目次
この記事でわかること
企業や団体が無線局を開設・運営する場合、無線従事者の選任届出が必要なケースがあります。無線従事者の選任・解任は電波法で定められた義務であり、届出を怠ると罰則の対象になります。
この記事では、無線従事者の選任が必要な無線局の種別、選任届出の手続き、解任届出、主任無線技術者制度について解説します。無線局の免許申請の全体像は「無線局の免許申請|種類・手順・費用を解説」をご覧ください。
無線従事者の選任とは
選任の根拠
電波法では、無線局の操作を行う者(無線従事者)を選任し、総合通信局長に届け出ることを義務付けています。
無線局には、無線設備の操作を行う者として、無線従事者を置かなければならない。
― 電波法 第39条第1項(趣旨)
無線従事者の選任が義務付けられているのは、無線設備を適切な技術知識を持った有資格者に操作させることで、電波の適正な利用を確保するためです。
選任が必要な無線局
すべての無線局で有資格の無線従事者が操作を行う必要がありますが、主任無線技術者の選任(選解任届出)が法令上義務付けられているのは、一定の種別・規模の無線局に限られます。
主任無線技術者の選任が必要な無線局の具体的な要件は、電波法施行令および総務省令で定められており、主な対象は以下のとおりです。
| 無線局の種別 | 選任の要否 |
|---|---|
| 中規模以上の陸上移動局・固定局 | 選任が必要(一定の電力・用途による) |
| 海岸局・船舶局 | 選任が必要(要件による) |
| 航空局・航空機局 | 選任が必要(要件による) |
| アマチュア無線局 | 原則不要(個人免許局の場合) |
| 小規模な業務用無線局 | 要件による(電波法施行令で確認) |
自社の無線局が主任無線技術者の選任義務の対象かどうかは、電波法施行令第34条の2以降の規定および管轄の総合通信局に確認してください。
主任無線技術者の選任届出
選任届出の概要
主任無線技術者を選任した場合、遅滞なく総務大臣(実務上は管轄の総合通信局)に届け出なければなりません。
無線局の免許人等は、主任無線技術者を選任したときは、遅滞なく、その旨を総務大臣に届け出なければならない。
― 電波法 第39条第4項
選任できる者の資格要件
主任無線技術者に選任できるのは、管理する無線局の種別に対応した無線従事者資格を持つ者です。
| 無線局の種別 | 必要な資格(主な例) |
|---|---|
| 陸上系の大規模無線局 | 第1級陸上無線技術士等 |
| 海上系の無線局 | 海上無線通信士(第1〜4級)等 |
| 航空系の無線局 | 航空無線通信士等 |
| 陸上移動局等 | 第3級以上の陸上特殊無線技士等(要件による) |
具体的な資格要件は無線局の種別ごとに電波法施行令等で定められています。
選任届出の手続き
届出先
無線局の免許を交付した総合通信局(管轄の地方総合通信局)に届け出ます。
必要書類
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 主任無線技術者選解任届出書 | 総務省の書式(電波利用ホームページからダウンロード) |
| 無線従事者免許証の写し | 選任する者の資格を証明する書類 |
届出の流れ
- 選任する無線従事者の資格が、対象無線局の種別に適合していることを確認する
- 総務省の書式「主任無線技術者選解任届出書」に必要事項を記入する
- 無線従事者免許証の写しを添付する
- 管轄の総合通信局に提出する(郵送または窓口)
- 届出受理の確認を行う
電子申請での届出
主任無線技術者の選解任届出は、電子申請・届出システム(総務省の電波利用 電子申請・届出システム)でも手続き可能です。電子申請の操作に不慣れな場合は書面での提出も可能です。
主任無線技術者の解任届出
主任無線技術者を解任した場合も、遅滞なく解任届出が必要です。解任後は速やかに後任の主任無線技術者を選任し、選任届出を行う必要があります。
無線局の免許人等は、主任無線技術者を解任したときは、遅滞なく、その旨を総務大臣に届け出なければならない。
― 電波法 第39条第4項
解任が発生する主なケース
- 主任無線技術者が退職した
- 担当部署の変更・組織変更により担当者が変わった
- 資格が失効した(取り消し等)
解任後に後任の選任が間に合わない場合、選任義務を果たせない状態になります。後任の選任が遅れると電波法上の義務違反になり得るため、担当者の退職・異動が判明した時点で速やかに後任の確保と手続きを進めることを推奨します。
主任無線技術者の職務
選任された主任無線技術者には以下の職務があります。
| 職務の内容 | 根拠 |
|---|---|
| 無線設備の操作・監督 | 電波法第39条 |
| 無線設備の定期検査への立ち会い | 関係省令 |
| 無線設備の点検・整備 | 電波法第60条等 |
| 無線局の運用に関する規律の維持 | 電波法第59条等 |
主任無線技術者は単に資格証を提出する形式的な役割ではなく、実際に無線設備の管理・監督を行う実務上の責任者です。
無線従事者資格との関係
主任無線技術者として選任されるためには、管理する無線局の種別に対応する無線従事者資格の保有が必要です。資格の種類と取得方法については「無線従事者資格の選び方|目的別おすすめ一覧」をご覧ください。
無線従事者の資格一覧は「無線従事者の種類と資格一覧|ドローンに必要な資格は?」でも確認できます。
よくある質問
Q. 選任届出をしなかった場合の罰則は?
電波法第39条に定める選任義務に違反した場合、罰則の対象になり得ます。電波法上の義務不履行に対する罰則の詳細は電波法第110条以降で定められています。選任義務がある無線局を運営する場合は、必ず適切に届出を行ってください。
Q. 複数の無線局を持つ場合、主任無線技術者は1人で兼務できる?
一定の要件のもとで兼務が認められる場合があります。兼務できるかどうかは無線局の種別・規模・距離等の要件によって異なります。詳細は総務省の告示・通達または管轄の総合通信局に確認してください。
Q. 主任無線技術者は社外の人を選任できる?
外部の有資格者を選任することも可能です。ただし、主任無線技術者は実際に無線設備の管理・監督を行う責任者であるため、形式的な選任(実態を伴わない選任)は適切ではありません。
Q. 主任無線技術者の選任と操作従事者の届出は別もの?
別の制度です。 主任無線技術者(電波法第39条に基づく選任)と、個々の無線設備の操作者(免許人が操作を行う場合等)は制度上区別されています。主任無線技術者の選任が義務付けられている無線局では、主任無線技術者を選任した上で、その下で適切な操作者が操作を行います。
まとめ
無線従事者の選任届出について、企業が知っておくべきポイントは以下のとおりです。
- 一定の無線局には主任無線技術者の選任と届出が義務付けられている
- 選任時・解任時ともに遅滞なく管轄の総合通信局への届出が必要
- 選任できるのは、無線局の種別に対応する無線従事者資格を持つ者
- 解任後は速やかに後任を選任し、選任届出を行う
- 主任無線技術者は実際に無線設備の管理・監督を行う実務上の責任者
- 義務違反は電波法上の罰則の対象になり得る
無線局の免許申請については「無線局の免許申請|種類・手順・費用を解説」をご覧ください。