この記事でわかること
ドローンによるインフラ点検は、橋梁・トンネル・建築物の外壁・太陽光パネル・送電線など、人が近づきにくい構造物の状態確認に広く使われています。従来の足場やロープアクセスによる点検と比較して、安全性の向上とコスト削減が期待できる手法です。
この記事では、ドローンでインフラ点検を行うために必要な飛行許可・承認、目視外飛行との関係、申請手順、費用の目安を解説します。
ドローンによるインフラ点検の概要
主な点検対象
| 点検対象 | 点検内容 | 活用されるセンサー |
|---|---|---|
| 橋梁 | 床版・桁・橋脚のひび割れ、腐食、変形 | 高解像度カメラ、赤外線カメラ |
| 建築物の外壁 | タイルの浮き、ひび割れ、劣化 | 赤外線カメラ、可視光カメラ |
| 太陽光パネル | ホットスポット、パネルの破損、汚れ | 赤外線カメラ |
| 送電線・鉄塔 | 碍子の破損、電線の損傷、鳥害 | 高解像度カメラ、LiDAR |
| ダム・河川護岸 | コンクリートのひび割れ、漏水、変形 | 高解像度カメラ |
| 屋根 | 瓦のずれ、雨漏り箇所の特定 | 可視光カメラ、赤外線カメラ |
インフラ点検にドローンを使うメリット
- 高所作業のリスクを低減できる(足場の設置や仮設ゴンドラが不要)
- 短時間で広範囲の点検が可能
- 画像データとして記録が残り、経年変化の比較が容易
- 足場の設置費用が不要なためコスト削減につながる場合がある
インフラ点検に必要な許可・申請
飛行許可・承認(航空法)
インフラ点検で該当する可能性のある特定飛行は以下のとおりです。
| 特定飛行の種類 | 該当する場面 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 人・物件から30m未満 | 構造物に接近して撮影する場合 | 航空法 第132条の86第2項第3号 |
| 目視外飛行 | 橋梁の裏面など操縦者から見えない位置を飛行する場合 | 航空法 第132条の86第2項第2号 |
| 人口集中地区(DID)上空 | 都市部のビルや橋梁を点検する場合 | 航空法 第132条の85第1項第2号 |
| 夜間飛行 | 赤外線カメラでの撮影を日没後に行う場合 | 航空法 第132条の86第2項第1号 |
インフラ点検では構造物への接近が不可欠なため、「人・物件から30m未満」の承認はほぼ必ず該当します。また、橋梁の床版裏面や建物の裏側など操縦者から機体が見えない位置を飛行する場合は「目視外飛行」の承認も必要です。
機体登録(航空法)
100g以上のドローンは機体登録が義務です。点検用ドローンは100gを超える機体がほとんどのため、必ず機体登録を済ませてください。
機体登録の手順は「ドローン機体登録のやり方|100g以上は義務」をご覧ください。
構造物の管理者への許可・調整
航空法の飛行許可とは別に、点検対象の構造物を管理する者との事前調整が必要です。
- 国道・県道の橋梁: 国土交通省の地方整備局または都道府県の道路管理課
- 鉄道関連施設: 鉄道事業者
- 送電線・鉄塔: 電力会社
- 民間建築物: 建物の所有者・管理組合
管理者からの許可なくドローンを飛行させることは、航空法上は問題がなくても不法侵入やトラブルの原因となります。
道路使用許可(道路上空での飛行)
橋梁点検などで道路の上空を飛行する場合、または道路上に操縦者や補助者が立って作業する場合は、道路交通法に基づく道路使用許可(所轄の警察署への申請)が必要になる場合があります。
目視外飛行とインフラ点検
インフラ点検では、橋梁の桁下や建物の裏面など操縦者が直接目視できない位置を飛行するケースが多くあります。この場合、航空法上の「目視外飛行」の承認が必要です。
補助者を配置する場合
操縦者の視界に入らない位置を飛行する場合でも、補助者を配置して常時機体を目視で確認できる体制をとれば、目視外飛行には該当しません。ただし、橋梁の裏面など物理的に誰も機体を目視できない位置を飛行する場合は、補助者を配置しても目視外飛行の承認が必要です。
目視外飛行の申請
目視外飛行の承認を申請する際は、以下の安全対策を飛行マニュアルに盛り込む必要があります。
- 機体の位置と姿勢を常時把握できるテレメトリ情報の確認手段
- カメラ映像によるリアルタイムモニタリング
- 機体が操縦者から一定距離以上離れた場合の自動帰還機能
- 緊急時の着陸手順
- 飛行経路上の障害物の事前確認
目視外飛行の詳細は「ドローンの目視外飛行(BVLOS)|承認申請の条件と手順」で詳しく解説しています。
申請の手順
Step 1: 点検対象と飛行条件を確認する
点検対象の構造物について、以下を事前に確認します。
- 構造物の位置・形状・周辺環境
- DID内にあるか
- 飛行時に人・物件から30m未満になるか
- 目視外飛行が必要になるか
- 空港等の制限表面に該当しないか
- 構造物の管理者と事前調整が必要か
Step 2: 機体登録を済ませる
使用するドローンの機体登録を行い、登録記号を取得します。
Step 3: DIPS2.0で飛行許可を申請する
DIPS2.0にログインし、飛行許可・承認を申請します。
