この記事でわかること
2022年12月5日の航空法改正により、ドローン(無人航空機)の機体認証制度が始まりました。機体認証を取得すると、従来はできなかった有人地帯での補助者なし目視外飛行(カテゴリーIII飛行)が可能になります。
この記事では、機体認証の概要、第一種と第二種の違い、型式認証との関係、取得のメリット、手続きの流れと費用までまとめて解説します。
機体認証とは
機体認証とは、個別の無人航空機が国土交通省が定める安全基準(強度・構造・性能)に適合していることを証明する制度です。
無人航空機の使用者は、(中略)無人航空機が国土交通省令で定める安全性を確保するための基準に適合することについて、国土交通大臣の検査を受け、無人航空機検査証書の交付を受けることができる。
― 航空法 第132条の13
機体認証は車検に例えるとわかりやすい制度です。自動車が安全に公道を走れることを車検で証明するように、ドローンが安全に飛行できることを国の検査で証明します。
機体認証が必要な飛行
機体認証は全てのドローンに必須の制度ではありません。以下の飛行カテゴリーに応じて、必要性が変わります。
| 飛行カテゴリー | 内容 | 機体認証 | 操縦ライセンス |
|---|---|---|---|
| カテゴリーI | 特定飛行に該当しない飛行 | 不要 | 不要 |
| カテゴリーII | 特定飛行のうちリスクが低いもの | 不要(あれば許可申請省略可) | あれば許可申請省略可 |
| カテゴリーIII | 有人地帯での補助者なし目視外飛行 | 第一種が必須 | 一等操縦士が必須 |
カテゴリーIII飛行を行うには、第一種機体認証と一等無人航空機操縦士の資格が必須です。カテゴリーII飛行では機体認証がなくても従来どおりの許可申請で飛行可能ですが、第二種機体認証と二等操縦士の資格があれば許可申請が不要になるケースがあります。
第一種と第二種の違い
機体認証には第一種と第二種の2種類があります。
| 比較項目 | 第一種機体認証 | 第二種機体認証 |
|---|---|---|
| 対応する飛行カテゴリー | カテゴリーIII | カテゴリーII |
| 検査の厳格さ | 非常に厳格 | 比較的簡易 |
| 検査方法 | 国または登録検査機関による検査 | 国または登録検査機関による検査 |
| 型式認証機の場合 | 型式認証に基づく簡略化した検査 | 型式認証に基づく簡略化した検査 |
| 有効期間 | 1年 | 3年 |
| 想定用途 | 物流(レベル4飛行)、都市部での点検等 | DID上空飛行、夜間飛行等 |
第一種機体認証
第一種機体認証は、カテゴリーIII飛行(有人地帯での補助者なし目視外飛行)に必要な認証です。人の上を飛行するため最も厳格な安全基準が求められ、機体の強度・構造・性能に加え、落下時の安全装置(パラシュート等)の搭載なども検査対象となります。
有効期間は1年間で、毎年検査を受ける必要があります。
第二種機体認証
第二種機体認証は、カテゴリーII飛行(特定飛行のうちリスクが低いもの)に対応する認証です。第二種機体認証と二等操縦士の国家資格を組み合わせることで、DID上空飛行や夜間飛行などの許可申請が不要になります。
有効期間は3年間で、第一種より更新の負担が軽い設計です。
型式認証との関係
機体認証を理解するうえで、型式認証との関係を整理しておくことが重要です。
型式認証とは
型式認証とは、ドローンの型式(製品モデル)ごとに安全基準への適合を証明する制度です。
無人航空機の型式の設計者は、(中略)当該型式について国土交通大臣の認証を受けることができる。
― 航空法 第132条の12
型式認証はメーカー(製造者)が取得する認証であり、個々のユーザーが申請するものではありません。車でいえば、トヨタがプリウスの型式を国に認証してもらうようなイメージです。
型式認証と機体認証の関係
型式認証と機体認証はセットで機能する制度です。
| 認証の種類 | 対象 | 取得者 | 役割 |
|---|---|---|---|
| 型式認証 | 製品モデル全体 | メーカー | 設計の安全性を証明 |
| 機体認証 | 個別の機体 | 使用者 | 個体の安全性を証明 |
型式認証を受けた機体は、機体認証の検査が大幅に簡略化されます。型式認証で設計の安全性が担保されているため、個々の機体ではその型式どおりに製造されているか(整備状態、改造の有無など)のみを確認すれば済むからです。
逆に、型式認証を受けていない機体で機体認証を取得する場合は、機体単体で全ての安全基準への適合を証明する必要があり、検査が非常に大がかりになります。
現在の型式認証の取得状況
2026年3月時点で、第一種型式認証を取得した機体はまだ限られています。主要メーカーが順次申請を進めている段階であり、今後対応機体が増加する見込みです。第二種型式認証については、DJI等の大手メーカーの一部機体で取得が進んでいます。
機体認証のメリット
機体認証を取得する具体的なメリットは以下の3つです。
カテゴリーIII飛行が可能になる
第一種機体認証を取得すれば、有人地帯での補助者なし目視外飛行(レベル4飛行)が可能になります。これは物流ドローンや都市部でのインフラ点検など、ドローンの社会実装に不可欠な飛行形態です。
レベル4飛行は、一等無人航空機操縦士の技能証明を受けた者が、第一種機体認証を受けた機体を飛行させる場合に限り行うことができる。
― 国土交通省「無人航空機レベル4飛行ポータルサイト」
カテゴリーIII飛行には、第一種機体認証に加えて一等無人航空機操縦士の資格が必要です。
飛行許可申請が不要になる場合がある
