目次
この記事でわかること
FPVドローンの無線局を開局するには、VTX(映像送信機)が電波法の技術基準に適合していることを保証認定で証明する必要があります。かつて保証認定を行う機関はTSS(東洋信号通信社)とJARD(日本アマチュア無線振興協会)の2つがありましたが、2024年3月31日をもってTSSはアマチュア局保証業務から撤退しました。
この記事では、TSSとJARDの歴史的な経緯と違い、TSSの撤退が現在の手続きに与える影響、そして現在唯一の保証機関であるJARDでの手続き方法を詳しく解説します。過去にTSSで保証認定を受けた方が今後どうすればよいかについても触れています。
【重要】2024年4月以降、アマチュア局の保証業務を行っているのはJARDのみです。 TSSでの新規申請はできません。
FPVドローンと電波法の関係
FPVドローンのVTXは、5.7GHz帯や5.8GHz帯の電波を発射するアマチュア無線の送信設備です。日本でVTXを使用するには、電波法に基づきアマチュア無線局の開局申請が必要です。
何人も、総務大臣の免許を受けなければ、無線局を開設してはならない。
― 電波法 第4条
VTXは一般に技適マーク(技術基準適合証明)を取得していないため、そのままでは開局申請ができません。そこで必要になるのが保証認定です。
保証認定とは
保証認定とは、技適マークのない無線設備が電波法の技術基準に適合していることを第三者機関が書面で保証する手続きです。
無線設備が法第三章に定める技術基準に適合していることの保証を行う。
― 電波法施行規則 第33条の10
保証認定を受けると、その無線設備を使ったアマチュア無線局の開局申請が可能になります。保証認定を行える機関は、かつて総務大臣から指定を受けたTSSとJARDの2つでしたが、2024年4月以降はJARDのみが業務を行っています。
TSS撤退の経緯と影響
TSSの保証業務終了
2023年12月、TSS株式会社は2024年3月31日をもってアマチュア局保証業務を終了することを公式サイトで発表しました。TSSは2001年4月から約23年間にわたって保証業務を行ってきましたが、業務の採算性や経営方針の変更により撤退を決定しました。
具体的なスケジュールは以下のとおりです。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2023年12月 | TSS株式会社が保証業務終了を発表 |
| 2024年1月31日 18:00 | TSSへの新規申込の最終期限 |
| 2024年2月1日〜3月31日 | 残務整理期間(新規申請の受付なし) |
| 2024年4月1日〜 | JARDが唯一の保証機関に |
過去にTSSで保証認定を受けた方への影響
過去にTSSで保証認定を受けた方の既存の保証は引き続き有効です。ただし、以下の点に注意が必要です。
- VTXの追加・変更: 新たに保証が必要な場合はJARDで申請する
- 再免許申請: 5年ごとの再免許申請では保証認定の再取得は不要なため、TSS撤退の影響はない
- 変更申請: 無線設備の変更に伴う保証はJARDに申請する
過去にTSSで受けた保証認定を「JARDに移行する」手続きは存在しません。既存の保証はそのまま有効で、新たに保証が必要になった場合のみJARDに申請します。
JARD料金改定(2024年2月〜)
TSSの撤退に伴い、JARDは2024年2月1日から保証料を改定しました。
| 項目 | 旧料金(〜2024年1月) | 新料金(2024年2月〜) |
|---|---|---|
| 基本保証料(開設・1台目含む) | 4,100円 | 5,500円(税込) |
| 2台目以降(1台あたり) | 1,000円 | 1,100円(税込) |
| 設置場所変更 | 2,600円 | 3,300円(税込) |
唯一の保証機関になったことで料金が上がっていますが、保証認定なしに開局することはできないため、やむを得ない費用です。
必要な手続きの全体像
FPVドローンの開局申請における保証認定の位置づけは以下のとおりです。
- アマチュア無線技士の資格取得(第4級以上)
- 保証認定の申請(TSS または JARD) ← ここで選択が必要
- 総合通信局への開局申請(保証書を添付)
- 免許状の受領・運用開始
保証認定はStep 2の段階で必要になります。2024年4月以降はJARDのみで保証認定を受けることになります。
TSSとJARDの比較(歴史的な参考情報)
以下の比較は過去の情報を含む参考資料です。TSSはすでにアマチュア局保証業務を終了していますが、両者の違いを知ることで制度の理解が深まります。
基本情報
| 項目 | TSS(東洋信号通信社) | JARD(日本アマチュア無線振興協会) |
|---|---|---|
| 正式名称 | 株式会社東洋信号通信社 | 一般財団法人日本アマチュア無線振興協会 |
| 設立 | 1950年 | 1991年 |
| 種別 | 民間企業 | 一般財団法人 |
| 公式サイト | tsscom.co.jp | jard.or.jp |
| 保証認定以外の業務 | 船舶・航空無線の検査、保守 | アマチュア無線の養成課程講習会運営 |
費用の比較
