目次
この記事でわかること
船舶局や海岸局の無線設備を操作するには、海上無線通信士または海上特殊無線技士の資格が必要です。資格にはいくつかの種類があり、操作できる設備の範囲が異なります。
この記事では、海上分野の無線従事者資格の全種類と操作範囲、試験科目と難易度、取得方法の選択肢、そして船舶局の運用で求められる資格の選び方を解説します。
海上分野の無線従事者資格の全体像
電波法に基づく無線従事者資格のうち、海上分野に関連する資格は以下のとおりです。
無線設備の操作を行おうとする者は、総務大臣の免許を受けなければならない。
― 電波法 第40条第1項
| 資格名 | 略称 | 操作範囲の概要 |
|---|---|---|
| 第一級海上無線通信士 | 1海通 | GMDSS設備を含むすべての海上無線設備 |
| 第二級海上無線通信士 | 2海通 | GMDSS設備を含む主要な海上無線設備 |
| 第三級海上無線通信士 | 3海通 | 船舶局の無線電話、国際VHF等 |
| 第四級海上無線通信士 | 4海通 | 一定範囲の船舶局の無線電話 |
| 第一級海上特殊無線技士 | 1海特 | 多重無線設備を含む海上特殊無線 |
| 第二級海上特殊無線技士 | 2海特 | 国際VHF(25W以下)等 |
| 第三級海上特殊無線技士 | 3海特 | 国際VHF(5W以下)、レーダー等 |
| レーダー級海上特殊無線技士 | レーダー | レーダーのみ |
無線従事者資格の全体像については無線従事者も参照してください。
各資格の詳細
第一級海上無線通信士(1海通)
海上無線の最上位資格です。GMDSS設備を含むすべての海上移動業務の無線設備を操作できます。
- 操作範囲: 船舶局・海岸局のすべての無線設備
- 主な就職先: 外航船舶、海上保安庁、大型旅客船
- 試験科目: 無線工学の基礎、無線工学A、無線工学B、法規、英語、電気通信術
- 難易度: 高い(合格率は20〜30%程度)
第一級海上無線通信士は、国際航海に従事する大型船舶のGMDSS設備を操作する場合に必要です。
第二級海上無線通信士(2海通)
第一級に次ぐ資格で、GMDSS設備の操作が可能です。
- 操作範囲: 船舶局・海岸局の主要な無線設備(一部制限あり)
- 主な就職先: 外航船舶、内航大型船舶
- 試験科目: 無線工学の基礎、無線工学A、無線工学B、法規、英語、電気通信術
- 難易度: やや高い(合格率は30〜40%程度)
実務上、第一級と第二級の操作範囲の差は小さく、多くの船舶で第二級海上無線通信士の資格があれば十分です。
第三級海上無線通信士(3海通)
船舶局の無線電話やVHF設備の操作ができる資格です。
- 操作範囲: 船舶局の無線電話(空中線電力250W以下)、国際VHF等
- 主な対象: 内航船舶、漁船の通信長
- 試験科目: 無線工学、法規、英語、電気通信術
- 難易度: 中程度
第四級海上無線通信士(4海通)
比較的小規模な船舶局の無線電話を操作できる資格です。
- 操作範囲: 船舶局の無線電話(空中線電力50W以下、一定の周波数)
- 主な対象: 小型船舶、漁船
- 試験科目: 無線工学、法規
- 難易度: やや低い
第一級海上特殊無線技士(1海特)
海上特殊無線技士の最上位で、多重無線設備の操作もできます。
- 操作範囲: 海岸局・船舶局の多重無線設備、VHF無線電話等
- 主な対象: 海岸局のオペレーター
- 試験科目: 無線工学、法規、英語
- 難易度: 中程度
第二級海上特殊無線技士(2海特)
国際VHF(25W以下)の操作ができる資格です。
- 操作範囲: 船舶局のVHF無線電話(25W以下)、レーダー
- 主な対象: 小型船舶の船長・乗組員
- 試験科目: 無線工学、法規
- 難易度: 低い
- 取得方法: 国家試験 又は 養成課程(約2日)
第三級海上特殊無線技士(3海特)
最も手軽に取得できる海上無線の資格です。
- 操作範囲: 船舶局のVHF無線電話(5W以下)、レーダー
- 主な対象: レジャーボート、プレジャーボートの船長
- 試験科目: 無線工学、法規
- 難易度: 低い
