この記事でわかること
2022年12月、ドローン(無人航空機)の国家資格制度が始まりました。正式名称は「無人航空機操縦者技能証明」です。資格は一等と二等の2種類があり、取得すると飛行許可の手続きが簡略化されたり、一部の飛行では許可が不要になったりします。
この記事では、一等と二等の違い、取得方法(試験・登録講習機関)、費用の目安、2025年12月に廃止された民間資格の優遇措置までまとめて解説します。
国家資格制度の概要
制度の背景
ドローンの利用拡大に伴い、操縦者の技能を国が統一的に証明する制度の必要性が高まりました。2022年12月5日、改正航空法の施行により無人航空機操縦者技能証明制度(いわゆるドローン国家資格)がスタートしました。
国土交通大臣は、申請により、無人航空機を飛行させるのに必要な技能(中略)について、無人航空機操縦者技能証明を行う。
― 航空法 第132条の43
一等と二等の2種類
国家資格には一等無人航空機操縦士と二等無人航空機操縦士の2種類があります。
| 項目 | 一等操縦士 | 二等操縦士 |
|---|---|---|
| 正式名称 | 一等無人航空機操縦士 | 二等無人航空機操縦士 |
| 対応する飛行カテゴリー | カテゴリーII・III | カテゴリーII |
| 第三者上空の飛行(カテゴリーIII) | 可能(機体認証が必要) | 不可 |
| 立入管理措置下の特定飛行(カテゴリーII) | 許可不要 | 許可不要 |
| 試験の難易度 | 高い | 標準的 |
| 取得費用の目安 | 25万〜50万円 | 15万〜35万円 |
最大の違いはカテゴリーIII飛行への対応です。第三者の上空を飛行する「カテゴリーIII」は一等資格+第一種機体認証がなければ実施できません。
カテゴリーの全体像は「ドローンの飛行カテゴリーとレベルをわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
国家資格でできること
カテゴリーII飛行の許可不要化
二等以上の国家資格と第二種以上の機体認証を組み合わせ、立入管理措置を講じれば、以下の特定飛行が飛行許可なしで実施できます。
- DID(人口集中地区)上空の飛行
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 人・物件から30m未満の飛行
DID上空の飛行許可について詳しくは「DID地区でのドローン飛行許可|人口集中地区の確認方法」をご覧ください。
カテゴリーIII飛行の実施
一等資格+第一種機体認証を組み合わせると、立入管理措置を講じずに特定飛行を実施できます。これがカテゴリーIII飛行です。
具体的には、以下のような第三者の上空を飛行するケースが該当します。
- 市街地上空での物流配送(レベル4飛行)
- イベント会場上空での空撮
- 住宅地上空でのインフラ点検
飛行許可申請の簡略化
カテゴリーII・IIIの許可不要化の条件を満たさない場合でも、国家資格を保有していれば飛行許可申請の一部項目が省略できます。
取得方法
国家資格の取得方法は2つあります。
方法1: 登録講習機関で講習を受ける
登録講習機関(国土交通大臣の登録を受けたドローンスクール)で講習を修了し、指定試験機関で学科試験と身体検査を受ける方法です。登録講習機関で講習を修了すると、実地試験が免除されます。
| ステップ | 内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| 講習受講 | 登録講習機関で学科+実技の講習を受講 | 二等: 2〜5日、一等: 7〜12日 |
| 修了証の発行 | 講習修了後に修了証が発行される | 即日〜数日 |
| 学科試験 | 指定試験機関(一般財団法人日本海事協会)で受験 | 受験日を予約 |
| 身体検査 | 視力・運動能力等の検査 | 学科試験と同時期 |
| 技能証明の交付 | 合格後、技能証明書が交付される | 申請後2〜3週間 |
約8割以上の受験者がこの方法を選択しています。実地試験が免除されるため、合格率が高く、体系的に学べるメリットがあります。
