目次
この記事でわかること
ドローンを飛ばしていて墜落事故を起こした場合、数百万〜数千万円の損害賠償を請求される可能性があります。ドローン保険への加入は法律上の義務ではありませんが、国土交通省は飛行許可の申請時に賠償責任保険への加入を強く推奨しています。
この記事では、ドローン保険の種類、賠償責任保険の選び方、主要保険会社の比較、保険料の相場、業務利用と趣味利用での違い、加入方法を解説します。実際の事故事例や保険金が支払われないケース、2026年時点の制度動向もあわせて紹介します。
ドローン事故の実態と賠償リスク
保険の選び方を解説する前に、まずドローン事故のリスクがどれほど大きいかを把握しておきましょう。
実際に起きた事故の例
国土交通省に報告されたドローン事故の件数は年々増加しています。以下は実際に報告されている事故のパターンです。
| 事故の種類 | 具体例 | 想定される損害額 |
|---|---|---|
| 対人事故 | 着陸時に目測を誤り、歩行者に機体が接触し負傷させた | 数百万〜数千万円(治療費・慰謝料・逸失利益) |
| 対物事故 | 操縦ミスで民家の屋根に墜落し、屋根瓦を破損させた | 数十万〜数百万円(修理費・仮住まい費用) |
| インフラ損壊 | 農薬散布中に光ファイバーケーブルに接触し損傷させた | 数百万円(復旧費用・通信障害の損害) |
| 車両事故 | 飛行中に制御不能となり走行中の車両に落下した | 数百万〜数千万円(修理費・人身事故の場合は高額化) |
| プライバシー侵害 | 空撮映像に個人宅の内部が映り込み、SNSに投稿した | 数十万〜数百万円(慰謝料・訴訟費用) |
特に注意すべきは対人事故です。ドローンの重量は200g程度の小型機でも、高度から落下すれば重大な身体障害を引き起こす可能性があります。後遺障害が残った場合の賠償額は1億円を超えるケースも想定されます。
保険なしのリスク
仮に1億円の損害賠償を請求された場合、保険に未加入であれば全額を自己負担しなければなりません。個人で支払える金額ではなく、事実上の破産リスクを抱えることになります。年間数千円の保険料で億単位の賠償リスクをカバーできることを考えれば、保険加入のコストパフォーマンスは極めて高いと言えます。
ドローン保険の種類
ドローン保険は大きく分けて3種類あります。
賠償責任保険(第三者への損害を補償)
ドローンの墜落や接触により第三者に身体的・財産的な損害を与えた場合の賠償金を補償する保険です。
- 人にぶつかってけがをさせた場合の治療費・慰謝料
- 建物や車両などの他人の財産を損壊した場合の修理費・弁償
- 事故に起因する訴訟費用・弁護士費用
- プライバシー侵害や人格権侵害に対する損害賠償(一部の保険商品)
ドローンを飛ばす以上、最も優先すべき保険です。
機体保険(自分の機体の損害を補償)
ドローン本体の故障・破損・盗難などを補償する保険です。
- 操作ミスや強風による墜落で機体が破損した場合の修理費
- 盗難に遭った場合の機体代
- 火災・水没による損害
- 輸送中の破損(一部の保険商品)
業務用の高額な機体(数十万〜数百万円)を使用する場合は加入を検討する価値があります。趣味で使う数万円の機体であれば、賠償責任保険を優先すべきです。
付帯サービス・特約
保険商品によっては、以下のような付帯サービスや特約が用意されています。
- 示談交渉サービス: 事故発生時に保険会社が被害者との交渉を代行
- 捜索費用特約: 飛行中にロストした機体の捜索費用を補償
- 訴訟費用特約: 訴訟に発展した場合の弁護士費用を補償
- 人格権侵害特約: プライバシー侵害や肖像権侵害による賠償を補償
賠償責任保険は飛行許可の条件か
結論から言うと、賠償責任保険への加入は飛行許可の法的な要件ではありません。しかし、国土交通省の「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」では、以下のとおり保険加入を求めています。
申請者は、無人航空機の飛行にあたって、第三者賠償責任保険への加入等により、十分な補償が確保されていることが好ましい。
つまり、加入していなくても許可は取得できますが、強く推奨されている状態です。
実務上は以下の理由から加入はほぼ必須と考えてください。
- DIPS2.0の飛行許可申請画面で保険の加入状況を記入する欄がある
- 国や自治体が管理する施設上空での飛行では保険加入が条件とされる場合がある
- 万が一の事故で数千万円の賠償を個人で負担するのは非現実的
飛行許可申請の手順は「ドローン飛行許可の申請方法|DIPS2.0での手順を解説」で詳しく解説しています。
主要な保険商品の比較
DJI賠償責任保険(エアロエントリー)
