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EPIRB(非常用位置指示無線標識)の登録と管理

この記事でわかること

EPIRB(Emergency Position Indicating Radio Beacon)は、船舶が遭難した際に自動的に遭難信号と位置情報を衛星に送信する装置です。海上での人命救助において極めて重要な役割を果たすGMDSS設備の一つです。

この記事では、EPIRBの仕組みと種類搭載義務の対象船舶登録手続き電池交換と定期点検、廃棄時の手続きを解説します。

EPIRBとは

EPIRBは、Non-Floating(非浮揚型)またはFloat-Free(自動離脱型)の遭難信号発信装置です。船舶が沈没した場合に自動的に浮上し、406MHz帯の電波で遭難信号を人工衛星に送信します。

EPIRBの動作原理

  1. 船舶が沈没または転覆すると、水圧式離脱装置(ハイドロスタティックリリース)によりEPIRBが自動的に離脱・浮上する
  2. EPIRBが海面に浮上すると、自動的に起動する
  3. 406MHz帯の遭難信号をコスパス・サーサット衛星に送信する
  4. 同時に121.5MHz帯のホーミング信号を発射する(捜索救助機関が位置を特定するため)
  5. GPS内蔵型の場合、位置情報が遭難信号に含まれる

コスパス・サーサットシステム

EPIRBの遭難信号は、コスパス・サーサット(COSPAS-SARSAT)と呼ばれる国際的な衛星捜索救助システムで受信・処理されます。

構成要素 役割
EPIRB(船舶に搭載) 406MHz遭難信号を発信
コスパス・サーサット衛星 遭難信号を受信・中継
地上局(LUT) 衛星からの信号を受信・解析
任務管理センター(MCC) 遭難情報を救助調整センターに送信
救助調整センター(RCC) 捜索救助活動を指揮

コスパス・サーサットシステムにより、EPIRBの遭難信号は世界中どこの海域からでも救助機関に届けられます。GPS内蔵型のEPIRBでは、数分以内に位置情報が特定されます。

EPIRBの種類

EPIRBには主に以下の種類があります。

種類 特徴 用途
406MHz EPIRB(GPS内蔵型) GPS位置情報付きで送信。現在の主流 SOLAS船、義務船舶
406MHz EPIRB(GPS非内蔵型) 衛星によるドップラー測位で位置特定 旧型(新規搭載は減少)
PLB(携帯用位置指示無線標識) 個人携帯用の小型タイプ レジャー用(船舶の義務搭載には不可)

SOLAS条約で義務づけられているのは406MHz EPIRB(GPS内蔵型)です。

搭載義務

SOLAS条約による義務

SOLAS条約第IV章により、以下の船舶にEPIRBの搭載が義務づけられています。

  • 国際航海に従事する旅客船(全て)
  • 国際航海に従事する総トン数300トン以上の貨物船

国内法による義務

日本国内では、船舶安全法および船舶設備規程により、SOLAS条約適用船舶以外にも一定の船舶にEPIRBの搭載が義務づけられています。

船舶には、遭難時において自動的に遭難信号を送信する装置を備えなければならない。

― 船舶設備規程(趣旨要約)

GMDSSの搭載義務全般についてはGMDSSの概要と搭載義務|国際海上遭難安全システムを参照してください。

EPIRBの登録手続き

EPIRBは、搭載する前にコスパス・サーサットシステムへの登録が必要です。登録を行わないと、遭難信号を受信しても船舶の特定ができず、迅速な救助に支障をきたします。

Step 1: EPIRBの購入

技術基準適合証明を受けたEPIRBを購入します。購入時に確認すべき点は以下のとおりです。

  • 406MHz帯に対応していること
  • GPS内蔵型であること(推奨)
  • 自動離脱装置(ハイドロスタティックリリース)が付属していること
  • 技適マークが付いていること

Step 2: 登録情報の届出

EPIRBの登録は、総務省(総合通信局)に対して行います。登録に必要な情報は以下のとおりです。

  • EPIRBのID番号(15桁のヘキサデシマルID)
  • 船舶の情報(船名、コールサイン、MMSI番号、船籍港、船舶の種類・トン数)
  • 船舶所有者の情報(氏名・名称、住所、連絡先)
  • 緊急連絡先(24時間連絡可能な電話番号)