方法2: 指定試験機関で直接受験する
登録講習機関に通わず、指定試験機関で学科試験・実地試験・身体検査の全てを受験する方法です。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 学科試験 | 指定試験機関で受験(CBT方式) |
| 実地試験 | 指定試験機関の試験会場で操縦技能を実演 |
| 身体検査 | 視力・運動能力等の検査 |
| 技能証明の交付 | 全試験合格後、技能証明書が交付される |
費用を抑えられる一方、実地試験の合格率は低い傾向があります。十分な飛行経験がある方向けの方法です。
試験の内容
学科試験
学科試験はCBT(コンピュータ試験)方式で、全国のテストセンターで受験できます。
| 項目 | 二等 | 一等 |
|---|---|---|
| 問題数 | 50問 | 70問 |
| 試験時間 | 30分 | 75分 |
| 合格基準 | 正答率80%以上 | 正答率80%以上 |
| 出題範囲 | 無人航空機の知識、気象、法規等 | 二等の範囲+高度な運航管理 |
実地試験
実地試験は指定試験機関の試験会場で操縦技能を実演する形式です。登録講習機関の修了者は免除されます。
| 試験科目 | 内容 |
|---|---|
| 机上試験 | 飛行計画の作成 |
| 口述試験 | 飛行前点検、安全確認の手順を説明 |
| 実技試験 | 指定されたコースを飛行(GPSオフの条件あり) |
身体検査
身体検査は以下の3つの方法から選択できます。
- 書類提出: 自動車運転免許証など有効な公的書類を提出
- 医療機関の診断書: 医師の診断書を提出
- 指定試験機関での検査: 試験会場で直接検査を受ける
自動車運転免許証を持っていれば書類提出のみで完了するケースが多く、最も簡便です。
限定変更
技能証明には限定事項が設定されています。初回取得時は以下の限定がかかります。
| 限定事項 | 初期状態 | 限定変更後 |
|---|---|---|
| 機体の種類 | マルチローター(回転翼)のみ | 固定翼、ヘリコプターを追加可能 |
| 飛行の方法 | 目視内飛行のみ | 目視外飛行を追加可能 |
| 飛行の方法 | 昼間飛行のみ | 夜間飛行を追加可能 |
| 最大離陸重量 | 25kg未満 | 25kg以上を追加可能 |
限定を解除するには限定変更の講習・試験を受ける必要があります。目視外飛行や夜間飛行を許可不要で行いたい場合は、限定変更が必要です。
費用の目安
登録講習機関での取得費用
登録講習機関の費用はスクールによって大きく異なります。以下は一般的な目安です。
| 区分 | 二等(初学者) | 二等(経験者) | 一等(初学者) | 一等(経験者) |
|---|---|---|---|---|
| 講習料 | 15万〜30万円 | 8万〜15万円 | 30万〜70万円 | 20万〜40万円 |
| 学科試験料 | 8,800円 | 8,800円 | 9,900円 | 9,900円 |
| 実地試験料 | 免除 | 免除 | 免除 | 免除 |
| 身体検査料 | 5,200円〜 | 5,200円〜 | 5,200円〜 | 5,200円〜 |
| 技能証明交付手数料 | 3,000円 | 3,000円 | 3,000円 | 3,000円 |
| 合計目安 | 17万〜33万円 | 10万〜18万円 | 32万〜72万円 | 22万〜43万円 |
「経験者」とは、民間資格(DPA、JUIDA、DJI CAMP等)を保有している方や、登録講習機関が定める飛行経験を有する方を指します。経験者は講習時間が短縮され、費用も抑えられます。
直接受験の費用
登録講習機関を利用せず直接受験する場合、試験料のみで取得可能です。
| 項目 | 二等 | 一等 |
|---|---|---|
| 学科試験料 | 8,800円 | 9,900円 |
| 実地試験料 | 20,400円 | 22,200円 |
| 身体検査料 | 5,200円〜19,900円 | 5,200円〜19,900円 |
