この記事でわかること
日本で無線局を操作するには、無線従事者の資格が必要です。無線従事者の資格は全部で23種類あり、用途や技術レベルに応じて細かく分かれています。
この記事では、無線従事者の全資格の一覧と概要、ドローン・FPVドローンに必要な資格、資格の取得方法を解説します。
無線従事者とは
制度の概要
無線従事者とは、電波法に基づいて無線設備の操作を行う資格を持つ者です。
無線設備の操作は、(中略)無線従事者でなければ行つてはならない。
― 電波法 第39条第1項
無線局を開設するだけでなく、無線設備を実際に操作する者が資格を持っていなければなりません。資格を持たずに無線設備を操作すると電波法違反になります。罰則の詳細は「電波法違反の罰則一覧|知らなかったでは済まない」をご覧ください。
無線従事者免許証
国家試験や養成課程を経て資格を取得すると、無線従事者免許証が交付されます。この免許証は生涯有効で、更新は不要です(無線局の免許とは異なります)。
無線従事者の資格一覧
無線従事者の資格は大きく5つの分類に分かれています。
総合無線通信士(3種類)
| 資格名 | 操作範囲 | 難易度 |
|---|---|---|
| 第一級総合無線通信士 | すべての無線局の操作 | 最高 |
| 第二級総合無線通信士 | 船舶局・航空局等の操作 | 高 |
| 第三級総合無線通信士 | 漁船・沿岸船の無線局等 | 中 |
総合無線通信士は最も範囲が広い資格で、モールス通信の実技試験もあります。船舶や航空の通信業務に就く場合に必要です。
海上無線通信士(4種類)
| 資格名 | 操作範囲 | 難易度 |
|---|---|---|
| 第一級海上無線通信士 | 大型船舶の無線局 | 高 |
| 第二級海上無線通信士 | 中型船舶の無線局 | 中 |
| 第三級海上無線通信士 | 小型船舶等の無線局 | やや低 |
| 第四級海上無線通信士 | 沿岸船等の無線局 | 低 |
航空無線通信士(1種類)
| 資格名 | 操作範囲 | 難易度 |
|---|---|---|
| 航空無線通信士 | 航空機の無線局 | 中 |
パイロットや航空管制官に必要な資格です。
陸上無線技術士・陸上特殊無線技士(6種類)
| 資格名 | 操作範囲 | 難易度 | ドローンとの関連 |
|---|---|---|---|
| 第一級陸上無線技術士 | 放送局等の技術操作 | 高 | なし |
| 第二級陸上無線技術士 | 固定局等の技術操作 | 中 | なし |
| 第一級陸上特殊無線技士 | 多重通信路の操作等 | 中 | なし |
| 第二級陸上特殊無線技士 | レーダー等の操作 | やや低 | なし |
| 第三級陸上特殊無線技士 | 特定の陸上移動局等 | 低 | 5.7GHz帯FPV業務利用 |
| 国内電信級陸上特殊無線技士 | 国内電信通信 | 低 | なし |
第三級陸上特殊無線技士は、FPVドローンの5.7GHz帯(業務用)を使用する場合に必要な資格です。
アマチュア無線技士(4種類)
| 資格名 | 最大出力 | 難易度 | ドローンとの関連 |
|---|---|---|---|
| 第一級アマチュア無線技士 | 1kW | 高 | FPV(5.8GHz帯) |
| 第二級アマチュア無線技士 | 200W | 中 | FPV(5.8GHz帯) |
| 第三級アマチュア無線技士 | 50W | やや低 | FPV(5.8GHz帯) |
| 第四級アマチュア無線技士 | 20W | 入門 | FPV(5.8GHz帯)の最低要件 |
FPVドローンで5.8GHz帯のVTXを使用する場合、最低でも第四級アマチュア無線技士が必要です。
特殊無線技士(その他)
上記に加えて、海上特殊無線技士(3種類)と航空特殊無線技士(1種類)があります。
ドローンに必要な資格
一般的なドローン(2.4GHz帯)
技適マーク付きの2.4GHz帯ドローン(DJI等の市販機)を操縦する場合、無線従事者の資格は不要です。技適マークが電波法の技術基準への適合を証明しているため、免許なしに使用できます。
ただし、航空法に基づく国家資格(無人航空機操縦者技能証明)は無線従事者とは別の資格体系です。ドローンの国家資格については「ドローン国家資格の種類と取得方法|一等・二等の違い」をご覧ください。
FPVドローン(5.8GHz帯 — 趣味利用)
| 必要な資格 | 概要 |
|---|---|
| 第四級アマチュア無線技士以上 | VTXの操作に必要 |
