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VSAT地球局の工事設計書の書き方

この記事でわかること

VSAT地球局の免許申請において、最も技術的な内容を記載するのが工事設計書です。工事設計書の記載内容が不十分であったり、技術基準に適合していなかったりすると、審査が長期化する原因になります。

この記事では、VSAT地球局の工事設計書に記載すべき項目、具体的な書き方、よくある不備と対策を解説します。免許申請をスムーズに進めるための実務的な参考としてご活用ください。

工事設計書とは

免許申請における位置づけ

工事設計書は、無線局免許申請の際に提出する書類の一つです。無線設備の技術的な仕様を詳細に記載する書類であり、総合通信局の審査において最も重視される部分です。

無線局の免許を申請するには、(中略)工事設計書を添えて総務大臣に提出しなければならない。 ― 電波法 第6条(要旨)

他の申請書類との関係

VSAT局の免許申請では、以下の書類を提出します。工事設計書はこの中の技術面を担当する書類です。

書類 内容 工事設計書との関係
無線局免許申請書 申請者情報、無線局の種別 基本情報
無線局事項書 通信の相手方、運用条件 運用面の記載
工事設計書 アンテナ・送受信機の技術仕様 技術面の中核
衛星事業者の同意書 衛星利用の同意 技術条件の裏付け
設置場所の図面 アンテナ設置場所 工事設計の前提

工事設計書の記載項目

全体の構成

VSAT地球局の工事設計書には、以下の項目を記載します。

大項目 記載内容
送信機 送信出力、変調方式、送信周波数
受信機 受信周波数、受信感度
空中線(アンテナ) 型式、利得、指向特性
給電線 給電線の種類、損失
電源 電源の種類、容量
その他 附属装置、監視制御装置

Step 1: 送信機の記載

送信機に関する記載項目は以下のとおりです。

記載項目 内容 記載例
送信周波数 使用する周波数の範囲 14.0〜14.5GHz
空中線電力 送信出力 2W
変調方式 デジタル変調の種類 QPSK、8PSK等
占有周波数帯幅 信号が占有する帯域幅 36MHz
送信機の型式名 送信機の製造者・型番 メーカー名・型番を記載

送信周波数は、衛星事業者から割り当てられた周波数帯を正確に記載する必要があります。衛星事業者との契約書や利用同意書に記載された周波数と一致していることを確認してください。

Step 2: 受信機の記載

記載項目 内容 記載例
受信周波数 受信する周波数の範囲 12.25〜12.75GHz
受信感度 受信機の感度 G/T値で記載
受信機の型式名 受信機の製造者・型番 メーカー名・型番を記載

Ku帯VSATの場合、上り(送信)が14GHz帯、下り(受信)が12GHz帯というのが典型的な構成です。

Step 3: 空中線(アンテナ)の記載

アンテナに関する記載は、工事設計書の中でも特に重要な部分です。

記載項目 内容 記載例
型式 アンテナの種類 カセグレンアンテナ、オフセットパラボラアンテナ等
口径 アンテナの直径 1.2m
利得 アンテナの利得 送信:42dBi、受信:40dBi
指向特性 サイドローブ特性等 ITU-R勧告に基づくパターン
偏波 電波の偏波方式 直線偏波(垂直/水平)、円偏波
方位角・仰角 衛星への指向方向 方位角:XXX度、仰角:XX度

アンテナの指向特性は、隣接衛星への干渉を評価するための重要な情報です。ITU-R勧告S.580等に規定される基準放射パターンに適合することが求められます。

Step 4: 給電線の記載

記載項目 内容 記載例
給電線の種類 同軸ケーブル、導波管等 同軸ケーブル
損失 給電線における信号の減衰量 1.5dB
長さ 給電線の長さ 30m

Step 5: EIRP等の計算

工事設計書では、以下の計算値を記載することが求められる場合があります。

計算項目 計算方法 意味
EIRP 空中線電力 + アンテナ利得 – 給電線損失 実効的な放射電力
EIRP密度 EIRP / 占有帯域幅 単位帯域幅あたりの放射電力

EIRP(Equivalent Isotropically Radiated Power:等価等方放射電力)は、衛星通信における送信性能を表す重要な指標です。衛星事業者が指定する最大EIRP値を超えないことを確認する必要があります。

Step 6: 電源の記載

記載項目 内容
電源の種類 商用電源(AC100V/200V)
予備電源 無停電電源装置(UPS)の有無、バッテリー容量

よくある不備と対策

工事設計書で審査が差し戻される原因となりやすい不備を紹介します。

不備1: 周波数の記載が不正確

よくある不備 対策
衛星事業者の割当周波数と一致しない 衛星事業者の同意書と照合して正確に記載
周波数の単位の誤り(MHz/GHz) 単位を統一して確認

不備2: アンテナ特性の記載不足

よくある不備 対策
サイドローブ特性が未記載 メーカーの仕様書からサイドローブデータを取得
アンテナの方位角・仰角が未記載 設置場所と対象衛星から計算して記載

不備3: EIRP計算の誤り

よくある不備 対策
給電線損失を考慮していない 空中線電力 + 利得 – 損失の正確な計算
最大EIRP値を超過している 衛星事業者の指定値以内であることを確認

不備4: 型式名の不一致

よくある不備 対策
送信機や受信機の型番が実際と異なる メーカーの最新カタログで正確な型番を確認

工事設計書作成のポイント

衛星事業者との連携

工事設計書を作成する際は、衛星事業者(通信衛星の運用事業者)と十分に連携することが重要です。

  • 利用条件の確認: 割り当てられた周波数帯、最大EIRP、変調方式等
  • 同意書の取得: 工事設計書の内容と整合性のある同意書を取得
  • 技術データの提供: アンテナやモデムのメーカーから必要な技術データを入手

設置場所との整合性

工事設計書に記載する方位角・仰角は、実際の設置場所から対象衛星への方向を正確に計算する必要があります。

  • 設置場所の緯度・経度: 正確な位置情報が必要
  • 対象衛星の軌道位置: 静止衛星の経度から方位角・仰角を計算
  • 周辺の遮蔽物: 建物や山などにより衛星が見通せるか確認

VSAT局の免許申請全体の流れについては「VSAT(衛星通信)の免許申請|手続きの流れと費用」で解説しています。また、地球局の種類による免許区分の違いは「衛星地球局の種類と免許区分|固定・移動・VSAT」をご覧ください。

まとめ

VSAT地球局の工事設計書に関する要点は以下のとおりです。

  • 工事設計書は、送信機・受信機・アンテナ・給電線・電源の技術仕様を記載する書類
  • 送信周波数、空中線電力、アンテナ利得、EIRPが特に重要な記載項目
  • 衛星事業者の利用条件と整合性がとれていることが審査のポイント
  • アンテナのサイドローブ特性や方位角・仰角の記載漏れに注意
  • EIRP計算は給電線損失を含めて正確に行う必要がある
  • 不備があると審査が長期化するため、事前の確認が重要

工事設計書の作成は専門性の高い作業です。電波法に精通した行政書士に依頼することで、不備のない書類を効率的に作成できます。

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