| 費用項目 | TSS | JARD |
|---|---|---|
| 基本保証料(新規) | 約4,000〜5,000円 | 約3,000〜4,000円 |
| 基本保証料(変更) | 約3,000〜4,000円 | 約2,500〜3,500円 |
| 追加設備(1台追加ごと) | 約1,000〜2,000円 | 約1,000〜2,000円 |
| 支払い方法 | 銀行振込 | 銀行振込、コンビニ払い |
費用はJARDのほうがやや安い傾向があります。ただし、料金は改定されることがあるため、申請前に公式サイトで最新の料金を確認してください。
対応周波数帯の比較
FPVドローンで使用する周波数帯への対応状況は以下のとおりです。
| 周波数帯 | TSS | JARD | FPVでの用途 |
|---|---|---|---|
| 2.4GHz帯 | 対応 | 対応 | 操縦用(技適機が多い) |
| 5.7GHz帯 | 対応 | 対応 | 映像伝送 |
| 5.8GHz帯 | 対応 | 対応 | 映像伝送 |
| 1.2GHz帯 | 対応 | 対応 | 映像伝送(一部機器) |
| 430MHz帯 | 対応 | 対応 | 一般的なアマチュア無線 |
| 144MHz帯 | 対応 | 対応 | 一般的なアマチュア無線 |
FPVドローンで主に使用される5.7GHz帯・5.8GHz帯はTSS・JARDの両方で対応しています。
審査期間の比較
| 項目 | TSS | JARD |
|---|---|---|
| 標準的な審査期間 | 2〜4週間 | 1〜3週間 |
| 繁忙期の審査期間 | 4〜6週間以上 | 3〜5週間 |
| 書類不備時の対応 | メールで補正指示 | メールで補正指示 |
審査期間はJARDのほうがやや短い傾向がありますが、時期や申請の内容によって変動します。年度末(3月)や大型連休前後は混雑するため、余裕をもって申請しましょう。
申請方法の比較
| 項目 | TSS | JARD |
|---|---|---|
| 申請方法 | 書面(郵送) | 書面(郵送)またはオンライン |
| オンライン申請 | 非対応(2026年3月時点) | 対応 |
| 必要書類 | 保証願書、工事設計書、系統図 | 保証願書、工事設計書、系統図 |
| 系統図の提出 | 必須 | 必須 |
JARDはオンライン申請に対応しており、書類の郵送が不要です。TSSは書面(郵送)での申請のみとなっています。手軽さの面ではJARDが有利です。
系統図の書き方については「FPVドローンVTXの系統図の書き方|開局申請に必要」で詳しく解説しています。
現在の選択肢:JARDのみ
2024年4月以降はJARD一択
2024年4月以降、アマチュア局の保証業務を行っているのはJARDのみです。TSSの撤退により選択肢がなくなったため、FPVドローンの保証認定はすべてJARDで行うことになります。
JARDで保証認定を受ける際のポイントは以下のとおりです。
- オンライン申請に対応: 書類の郵送が不要で手続きが簡便
- 書面申請も引き続き可能: 電子申請が苦手な方は郵送でも申請できる
- 標準的な審査期間は1〜3週間: ただし繁忙期は混雑する傾向
- FPVドローン専用の案内ページあり: JARDの公式サイトにVTXの保証認定手順が掲載されている
JARD保証認定が混雑する時期
JARDが唯一の保証機関となったことで、特定の時期に申請が集中する傾向があります。以下の時期は審査期間が長くなる可能性があるため、余裕をもった申請がおすすめです。
| 時期 | 混雑の理由 |
|---|---|
| 3月〜4月 | 年度替わりで申請が集中 |
| 大型連休前 | GWにFPVを始めたい方の駆け込み申請 |
| 9月〜10月 | 秋のイベントシーズン前 |
| 年末 | 年内に開局したい方の申請 |
混雑時は審査期間が3〜5週間に延びることもあります。レース大会やイベントに合わせて開局したい場合は、2〜3ヶ月前から準備を始めることをおすすめします。
保証認定の種類と使い分け
JARDの保証認定には基本保証とスプリアス確認保証の2種類があります。FPVドローンの開局では主に基本保証を利用します。
| 保証の種類 | 用途 | 費用(税込) |
|---|---|---|
| 基本保証(開設) | 新規に無線局を開局する場合 | 5,500円(1台目含む) |
| 基本保証(変更) | VTXの追加・交換時 | 5,500円 |
| スプリアス確認保証 | 旧スプリアス規格の無線機を確認する場合 | 別途料金 |
FPVドローンの場合は基本保証(開設)を選びます。2台目以降のVTXを同時に申請する場合は、1台あたり1,100円が加算されます。
JARD保証認定の手続き詳細
Step 1: 必要書類を準備する
保証認定の申請に必要な書類は以下のとおりです。
- 保証願書(JARDのWebサイトからダウンロード可能)
- 無線局の工事設計書
- VTXの系統図(ブロックダイアグラム)
- VTXの仕様書(メーカーの公式スペックシート)
- 無線従事者免許証のコピー(アマチュア無線技士 第4級以上)
