目次
この記事でわかること
技適マーク付き製品の裏側には「技術基準適合証明」と「工事設計認証」という2つの認証制度があります。どちらも電波法の技術基準への適合を確認する制度ですが、その仕組みと対象は大きく異なります。
この記事では、工事設計認証と技術基準適合証明の違い、メーカーが量産品で使う工事設計認証の仕組み、技適番号との関係、認証取得の流れと費用の概要を解説します。
2つの認証制度の概要
電波法では、無線設備が技術基準に適合していることを証明する制度として、技術基準適合証明と工事設計認証の2つを定めています。
| 項目 | 技術基準適合証明 | 工事設計認証 |
|---|---|---|
| 認証の対象 | 個々の無線設備(1台ごと) | 工事設計(設計そのもの) |
| 別名 | 個別認証 | 型式認証 |
| 適している場面 | 少量生産品、試作品 | 量産品 |
| 試験対象 | 申請した個体そのもの | 代表的なサンプル |
| 根拠条文 | 電波法 第38条の2〜第38条の5 | 電波法 第38条の24〜第38条の29 |
技術基準適合証明とは
技術基準適合証明は、個々の無線設備を1台ずつ試験し、技術基準に適合していることを証明する制度です。
登録証明機関は、その登録に係る技術基準適合証明の求めがあつた場合には、(中略)審査を行い、当該求めに係る特定無線設備が電波法第三章に定める技術基準に適合していると認めるときは、技術基準適合証明を行うものとする。
― 電波法 第38条の2(要旨)
申請者が実際の無線設備を登録証明機関に持ち込み、1台ごとに試験を受けます。試作品や少量生産品に向いています。
工事設計認証とは
工事設計認証は、無線設備の設計(工事設計)そのものを認証する制度です。認証を受けた設計に基づいて製造される全ての無線設備に技適マークを付けることができます。
登録証明機関は、その登録に係る工事設計認証の求めがあつた場合には、(中略)審査を行い、当該工事設計に基づく特定無線設備が電波法第三章に定める技術基準に適合するものであると認めるときは、工事設計認証を行うものとする。
― 電波法 第38条の24(要旨)
メーカーがスマートフォンやWi-Fiルーターなど同じ設計で大量生産する製品に使用する制度です。
認証の流れ
技術基準適合証明の流れ
- 登録証明機関に申請(無線設備の現物を提出)
- 試験の実施(提出された個体を測定)
- 適合判定(技術基準に適合しているか確認)
- 証明書の交付・技適番号の付与
- 技適マークの表示(証明を受けた個体のみ)
工事設計認証の流れ
- 登録証明機関に申請(設計書類+サンプル品を提出)
- 書類審査(工事設計の内容を確認)
- 試験の実施(サンプル品を測定)
- 品質管理体制の確認(製造工程の管理が適切か)
- 認証書の交付・技適番号の付与
- 技適マークの表示(同一設計の全製品に表示可能)
工事設計認証では品質管理体制の確認が含まれる点が大きな特徴です。認証を受けた設計どおりに製造される製品の品質が一定に保たれることを確認します。
技適番号との関係
技適マークに併記される技適番号は、認証の種類によって付番体系が異なります。
| 認証の種類 | 番号の形式 | 例 |
|---|---|---|
| 技術基準適合証明 | 「証明」+番号 | 001-XXXXXX |
| 工事設計認証 | 「認証」+番号 | 003-XXXXXX |
技適番号の先頭の数字で認証の種類を区別できます。先頭が「001」や「002」であれば技術基準適合証明、「003」や「004」であれば工事設計認証です。
技適番号の確認方法
- 機器本体のラベル・刻印・電子表示
- 総務省の技適マーク検索サイトでの検索
認証の費用
認証費用は登録証明機関や無線設備の種類によって異なりますが、おおよその目安は以下のとおりです。
| 認証の種類 | 費用の目安 |
|---|---|
| 技術基準適合証明 | 数万円〜数十万円(機器の種類・試験項目による) |
| 工事設計認証 | 数十万円〜数百万円(試験費用+品質管理審査費用) |
工事設計認証は費用が高くなりますが、量産品の場合は1台あたりのコストが大幅に下がるため、多くのメーカーは工事設計認証を選択します。
登録証明機関
技術基準適合証明と工事設計認証を行うのは、総務大臣の登録を受けた登録証明機関です。
| 機関名 | 略称 |
|---|---|
| テレコムエンジニアリングセンター | TELEC |
| 日本アマチュア無線振興協会 | JARD |
| テュフ・ラインランド・ジャパン | TÜV |
| SGSジャパン | SGS |
| UL Japan | UL |
登録証明機関の詳細は「TELECとは?技術基準適合証明を行う登録証明機関」をご覧ください。
よくある質問
Q. 個人がオリジナルの無線機を作った場合はどちらを使う?
技術基準適合証明を使います。1台だけの製作であれば個別認証が適しています。ただし、自作の無線機で技適を取得するケースは多くなく、アマチュア無線のように免許を取得して運用する方が一般的です。
Q. 工事設計認証を受けた後に設計を変更したらどうなる?
軽微な変更であれば届出で済む場合がありますが、技術基準に影響する重要な設計変更の場合は再認証が必要になります。認証を受けた工事設計と異なる製品に技適マークを付けることはできません。
Q. 海外メーカーの製品でも技適を取れる?
取得可能です。海外メーカーの場合、日本の登録証明機関に直接申請するか、日本の代理店を通じて申請します。海外の試験機関で測定したデータを利用できる場合もあります。
Q. 技適マークは「証明」と「認証」のどちらも同じマーク?
同じ技適マークが使われます。技適マークのデザインに違いはなく、併記される技適番号で認証の種類を区別します。利用者にとっては、どちらの認証でも「技適マーク付き=免許不要で使用可能」という効果は同じです。
まとめ
技術基準適合証明と工事設計認証は、いずれも電波法の技術基準への適合を確認する制度ですが、対象と適用場面が異なります。
- 技術基準適合証明: 個々の無線設備を1台ずつ試験する個別認証
- 工事設計認証: 設計そのものを認証する型式認証(量産品向け)
- 工事設計認証では品質管理体制の確認が必要
- 技適番号の先頭の数字で認証の種類を区別できる
- 費用は工事設計認証の方が高いが、量産品では1台あたりコストが低い
- どちらの認証でも技適マークの効果は同じ
技適マークの基本は「技適マークとは?確認方法と技適なし機器の扱い」、技適取得の代行については「技適マーク取得の代行|費用・期間・依頼先まとめ」をご覧ください。