目次
この記事でわかること
ドローンの飛行形態は、レベル1からレベル4までの4段階(+レベル3.5)に分類されています。この分類は、操縦の方法(手動か自律か)や飛行エリアの条件(目視内か目視外か、無人地帯か有人地帯か)によって段階的に区分されたものです。
この記事では、各レベルの定義、2023年に追加されたレベル3.5の位置づけ、各レベルの適用場面、飛行カテゴリー(I・II・III)との関係、そして物流や点検などの産業利用における活用事例を解説します。
飛行レベルの全体像
飛行レベルとは
飛行レベルは、ドローンの飛行形態を操縦方法と飛行環境の組み合わせで分類したものです。もともとは官民協議会(小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会)が策定した「空の産業革命に向けたロードマップ」のなかで、ドローンの社会実装を段階的に進めるための指標として定められました。
レベル一覧
| レベル | 操縦方法 | 飛行エリア | 概要 |
|---|---|---|---|
| レベル1 | 手動操縦 | 目視内 | 操縦者が直接目視しながら手動で操縦 |
| レベル2 | 自律飛行 | 目視内 | プログラムによる自律飛行だが操縦者が目視で監視 |
| レベル3 | 自律飛行 | 目視外・無人地帯 | 無人地帯での目視外飛行(補助者の配置あり) |
| レベル3.5 | 自律飛行 | 目視外・無人地帯 | 無人地帯での目視外飛行(補助者なし・機上カメラ等で代替) |
| レベル4 | 自律飛行 | 目視外・有人地帯 | 有人地帯での補助者なし目視外飛行 |
レベルの数字が大きくなるほど、飛行の自由度が高くなる一方で、安全対策の要件も厳しくなります。
レベル1: 目視内での手動操縦
定義
レベル1は、操縦者がドローンを直接目視しながら手動で操縦する飛行です。最も基本的な飛行形態であり、多くのドローン利用者が最初に経験する飛行方法です。
特徴
- 操縦者が常にドローンを目視している
- 送信機(プロポ)を使って手動で操縦する
- 機体の姿勢制御やGPSによる位置保持は自動で行われるが、飛行経路は操縦者が手動で指示する
適用場面
| 用途 | 具体例 |
|---|---|
| 空撮 | 写真・動画撮影のための手動操縦 |
| 練習飛行 | 操縦技能の訓練、資格取得のための練習 |
| 点検(近距離) | 建物や構造物の近距離からの目視点検 |
| ドローンレース | FPVゴーグルを使用するが補助者が目視する場合 |
必要な手続き
レベル1であっても、特定飛行に該当する場合は飛行許可・承認が必要です。たとえば、人口集中地区(DID)の上空で手動操縦の空撮を行う場合は、目視内・手動操縦であってもDID上空飛行の許可が必要です。
特定飛行に該当しなければ、レベル1は飛行カテゴリーIに分類され、許可は不要です。
レベル2: 目視内での自律飛行
定義
レベル2は、事前にプログラムした経路をドローンが自律的に飛行するが、操縦者が常に目視で監視している飛行です。
特徴
- ウェイポイント飛行(事前設定した飛行経路を自動で飛行)が代表例
- 操縦者は機体を目視しながら異常時にはいつでも手動操縦に切り替えられる状態を維持
- プログラムによる安定した飛行経路と速度が実現できる
適用場面
| 用途 | 具体例 |
|---|---|
| 測量 | 事前に設定したグリッドパターンでの空撮測量 |
| 農薬散布 | 農地の上を自動で飛行しながら薬剤を散布 |
| 太陽光パネル点検 | パネル上を自動で飛行しながら赤外線カメラで撮影 |
| 建設現場の進捗管理 | 定期的に同じ経路を飛行して現場を記録 |
レベル1との違い
レベル1とレベル2の最大の違いは操縦が手動か自律かという点です。レベル2では操縦者は「操縦」ではなく「監視」の役割が主になります。ただし、法規制上の扱い(必要な許可や資格)はレベル1と大きくは変わりません。