DJI製ドローンのユーザー向けに提供されている保険です。DJI製品の購入と同時に加入でき、手軽なのが特徴です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象機体 | DJI製ドローンのみ |
| 対人補償 | 1億円 |
| 対物補償 | 5,000万円 |
| 年間保険料 | 約6,000〜12,000円(機種により異なる) |
| 業務利用 | 対応(プランによる) |
| 特徴 | DJI製品購入時に加入可能、手続きが簡単 |
DJI Care Refresh(機体保険)
DJI Care Refreshは機体保険であり、賠償責任保険とは異なります。機体の破損・水没・紛失時に新品または整備済み製品と交換してもらえるサービスです。賠償責任保険とは別に加入を検討しましょう。
東京海上日動の施設賠償責任保険
法人・個人事業主向けの汎用的な賠償責任保険で、ドローンの運用リスクもカバーできます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象機体 | メーカー不問 |
| 対人・対物補償 | 1億〜5億円(契約による) |
| 年間保険料 | 約10,000〜50,000円(補償内容・機体数による) |
| 業務利用 | 対応 |
| 特徴 | 法人向け、高額補償、複数機体・複数操縦者に対応 |
三井住友海上のドローン保険
個人・法人を問わず加入できるドローン専用の保険商品です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象機体 | メーカー不問 |
| 対人・対物補償 | 1億〜10億円(契約による) |
| 年間保険料 | 約8,000〜60,000円(補償内容・機体数による) |
| 業務利用 | 対応 |
| 特徴 | 個人・法人どちらも加入可、機体保険とセットプランあり |
ラジコン保険(日本ラジコン電波安全協会)
趣味でドローンを飛ばす個人向けの保険です。日本ラジコン電波安全協会の会員になることで自動的に付帯します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象機体 | ラジコン・ドローン全般 |
| 対人補償 | 1億円 |
| 対物補償 | 500万円 |
| 年間保険料 | 会費込みで約2,800〜4,000円 |
| 業務利用 | 非対応(趣味利用のみ) |
| 特徴 | 最も安価、趣味利用なら十分な補償内容 |
保険料の相場
保険料は利用目的・補償額・機体数・飛行頻度によって異なります。おおよその相場は以下のとおりです。
| 利用目的 | 賠償責任保険の年額 | 機体保険の年額 |
|---|---|---|
| 趣味(個人) | 2,800〜6,000円 | 機体価格の8〜15%程度 |
| 業務(個人事業主) | 8,000〜30,000円 | 機体価格の10〜20%程度 |
| 業務(法人・複数機体) | 20,000〜100,000円 | 機体価格の10〜20%程度 |
対人補償1億円の賠償責任保険であれば、趣味利用なら年間3,000〜6,000円程度で加入できます。月額に換算すると250〜500円程度であり、万が一のリスクに対してきわめて低コストです。
業務利用と趣味利用の違い
保険選びでは利用目的の区分が重要です。
| 項目 | 趣味利用 | 業務利用 |
|---|---|---|
| 保険の種類 | ラジコン保険、個人向けプラン | 施設賠償責任保険、事業者向けプラン |
| 補償範囲 | 対人・対物の基本補償 | 対人・対物に加え、業務遂行中の事故をカバー |
| 保険料 | 安い(年3,000〜6,000円) | 高め(年8,000〜100,000円) |
| 業務中の事故 | 補償対象外 | 補償対象 |
| 契約者 | 個人のみ | 個人・法人 |
最も注意すべき点は、趣味用の保険では業務中の事故が補償されないことです。たとえば、知人から頼まれた空撮であっても報酬を受け取っていれば「業務利用」とみなされ、趣味用の保険では保険金が支払われない可能性があります。
空撮・測量・点検・農薬散布など少しでも業務的な要素がある場合は、業務対応の保険に加入してください。
保険選びのチェックリスト
ドローン保険を選ぶ際に確認すべきポイントをチェックリスト形式でまとめます。
補償内容のチェック
- 対人補償額: 最低1億円以上(業務利用なら3億〜5億円を推奨)
- 対物補償額: 最低5,000万円以上
- 免責金額: 自己負担額がいくらか(0円〜10万円程度)
- 示談交渉サービスの有無: 事故時に保険会社が交渉を代行してくれるか
- プライバシー侵害の補償: 空撮時のリスクに備えるため確認
- 捜索費用の補償: 機体ロスト時の捜索費用がカバーされるか
