この記事でわかること
海外製のWi-Fi機器やBluetooth機器を日本国内で販売するには、技適マークの取得が必須です。技適マークがない製品を販売すると、購入者が電波法違反に問われるリスクがあり、販売者の信頼も失われます。
この記事では、技適の2種類(技術基準適合証明・工事設計認証)の違い、登録証明機関(TELEC、SGS等)での申請の流れ、費用の目安、期間、行政書士や認証コンサルへの代行依頼までまとめて解説します。
技適マークとは
技適マークは、無線機器が日本の電波法に定める技術基準に適合していることを証明する表示です。正式には「技術基準適合証明」または「工事設計認証」に基づくマークです。
特定無線設備の技術基準適合証明又は工事設計認証を受けた設備には、総務省令で定める表示を付さなければならない。
― 電波法 第38条の7(要旨)
技適マークの基本については「技適マークとは?確認方法と技適なし機器の扱い」で詳しく解説しています。
技適の2種類
技適マークを取得する方法は2種類あります。
技術基準適合証明
個別の機器(1台ごと)を測定・検査して適合性を証明する方法です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 個別の機器(1台) |
| 検査内容 | 実機を測定して技術基準への適合を確認 |
| 適合の範囲 | 検査したその1台のみ |
| 向いているケース | 少数の機器を使用する場合、試作品 |
| 費用の目安 | 10万〜30万円(機器の種類による) |
工事設計認証
製品の「設計」自体を認証する方法です。同一設計で製造された全ての機器に技適マークを付けることができます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 製品の設計(工事設計) |
| 検査内容 | 設計図書の審査+サンプル機器の測定 |
| 適合の範囲 | 同一設計の全機器(量産品に適用可能) |
| 向いているケース | 量産品を日本で販売する場合 |
| 費用の目安 | 30万〜100万円(機器の種類・通信方式による) |
どちらを選ぶべきか
| ケース | 推奨 |
|---|---|
| 自社で使う機器を数台だけ認証したい | 技術基準適合証明 |
| 海外製品を日本で量産販売したい | 工事設計認証 |
| 試作品・評価機を認証したい | 技術基準適合証明 |
| OEM製品を日本向けに展開したい | 工事設計認証 |
大量に販売する製品は工事設計認証を選ぶのが一般的です。
2つの違いの詳細は「工事設計認証と技術基準適合証明の違い」で解説しています。
登録証明機関
技適の審査・認証を行うのは、総務省に登録された登録証明機関です。主な機関は以下のとおりです。
| 機関名 | 略称 | 特徴 |
|---|---|---|
| テレコムエンジニアリングセンター | TELEC | 日本最大の登録証明機関。多くの機器に対応 |
| SGSジャパン | SGS | 国際的な認証機関。海外の認証データとの連携が強い |
| TÜV Rheinland Japan | TÜV | 欧州系の認証機関。CE認証との同時取得に便利 |
| UL Japan | UL | 米国系の認証機関。FCC認証との連携が可能 |
| その他 | ― | DSP Research、Bureau Veritas等 |
どの機関で認証を受けても技適マークの効力は同じです。費用、対応の速さ、海外認証との連携を考慮して選択してください。
TELECの詳細は「TELECとは?技術基準適合証明を行う登録証明機関」をご覧ください。
申請の流れ
Step 1: 登録証明機関に事前相談
まず、登録証明機関に事前相談を行います。機器の仕様(通信方式、周波数帯、出力等)を伝え、以下を確認します。
- 認証の種類(技術基準適合証明 or 工事設計認証)
- 必要な測定項目
- 概算費用と期間
- 必要な書類・サンプル
Step 2: 必要書類を準備する
申請に必要な書類は機器の種類によって異なりますが、一般的に以下が必要です。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 申請書 | 登録証明機関所定の書式 |
| 技術仕様書 | 周波数、出力、変調方式、帯域幅等 |
| ブロック図(系統図) | 送信部から空中線までの構成 |
| 回路図 | 無線部の回路図 |
| 外観写真 | 機器の外観(表面、裏面、ラベル) |
| サンプル機器 | 測定用のサンプル(1〜2台) |
| 取扱説明書 | 製品の使用方法 |
| 海外の認証データ(あれば) | FCC/CE等の測定レポート |
Step 3: サンプル機器を提出
登録証明機関に測定用のサンプル機器を提出します。海外の認証データ(FCCやCEの測定レポート)がある場合は、一部の測定を省略できることがあります。
Step 4: 測定・審査
登録証明機関が機器の電気的特性を測定し、日本の技術基準に適合しているか審査します。
| 主な測定項目 | 内容 |
|---|---|
| 周波数の偏差 | 指定周波数からのずれが基準値以内か |
| 占有周波数帯幅 | 信号の帯域幅が基準値以内か |
| スプリアス発射 | 不要な電波の発射が基準値以内か |
| 空中線電力 | 送信出力が基準値以内か |
| 隣接チャネル漏洩電力 | 隣の周波数帯への干渉が基準値以内か |
Step 5: 認証書の交付
