この記事でわかること
カフェ・ホテル・商業施設などで公衆Wi-Fiサービスを提供する場合、電気通信事業法に基づく届出が必要になる場合があります。届出が必要かどうかは「他人の通信を媒介しているか」が判断基準となり、単にインターネット接続を提供するだけの場合でも対象になり得ます。
この記事では、公衆Wi-Fiサービスにおける届出の要否判断・届出手順・必要書類・届出後の義務を解説します。電気通信事業届出の基本については「電気通信事業の届出が必要なケース|SaaS・Webサービス向け」をご覧ください。
公衆Wi-Fiと電気通信事業の関係
電気通信事業の定義
電気通信事業法では、電気通信役務を他人の需要に応じて提供する事業を「電気通信事業」と定義しています。
電気通信事業とは、電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業をいう。
― 電気通信事業法 第2条第4号
公衆Wi-Fiは、利用者がインターネット上の第三者(Webサーバー等)と通信するための接続環境を提供するものです。このような「利用者の通信を中継・仲介する」行為は電気通信役務に該当するとされており、事業として反復継続して提供する場合は届出の対象となる可能性があります。
届出が必要になるケース
| サービス形態 | 届出の要否 |
|---|---|
| 不特定多数の客に無料でWi-Fiを提供するカフェ・飲食店 | 必要になる場合あり |
| 宿泊客にWi-Fiを提供するホテル・旅館 | 必要になる場合あり |
| 会員・テナント向けにWi-Fiを提供する商業施設 | 必要になる場合あり |
| 社員・従業員のみが使用する社内Wi-Fi | 原則不要(他人の通信媒介ではない) |
| 自社のみが使用するシステム用の通信 | 原則不要 |
「不特定多数の利用者に通信を提供する」形態であれば、有料・無料を問わず電気通信事業に該当し得ます。
届出の要否の判断フロー
届出が必要かどうかは以下のフローで判断します。
Step 1: 電気通信役務に該当するか
自社のWi-Fiが「他人の通信を媒介・仲介している」かどうかを確認します。来店客・宿泊客などの不特定または多数の利用者にインターネット接続を提供している場合は、原則として電気通信役務に該当します。
Step 2: 「事業として」行っているか
反復継続して提供しているか確認します。営業目的のWi-Fi提供であれば「事業として」に該当します。一時的・限定的な提供であっても、継続性があれば対象になり得ます。
Step 3: 設備規模で届出か登録かを判断
電気通信回線設備(自前の光回線設備など)を自ら設置しているか確認します。一般的な公衆Wi-Fi事業者の場合、大規模な電気通信回線設備を持たずにISPのサービスを利用していることが多く、この場合は届出(登録ではなく)が必要になります。
届出と登録の違いの詳細は「電気通信事業の届出と登録の違い|判断基準を解説」をご覧ください。
公衆Wi-Fi提供の形態と届出の考え方
ISPのサービスを利用する場合(最も一般的)
多くの公衆Wi-Fi提供者は、NTTやソフトバンク等の通信事業者から回線サービスを購入し、その回線をWi-Fiルーターで来客に提供するモデルをとっています。この場合、電気通信回線設備を自ら設置しているわけではありませんが、利用者の通信を中継する形態として電気通信事業届出の対象となる可能性があります。
公衆無線LANサービス事業者の回線を借りる場合
Wi-Fi提供を「Wi2」「ドコモWi-Fi」などの公衆無線LAN事業者のサービスとして提供する場合、Wi-Fi設備のオーナーが届出を行っているかどうかは事業者によって異なります。契約前にサービス事業者に届出の要否を確認することを推奨します。
届出の手順
届出先
本店(個人事業主の場合は事業所)の所在地を管轄する総合通信局です。
必要書類
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 電気通信事業届出書(様式第8) | 総務省のWebサイトからダウンロード |
| ネットワーク構成図 | Wi-Fiの提供形態・利用する回線・ルーター等の構成 |
| 法人の登記事項証明書 | 法人の場合のみ(発行から3ヶ月以内) |
| 事業概要説明書 | 提供するサービスの概要(施設の種類・利用者数等) |
届出の流れ
- 総務省Webサイトから様式をダウンロードし、記入する
- ネットワーク構成図を作成する
- 管轄の総合通信局に書類一式を提出(郵送または窓口)
- 届出受理の通知を受領する
届出は審査制ではなく受理制のため、書類に不備がなければ受理されます。届出にかかる費用については「電気通信事業の届出にかかる費用|自分でやる vs 代行」をご覧ください。
届出後の主な義務
届出完了後も、電気通信事業者としての義務が継続して発生します。主な義務は以下のとおりです。
| 義務の種類 | 内容 |
|---|---|
| 利用者への説明義務 | 提供するサービスの内容・料金・制限事項等を説明する |
| 通信の秘密の保護 | 利用者の通信内容を正当な理由なく取得・漏洩することの禁止 |
| 利用者情報の適切な取扱い | 外部送信規律への対応(後述) |
| 重大事故の報告 | 一定規模以上の通信障害が発生した場合の総務省への報告 |
| 変更届出 | 届出内容(代表者・住所・サービス内容等)に変更があった場合の届出 |
| 廃止届出 | サービスを廃止した場合の届出 |
届出後の義務の詳細は「電気通信事業の届出後にやるべきこと一覧」をご覧ください。
利用者情報の外部送信規律
2023年6月に電気通信事業法が改正され、利用者の端末情報を外部送信するサービスに対して、一定の規律(送信する情報の明示・利用者への通知等)が求められるようになりました。公衆Wi-FiサービスでWebフィルタリングや利用状況の分析ツールを使用している場合は対応が必要になる可能性があります。
よくある質問
Q. テナントビルのフリーWi-Fiでも届出が必要?
テナントに入居する個別店舗が、自店舗の来客向けにWi-Fiを提供する場合は届出の対象になり得ます。ビルのオーナーが提供しているWi-FiサービスをテナントがそのままPRする場合は、実際の電気通信事業者がビルオーナーであれば個別テナントの届出は不要とされる場合があります。サービス構成によって判断が変わるため、個別に確認することを推奨します。
Q. 届出をしないとどうなる?
電気通信事業法第9条に定める届出義務に違反した場合、同法第186条により6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が定められています。サービスの規模を問わず、該当する場合は届出が必要です。
Q. 外国人向けに多言語対応のWi-Fiを提供する場合も同じ?
言語対応の有無にかかわらず、電気通信事業の届出要否の判断基準は同じです。訪日外国人向けサービスであっても、提供形態が電気通信役務に該当すれば届出が必要です。
まとめ
公衆Wi-Fiサービスの電気通信事業届出について、以下のポイントを押さえてください。
- 不特定多数への公衆Wi-Fi提供は電気通信事業届出の対象になり得る
- 有料・無料を問わず、反復継続して提供する場合は届出を検討する
- 届出先は本店所在地を管轄する総合通信局
- 届出は受理制のため、書類が整えばすぐに受理される
- 届出後も通信の秘密の保護・利用者説明義務・変更届出等の義務が継続する
- 届出をしない場合は罰則の対象になり得る
電気通信事業届出の詳細は「電気通信事業の届出が必要なケース|SaaS・Webサービス向け」、変更や廃止の手続きは「電気通信事業の変更届出|届出内容に変更があった場合」をご覧ください。Wi-Fi技術の最新動向として6GHz帯の利用については「Wi-Fi 6Eは免許不要?6GHz帯の利用ルールを解説」で解説しています。