目次
この記事でわかること
レジャーボートや小型漁船で国際VHF無線を使用する場合、特定船舶局として免許を受けるのが最も手軽な方法です。特定船舶局は通常の船舶局と異なり、包括免許制度により手続きが大幅に簡略化されています。
この記事では、特定船舶局の制度の概要、通常の船舶局との違い、開局申請の手順と必要書類、費用の目安、運用上の注意点までを解説します。
特定船舶局とは
特定船舶局は、電波法第27条の29に基づく包括免許の対象となる船舶局です。技術基準適合証明を受けた無線設備(いわゆる技適マーク付きの機器)のみを使用する場合に、個別の落成検査なしで免許を受けられる制度です。
適合表示無線設備のみを使用する船舶局であつて総務省令で定めるもの(以下「特定船舶局」という。)を二以上開設しようとする者は、その特定船舶局に使用する無線設備につき、包括免許を受けることができる。
― 電波法 第27条の29第1項
包括免許制度のメリット
包括免許制度には、通常の船舶局免許と比べて以下のメリットがあります。
- 落成検査が不要: 技適マーク付き機器を使用するため、個別の検査が省略される
- 手続きが簡素: 申請書類が少なく、審査期間も短い
- 複数局を一括管理: 一つの包括免許で複数の船舶の特定船舶局を管理できる
- 費用が抑えられる: 手数料・電波利用料が通常の船舶局より安い
通常の船舶局との違い
特定船舶局と通常の船舶局の主な違いを比較します。
| 比較項目 | 特定船舶局 | 通常の船舶局 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 電波法第27条の29 | 電波法第4条 |
| 免許の種類 | 包括免許 | 個別免許 |
| 対象設備 | 技適マーク付き機器のみ | 制限なし |
| 落成検査 | 不要 | 必要 |
| 定期検査 | 不要 | 必要 |
| 使用周波数 | 国際VHF帯が主 | 各種周波数帯 |
| 手数料 | 比較的安価 | 設備数により高額になることも |
| 適用船舶 | 小型船舶・レジャーボート等 | 全般 |
通常の船舶局の手続きについては船舶局の免許申請|開局手順と必要書類を参照してください。
特定船舶局の対象設備
特定船舶局として免許を受けられる無線設備は、以下の要件を満たすものです。
- 技術基準適合証明(技適)を受けていること
- 国際VHF帯(156〜162MHz)の無線電話であること
- DSC(デジタル選択呼出し)機能を備えていること
- 空中線電力が25W以下であること
市販の国際VHF無線機(据置型・ハンディ型)のうち、技適マークが付いている製品であれば特定船舶局の対象となります。
開局申請の手順
Step 1: 無線従事者資格の取得
特定船舶局を操作するには、以下の資格のいずれかが必要です。
| 資格 | 取得方法 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 第三級海上特殊無線技士 | 養成課程(講習) | 約1日 |
| 第二級海上特殊無線技士 | 養成課程 又は 国家試験 | 約2日(講習)/ 随時(試験) |
| 第三級海上無線通信士以上 | 国家試験 | 随時 |
最も手軽なのは、第三級海上特殊無線技士の養成課程です。全国各地で開催されており、約1日の講習と修了試験で取得できます。無線従事者資格の全体像は無線従事者をご確認ください。
Step 2: 技適マーク付き無線機の購入
技術基準適合証明を受けた国際VHF無線機を購入します。購入時に確認すべき点は以下のとおりです。
- 技適マークが表示されていること
- DSC機能が搭載されていること
- 据置型の場合、外部アンテナの接続が可能であること
- ハンディ型の場合、防水性能(IPX7以上が望ましい)を確認
Step 3: 開局届出書の提出
特定船舶局の開設にあたり、以下の書類を総合通信局に提出します。
- 無線局開設届出書(特定船舶局用の所定様式)
- 技適番号の情報(無線機の技適証明番号)
- 無線従事者資格証明書の写し
- 船舶情報(船名、船舶番号、船籍港、総トン数等)
申請は電子申請システム(Lite)でも行えます。電子申請を利用すると手続きが迅速に処理されるうえ、手数料も軽減されます。
Step 4: MMSI番号の設定
免許交付時にMMSI番号(海上移動業務識別番号)が割り当てられます。この番号を無線機にプログラミング(設定入力)する必要があります。
MMSI番号の設定は通常、無線機の販売店や取付業者が行います。一度設定すると変更できない機種もあるため、免許交付後に設定を依頼するのが確実です。
Step 5: 運用開始
免許が交付され、MMSI番号の設定が完了したら運用を開始できます。
包括免許で複数船舶を管理する場合
包括免許制度の大きなメリットの一つが、一つの免許で複数の船舶の特定船舶局を管理できる点です。
たとえば、マリーナ事業者やレンタルボート業者が複数の船舶に国際VHFを搭載する場合、船舶ごとに個別の免許を取得する必要がなく、包括免許のもとで各船舶の開設届出を行えば足ります。
開設届出の追加・変更
包括免許の下で新たに船舶を追加する場合は、開設届出書を追加で提出するだけで済みます。船舶を廃止する場合は廃止届出を提出します。
運用上の注意点
免許状の備付け
特定船舶局であっても、免許状の写しを船内に備え付ける義務があります。包括免許の場合は、包括免許の免許状の写しと、当該船舶の開設届出書の写しを備え付けます。
チャンネル16の聴守
航行中はチャンネル16(156.8MHz)の常時聴守に努めてください。これは海上での安全確保の基本です。
秘密の保護
何人も法律に別段の定めがある場合を除くほか、特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受してその存在若しくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない。
― 電波法 第59条
無線通信で知り得た他者の通信内容を漏洩してはならない点にも注意が必要です。
費用の目安
特定船舶局に関連する費用の目安は以下のとおりです。
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 国際VHF無線機(据置型) | 50,000〜150,000円 |
| 国際VHF無線機(ハンディ型) | 30,000〜80,000円 |
| 第三級海上特殊無線技士(養成課程) | 20,000〜30,000円 |
| 包括免許申請手数料 | 2,900円程度 |
| 電波利用料(年額・1局あたり) | 400円 |
電波利用料の詳細は船舶・航空無線の電波利用料|料額一覧と納付をご確認ください。
まとめ
特定船舶局は、レジャーボートや小型漁船で国際VHFを手軽に利用するための制度です。要点を整理します。
- 特定船舶局は包括免許制度により手続きが簡素化されている
- 技適マーク付きの無線機を使用することが要件
- 落成検査・定期検査が不要で、通常の船舶局より負担が少ない
- 操作には第三級海上特殊無線技士以上の資格が必要
- 一つの包括免許で複数の船舶を管理できる
- MMSI番号の設定は免許交付後に行う
小型船舶での安全な航行のため、国際VHFの搭載を検討してみてください。申請手続きに不安がある場合は、行政書士にご相談ください。