可(保証認定の対象外のため)
- 海外で販売されている「ロングレンジ対応」を謳う製品が、日本の法令に適合するとは限らない
海外製FPV機器の注意点は「海外製FPVドローンの日本での使用」をご覧ください。
航空法上の注意点
目視外飛行(BVLOS)の許可
ロングレンジFPVでは、ドローンが操縦者の目視の範囲外に飛行します。航空法では、目視外飛行は原則として許可が必要です。
無人航空機を飛行させる者は、(中略)当該無人航空機及びその周囲の状況を目視により常時監視して飛行させなければならない。
― 航空法 第132条の86第2項第6号
目視外飛行の許可を取得する方法
目視外飛行の許可を取得するには、DIPS2.0(ドローン情報基盤システム)から申請します。
許可の要件(主なもの):
- 操縦者の飛行経験(目視内飛行で一定の実績)
- 機体の安全対策(フェイルセーフ機能、GPS搭載等)
- 補助者の配置または第三者の立入り管理
- 飛行経路の安全確認
カテゴリーIII飛行との関係
第三者の上空を目視外で飛行する場合(レベル4飛行に相当)は、さらに厳しい要件が求められます。
- 一等無人航空機操縦士の資格
- 第一種機体認証を受けた機体
- 運航管理体制の整備
ロングレンジFPVの機体は自作や海外製が多く、第一種機体認証を取得していないのが一般的です。そのため、第三者の上空を飛行するロングレンジFPVは事実上困難です。
第三者上空飛行の要件は「第三者上空のドローン飛行」で解説しています。
高度150m以上の飛行
ロングレンジFPVで高高度まで上昇する場合、地表から150m以上の飛行には別途許可が必要です。
高高度飛行の許可については「150m以上のドローン飛行許可」をご覧ください。
飛行禁止空域
以下の空域では、許可なくドローンを飛行させることはできません。
- 空港等の周辺
- 人口集中地区(DID)の上空
- 地表から150m以上の空域
- 緊急用務空域(災害対応等で指定された場合)
ロングレンジFPVは広範囲を飛行するため、飛行経路が飛行禁止空域を横切らないかを事前に確認する必要があります。
機体登録とリモートID
機体登録の義務
100g以上のドローンは機体登録が義務付けられています。ロングレンジFPVの機体も100g以上のものがほとんどのため、機体登録が必要です。
リモートIDの搭載
機体登録済みのドローンにはリモートID機能の搭載が求められます。外付けのリモートID装置を取り付けることで対応できます。
ロングレンジFPVのリスク
電波のロスト
長距離飛行では、映像伝送や操縦信号が途切れるリスクが高くなります。
対策:
- フェイルセーフの設定: 信号が途切れた場合に自動帰還する設定を必ず行う
- GPS搭載: 自動帰還にはGPSが必須
- バッテリー残量の管理: 帰還に十分なバッテリーを確保する
- 事前の飛行経路確認: 障害物や電波遮蔽物がないか確認する
回収困難
長距離で墜落した場合、機体の回収が困難になります。
- GPSトラッカーを搭載して墜落位置を特定できるようにする
- 人家や道路上に墜落する可能性がある経路を避ける
- 回収が困難な山林上空等での飛行は慎重に判断する
アマチュア無線としての制限
ロングレンジFPVをアマチュア無線として運用する場合、以下の制限があります。
- 業務目的の使用は不可: 商業撮影等にはアマチュア無線は使えない
- 通信の相手方: アマチュア業務として運用する範囲に限られる
- 秘話機能の使用制限: アマチュア無線では暗号化通信に制限がある
業務利用の場合の選択肢は「FPVドローンを業務利用する場合の無線局免許」で解説しています。
まとめ
ロングレンジFPVは、通常のFPV以上に電波法と航空法の両方の規制を理解する必要があります。特に、VTXの出力は免許の範囲内で使用すること、目視外飛行の許可を取得すること、海外製品の技適を確認することが重要です。法令を遵守した上で、安全にロングレンジFPVを楽しんでください。