- 取得方法: 国家試験 又は 養成課程(約1日)
レーダー級海上特殊無線技士
レーダーのみを操作できる資格です。
- 操作範囲: レーダーの操作
- 試験科目: 無線工学、法規
- 難易度: 低い
- 取得方法: 国家試験 又は 養成課程
資格の取得方法
海上無線通信士・海上特殊無線技士の資格を取得するには、以下の3つの方法があります。
方法1: 国家試験
公益財団法人日本無線協会が実施する国家試験に合格する方法です。
| 資格 | 試験回数 | 試験地 |
|---|---|---|
| 1海通・2海通 | 年2回(3月・9月) | 東京ほか |
| 3海通・4海通 | 年2回(3月・9月) | 東京ほか |
| 1海特〜3海特 | 年3回(2月・6月・10月) | 全国各地 |
| レーダー級 | 年3回 | 全国各地 |
方法2: 養成課程(講習)
総務大臣の認定を受けた養成課程を修了する方法です。主に海上特殊無線技士の取得に利用されます。
| 資格 | 講習期間 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 2海特 | 約2日 | 30,000〜50,000円 |
| 3海特 | 約1日 | 20,000〜30,000円 |
| レーダー級 | 約1日 | 20,000円前後 |
養成課程は全国各地で開催されており、講習と修了試験で資格が取得できます。最も手軽で確実な取得方法です。
方法3: 学校卒業
電波法に基づく認定学校(海技系の大学・高等専門学校・専修学校等)を卒業することで、一定の資格が付与される場合があります。
船舶局の種類別に必要な資格
どの資格を取得すべきかは、操作する無線設備の種類によって決まります。
| 船舶の種類・設備 | 必要な資格(最低限) |
|---|---|
| SOLAS船のGMDSS設備 | 第一級又は第二級海上無線通信士 |
| 内航船の中短波無線電話 | 第三級海上無線通信士以上 |
| 国際VHF(据置型25W) | 第二級海上特殊無線技士以上 |
| 国際VHF(ハンディ型5W) | 第三級海上特殊無線技士以上 |
| 船舶レーダー | レーダー級海上特殊無線技士以上 |
| AIS(クラスA) | 第三級海上無線通信士以上 |
| AIS(クラスB) | 第三級海上特殊無線技士以上 |
レジャーボートで国際VHFのみを使用する場合は、第三級海上特殊無線技士を取得するのが最も手軽です。
資格の上位互換関係
海上無線の資格には上位互換の関係があります。上位の資格を持っていれば、下位の資格の操作範囲もカバーできます。
第一級海上無線通信士
└→ 第二級海上無線通信士
└→ 第三級海上無線通信士
└→ 第四級海上無線通信士
第一級海上特殊無線技士
└→ 第二級海上特殊無線技士
└→ 第三級海上特殊無線技士
└→ レーダー級海上特殊無線技士
なお、海上無線通信士の資格は海上特殊無線技士の操作範囲を包含します。
免許証の申請
国家試験に合格した場合、または養成課程を修了した場合は、総務大臣に対して無線従事者免許証の申請を行います。
申請に必要な書類は以下のとおりです。
- 無線従事者免許申請書(所定様式)
- 氏名・生年月日を証する書類(住民票の写し等)
- 写真(縦30mm×横24mm)
- 手数料: 1,750円(収入印紙)
- 合格証明書又は養成課程の修了証明書
申請先は管轄の総合通信局です。詳細は総合通信局をご確認ください。
まとめ
海上無線通信士・海上特殊無線技士の資格は、船舶局を運用するために不可欠な資格です。要点を整理します。
- 海上分野の無線従事者資格は8種類ある
- GMDSS設備の操作には第一級又は第二級海上無線通信士が必要
- レジャーボートの国際VHFには第三級海上特殊無線技士が最も手軽
- 資格の取得方法は「国家試験」「養成課程」「学校卒業」の3つ
- 養成課程(講習)なら最短1日で資格取得が可能
- 上位資格は下位資格の操作範囲を包含する
取得すべき資格に迷った場合は、操作する予定の無線設備を明確にしたうえで、行政書士や総合通信局にご相談ください。