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IoT用無線局の免許・届出ガイド

この記事でわかること

IoT(Internet of Things)の普及に伴い、センサーやデバイスから無線でデータを送信するニーズが急速に拡大しています。しかし、IoTで使用する無線通信には電波法に基づく免許・届出が必要なケースと不要なケースがあり、制度を正しく理解しないまま導入すると電波法違反になるおそれがあります。

この記事では、IoTデバイスに使用される主な無線通信方式の種類と、それぞれの免許・届出の要否、手続きの流れを解説します。

IoTで使われる主な無線通信方式

通信方式の分類

IoTで使われる無線通信方式は、通信距離や消費電力、データ量によって大きく分類されます。

分類 通信距離 特徴 代表的な方式
LPWA(Low Power Wide Area) 数km〜数十km 低消費電力・広域・低速 LoRa、Sigfox、LTE-M、NB-IoT
短距離無線 数m〜数百m 低消費電力・近距離 Bluetooth、ZigBee、Wi-SUN
Wi-Fi 数十m〜100m程度 高速・中距離 Wi-Fi(IEEE 802.11)
セルラー(携帯回線) 広域 高速・広域 LTE、5G

LPWA方式の詳細

LPWA(Low Power Wide Area)は、IoTに特化した通信方式で、少量のデータを低消費電力で長距離送信できる特徴があります。

方式名 使用周波数帯 免許の要否 特徴
LoRaWAN 920MHz帯 免許不要(技適付き設備) オープン仕様、自営網構築可
Sigfox 920MHz帯 免許不要(技適付き設備) 事業者ネットワーク利用
LTE-M 携帯回線帯 携帯事業者が包括免許取得済み 携帯回線を利用
NB-IoT 携帯回線帯 携帯事業者が包括免許取得済み 携帯回線を利用
ELTRES 920MHz帯 免許不要(技適付き設備) ソニー開発、GNSS連携
Wi-SUN 920MHz帯 免許不要(技適付き設備) スマートメーター等で採用

免許・届出の要否の判断

判断フロー

IoT用無線設備が電波法上の免許・届出の対象となるかは、以下のフローで判断します。

判断項目 条件 結果
技適マークが付いているか 付いている 免許不要の可能性あり
発射する電波が著しく微弱か 微弱 免許不要
小電力無線局に該当するか 該当する 免許不要
上記に該当しない場合 免許または登録が必要

第4条 無線局を開設しようとする者は、総務大臣の免許を受けなければならない。ただし、次の各号に掲げる無線局については、この限りでない。 一 発射する電波が著しく微弱な無線局 (中略) 三 空中線電力が適合表示無線設備のみを使用するもの

― 電波法 第4条(趣旨)

技適マークについては「技適マークとは」で詳しく解説しています。

920MHz帯の特定小電力無線局

IoTで多用される920MHz帯の無線設備は、多くの場合特定小電力無線局に該当し、技適マーク付きの設備であれば免許不要で使用できます。

項目 内容
周波数帯 920MHz帯(920.5〜928.1MHz)
空中線電力 20mW以下
用途 テレメータ、テレコントロール、データ伝送
免許 不要(技適マーク付き設備)
届出 不要

免許が必要なケース

以下のような場合は、無線局の免許が必要です。

ケース 理由
技適マークのない設備を使用する場合 技術基準への適合が確認できない
特定小電力を超える出力の設備 小電力無線局の範囲を超える
独自の周波数帯を使用する場合 割当てを受ける必要がある
基地局を自ら設置する場合(一定規模以上) 基地局としての免許が必要

電気通信事業の届出との関係

IoTサービスと電気通信事業

IoTのデータを他者のために収集・伝送するサービスを提供する場合、電気通信事業法に基づく届出または登録が必要になる場合があります。

ケース 届出の要否
自社のセンサーデータを自社で利用 不要
顧客のセンサーデータを収集・伝送するサービス 届出が必要な場合あり
IoTプラットフォームを他者に提供 届出が必要な場合あり
MVNO等で回線を再販 届出または登録が必要