- 機体情報・操縦者情報をDIPS2.0に登録する
- 「飛行許可・承認申請」から新規申請を開始する
- 飛行の目的で「点検」を選択する
- 該当する特定飛行を選択する(30m未満、目視外飛行、DID上空など)
- 飛行の期間・場所・高度を入力する
- 飛行マニュアルを選択する(目視外飛行を含む場合は安全対策の記載に注意)
- 申請内容を確認して提出する
点検業務を年間を通じて複数の現場で行う場合は、包括申請の利用が効率的です。包括申請については「ドローン包括申請とは?個別申請との違いと申請手順」をご覧ください。
Step 4: 構造物の管理者と調整する
航空法の飛行許可とは並行して、点検対象の構造物の管理者に連絡し、以下を調整します。
- 点検の日時と作業範囲
- 通行規制や立入り制限の要否
- 管理者が求める安全対策
- 点検データの提出方法と納品形式
Step 5: 飛行計画の通報と現場作業
飛行許可取得後、実際の点検作業の前に以下を行います。
- DIPS2.0で飛行計画の通報を行う(航空法第132条の88)
- 現場の安全確認と第三者の立入り防止措置
- 気象条件の確認(風速、視程)
- 機体の飛行前点検(特にカメラ・センサーの動作確認)
費用
インフラ点検に関わる飛行許可申請の費用の目安です(2026年3月時点)。
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 飛行許可・承認申請(DIPS2.0) | 無料 |
| 機体登録手数料 | 900円〜2,400円/機 |
| 行政書士への申請代行 | 3万円〜8万円程度 |
飛行許可申請自体の手数料は無料です。点検業務全体のコスト(機体のリース料、解析費用、報告書作成費用など)は飛行許可申請とは別の費用です。
代行費用について詳しくは「ドローン飛行許可の申請代行|費用相場と依頼の流れ」をご覧ください。
注意点
構造物への接触リスク
インフラ点検では構造物に数メートルまで接近することが求められるため、構造物への接触や墜落のリスクが通常の飛行より高くなります。以下の対策が重要です。
- プロペラガードの装着
- 低速での慎重な飛行操作
- 風の影響を受けにくい機体の選定
- 構造物との距離をモニタリングする障害物検知センサーの活用
電波環境への注意
橋梁の桁下や鉄塔の近傍など金属構造物の周辺では、ドローンの操縦に使用する電波が反射・遮蔽され、通信が不安定になることがあります。事前に電波環境を確認し、通信途絶時の自動帰還設定を適切に行ってください。
保険への加入
インフラ点検は構造物への接近飛行を伴うため、第三者や構造物への損害リスクが高くなります。賠償責任保険への加入を強く推奨します。ドローン保険については「ドローンの保険は必要?賠償責任保険の選び方」をご覧ください。
よくある質問
Q. 橋梁の裏面を撮影するにはどの許可が必要ですか?
橋梁の裏面(床版下面・桁下)を撮影する場合、操縦者から機体が見えない位置を飛行することになるため、目視外飛行の承認が必要です。加えて、橋梁に接近するため「人・物件から30m未満」の承認、橋梁がDID内にあればDID上空の許可も必要です。
Q. 赤外線カメラでの外壁調査は夜間飛行になりますか?
赤外線カメラによる外壁調査は、日中に行うことが一般的です。赤外線カメラは温度差を検出するため、日照がある時間帯の方が壁面の温度差が大きく、浮きやひび割れの検出精度が高くなります。日没後に赤外線撮影を行う場合は夜間飛行の承認が必要です。夜間飛行については「ドローンの夜間飛行|承認申請の条件と注意点」をご覧ください。
Q. 建物の外壁点検で足場の代わりにドローンを使えますか?
建築基準法第12条に基づく定期調査報告では、外壁の調査にドローンによる赤外線調査を利用することが認められています。国土交通省が公表した「定期調査業務基準」では、赤外線装置を搭載したドローンによる外壁調査の方法が記載されています。ただし、全ての条件でドローンが足場の完全な代替となるわけではなく、建物の形状や周辺環境によっては従来の方法との併用が必要です。
Q. 包括申請で年間通じて点検業務をカバーできますか?
可能です。 包括申請を取得すれば、最長1年間・日本全国の範囲で許可を取得でき、個々の現場ごとに飛行許可を申請する必要がなくなります。飛行のたびにDIPS2.0で飛行計画の通報を行えば、各現場での点検作業に対応できます。
まとめ
ドローンによるインフラ点検を行うには、航空法に基づく飛行許可・承認の取得が基本です。
- 構造物への接近飛行では「人・物件から30m未満」の承認がほぼ必須
- 橋梁の裏面や建物の死角を飛行する場合は目視外飛行の承認も必要
- 航空法の許可とは別に、構造物の管理者との事前調整が必須
- 包括申請を活用すれば、年間を通じた複数現場の点検を効率化できる
- 飛行許可申請の手数料は無料
飛行許可の申請手順は「ドローン飛行許可の申請方法|DIPS2.0での手順を解説」で全体の流れを確認できます。目視外飛行の詳しい申請条件は「ドローンの目視外飛行(BVLOS)|承認申請の条件と手順」をご覧ください。