第二種機体認証と二等操縦士の資格を持っていれば、カテゴリーIIの一部の飛行について個別の許可申請が不要になります。具体的には、以下の飛行が該当します。
- DID(人口集中地区)上空の飛行
- 夜間飛行
- 目視外飛行(補助者あり)
- 人または物件から30m未満の飛行
これにより、申請手続きの時間と手間が削減されます。ただし、空港周辺や150m以上の高度での飛行など、一部の飛行は引き続き許可申請が必要です。飛行許可の申請方法については「ドローン飛行許可の申請方法|DIPS2.0での手順を解説」をご覧ください。
安全性の証明になる
機体認証は国が機体の安全性を認めた証明です。事業者にとっては、取引先やクライアントに対して機体の安全性を客観的に証明できるメリットがあります。特にインフラ点検や物流など、安全性が重視される分野では競合との差別化要素になります。
取得の流れ
機体認証の取得は以下の4ステップで進みます。
Step 1: 検査の申請
国土交通省または登録検査機関に対し、機体認証の検査を申請します。申請はDIPS2.0から行います。
申請時に必要な情報は以下のとおりです。
- 機体の情報(メーカー名、型式、製造番号)
- 機体登録番号
- 整備記録
- 型式認証の有無
- 希望する認証の種類(第一種または第二種)
機体登録がまだの場合は、先に機体登録を完了させる必要があります。「ドローン機体登録の更新方法|手順・費用・注意点を解説」も参考にしてください。
Step 2: 機体の検査
検査は、型式認証を受けた機体かどうかで内容が大きく異なります。
| 検査区分 | 型式認証ありの機体 | 型式認証なしの機体 |
|---|---|---|
| 検査内容 | 製造確認検査(型式どおりか確認) | 全項目の設計検査+現物検査 |
| 検査期間 | 比較的短い(数日〜数週間) | 長期(数ヶ月以上になる場合も) |
| 費用 | 比較的安価 | 高額(検査項目が多いため) |
型式認証ありの機体は、すでに設計が国に認められているため、個体の検査のみで済みます。型式認証なしの機体は、強度試験、飛行性能試験、安全装置の動作確認など多岐にわたる検査が必要です。
Step 3: 検査証書の交付
検査に合格すると、無人航空機検査証書が交付されます。検査証書には以下の情報が記載されます。
- 認証の種類(第一種または第二種)
- 有効期間(第一種: 1年、第二種: 3年)
- 機体の情報
- 使用の条件(制限事項がある場合)
Step 4: 検査証書の管理
検査証書は飛行時に携帯が必要です(電子データでの携帯も可)。有効期間が切れる前に更新検査を受ける必要があります。
費用
機体認証にかかる費用は、検査の種類と機体の状況によって大きく異なります。
法定手数料
| 区分 | 手数料の目安 |
|---|---|
| 第一種機体認証(型式認証あり) | 数万円〜10万円程度 |
| 第一種機体認証(型式認証なし) | 数十万円〜 |
| 第二種機体認証(型式認証あり) | 数万円程度 |
| 第二種機体認証(型式認証なし) | 10万円以上〜 |
型式認証の有無で費用が大きく変わります。型式認証を受けた機体であれば検査が簡略化されるため、費用も抑えられます。
登録検査機関の検査費用
国(国土交通省)ではなく登録検査機関に検査を依頼する場合は、機関ごとに独自の料金が設定されています。複数の機関に見積もりを取ることを推奨します。
その他の費用
- 整備費用: 検査前に機体の整備が必要な場合
- 行政書士への代行報酬: 申請手続きを代行する場合(費用相場については「ドローン飛行許可の申請代行|費用相場と依頼の流れ」を参照)
よくある質問
Q. 機体認証は全てのドローンに必要?
いいえ、必要ではありません。カテゴリーI飛行(特定飛行に該当しない通常の飛行)やカテゴリーII飛行(従来の許可申請で飛行可能)では、機体認証がなくても飛行できます。機体認証が必須となるのはカテゴリーIII飛行のみです。
Q. DJI等の市販機で機体認証は取れる?
型式認証を受けた機体であれば取得可能です。2026年3月時点で第二種型式認証を取得した機体が登場しており、今後対応機体は増加する見込みです。型式認証を受けていない市販機でも申請は可能ですが、検査が大がかりになり費用も高額になります。
Q. 機体認証と国家資格はどちらを先に取るべき?
国家資格(操縦ライセンス)を先に取得するのが一般的です。機体認証は特定の機体に紐づくため、運用する機体が確定してから取得します。一方、操縦ライセンスは操縦者個人の資格であり、機体を問わず有効です。
Q. 機体認証の有効期間が切れたらどうなる?
有効期間が切れると認証は失効します。カテゴリーIII飛行はできなくなり、カテゴリーII飛行では許可申請の省略ができなくなります。有効期間内に更新検査を受けてください。
Q. 自作のドローンでも機体認証は取得できる?
制度上は可能ですが、現実的にはハードルが非常に高いです。型式認証がないため、全ての安全基準について個別に適合を証明する必要があり、検査費用も高額になります。
まとめ
ドローンの機体認証は、カテゴリーIII飛行を実現するために不可欠な制度です。
- 2022年12月に開始された機体の安全性を証明する制度
- 第一種(カテゴリーIII対応、有効期間1年)と第二種(カテゴリーII対応、有効期間3年)がある
- 型式認証を受けた機体は機体認証の検査が大幅に簡略化される
- 第一種機体認証+一等操縦士で有人地帯での補助者なし目視外飛行が可能に
- 第二種機体認証+二等操縦士で一部の特定飛行の許可申請が不要に
包括申請による飛行許可の取得については「ドローン包括申請とは?個別申請との違いと申請手順」もあわせてご覧ください。