電気通信事業の届出の詳細は「電気通信事業の届出が必要なケース|SaaS・Webサービス向け」をご覧ください。

判断のポイント

電気通信事業の届出が必要かどうかの判断ポイントは、「他人の通信を媒介しているか」です。

  • 自社のデバイスから自社サーバーへのデータ送信 → 自己利用であり届出不要
  • 顧客のデバイスからデータを収集し、顧客に提供 → 他人の通信を媒介する可能性があり届出が必要な場合あり

IoT用無線局の開設手順

免許不要のケース(技適マーク付き設備)

技適マーク付きの特定小電力無線設備を使用する場合は、手続き不要でそのまま使用できます。

Step 1: 使用する無線方式を決定する

業務要件(通信距離、データ量、消費電力、コスト)に基づいて、最適な無線通信方式を選定します。

Step 2: 技適マークの有無を確認する

使用する無線設備に技適マークが付いているか確認します。海外製のIoTデバイスは技適を取得していない場合が多いため、注意が必要です。

Step 3: 免許・届出の要否を判断する

前述の判断フローに従い、免許・届出が必要かどうかを判断します。

Step 4: 必要な手続きを行う

免許が必要な場合は総合通信局に免許申請、電気通信事業の届出が必要な場合は総務省に届出を行います。

Step 5: 運用開始

手続きが完了したら、法令に適合した範囲で無線設備の運用を開始します。

注意すべきポイント

海外製IoTデバイスの技適問題

海外メーカーのIoTデバイスは、日本の技適を取得していないケースが多くあります。技適マークのない設備を日本で使用すると、電波法違反となります。

対応方法 内容
技適取得済みの製品を選ぶ 国内代理店が技適を取得している製品を選定
自ら技適を取得する 登録証明機関に申請して技術基準適合証明を取得
技適未取得機器の特例制度を利用 実験目的で180日間の特例利用(届出が必要)

ゲートウェイ(基地局)の扱い

IoTネットワークでは、センサーからのデータを集約するゲートウェイを設置することがあります。ゲートウェイが無線局に該当する場合は、別途免許申請が必要になることがあります。

ゲートウェイの種類 免許の要否
技適マーク付きの小電力ゲートウェイ 免許不要
小電力を超える出力のゲートウェイ 免許が必要
セルラー回線を利用するゲートウェイ 携帯事業者の回線を利用(端末側は免許不要)

電波利用料

免許を受けた無線局には電波利用料が課されます。IoT用途で多数の無線局を開設する場合、電波利用料の総額も考慮に入れる必要があります。電波利用料の詳細は「電波利用料」をご覧ください。

ローカル5GとIoT

大規模な工場や施設でIoTを導入する場合、ローカル5Gの活用も選択肢の一つです。ローカル5Gは、自営の5Gネットワークを構築するもので、高速・大容量・低遅延の通信が可能です。

ただし、ローカル5Gの導入には無線局免許の取得が必要であり、設備投資も大きくなります。小規模なIoTであればLPWAや特定小電力無線で十分なケースも多いため、要件に応じた適切な方式選定が重要です。

まとめ

IoT用無線局の免許・届出に関するポイントは以下のとおりです。

  • 技適マーク付きの特定小電力無線設備(920MHz帯等)は免許不要で使用可能
  • LPWA方式(LoRa、Sigfox等)は多くの場合、技適付き設備であれば免許不要
  • LTE-M・NB-IoTは携帯事業者の回線を利用するため、端末側の個別免許は不要
  • IoTサービスを他者に提供する場合は電気通信事業の届出が必要になる場合がある
  • 海外製デバイスの技適の有無に特に注意
  • 大規模導入では電波利用料の総額も考慮する

IoTの導入に際して免許や届出の要否が不明な場合は、電波法と電気通信事業法に精通した行政書士に相談することをおすすめします。

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