目次
この記事でわかること
離島や山間部での通信、災害時のバックアップ回線、船舶や航空機での通信。こうした用途で活用されるのがVSAT(超小型衛星通信地球局)です。VSATを利用するには、電波法に基づく免許が必要です。
この記事では、VSATの概要、免許申請の手順、必要書類、費用、そしてStarlinkなど新しい衛星通信サービスとの関係まで解説します。
VSATとは
VSAT(Very Small Aperture Terminal)は、直径の小さなアンテナ(通常1.2〜2.4m程度)を使った衛星通信地球局です。静止衛星を経由してデータ通信を行います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | Very Small Aperture Terminal(超小型衛星通信地球局) |
| アンテナサイズ | 通常1.2〜2.4m程度 |
| 通信衛星 | 主に静止軌道衛星(GEO) |
| 用途 | 企業間通信、遠隔地通信、災害時バックアップ、放送素材伝送 |
| 免許 | 総務大臣の免許が必要 |
利用できる周波数帯
VSATで一般的に利用される周波数帯は以下のとおりです。
| 周波数帯 | 上り(地球局→衛星) | 下り(衛星→地球局) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Ku帯 | 14GHz帯 | 12GHz帯 | 最も一般的。比較的小型のアンテナで利用可能 |
| Ka帯 | 30GHz帯 | 20GHz帯 | 高速通信が可能。降雨減衰の影響を受けやすい |
| C帯 | 6GHz帯 | 4GHz帯 | 降雨減衰に強いが、大型アンテナが必要 |
日本国内のVSATではKu帯が最も多く利用されています。
免許申請の手順
VSATの免許を取得するには、管轄の総合通信局に申請します。
申請の流れ
- 利用計画の策定: 通信目的、使用する衛星、周波数帯、設置場所の検討
- 衛星事業者との調整: 利用する衛星のトランスポンダー(中継器)の確保
- 申請書類の作成: 無線局免許申請書・無線局事項書・工事設計書等の作成
- 総合通信局へ申請: 管轄の総合通信局に書類を提出
- 審査: 技術基準適合の確認、電波の干渉調査
- 予備免許: 審査通過後、予備免許の交付
- 落成検査: 設備設置後の検査
- 本免許: 検査合格後、本免許の交付
必要書類
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 無線局免許申請書 | 申請者情報、無線局の種別 |
| 無線局事項書 | 運用条件、通信の相手方(衛星局の名称) |
| 工事設計書 | アンテナの仕様、送信出力、周波数等 |
| 衛星利用に関する同意書 | 衛星事業者からの利用同意 |
| 設置場所の図面 | アンテナ設置場所の詳細 |
必要な無線従事者資格
VSAT局の操作には、以下の無線従事者資格が必要です。
| 資格 | 対象 |
|---|---|
| 第一級陸上特殊無線技士 | VSAT局の操作全般 |
| 第二級陸上特殊無線技士 | 一定の条件を満たすVSAT局 |
資格の詳細は「無線従事者の種類と資格一覧|取得方法を解説」をご覧ください。
費用
免許関連費用
| 費用項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 免許申請手数料 | 約6,550円〜(収入印紙) |
| 落成検査手数料 | 約17,000円〜 |
| 電波利用料(年額) | 局の種別・出力等による |
設備費用の目安
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| VSATアンテナ | 50万〜300万円 |
| 屋内装置(モデム等) | 30万〜200万円 |
| 設置工事費 | 30万〜150万円 |
| 回線利用料(月額) | 3万〜30万円 |
回線利用料は、帯域幅や通信量によって大きく異なります。
Starlinkなど新しい衛星通信との関係
近年、Starlinkに代表される低軌道衛星(LEO)を利用した新しい衛星通信サービスが登場しています。従来のVSATとの違いを整理します。
| 項目 | VSAT(従来型) | Starlink等(LEO衛星) |
|---|---|---|
| 衛星軌道 | 静止軌道(GEO、約36,000km) | 低軌道(LEO、約550km) |
| 遅延 | 約500〜600ms | 約20〜40ms |
| アンテナサイズ | 1.2〜2.4m | 約30〜50cm |
| 免許 | 個別に免許が必要 | 端末は技適取得済みで登録局として利用可能 |
| 月額費用 | 3万〜30万円 | 約6,600円〜(個人向け) |
Starlinkの端末は日本の技適を取得しており、利用者が個別に免許を取得する必要はありません(電気通信事業者が包括免許を取得)。一方、従来型のVSAT局は個別の免許申請が必要です。
衛星通信のライセンス体系の全体像は「衛星通信のライセンス取得|地球局免許の申請ガイド」をご覧ください。
よくある質問
Q. VSATはどのような場面で使われている?
離島・山間部の通信インフラ、災害時のバックアップ回線、企業の拠点間通信、船舶通信など幅広い場面で使われています。光ファイバーが敷設できない場所での通信手段として重要です。
Q. VSATの免許の有効期間は?
5年間です。有効期間満了前に再免許の申請が必要です。
Q. Starlinkがあれば従来のVSATは不要?
用途によります。Starlinkは個人・中小企業向けの通信に適していますが、大容量の専用回線が必要な場合や、特定の衛星を指定した通信が必要な場合は、従来型のVSATが引き続き利用されています。
Q. 移動体(船舶・航空機)でもVSATは使える?
使えます。船舶用VSAT(海上移動地球局)や航空機用の衛星通信は、それぞれ専用の免許区分が設けられています。
まとめ
VSAT(超小型衛星通信地球局)の免許申請のポイントは以下のとおりです。
- VSATとは: 小型アンテナを使った衛星通信地球局
- 周波数帯: Ku帯(14/12GHz)が最も一般的
- 申請先: 管轄の総合通信局
- 必要資格: 第一級または第二級陸上特殊無線技士
- Starlinkとの違い: Starlinkは技適取得済みで個別免許不要、VSATは個別免許が必要
衛星通信の全体像は「衛星通信のライセンス取得|地球局免許の申請ガイド」、無線局免許の基本は「無線局免許の申請方法|種類と手続きの流れ」をご覧ください。総合通信局については「総合通信局の役割と管轄エリア一覧」をご覧ください。