目次
この記事でわかること
船舶レーダーは航行の安全に欠かせない航海計器ですが、電波を発射する装置であるため、電波法上の無線局免許が必要な場合があります。特に小型船舶の場合、レーダーの種類によって免許の要否が異なるため注意が必要です。
この記事では、船舶レーダーの免許が必要なケースと不要なケース、搭載義務の基準、免許申請の手順と必要書類、必要な無線従事者資格、費用の目安を解説します。
船舶レーダーと電波法
船舶レーダーは、マイクロ波(主に9GHz帯・3GHz帯)を発射して周囲の物標を探知する装置です。電波を発射する装置であるため、原則として電波法第4条に基づく無線局免許が必要です。
無線局を開設しようとする者は、総務大臣の免許を受けなければならない。
― 電波法 第4条
ただし、一定の条件を満たすレーダーについては、免許が不要とされています。
免許が必要なレーダーと不要なレーダー
免許が不要なレーダー
以下の条件を満たすレーダーは、無線局免許が不要です。
- 技術基準適合証明(技適)を受けた機器であること
- 空中線電力が一定以下であること
- 電波法施行規則で定める微弱無線局に該当するもの
近年の小型船舶用レーダーの中には、半導体(ソリッドステート)方式を採用し、技適を取得した免許不要のレーダーも販売されています。
免許が必要なレーダー
以下に該当するレーダーは、船舶局の免許(またはレーダー単独の免許)が必要です。
- マグネトロン方式のレーダー(大出力のもの)
- 技術基準適合証明を受けていないレーダー
- 空中線電力が技適の範囲を超えるレーダー
特に、SOLAS条約適用船舶に搭載されるレーダーは免許が必要です。
| レーダーの種類 | 免許の要否 | 備考 |
|---|---|---|
| 技適マーク付き小型レーダー | 不要 | 小型船舶向けの一部製品 |
| マグネトロン方式レーダー | 必要 | 大型船舶・漁船向け |
| SOLAS適合レーダー | 必要 | 義務船舶局の一部 |
レーダーの搭載義務
船舶安全法および関連省令により、一定の船舶にはレーダーの搭載が義務づけられています。
搭載義務のある船舶
| 船舶の種類 | 航行区域 | レーダーの搭載義務 |
|---|---|---|
| 総トン数500トン以上 | すべて | 義務 |
| 総トン数300トン以上500トン未満 | 近海以遠 | 義務 |
| 旅客船 | 沿海以遠 | 義務(トン数による) |
| 漁船(一定以上) | 定めによる | 義務(漁船特殊規程による) |
| 小型船舶(20トン未満) | – | 義務なし(任意搭載) |
小型船舶には搭載義務はありませんが、夜間航行や視界不良時の安全確保のために任意で搭載するケースが増えています。
免許申請の手順
レーダーの免許が必要な場合の申請手順を説明します。
Step 1: レーダーの選定
搭載するレーダーを選定します。選定時の確認事項は以下のとおりです。
- 使用周波数帯: 9GHz帯(Xバンド)又は3GHz帯(Sバンド)
- 空中線電力: 出力によって免許の要否が変わる
- 技適の有無: 技適マーク付きなら免許不要の場合あり
- 表示方式: カラー液晶、レーダー/チャートプロッター一体型等
- アンテナの種類: オープン型、レドーム型
Step 2: 無線従事者資格の確認
レーダーの操作には、以下の資格のいずれかが必要です。
| 資格 | 備考 |
|---|---|
| レーダー級海上特殊無線技士 | レーダーのみ操作可能 |
| 第三級海上特殊無線技士以上 | レーダーを含む操作が可能 |
| 第四級海上無線通信士以上 | レーダーを含む操作が可能 |
レーダーのみを搭載する場合は、レーダー級海上特殊無線技士の資格で足ります。ただし、国際VHFなど他の無線設備も合わせて搭載する場合は、第三級海上特殊無線技士以上の資格を取得するのが合理的です。
資格の取得方法については海上無線通信士の資格一覧|種類と取得方法を参照してください。
Step 3: 申請書類の準備
レーダーの免許申請に必要な書類は以下のとおりです。
- 無線局免許申請書(総務省所定様式)
- 無線局事項書
- 工事設計書(レーダーの技術的諸元を記載)
- 船舶の情報(船名、船舶番号等)
- 無線従事者の資格証明書の写し
- 手数料の納付を証する書類
すでに船舶局の免許を持っている場合は、変更申請としてレーダーを追加する形になります。
Step 4: 総合通信局への提出
申請書類を船舶の主たる停泊港を管轄する総合通信局に提出します。管轄については総合通信局を参照してください。
Step 5: 審査・予備免許・落成検査
総合通信局による審査の後、予備免許が交付されます。レーダーの設置工事を行い、落成検査を受けます。
落成検査では以下の事項が確認されます。
- レーダーが工事設計書どおりに設置されているか
- 不要発射が技術基準に適合しているか
- アンテナの設置位置が適切か(ブラインドセクターの確認)
- 電波防護の措置が適切か
落成検査に合格すると本免許が交付されます。検査の詳細は無線局検査を参照してください。
既存の船舶局にレーダーを追加する場合
すでに船舶局の免許を持っている船舶にレーダーを追加する場合は、変更申請を行います。
変更申請の手順
- 無線局変更申請書を作成
- 変更に係る工事設計書を作成(レーダーの技術的諸元)
- 総合通信局に提出
- 審査・変更検査の実施
- 免許状の訂正
変更申請の場合、新規申請と比べて手続きが簡略化されます。
レーダーの設置に関する注意点
アンテナの設置位置
レーダーアンテナは、できるだけ高い位置に設置するのが原則です。アンテナが低い位置にあると、船体やマスト等によるブラインドセクター(死角)が発生し、物標の探知に支障をきたします。
電波防護
レーダーのアンテナからはマイクロ波が放射されます。人体への影響を防ぐため、以下の措置が必要です。
- アンテナの高さを確保する(人が近づけない位置に設置)
- 必要に応じて注意表示を行う
- 整備作業時はレーダーを停止する
他の電子機器への干渉
レーダーは大出力のマイクロ波を発射するため、GPS受信機やAIS、通信用無線機等に干渉を与える場合があります。アンテナの設置位置を工夫し、十分な離隔距離を確保することが重要です。
費用の目安
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 小型船舶用レーダー(免許不要型) | 100,000〜300,000円 |
| 小型船舶用レーダー(免許必要型) | 200,000〜500,000円 |
| レーダー級海上特殊無線技士(養成課程) | 20,000円前後 |
| 免許申請手数料(新規) | 3,550円〜 |
| 免許申請手数料(変更) | 2,550円〜 |
| 電波利用料(年額) | レーダー分として加算 |
電波利用料の詳細は船舶・航空無線の電波利用料|料額一覧と納付をご確認ください。
まとめ
船舶レーダーの免許申請は、航行安全のために重要な手続きです。要点を整理します。
- 船舶レーダーは電波を発射するため原則として無線局免許が必要
- 技適マーク付きの小型レーダーは免許不要の場合がある
- 操作にはレーダー級海上特殊無線技士以上の資格が必要
- 既存の船舶局にレーダーを追加する場合は変更申請で対応
- アンテナの設置位置はブラインドセクターと電波防護を考慮
- 小型船舶への搭載義務はないが安全のために搭載を推奨
レーダーの免許手続きに不安がある場合は、行政書士にご相談ください。