契約条件のチェック
- 業務利用の可否: 趣味用保険で業務利用すると保険金が出ない
- 補償の対象外: 故意・飲酒操縦・法令違反飛行は通常対象外
- 複数操縦者の対応: 法人の場合、従業員全員がカバーされるか
- 機体の制限: 特定メーカー限定か、メーカー不問か
- 飛行エリアの制限: 国内のみか、海外もカバーするか
- 自作機・改造機の対応: FPVドローンや自作機もカバーされるか
保険料のチェック
- 年額: 月額換算で妥当な金額か
- 支払い方法: クレジットカード・銀行振込・口座振替の対応
- 更新方法: 自動更新か、手動更新か
- 割引制度: 国家資格保有者割引、複数年契約割引の有無
加入方法
オンラインで加入する場合
- 保険会社やドローンメーカーの公式サイトからプランを選択
- 機体情報・操縦者情報・利用目的を入力
- 補償内容・保険料を確認して申し込み
- クレジットカードまたは銀行振込で保険料を支払い
- 保険証券(PDF等)を受領
DJI製品の場合はDJI公式サイトまたは販売店で購入時に同時加入できます。DJI製ドローンの場合、初年度の賠償責任保険が無償で付帯される製品もあるため、購入時に確認してください。
保険代理店を通じて加入する場合
法人で複数機体を運用する場合や、高額な補償を設定したい場合は保険代理店に相談するのが確実です。事業内容や飛行頻度に応じた最適なプランを提案してもらえます。
団体保険を利用する場合
ドローン関連の団体に所属している場合、団体割引が適用される保険プランが利用できることがあります。
- DPA(一般社団法人ドローン操縦士協会): 会員向けのドローン総合保険制度を提供
- JUIDA(日本UAS産業振興協議会): 会員向けの賠償責任保険を案内
- JMA(日本マルチコプター協会): 会員向け保険プランあり
団体保険は個人で加入するよりも保険料が割安になる場合が多いため、団体に所属している方は活用を検討してください。
ドローンスクールでの加入
多くのドローンスクールでは、受講生向けに保険への加入サポートを行っています。スクールが代理店を兼ねている場合、受講と同時に保険加入の手続きを進められるため便利です。
保険金が支払われないケース
保険に加入していても、以下のケースでは保険金が支払われない(免責となる)可能性があります。加入前に必ず約款を確認してください。
法令違反による事故
飛行許可を取得せずに飛行した場合や、許可条件に違反して飛行した場合の事故は、保険金が支払われない可能性があります。例えば以下のケースです。
- 飛行禁止空域で無許可飛行中に墜落した
- 夜間飛行の承認を取得せずに夜間に飛行して事故を起こした
- 目視外飛行の承認なしにFPVゴーグルで操縦して事故を起こした
- 飲酒状態でドローンを操縦して事故を起こした
飛行許可に関する法規制の全体像は「【2026年最新】ドローンの法律・規制まとめ」で確認できます。
故意による事故
意図的に人や物に衝突させた場合は保険の対象外です。これは一般的な保険と同様です。
業務利用を趣味用保険でカバーしようとした場合
前述のとおり、趣味用保険で業務中の事故は補償されません。少しでも対価を受け取る可能性がある場合は、業務対応の保険に加入してください。
機体の経年劣化による事故
整備不良や経年劣化が原因の事故は、保険会社の判断により免責となることがあります。定期的な機体メンテナンスと飛行前点検を怠らないようにしましょう。
レベル3.5飛行と保険の関係
2023年12月に導入されたレベル3.5飛行では、従来のレベル3と異なり第三者賠償責任保険の加入が許可条件として明記されています。
レベル3.5飛行を計画している方は、飛行許可申請の前に必ず保険に加入してください。保険未加入の場合、レベル3.5の許可は取得できません。レベル3.5の詳細は「ドローンのレベル3.5飛行とは?制度の概要と申請方法」をご覧ください。
個人賠償責任保険でカバーできるか
クレジットカードや火災保険に付帯する個人賠償責任保険で、ドローン事故をカバーできるか気になる方もいるでしょう。
個人賠償責任保険との違い
| 項目 | ドローン専用の賠償責任保険 | 個人賠償責任保険(付帯型) |
|---|---|---|
| ドローン事故の補償 | 明確に補償対象 | 対象外の場合が多い |
| 業務利用 | プランにより対応 | 非対応 |
| 補償額 | 1億〜10億円 | 1億〜3億円 |
| 示談交渉サービス | あり(多くのプラン) | あり |
一般的な個人賠償責任保険では、「航空機の所有・使用・管理に起因する損害」は免責とされている場合が少なくありません。ドローンが「航空機」に該当するかどうかは保険会社の解釈によりますが、確実に補償を受けるにはドローン専用の保険に加入することを強く推奨します。
