この記事でわかること
VTX(映像送信機)は、FPVドローンに搭載してカメラ映像をリアルタイムでゴーグルに送信するための無線機です。VTXは電波法上の無線設備に該当するため、使用するには免許や手続きが必要です。
この記事では、VTXの基本的な仕組み、使用する周波数帯の特徴、合法的に使うために必要な手続き、技適との関係をわかりやすく解説します。
VTXとは
VTXはVideo Transmitter(ビデオトランスミッター)の略称で、FPVドローンに搭載する映像送信機のことです。ドローンに取り付けたカメラの映像を、地上にいるパイロットのFPVゴーグルやモニターにリアルタイムで無線送信する役割を持ちます。
FPVドローンでは、パイロットがゴーグルを装着して一人称視点(First Person View)で操縦します。この映像伝送を担うのがVTXです。VTXは主に5.8GHz帯(アマチュア無線の周波数帯域)を使用します。
VTXは電波を発射する無線設備であり、電波法第4条により無線局の免許なく使用することはできません。
無線局を開設しようとする者は、総務大臣の免許を受けなければならない。
― 電波法 第4条
VTXの仕組みと周波数帯
映像送信の仕組み
VTXは、ドローンに搭載されたカメラから受け取った映像信号を電波に変換して送信します。地上側では、FPVゴーグルやモニターに内蔵された受信機(VRX)がその電波を受信し、映像として表示します。
VTXの主な構成要素は以下のとおりです。
- 映像入力端子: カメラからの映像信号を受け取る
- 送信回路: 映像信号を指定の周波数帯の電波に変換する
- アンテナ端子: 電波を空中に放射するアンテナを接続する
5.8GHz帯と5.7GHz帯の違い
FPVドローンのVTXで使用される周波数帯は、主に5.8GHz帯と5.7GHz帯の2つです。
| 周波数帯 | 区分 | 利用に必要な資格 |
|---|---|---|
| 5.8GHz帯 | アマチュア無線の周波数帯 | アマチュア無線技士(第四級以上)+無線局免許 |
| 5.7GHz帯 | 陸上移動局の周波数帯 | 第三級陸上特殊無線技士以上+無線局免許 |
5.8GHz帯はアマチュア無線の周波数帯域に含まれるため、個人の趣味としてFPVドローンを飛ばす場合はこちらを使用します。一方、5.7GHz帯は業務用途(ドローンレースのイベント運営、空撮業務など)で使用される周波数帯です。
個人でFPVドローンを楽しむ場合は、5.8GHz帯のアマチュア無線局として開局するのが一般的です。
送信出力
VTXの送信出力は製品によって異なりますが、25mW、200mW、400mW、600mWなどの切り替えが可能なモデルが多く流通しています。出力が大きいほど映像の到達距離は伸びますが、アマチュア無線局として運用する場合は免許状に記載された出力の範囲内で使用しなければなりません。
アナログVTXとデジタルVTX
VTXには映像伝送方式の違いにより、大きく2種類があります。
| 方式 | 特徴 |
|---|---|
| アナログVTX | 従来型。遅延が少なく安価。映像品質はやや劣る |
| デジタルVTX | 高画質で鮮明な映像。DJI Digital FPV System、HDZero、Walksnail Avatarなどがある |
デジタルVTXは映像品質に優れていますが、アナログ・デジタルを問わず電波を発射する無線設備であることに変わりはなく、どちらも免許と手続きが必要です。
VTXを合法的に使うために必要な手続き
5.8GHz帯のVTXを個人の趣味で使用する場合、アマチュア無線局として開局する手続きが必要です。手順は以下のとおりです。
Step 1: アマチュア無線技士の資格を取得する
まず、第四級アマチュア無線技士以上の資格を取得します。取得方法は2つあります。
- 国家試験: 日本無線協会が実施する試験に合格する
- 養成課程講習会: JARD(日本アマチュア無線振興協会)が実施する講習を受講し、修了試験に合格する
Step 2: 保証認定を受ける
VTXには技適マークがないため、保証認定を受けて技術基準への適合を証明する必要があります。保証認定はJARDに申請します。申請には、VTXの系統図や工事設計書などの書類が必要です。
系統図の作成方法は「FPVドローン用VTXの系統図の書き方」で解説しています。
Step 3: 無線局の開局申請を行う
JARDの保証認定が完了したら、総合通信局に無線局の開局申請を行います。開局申請は総務省の電子申請システム「電波利用 電子申請・届出システム Lite」からオンラインで手続きできます。
Step 4: 免許状の交付を受ける
審査が完了すると、コールサイン(呼出符号)が付与され免許状が交付されます。免許状の交付をもって、VTXを合法的に使用できるようになります。
手続きの全体像は「FPVドローンに必要な免許|アマチュア無線+開局申請ガイド」で詳しく解説しています。
技適とVTXの関係
大半のVTXは技適を取得していない
市販されているVTXの大半は海外メーカー製であり、日本の技適(技術基準適合証明)を取得していません。技適マークのない無線設備をそのまま日本国内で使用すると、電波法違反になります。
保証認定で技術基準適合を証明する
技適のないVTXを合法的に使用するには、保証認定という制度を利用します。保証認定とは、JARDなどの登録検査等事業者が無線設備の技術基準への適合を保証する制度です。
保証認定を受けることで、技適マークがなくてもアマチュア無線局の無線設備として使用が認められます。保証認定の詳しい手順は「FPVドローン|JARDの保証認定を申請する手順」をご覧ください。
技適のあるVTXは保証認定が不要
一部のVTXは日本国内向けに技適を取得済みのモデルがあります。技適マーク付きのVTXであれば、保証認定を受けずに開局申請が可能です。ただし、技適取得済みのVTXは選択肢が限られているのが現状です。
よくある質問
Q. 技適のないVTXを使うと違法になる?
保証認定を受けずにそのまま使用すると電波法違反です。技適のないVTXを使う場合は、必ずJARDの保証認定を受け、アマチュア無線局として開局申請を行ってください。無免許で無線局を開設した場合、電波法第110条により1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。
Q. デジタルVTXも免許が必要?
はい、デジタルVTXも免許が必要です。 DJI Digital FPV SystemやHDZeroなどのデジタルVTXも電波を発射する無線設備であり、アナログVTXと同様にアマチュア無線局の免許と保証認定が必要です。
Q. VTXの出力に制限はある?
アマチュア無線局として運用する場合、VTXの出力は免許状に記載された空中線電力の範囲内でなければなりません。免許申請時に記載した出力を超えて運用すると電波法違反になります。使用するVTXの出力設定が免許の範囲内であることを確認してください。
Q. 複数のVTXを使いたい場合はどうする?
複数のVTXを使用する場合は、それぞれのVTXについて保証認定を受け、開局申請(または変更申請)で全てのVTXを届け出る必要があります。無届けのVTXを使用することはできません。
まとめ
- VTXはVideo Transmitter(映像送信機)の略で、FPVドローンの映像をゴーグルに送信する無線機
- 主に5.8GHz帯(アマチュア無線の周波数帯)を使用する
- 電波法第4条により、VTXの使用には無線局の免許が必要
- 合法的に使うには、アマチュア無線技士の資格取得、JARDの保証認定、開局申請の3ステップが必要
- 大半のVTXは技適を取得していないため、保証認定で技術基準適合を証明する
- アナログ・デジタルを問わず、全てのVTXに免許と手続きが必要
- 手続きの全体像は「FPVドローンに必要な免許|アマチュア無線+開局申請ガイド」を参照
- 保証認定の手順は「FPVドローン|JARDの保証認定を申請する手順」を参照