審査に合格すると、認証書(証明書)が交付されます。認証書に記載された認証番号が技適マークとともに製品に表示されます。
Step 6: 技適マークを製品に表示
認証を受けた製品に技適マークを表示します。表示方法は以下のとおりです。
- 機器本体にラベルで貼付
- 機器の画面に電子的に表示(電子表示も可能)
- 取扱説明書やパッケージに記載(補助的な表示)
費用の目安
技適取得にかかる費用は、機器の種類と通信方式の数によって大きく異なります。
技術基準適合証明の費用
| 通信方式の数 | 費用の目安 | 例 |
|---|---|---|
| 1方式 | 10万〜20万円 | Bluetoothのみ |
| 2方式 | 20万〜40万円 | Wi-Fi+Bluetooth |
| 3方式以上 | 30万〜60万円 | Wi-Fi+Bluetooth+NFC |
工事設計認証の費用
| 通信方式の数 | 費用の目安 | 例 |
|---|---|---|
| 1方式 | 30万〜50万円 | Bluetoothのみ |
| 2方式 | 50万〜80万円 | Wi-Fi+Bluetooth |
| 3方式以上 | 70万〜100万円以上 | Wi-Fi+Bluetooth+LTE |
費用に影響する要因
| 要因 | 影響 |
|---|---|
| 通信方式の数 | 多いほど費用増(方式ごとに測定が必要) |
| 周波数帯の数 | 2.4GHz+5GHzの両方なら費用増 |
| 海外認証データの有無 | FCC/CEデータがあれば一部測定を省略可能で費用減 |
| 機器の複雑さ | 高出力や特殊な変調方式は費用増 |
| 登録証明機関の選択 | 機関によって費用が異なる |
期間の目安
| 工程 | 期間 |
|---|---|
| 書類準備 | 1〜2週間 |
| 測定・審査 | 2〜6週間 |
| 認証書の交付 | 数日〜1週間 |
| 合計 | 約1〜3ヶ月 |
海外の認証データがある場合は測定期間が短縮される可能性があります。
行政書士・認証コンサルへの代行依頼
技適の取得手続きは専門的な内容が多いため、行政書士や認証コンサルタントに代行を依頼することができます。
代行で依頼できること
| 業務 | 内容 |
|---|---|
| 事前調査 | 対象機器が技適取得可能か調査 |
| 書類作成 | 申請書、技術仕様書等の作成 |
| 登録証明機関との調整 | 測定スケジュールの調整、技術的な質問への対応 |
| 認証手続きの代行 | 申請から認証書の受領まで一括代行 |
| 海外メーカーとの調整 | 技術資料の取得、サンプル手配の調整 |
代行費用の目安
| 代行の範囲 | 報酬の目安 |
|---|---|
| 書類作成のみ | 5万〜15万円 |
| 認証手続き全体の代行 | 10万〜30万円 |
| 海外メーカーとの調整を含む | 20万〜50万円 |
代行費用は認証費用(登録証明機関への支払い)とは別途かかります。トータルコストは認証費用+代行費用になります。
代行を依頼すべきケース
- 初めて技適を取得する(手続きの全体像がわからない)
- 海外メーカーの製品を輸入販売する(技術資料の入手に交渉が必要)
- 複数の通信方式を含む複雑な機器(測定項目が多い)
- 短期間で認証を完了させたい(経験豊富な代行者のノウハウが有効)
よくある質問
Q. 技適なしの製品を日本で販売するとどうなる?
販売自体は直ちに違法ではありませんが、購入者が使用すると電波法違反になります。技適なしの無線機器を使用した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象です。販売者の法的責任が問われるケースもあるため、日本で販売する無線機器には必ず技適を取得してください。
Q. 海外のFCC認証があれば技適は不要?
不要にはなりません。FCC(米国)やCE(欧州)の認証と日本の技適は別の制度です。ただし、FCC/CEの測定データを流用して技適の測定を一部省略できる場合があり、費用と期間の節約につながります。
Q. 技適の有効期限はある?
技術基準適合証明には有効期限はありません。一度取得すれば、技術基準の改正がない限り有効です。ただし、工事設計認証は設計の変更があった場合に再認証が必要になります。
Q. 自社で使うだけの機器も技適が必要?
はい、必要です。販売目的でなくても、日本国内で無線機器を使用するには技適が必要です。少数台の自社利用なら、技術基準適合証明(1台ごとの認証)が費用を抑えられます。または、実験目的なら「技適未取得機器の特例制度|届出方法と利用条件」の利用も検討してください。
Q. 認証後に製品の設計を変更したらどうなる?
無線部の設計変更があった場合は再認証が必要です。外観やソフトウェアの変更で無線特性に影響がなければ再認証は不要ですが、判断が難しい場合は登録証明機関に確認してください。
まとめ
海外製無線機器を日本で販売するには、技適マークの取得が必須です。
- 技適の2種類: 技術基準適合証明(個別の機器向け)と工事設計認証(量産品向け)
- 認証を行う登録証明機関: TELEC、SGS、TÜV、UL等
- 費用の目安: 10万〜100万円(通信方式の数や機器の複雑さで変動)
- 期間の目安: 約1〜3ヶ月
- 行政書士・認証コンサルへの代行も可能(報酬5万〜50万円)
電波法の基本については「電波法とは?基本の仕組みをわかりやすく解説」をご覧ください。電波法違反の罰則は「電波法違反の罰則一覧|知らなかったでは済まない」で解説しています。