| 技能証明交付手数料 | 3,000円 | 3,000円 |
| 合計 | 約37,400円〜 | 約40,300円〜 |
直接受験は費用を大幅に抑えられますが、実地試験の合格率が低いため、再受験になると追加費用がかかる点に注意してください。
技能証明の有効期間と更新
技能証明の有効期間は3年間です。更新には更新講習の受講が必要です。
技能証明は、三年を超えない範囲内において国土交通省令で定める期間ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によつて、その効力を失う。
― 航空法 第132条の52
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 有効期間 | 3年間 |
| 更新方法 | 登録更新講習機関で更新講習を受講 |
| 更新費用 | 未定(今後公表される見込み) |
| 更新時期 | 有効期間満了前に受講 |
民間資格との関係
2025年12月までの優遇措置
国家資格制度の開始後も、民間資格(DPA、JUIDA、DJI CAMP等)を保有する操縦者には飛行許可申請の書類簡略化などの経過措置(優遇)が設けられていました。
2025年12月以降の優遇廃止
2025年12月の審査要領改正により、民間資格のみを根拠とした申請の簡略化措置が廃止されました。これにより、民間資格だけでは飛行許可申請の手続き上のメリットがなくなっています。
| 時期 | 民間資格の扱い |
|---|---|
| 2022年12月〜2025年11月 | 飛行許可申請の書類簡略化が認められた |
| 2025年12月以降 | 簡略化措置が廃止。飛行経験や訓練内容をより詳細に記載する必要がある |
民間資格は操縦技能の証明として引き続き有効ですが、行政手続きの簡略化を受けるには国家資格の取得が必要です。今後ドローンの飛行許可を効率的に取得・管理したい方は、国家資格の取得をおすすめします。改正の詳細は「審査要領改正(2025年12月)|民間資格の申請簡略化が廃止」をご覧ください。
飛行許可の申請方法は「ドローン飛行許可の申請方法|DIPS2.0での手順を解説」で詳しく解説しています。
よくある質問
Q. 二等で十分?一等を取るべき?
用途によります。第三者の上空を飛行する必要がない場合は二等で十分です。物流(レベル4飛行)やイベント上空の空撮など、第三者上空の飛行(カテゴリーIII)が必要な業務を行う場合は一等が必須です。
Q. 国家資格は必須?持っていないと飛ばせない?
必須ではありません。国家資格がなくても、飛行許可・承認を取得すれば特定飛行は可能です。ただし、2025年12月以降は民間資格だけでは申請の簡略化が受けられなくなったため、国家資格を取得したほうが手続きがスムーズです。
Q. 民間資格を持っていると講習が短縮される?
はい。多くの登録講習機関では、民間資格保有者を「経験者」として扱い、講習時間と費用が短縮されます。民間資格を持っている方は国家資格の取得費用を抑えられます。
Q. 何歳から取得できる?
16歳以上から技能証明の申請ができます。ただし、登録講習機関によっては受講年齢に独自の基準を設けている場合があります。
Q. 技能証明に記載される限定事項は後から変更できる?
はい。限定変更の講習・試験を受けることで、目視外飛行や夜間飛行などの限定を解除できます。最初は基本的な限定で取得し、必要に応じて限定変更するのが一般的です。
まとめ
ドローン国家資格は一等と二等の2種類があり、取得すると飛行許可の手続きが大幅に簡略化されます。
- 二等: カテゴリーII飛行(立入管理措置下の特定飛行)が許可不要に
- 一等: カテゴリーIII飛行(第三者上空)も実施可能に
- 取得費用は二等で15万〜33万円、一等で25万〜72万円が目安
- 2025年12月に民間資格の優遇が廃止され、国家資格の重要性が増している
- 有効期間は3年間で更新が必要
包括申請での飛行許可取得は「ドローン包括申請とは?個別申請との違いと申請手順」をご覧ください。