5.8GHz帯はアマチュア無線の周波数帯であり、営利目的での使用はできません。詳しくは「FPVドローンに必要な免許|アマチュア無線+開局申請ガイド」をご覧ください。
FPVドローン(5.7GHz帯 — 業務利用)
| 必要な資格 | 概要 |
|---|---|
| 第三級陸上特殊無線技士以上 | 業務用VTXの操作に必要 |
業務でFPV空撮を行う場合は5.7GHz帯の業務用システムを使用し、陸上特殊無線技士の資格が必要です。
まとめ表
| ドローンの種類 | 周波数帯 | 必要な無線従事者資格 |
|---|---|---|
| 一般ドローン(DJI等) | 2.4GHz | 不要(技適マーク付き) |
| FPVドローン(趣味) | 5.8GHz | 第四級アマチュア無線技士以上 |
| FPVドローン(業務) | 5.7GHz | 第三級陸上特殊無線技士以上 |
資格の取得方法
国家試験
公益財団法人 日本無線協会が実施する国家試験に合格する方法です。
| 資格 | 受験料 | 試験方式 |
|---|---|---|
| アマチュア無線4級 | 5,163円 | CBT(コンピュータ試験) |
| アマチュア無線3級 | 5,463円 | CBT |
| アマチュア無線2級 | 7,863円 | CBT |
| アマチュア無線1級 | 9,663円 | CBT |
| 第三級陸上特殊無線技士 | 5,663円 | CBT |
各級の試験内容と勉強法は以下の記事で解説しています。
養成課程講習会
JARD(日本アマチュア無線振興協会)等が実施する講習会を受講して取得する方法です。
| 資格 | 費用 | 期間 |
|---|---|---|
| アマチュア無線4級 | 23,150円 | 2日間 |
| アマチュア無線3級 | 12,950円 | 1日間 |
| 第三級陸上特殊無線技士 | 約25,000円 | 2日間 |
養成課程は合格率がほぼ100%で、確実に資格を取得できます。ただし、アマチュア無線の2級・1級には養成課程がありません。
資格取得後の手続き
資格を取得した後、無線従事者免許証の交付申請(手数料1,750円)を行います。免許証は約1ヶ月で届きます。
無線従事者と無線局免許の違い
混同しやすいため、無線従事者の免許と無線局の免許の違いを整理します。
| 項目 | 無線従事者免許 | 無線局免許 |
|---|---|---|
| 対象 | 人(操作する資格) | 局(無線設備の使用許可) |
| 有効期間 | 生涯有効(更新不要) | 5年間(再免許が必要) |
| 取得方法 | 国家試験 or 養成課程 | 総合通信局に開局申請 |
| 手数料 | 免許証交付: 1,750円 | 開局申請: 2,750円〜 |
| 例 | アマチュア無線技士4級 | アマチュア無線局の免許 |
FPVドローンの場合、両方を取得しなければVTXを使用できません。無線従事者の資格だけでは無線局を開設できず、無線局の免許だけでは操作者の資格がないことになります。
よくある質問
Q. 無線従事者免許証に更新はある?
ありません。 一度取得すれば生涯有効です。ただし、氏名や本籍地が変更された場合は免許証の訂正申請が必要です。
Q. 上位の資格を取れば下位の資格の操作もできる?
はい、可能です。 たとえばアマチュア無線2級を取得すれば、3級・4級の操作範囲もすべてカバーできます。ただし、アマチュア無線技士と陸上特殊無線技士は別系統の資格であり、互いに操作範囲を包含しません。
Q. ドローンの国家資格と無線従事者は同じもの?
別の制度です。 ドローンの国家資格(無人航空機操縦者技能証明)は航空法に基づく資格であり、無線従事者は電波法に基づく資格です。FPVドローンを飛ばすには両方の制度の手続きが必要になる場合があります。
Q. 総合無線通信士を持っていればアマチュア無線も操作できる?
はい、できます。 第一級総合無線通信士はすべての無線局の操作が可能であり、アマチュア無線局の操作も含まれます。
まとめ
無線従事者の資格は全23種類あり、用途に応じて選ぶ必要があります。
- 一般的なドローン(2.4GHz帯): 無線従事者の資格は不要
- FPVドローン(5.8GHz帯・趣味): 第四級アマチュア無線技士以上
- FPVドローン(5.7GHz帯・業務): 第三級陸上特殊無線技士以上
- 無線従事者免許証は生涯有効で更新不要
- 無線従事者免許と無線局免許は別のもの(両方必要)
資格の取得方法や費用の詳細は各資格の解説記事をご覧ください。電波法の全体像は「電波法とは?基本の仕組みをわかりやすく解説」で解説しています。