Step 3: 船舶局の免許との連携

EPIRBは船舶局の無線設備の一部として船舶局の免許に含めて申請します。すでに船舶局の免許を持っている場合は、変更申請でEPIRBを追加します。

船舶局の免許申請については船舶局の免許申請|開局手順と必要書類を参照してください。

Step 4: 登録完了の確認

登録が完了すると、EPIRBのID番号がコスパス・サーサットのデータベースに登録されます。遭難信号が発信された場合、このデータベースから船舶の情報と緊急連絡先が即座に特定されます。

EPIRBの管理と保守

EPIRBは遭難時に確実に動作しなければならないため、定期的な管理と保守が不可欠です。

電池の管理

EPIRBの電池には有効期限があります。有効期限を過ぎた電池では、必要な動作時間(48時間以上)を確保できない可能性があります。

管理項目 内容
電池の有効期限 製造から5年程度(メーカーにより異なる)
交換時期 有効期限の前月までに交換
交換の方法 メーカー又は認定サービスステーションで実施

電池交換は自分で行うことはできません。メーカーまたは認定サービスステーションに依頼する必要があります。

定期点検

EPIRBの定期点検は、以下のスケジュールで実施します。

点検の種類 頻度 内容
自己テスト 毎月 EPIRBのテストボタンで動作確認
外観検査 毎月 筐体の損傷、防水パッキンの劣化、ストロボライトの確認
ハイドロスタティックリリースの確認 毎年 有効期限の確認、交換
年次検査 毎年 認定サービスステーションでの総合点検

ハイドロスタティックリリースの管理

自動離脱装置(ハイドロスタティックリリース)にも有効期限があります。通常2年で交換が必要です。有効期限を過ぎると、水圧による自動離脱が正常に動作しない可能性があります。

登録情報の変更

以下のような変更が生じた場合は、速やかに登録情報を更新する必要があります。

  • 船舶の売却・名義変更
  • 船名の変更
  • 緊急連絡先の変更
  • 船舶の廃船
  • EPIRBの交換

登録情報が古いままだと、遭難時に正しい連絡先に通報できず、救助の遅延につながるおそれがあります。

EPIRBの廃棄

EPIRBを廃棄する場合は、以下の手続きが必要です。

  1. コスパス・サーサットデータベースからの登録削除: 総合通信局に届出
  2. 船舶局免許の変更申請(EPIRBを設備から除外)
  3. EPIRBの適切な処理: 電池を含む適切な廃棄処理

登録を削除せずにEPIRBを廃棄すると、誤発報の原因となります。廃棄前に必ず登録削除の手続きを行ってください。

誤発報への注意

EPIRBの誤発報(意図しない遭難信号の発信)は重大な問題です。誤発報が発生すると、不必要な捜索救助活動が行われ、他の遭難事案への対応に支障をきたす場合があります。

誤発報を防ぐために

  • EPIRBをむやみに触らない
  • 整備作業時は注意して取り扱う
  • テスト時は所定の手順に従う(テストモードを使用)
  • EPIRBの設置場所を乗組員に周知する

万が一誤発報した場合は、直ちに最寄りの海上保安庁に連絡し、誤発報であることを通報してください。

費用の目安

項目 費用の目安
EPIRB本体(406MHz GPS内蔵型) 150,000〜350,000円
ハイドロスタティックリリース 10,000〜30,000円
電池交換 30,000〜50,000円
年次点検 10,000〜20,000円
登録手数料 無料(船舶局免許手続きに含む)

まとめ

EPIRBは、海上遭難時の人命救助に直結する重要な安全装備です。要点を整理します。

  • EPIRBは406MHz帯で遭難信号と位置情報を衛星に送信する装置
  • コスパス・サーサットシステムを通じて世界中で遭難信号を受信可能
  • SOLAS条約により国際航海船舶に搭載が義務づけられている
  • 搭載前にコスパス・サーサットデータベースへの登録が必須
  • 電池とハイドロスタティックリリースの有効期限を厳格に管理する
  • 登録情報の変更があれば速やかに届出する
  • 廃棄時は必ず登録削除の手続きを行う
  • 誤発報を防止するため、適切な取扱いと管理を徹底する

EPIRBの登録・管理手続きに不安がある場合は、管轄の総合通信局または行政書士にご相談ください。

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