レベル3: 無人地帯での目視外飛行
定義
レベル3は、無人地帯(第三者のいない場所)において、操縦者の目視範囲外でドローンを飛行させる形態です。
特徴
- 操縦者は機体を直接目視できない
- 飛行経路の下に第三者がいないことが前提
- 補助者の配置により、飛行経路への第三者の立ち入りを監視・制限する
- テレメトリデータ(位置、高度、バッテリー残量など)で遠隔から機体状態を監視
従来のレベル3の運用
レベル3の飛行では、飛行経路に沿って補助者を配置し、第三者が飛行経路下に立ち入らないよう監視する必要がありました。この補助者の配置が、長距離飛行の実用化を阻む大きなボトルネックでした。
たとえば、山間部で10kmの物資配送を行う場合、飛行経路に沿って数百メートルおきに補助者を配置する必要があり、人件費と人員確保の面で現実的ではないケースが多くありました。
適用場面
| 用途 | 具体例 |
|---|---|
| 離島への物資輸送 | 海上を飛行して離島に物資を届ける |
| 山間部の点検 | 送電線やダムの遠隔点検 |
| 災害時の状況確認 | 被災地の上空から広範囲を撮影 |
| 農地の広域調査 | 広大な農地を自律飛行で撮影 |
レベル3.5: 補助者なし目視外飛行(無人地帯)
定義
レベル3.5は、2023年12月に新設された飛行形態で、無人地帯における補助者なしの目視外飛行です。レベル3とレベル4の中間に位置する飛行形態として追加されました。
レベル3.5が新設された背景
レベル3では補助者の配置が必須だったため、長距離飛行の実用化が困難でした。一方、レベル4は有人地帯での飛行であり、一等技能証明と第一種機体認証という非常に高いハードルがありました。
この間を埋める飛行形態として、補助者を配置せずに無人地帯で目視外飛行を行うレベル3.5が新設されました。
レベル3.5の要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 操縦者技能証明 | 二等無人航空機操縦士(目視外飛行の限定変更含む) |
| 機体認証 | 第二種機体認証 |
| 立入管理措置 | 補助者に代わり、機上カメラや地上センサーなどで第三者の有無を確認 |
| 飛行許可 | 国土交通大臣の許可・承認が必要 |
レベル3との違い
| 項目 | レベル3 | レベル3.5 |
|---|---|---|
| 補助者の配置 | 必要 | 不要 |
| 第三者の監視方法 | 補助者の目視 | 機上カメラ・地上センサーなど |
| 必要な資格 | なし(飛行許可で対応) | 二等技能証明が必要 |
| 機体認証 | なし | 第二種機体認証が必要 |
レベル3.5の意義
レベル3.5の新設により、物流や広域点検の実用化が大幅に前進しました。補助者を配置せずに長距離飛行ができるため、以下のような活用が現実的になっています。
- 山間部や離島への定期的な物資配送
- 長距離にわたるインフラ(送電線・パイプライン)の点検
- 広大な農地の自動巡回による生育状況の監視
レベル4: 有人地帯での補助者なし目視外飛行
定義
レベル4は、有人地帯(第三者がいる場所)において、補助者なしで操縦者の目視範囲外を飛行する形態です。ドローンの飛行形態のなかで最も高度で、最も厳しい安全要件が求められます。
特徴
- 第三者の上空を飛行する可能性がある
- 補助者の配置なしで飛行する
- 操縦者は機体を直接目視しない
- 自律飛行を基本とし、高度な安全管理システムが求められる
レベル4に必要な条件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 操縦者技能証明 | 一等無人航空機操縦士が必要 |
| 機体認証 | 第一種機体認証が必要 |