よくある質問
Q. DJI以外のメーカーの機体でも保険に入れる?
はい、入れます。 東京海上日動や三井住友海上の賠償責任保険はメーカー不問です。自作機やFPVドローンの場合も、機体情報を申告すれば加入できます。FPVドローンの場合は「FPVドローンに必要な免許|アマチュア無線+開局申請ガイド」で免許取得の流れもあわせて確認してください。
Q. 国家資格を持っていると保険料は安くなる?
保険会社によっては国家資格保有者向けの割引を設けている場合があります。具体的な割引率は保険商品ごとに異なるため、見積もり時に確認してください。国家資格について詳しくは「ドローン国家資格の種類と取得方法|一等・二等の違い」をご覧ください。
Q. 包括申請で1年間の許可を取った場合、保険も1年間有効にすべき?
はい、飛行許可の有効期間をカバーする保険期間が望ましいです。包括申請の有効期間は原則1年のため、年間保険に加入すれば期間が一致します。包括申請については「ドローン包括申請とは?個別申請との違いと申請手順」で解説しています。
Q. 海外でドローンを飛ばす場合は別の保険が必要?
はい、国内向けの保険では海外での事故が補償されない場合がほとんどです。海外でドローンを使用する場合は、海外対応のプランに加入するか、渡航先の保険を利用してください。
Q. 保険証券は飛行現場に持参すべき?
持参することを推奨します。 飛行許可の申請時にも保険情報を記入しますが、万が一事故が発生した場合にすぐに保険会社に連絡できるよう、保険証券のコピーまたはスマートフォンに保存したPDFを携帯してください。
Q. 機体を買い替えた場合、保険の手続きは必要?
保険商品によります。 機体を特定して加入する保険の場合は、機体変更の届出が必要です。操縦者単位で加入する保険(施設賠償責任保険など)の場合は、機体を変更しても手続き不要な場合があります。保険会社に確認してください。
Q. ドローン保険は確定申告で経費にできる?
業務でドローンを使用している場合は経費として計上可能です。個人事業主であれば「損害保険料」として、法人であれば「保険料」として経費処理できます。趣味利用の場合は経費にはできません。
利用目的別のおすすめ保険プラン
最後に、利用目的別のおすすめプランをまとめます。
趣味で飛ばす個人
- おすすめ: ラジコン保険(日本ラジコン電波安全協会)またはDJI賠償責任保険
- 年間コスト: 約2,800〜6,000円
- ポイント: 対人1億円の補償で十分。機体保険は高額機体でなければ不要
副業・フリーランスで空撮をする個人
- おすすめ: 三井住友海上のドローン保険(個人・業務対応プラン)
- 年間コスト: 約8,000〜30,000円
- ポイント: 必ず業務対応の保険を選ぶこと。趣味用では業務中の事故が補償されない
ドローンスクールや点検業務を行う法人
- おすすめ: 東京海上日動の施設賠償責任保険
- 年間コスト: 約20,000〜100,000円
- ポイント: 対人3億〜5億円、複数機体・複数操縦者に対応するプランを選ぶ
FPVドローンを飛ばす方
- おすすめ: メーカー不問の賠償責任保険(東京海上日動、三井住友海上)
- 年間コスト: 約8,000〜30,000円
- ポイント: 自作機やFPVドローンもカバーされるか確認。アマチュア無線の免許取得も忘れずに
まとめ
ドローンの保険は法的な義務ではないものの、実質的には必須です。
- 賠償責任保険を最優先で加入する(対人1億円以上が目安)
- 趣味利用なら年3,000〜6,000円程度で加入可能
- 業務利用は業務対応の保険を選ぶこと(趣味用では業務中の事故が補償されない)
- DJI製品はDJI賠償責任保険、その他のメーカーは東京海上や三井住友海上の保険を検討
- 高額な機体を使用する場合は機体保険の加入も検討
- レベル3.5飛行では保険加入が許可条件となっている
- 法令違反や業務/趣味の区分ミスで保険金が支払われないケースに注意
保険選びに迷ったら、まずは対人1億円以上の賠償責任保険に年間数千円で加入することから始めてください。月額数百円で億単位の賠償リスクを回避できます。ドローンの飛行に関わる法律や規制の全体像は「【2026年最新】ドローンの法律・規制まとめ」でまとめています。飛行許可申請の代行を検討される方は「ドローン飛行許可の申請代行|費用相場と依頼の流れ」もご覧ください。