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電気通信事業とMVNO参入の手続き

この記事でわかること

MVNO(Mobile Virtual Network Operator、仮想移動体通信事業者)は、自らは携帯電話の基地局などの無線設備を持たず、MNO(移動体通信事業者)のネットワークを借り受けて通信サービスを提供する事業形態です。

MVNOとして事業を開始するには、電気通信事業法に基づく届出または登録が必要です。この記事では、MVNO参入に必要な手続き・MNOとの接続・事業計画のポイントを解説します。

MVNOの仕組み

MVNOとMNOの違い

項目 MNO MVNO
正式名称 移動体通信事業者 仮想移動体通信事業者
自社の無線設備 あり(基地局等を保有) なし(MNOから借り受け)
無線局免許 必要 不要(MNOの免許を利用)
電気通信事業の届出/登録 登録 届出または登録
具体例 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル IIJmio、mineo、OCNモバイル等

MVNOは自ら無線局の免許を取得する必要はありませんが、電気通信事業法に基づく手続きは必要です。

MVNE・MVNAとの関係

MVNO事業には、MVNE(仮想移動体サービス提供者)やMVNA(MVNO支援事業者)が関わる場合があります。

事業者 役割
MNO 無線ネットワークを保有・運用
MVNE MVNOに対して技術的なプラットフォームを提供
MVNA MNOとMVNOの間に立ち、接続や交渉を支援
MVNO エンドユーザーに通信サービスを提供

自社で技術基盤を構築する場合はMNOと直接接続しますが、技術リソースが限られる場合はMVNEやMVNAを活用する方法もあります。

電気通信事業の届出と登録

届出と登録の判断基準

電気通信事業を行うには、事業の規模に応じて届出または登録が必要です。

区分 条件 根拠条文
届出 電気通信回線設備を設置しない、または小規模な設備のみ設置 電気通信事業法 第16条
登録 一定規模以上の電気通信回線設備を設置 電気通信事業法 第9条

電気通信事業を営もうとする者は、総務大臣の登録を受けなければならない。(中略)ただし、(中略)届出により足りるものとされている電気通信事業を営もうとする者は、この限りでない。

― 電気通信事業法 第9条(趣旨)

MVNOの場合、多くは自ら大規模な回線設備を設置しないため届出で足りるケースが一般的ですが、事業内容によっては登録が必要になる場合もあります。

電気通信事業の届出の詳細は「電気通信事業の届出が必要なケース|SaaS・Webサービス向け」をご覧ください。

届出に必要な書類

MVNOとして電気通信事業の届出を行う場合、以下の書類が必要です。

書類名 内容
電気通信事業届出書 電気通信事業法施行規則で定められた様式
提供する電気通信役務の概要 サービス内容の説明
電気通信設備の概要 使用する設備の構成
ネットワーク構成図 通信の経路を示す図面
法人の場合は登記事項証明書 法人の基本情報
欠格事由に該当しない旨の誓約書 電気通信事業法上の欠格事由の確認

届出先と届出時期

項目 内容
届出先 総務省(関東総合通信局等)
届出時期 事業開始前
届出方法 書面または電子申請
届出後の手続き 届出書の受理をもって事業開始可能

届出の場合は、届出書が受理された時点で事業を開始できます。登録の場合は審査があり、登録通知を受けてから事業を開始します。

MNOとの接続交渉

接続の仕組み

MVNOがサービスを提供するには、MNOのネットワークに接続する必要があります。電気通信事業法では、一定の条件を満たすMNOに対して接続義務を課しています。

電気通信回線設備を設置する電気通信事業者は、(中略)他の電気通信事業者から当該電気通信回線設備との接続の請求を受けたときは、(中略)接続に応じなければならない。

― 電気通信事業法 第32条(趣旨)

接続形態

MVNOとMNOの接続形態には、主に以下の種類があります。

接続形態 概要 メリット
L2接続 レイヤー2(データリンク層)での接続 自社で柔軟なサービス設計が可能
L3接続 レイヤー3(ネットワーク層)での接続 技術的なハードルが低い
再販型 MNOのサービスをそのまま再販 初期投資が最小限

L2接続は技術的な自由度が高い反面、自社で設備投資が必要です。再販型は参入障壁が低いですが、サービスの差別化が難しくなります。

接続約款

MNOは、MVNOとの接続条件を定めた接続約款を総務大臣に届け出ています。接続約款には、接続料(卸料金)や接続の技術条件が記載されています。

MVNO参入の手続きの流れ

Step 1: 事業計画の策定

MVNOとして提供するサービスの内容、ターゲット顧客、料金プラン、接続形態などの事業計画を策定します。

Step 2: MNOとの接続交渉

接続先のMNOを選定し、接続条件の交渉を行います。MNOの接続約款を確認し、接続料や技術条件を把握します。MVNEやMVNAを活用する場合は、この段階で契約を検討します。

Step 3: 電気通信事業の届出(または登録)

事業内容に応じて、総務省に電気通信事業の届出(または登録申請)を行います。

Step 4: 設備の構築・準備

自社のシステム(課金システム、顧客管理システム等)を構築し、サービス提供の準備を行います。L2接続の場合は、自社の通信設備の構築も必要です。

Step 5: サービス開始

すべての準備が整ったら、サービスの提供を開始します。

MVNO参入時の注意点

総務省のMVNOに係る電気通信事業法等の適用関係に関するガイドライン

総務省は「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」を公表しており、MVNOに対する電気通信事業法の適用関係を整理・明確化しています。MVNO参入を検討する際は、このガイドラインを確認することが重要です。

利用者保護に関する義務

MVNOは電気通信事業者として、以下の利用者保護に関する義務を負います。

義務 内容
契約前の説明義務 サービス内容・料金等を契約前に説明
書面交付義務 契約内容を記載した書面を交付
初期契約解除制度 一定期間内は契約解除が可能
苦情処理 利用者からの苦情に適切に対応
通信の秘密の保護 通信の秘密を侵してはならない

電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない。

― 電気通信事業法 第4条第1項

電気通信番号の取得

MVNOがMNOから独立した電話番号を利用する場合は、電気通信番号の指定を総務大臣から受ける必要があります。

番号の種類 用途
090/080/070番号 携帯電話番号
050番号 IP電話番号
020番号 M2M・IoT用番号

ただし、MNOの番号を利用する形態(MNP含む)では、MVNO自身が番号を取得する必要がない場合もあります。

行政書士に依頼するメリット

MVNO参入の手続きは、電気通信事業法の理解に加えて事業計画の整理やネットワーク構成の記述が求められます。行政書士に依頼することで、以下のメリットがあります。

  • 届出書類の正確な作成: 法令に適合した書類を作成
  • 制度の適用関係の整理: 届出で足りるのか登録が必要なのかの判断
  • ネットワーク構成図の作成支援: 総務省が求める形式での作成
  • 変更届出の対応: 事業内容の変更時の届出手続き

電波法に基づく免許申請の全体像については「電波法とは」をご覧ください。

まとめ

MVNO参入の手続きに関するポイントは以下のとおりです。

  • MVNOは自ら無線局免許を取得する必要はないが、電気通信事業の届出または登録が必要
  • 多くのMVNOは自ら大規模回線設備を設置しないため届出で足りる
  • MNOとの接続交渉がサービス品質とコストを左右する
  • MVNE・MVNAの活用で技術的なハードルを下げることが可能
  • 利用者保護に関する義務を遵守する必要がある
  • 総務省のMVNOガイドラインを確認することが重要

MVNO参入を検討している方は、電気通信事業法に精通した行政書士にご相談ください。

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