目次
この記事でわかること
衛星通信は、離島・海上・航空機内など地上回線が届かない場所でも通信を可能にする重要なインフラです。衛星通信システムを構成する地球局を開設するには、電波法に基づく免許が必要です。
この記事では、衛星通信のライセンス体系(人工衛星局・地球局の分類)、地球局免許の申請手順、必要な無線従事者資格、費用と審査期間を解説します。
衛星通信のライセンス体系
衛星通信システムは、宇宙にある人工衛星局と、地上にある地球局で構成されます。それぞれに免許が必要ですが、地球局の免許が実際の申請で多いケースです。
人工衛星局と地球局
| 無線局の種類 | 設置場所 | 免許の主体 |
|---|---|---|
| 人工衛星局 | 人工衛星上(宇宙空間) | 衛星事業者 |
| 地球局 | 地上(固定・移動) | 衛星通信サービスの利用者・事業者 |
人工衛星局の免許は衛星事業者が取得します。一般の企業や個人が申請するのは地球局の免許です。
地球局の分類
地球局はその設置形態や用途に応じて分類されます。
| 地球局の種類 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 固定地球局 | 特定の場所に固定して設置 | VSAT局、放送素材伝送局 |
| 移動地球局 | 移動しながら通信を行う | 船舶地球局、航空機地球局、車載局 |
| 携帯移動地球局 | 持ち運び可能な小型局 | 衛星携帯電話(イリジウム、サーラ等) |
| 報告地球局 | 測位・データ収集用 | 気象データ収集、海洋ブイ |
地球局免許の申請手順
申請の流れ
- 利用計画の策定: 通信目的、使用する衛星サービス、設置場所の検討
- 衛星事業者との契約: 利用する衛星サービスの契約・利用同意の取得
- 申請書類の作成: 無線局免許申請書・工事設計書等の作成
- 総合通信局へ申請: 管轄の総合通信局に書類を提出
- 審査: 技術基準適合の確認、干渉調査
- 予備免許: 審査通過後、予備免許の交付
- 落成検査: 設備設置後の検査(一部省略される場合あり)
- 本免許: 検査合格後、本免許の交付
必要書類
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 無線局免許申請書 | 申請者情報、無線局の種別 |
| 無線局事項書 | 運用条件、通信の相手方(人工衛星局の名称) |
| 工事設計書 | アンテナ仕様、送信出力、周波数等の技術的条件 |
| 衛星事業者の同意書 | 衛星の利用に関する同意 |
| 無線従事者の選任届 | 無線従事者の資格証明 |
| 設置場所の図面 | アンテナ設置場所の詳細図 |
必要な無線従事者資格
地球局の操作には、局の種別や出力に応じた無線従事者資格が必要です。
| 地球局の種類 | 必要な資格 |
|---|---|
| 固定地球局(大型) | 第一級陸上特殊無線技士以上 |
| 固定地球局(VSAT等) | 第一級または第二級陸上特殊無線技士 |
| 船舶地球局 | 第一級海上特殊無線技士以上 |
| 航空機地球局 | 航空無線通信士 |
| 携帯移動地球局(衛星携帯電話等) | 資格不要(技適取得済みの場合) |
無線従事者資格の詳細は「無線従事者の種類と資格一覧|取得方法を解説」をご覧ください。
費用と審査期間
費用の目安
| 費用項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 免許申請手数料 | 約6,550円〜(収入印紙) |
| 落成検査手数料 | 約17,000円〜 |
| 電波利用料(年額) | 局の種別・出力等による |
| 設備費用 | 数十万〜数千万円(局の規模による) |
| 回線利用料(月額) | 衛星サービスにより異なる |
審査期間の目安
| 手続き | 期間の目安 |
|---|---|
| 書類審査(予備免許まで) | 約1〜3か月 |
| 落成検査(予備免許〜本免許) | 約1〜2か月 |
| 合計 | 約2〜5か月 |
衛星事業者との調整状況や干渉調査の結果によって、期間が変動する場合があります。
包括免許と個別免許
衛星通信端末の免許には、包括免許と個別免許の2つの方式があります。
| 方式 | 内容 | 対象 |
|---|---|---|
| 個別免許 | 1局ごとに免許を取得 | VSAT局、大型地球局等 |
| 包括免許 | 同一の技術基準の多数の局をまとめて免許 | 衛星携帯電話端末、Starlink端末等 |
Starlinkや衛星携帯電話(イリジウム等)の端末は、サービス提供事業者が包括免許を取得しているため、利用者が個別に免許を取得する必要はありません。
よくある質問
Q. 衛星携帯電話を使うのに免許は必要?
利用者が個別に免許を取得する必要はありません。衛星携帯電話サービスの提供事業者が包括免許を取得しており、利用者は端末を契約するだけで利用できます。ただし、端末が日本の技適を取得していることが前提です。
Q. Starlinkを使うのに免許は必要?
利用者が個別に免許を取得する必要はありません。Starlinkの端末は日本の技適を取得しており、サービス提供事業者が包括免許を取得しています。VSATとの違いについては「VSAT(衛星通信)の免許申請|手続きの流れと費用」をご覧ください。
Q. 地球局の免許の有効期間は?
5年間です。有効期間満了前に再免許の申請が必要です。
Q. 海外で取得した衛星通信の免許は日本で使える?
使えません。日本国内で地球局を開設するには、日本の電波法に基づく免許が必要です。海外の免許は日本では無効です。
まとめ
衛星通信のライセンス取得のポイントは以下のとおりです。
- ライセンス体系: 人工衛星局(衛星事業者)と地球局(利用者)に分かれる
- 地球局の種類: 固定地球局、移動地球局、携帯移動地球局など
- 申請先: 管轄の総合通信局
- 審査期間: 約2〜5か月
- 包括免許: Starlinkや衛星携帯電話は事業者が包括免許を取得済み
- 必要資格: 局の種別に応じた無線従事者資格が必要
VSAT局の申請については「VSAT(衛星通信)の免許申請|手続きの流れと費用」、衛星通信とドローンの関係は「衛星通信でドローン遠隔操縦が可能に|総務省の規制緩和」をご覧ください。無線局免許の基本は「無線局免許の申請方法|種類と手続きの流れ」をご覧ください。