目次
この記事でわかること
アマチュア無線のデジタルモードは、パソコンと無線機を接続して文字やデータで交信する方式です。特にFT8は微弱な電波でも交信が成立するため、近年利用者が急増しています。この記事では、デジタルモードの種類、必要な設備、始めるための変更申請について解説します。
デジタルモードとは
従来の交信方式との違い
アマチュア無線の交信方式は、大きく3つに分類されます。
| 方式 | 概要 | 代表例 |
|---|---|---|
| 音声(フォーン) | マイクで声を送る | SSB、FM |
| モールス(CW) | モールス符号を手動で送る | CW |
| デジタル | パソコンでデータを送受信する | FT8、FT4、RTTY、PSK31 |
デジタルモードでは、パソコンが信号のエンコード・デコードを行うため、人間の耳では聞き取れないような弱い信号でも交信が成立します。
主なデジタルモード
FT8(Franke-Taylor design 8-FSK modulation)
- 現在最も人気のあるデジタルモード
- 1回の送信は約15秒で、交信全体が約1分で完了する
- -20dB以下の微弱信号でもデコード可能
- HF帯での国際交信に広く使われている
FT4
- FT8の高速版。1回の送信は約7.5秒
- コンテスト(競技)向けに設計されている
RTTY(Radio Teletype)
- 古くから使われているデジタルモード
- コンテストで多く使用される
PSK31
- キーボードでリアルタイムにテキストを送受信する
- 帯域が狭く、混信に強い
必要な設備
デジタルモードを始めるには、通常のアマチュア無線設備に加えて以下が必要です。
基本の構成
- 無線機(HF帯対応のSSBモードが使えるもの)
- パソコン(Windows、Mac、Linux対応のソフトがあるが、Windows対応が最も多い)
- インターフェース(オーディオケーブルまたはUSBインターフェース)
- デジタルモード用ソフトウェア
インターフェースについて
パソコンと無線機を接続するインターフェースには、主に2つの方式があります。
USBインターフェース内蔵型
- 最近の無線機はUSBケーブル1本でパソコンと接続できるものが増えている
- 音声信号とCAT制御(周波数制御)を1本のケーブルで処理
- 設定が簡単で、初心者におすすめ
外付けインターフェース
- 古い無線機や、USB端子のない無線機で使用
- オーディオ入出力とシリアル通信を変換する装置
- 市販品のほか自作も可能
デジタルモード用ソフトウェア
WSJT-X
- FT8・FT4の運用に使用する定番ソフト
- 無料で公開されている
- 時刻同期が重要(NTPで正確な時刻に合わせる必要がある)
JTDX
- WSJT-Xの派生版。デコード性能が強化されている
- FT8運用者の間で人気
ログ管理ソフト
- 交信記録を管理するソフトウェア
- WSJT-XやJTDXと連携して自動的にログを記録できるものがある
変更申請の手続き
既にアマチュア無線局を開局済みの場合、デジタルモードを運用するには変更申請が必要になることがあります。
変更申請が必要な理由
無線局免許には、運用できる電波の型式が記載されています。従来の音声通信(SSBやFM)しか申請していない場合、デジタルモードの電波の型式を追加する必要があります。
電波の型式の記載
デジタルモードで使用する電波の型式は、一般的に以下のように記載します。
| モード | 電波の型式 | 説明 |
|---|---|---|
| FT8 / FT4 | F1D | 周波数変調、デジタル信号、データ伝送 |
| RTTY | F1B | 周波数変調、デジタル信号、電信 |
| PSK31 | G1B | 位相変調、デジタル信号、電信 |
| SSB(音声) | J3E | SSB、アナログ、電話 |
申請の手順
- 電子申請Liteにログインする
- 「変更申請」を選択する
- 工事設計書の電波の型式にデジタルモードの型式を追加する
- 申請を送信する
- 変更許可が下りたら運用を開始する
変更申請の詳しい手順は「アマチュア無線の変更申請」をご覧ください。
新規開局時にまとめて申請する方法
これから開局する場合は、最初の開局申請時にデジタルモードの電波の型式もまとめて申請しておくと、後から変更申請を行う手間が省けます。
開局申請の手順は「アマチュア無線の開局申請」で解説しています。
FT8で初めての交信をするまで
Step 1: ソフトウェアのインストールと設定
- WSJT-Xをダウンロード・インストールする
- 無線機とパソコンを接続する
- WSJT-Xの設定画面で、無線機のモデル、COMポート、オーディオデバイスを設定する
- パソコンの時刻をNTPで正確に同期する(FT8は時刻のずれに敏感)
Step 2: 受信から始める
- WSJT-Xを起動し、FT8の運用周波数に合わせる
- 画面に他局の信号がデコードされて表示される
- しばらく受信して、交信の流れを観察する
Step 3: 送信(交信開始)
- 画面に表示された局をダブルクリックして呼び出す
- ソフトウェアが自動的に定型メッセージを送信する
- 相手局が応答したら、交信が自動的に進行する
- 交信完了後、ログに記録される
主なFT8運用周波数
| バンド | 周波数 |
|---|---|
| 7MHz帯 | 7.041MHz |
| 14MHz帯 | 14.074MHz |
| 21MHz帯 | 21.074MHz |
| 28MHz帯 | 28.074MHz |
| 50MHz帯 | 50.313MHz |
| 144MHz帯 | 144.460MHz |
| 430MHz帯 | 432.174MHz |
注意点
出力は控えめに
FT8は微弱信号でも交信できるため、大出力は不要です。過大な出力はかえって他の局への妨害になることがあります。
- 最初は10W〜25W程度から始める
- 交信が成立する最低限の出力を使うのがマナー
時刻同期は必須
FT8は送受信のタイミングが15秒周期で厳密に制御されています。パソコンの時刻が1秒以上ずれていると、交信が成立しません。NTPソフトで常に正確な時刻に同期してください。
運用周波数を守る
デジタルモードにはバンドプランで割り当てられた周波数帯があります。音声モード用の周波数帯でデジタルモードを運用しないよう注意しましょう。
まとめ
デジタルモードは、少ない出力と簡単な設備で遠距離交信が楽しめる、アマチュア無線の新しい楽しみ方です。始めるには電波の型式の変更申請が必要ですが、手続き自体は電子申請Liteから簡単に行えます。まずはFT8の受信から始めて、デジタルモードの世界を体験してみてください。