| 運航管理体制 | 飛行の安全を確保するための体制が必要 |
| 保険 | 第三者への賠償責任保険が実質的に必須 |
| 飛行計画の通報 | 飛行計画を国土交通大臣に通報 |
無人航空機を飛行させる者は、特定飛行を行う場合には、あらかじめ、その飛行の日時、経路その他国土交通省令で定める事項を記載した飛行計画を国土交通大臣に通報しなければならない。
― 航空法 第132条の88第1項
適用場面
| 用途 | 具体例 |
|---|---|
| 都市部の物流配送 | 住宅地やオフィス街への荷物配送 |
| 医療物資の緊急輸送 | 病院間での血液や医薬品の輸送 |
| 都市部のインフラ点検 | 市街地の橋梁やビルの外壁点検 |
| 災害時の物資輸送 | 被災した有人地域への緊急物資配送 |
レベル4の現状と展望
2022年12月にレベル4飛行が制度上は解禁されました。しかし、2026年3月時点でレベル4の飛行が広く実施されている状況にはまだ至っていません。その理由は以下のとおりです。
- 第一種機体認証を取得した機体がまだ限定的
- 一等技能証明の保有者数がまだ少ない
- 運航管理体制の整備に時間がかかる
- 社会的な受容性の醸成が途上
今後、型式認証を受けた機体の増加や運航ルールの整備が進むことで、レベル4飛行の実用化が本格化すると期待されています。
飛行レベルと飛行カテゴリーの関係
飛行レベルと飛行カテゴリーは別の分類基準ですが、密接に関連しています。
| 飛行レベル | 飛行カテゴリー | 補足 |
|---|---|---|
| レベル1 | I または II | 特定飛行に該当するかで分かれる |
| レベル2 | I または II | 特定飛行に該当するかで分かれる |
| レベル3 | II | 目視外飛行は特定飛行に該当。立入管理措置あり |
| レベル3.5 | II | 立入管理措置あり(機上カメラ等で代替) |
| レベル4 | III | 第三者上空の飛行となるため |
分類基準の違い
- 飛行レベル: 「どのように飛ばすか」(手動/自律、目視内/目視外、無人/有人地帯)を基準に分類
- 飛行カテゴリー: 「リスクの大きさ」(特定飛行か、第三者上空を飛ぶか)を基準に分類
両方の分類を理解しておくと、自分の飛行に必要な手続きや資格を正確に把握できます。飛行カテゴリーの詳細は「ドローンのカテゴリーI・II・IIIとは?」をご覧ください。
レベルの高度化に伴う安全対策の強化
飛行レベルが上がるほど、求められる安全対策も高度になります。各レベルで重視される安全対策を整理します。
通信の冗長性
目視外飛行(レベル3以上)では、操縦者と機体の間の通信が途切れるリスクを考慮しなければなりません。
| レベル | 通信の要件 |
|---|---|
| レベル1・2 | 操縦者が目視しているため、通信途絶時にも目視で対応可能 |
| レベル3・3.5 | 通信の冗長化が推奨(複数の通信手段を確保) |
| レベル4 | 通信途絶時の自動帰還(フェールセーフ)機能が必須 |
緊急時の対応手順
レベル3以上の目視外飛行では、緊急時の対応手順を事前に策定しておくことが求められます。
- 通信途絶時: 機体が自動で帰還するか、その場でホバリングするか
- バッテリー残量低下時: 安全な場所に自動着陸するか、最寄りの着陸ポイントに帰還するか
- 気象急変時: 風速や降雨が基準値を超えた場合の対応
- 第三者の接近時: 飛行経路に第三者が現れた場合の退避手順
第三者の安全確保
レベル3.5やレベル4では、補助者を配置しないため、代替手段による第三者の安全確保が必要です。
| 安全確保の方法 | レベル3.5 | レベル4 |
|---|---|---|
| 機上カメラによる監視 | 活用可能 | 活用可能 |
| 地上のセンサー | 活用可能 | 活用可能 |
| パラシュートの装備 | 推奨 | 実質的に必須 |
| 衝突回避システム(DAA) | 推奨 | 求められる場合あり |
産業利用における各レベルの活用
物流分野
物流分野は、飛行レベルの高度化と最も直結する産業です。
| フェーズ | 飛行レベル | 内容 |
|---|---|---|
| 実証実験段階 | レベル3 | 補助者を配置した限定的な配送テスト |
| 実用化初期 | レベル3.5 | 山間部・離島での補助者なし配送 |
| 本格的な社会実装 | レベル4 | 都市部での日常的な配送サービス |
2024年以降、レベル3.5を活用した離島への物資配送の実例が増えてきています。ドローン物流の本格化にはレベル4の普及が不可欠ですが、レベル3.5の新設により段階的な実用化が加速しています。
インフラ点検分野
インフラ点検では、レベル2とレベル3が主に活用されています。
| 点検対象 | 主な飛行レベル | 備考 |
|---|---|---|
| 太陽光パネル | レベル2 | 目視内でのグリッド飛行 |
| 橋梁 | レベル1〜2 | 近距離での手動操縦または自律飛行 |
| 送電線 | レベル3〜3.5 | 長距離にわたる目視外飛行 |
| ダム | レベル2〜3 | 山間部での広範囲な点検 |
| 建物の外壁 | レベル1 | 手動操縦による近接撮影 |
農業分野
農業分野では、主にレベル2での自律飛行が活用されています。
- 農薬散布: 事前設定した飛行経路を自律飛行しながら散布(レベル2)
- 生育状況の調査: 圃場をグリッドパターンで撮影し、NDVI解析(レベル2)
- 広域農地の巡回: 広大な農地を目視外で巡回監視(レベル3〜3.5)
よくある質問
Q. レベル1やレベル2で国家資格は必要?
レベル1・レベル2では国家資格は必須ではありません。 ただし、特定飛行に該当する場合は飛行許可・承認が必要であり、国家資格があると手続きが簡素化されます。国家資格の必要性は「【FAQ】ドローンを飛ばすのに免許は必要?」で詳しく解説しています。
Q. レベル3.5は二等資格で飛べる?
はい、レベル3.5は二等無人航空機操縦士の技能証明で飛行可能です。ただし、目視外飛行の限定変更と第二種機体認証が必要です。レベル4のように一等技能証明は求められません。
Q. レベル4飛行はいつ頃一般的になる?
現時点では明確な時期を予測するのは困難ですが、型式認証を受けた機体の増加、一等技能証明の保有者の増加、運用ルールの整備、社会的受容の進展といった要素が揃うことで、段階的に普及すると見込まれています。まずはレベル3.5を活用した実績の蓄積が、レベル4の普及を後押しすると考えられます。
Q. 自分の飛行がどのレベルに該当するかわからない
以下の順番で判断してください。
- 目視内で手動操縦 → レベル1
- 目視内で自律飛行 → レベル2
- 目視外で無人地帯(補助者あり) → レベル3
- 目視外で無人地帯(補助者なし) → レベル3.5
- 目視外で有人地帯(補助者なし) → レベル4
まとめ
- ドローンの飛行レベルはレベル1〜4(+レベル3.5)の5段階に分類される
- レベル1: 目視内・手動操縦、レベル2: 目視内・自律飛行
- レベル3: 無人地帯・目視外・補助者あり、レベル3.5: 無人地帯・目視外・補助者なし
- レベル4: 有人地帯・目視外・補助者なし(最も高度な飛行形態)
- レベル3.5は2023年12月に新設され、物流や広域点検の実用化を加速
- レベル4には一等技能証明+第一種機体認証が必要
- 飛行レベルと飛行カテゴリーは別の分類基準だが密接に関連している
- 産業利用では物流・点検・農業がレベルの高度化による恩恵を受ける分野
飛行カテゴリーとの関係は「ドローンのカテゴリーI・II・IIIとは?」で、国家資格の概要は「【FAQ】ドローンを飛ばすのに免許は必要?」で解説しています。