系統図はVTXの内部構成をブロック図で示したもので、保証認定の審査で最も重要な書類です。VTXのメーカーが公式に系統図を公開している場合はそれを使用し、公開されていない場合は自分で作成する必要があります。
Step 2: 申請方法を選ぶ
JARDでは電子申請(メール)と書面申請(郵送)の2つの方法が選べます。
| 項目 | 電子申請 | 書面申請 |
|---|---|---|
| 申請方法 | メールで書類を送付 | 郵送で書類を送付 |
| 保証料の支払い | 銀行振込 | 銀行振込 |
| 審査結果の通知 | メール | 郵送 |
| 処理の速さ | 速い | やや遅い |
| おすすめ度 | 高い | 標準 |
電子申請のほうが処理が速いため、特段の理由がなければ電子申請を選んでください。
Step 3: 電子申請の具体的な手順
- JARDの公式サイトから保証願書の様式をダウンロードする
- 保証願書に必要事項を記入する(申請者情報、VTXの情報、使用する周波数帯など)
- 系統図、工事設計書、VTXの仕様書をPDF化する
- JARDの保証業務担当アドレス宛にメール送信する
- JARDから保証料の振込案内が届くので、銀行振込で支払う
- 審査完了後、保証書がメールで届く
Step 4: 保証書を受領し開局申請へ
審査に合格すると保証書が発行されます。この保証書を添付して、総合通信局に開局申請を行います。JARDから保証書が届いたら、速やかに開局申請に進みましょう。
開局申請の全体手順については「FPVドローン5.8GHz帯の開局申請|手順と必要書類」をご覧ください。
審査で不備を指摘された場合
保証認定の審査では、系統図の不備や工事設計書の記載誤りが指摘されることがあります。よくある不備と対処法を以下にまとめます。
| よくある不備 | 対処法 |
|---|---|
| 系統図に周波数表示がない | VTXの使用周波数帯を系統図に明記する |
| 空中線電力の記載が仕様書と不一致 | メーカーの仕様書に記載された値と一致させる |
| 使用するバンドプランの範囲外の周波数を記載 | アマチュア無線のバンドプランに収まる周波数に修正する |
| 系統図の各ブロックの説明不足 | 変調器、増幅器、フィルタ等の各ブロックを明記する |
不備を指摘された場合は、メールで補正指示が届きます。修正した書類を再送付すれば審査が再開されます。補正にかかる追加費用はありません。
系統図の書き方については「FPVドローンVTXの系統図の書き方|開局申請に必要」で詳しく解説しています。
費用の総額(2024年2月改定後)
保証認定から開局申請までの費用の総額をまとめます(2024年2月改定後の料金)。
| 費用項目 | 金額 |
|---|---|
| アマチュア無線技士 国試受験料(4級) | 5,163円 |
| 無線従事者免許証 交付手数料 | 1,750円 |
| JARD保証認定料(新規・1台) | 5,500円(税込) |
| 開局申請手数料(電子申請) | 2,900円 |
| 電波利用料(年額) | 300円 |
| 合計(目安) | 約15,613円 |
複数台のVTXを同時申請する場合の費用は以下のとおりです。
| VTXの台数 | JARD保証認定料(税込) |
|---|---|
| 1台 | 5,500円 |
| 2台 | 6,600円(5,500 + 1,100) |
| 3台 | 7,700円(5,500 + 1,100 x 2) |
| 5台 | 9,900円(5,500 + 1,100 x 4) |
費用の詳しい内訳やシミュレーションについては「FPVドローンの開局にかかる費用一覧」をご覧ください。
よくある質問
Q. 保証認定なしで開局申請できる?
技適マーク(技術基準適合証明)を取得したVTXであれば保証認定は不要です。ただし、FPVドローンのVTXで技適マークを取得した製品は非常に限られています。ほとんどの場合、保証認定が必要です。
Q. 一度保証認定を受けたVTXを別の機体に載せ替えたら再申請が必要?
VTXを同じものに載せ替えるだけなら再申請は不要です。ただし、別のVTXに変更する場合は、無線局の変更申請と新しいVTXの保証認定が必要です。
Q. TSSで過去に受けた保証認定は今も有効?
はい、有効です。TSSが保証業務を終了した後も、過去にTSSで受けた保証認定の効力は失われません。ただし、VTXの追加や変更で新たに保証が必要になった場合は、JARDで新規に保証認定を受ける必要があります。
Q. JARD以外に保証認定を受けられる機関は今後できる?
現時点では未定です。総務大臣から新たに保証業務の指定を受ける機関が現れれば選択肢が増える可能性はありますが、2026年3月時点ではJARDのみが保証業務を行っています。
Q. 保証認定に有効期限はある?
保証認定自体に有効期限はありません。ただし、保証認定はあくまで開局申請のための書類であり、開局後の無線局免許には5年間の有効期限があります。免許の更新(再免許)の際には、保証認定を再度受ける必要はありません。
Q. 行政書士に保証認定の手続きも依頼できる?
はい、行政書士に保証認定の申請から開局申請までまとめて依頼できます。費用相場については「ドローン飛行許可の申請代行|費用相場と依頼の流れ」を参考にしてください。FPVドローンの開局代行は3万〜5万円程度が目安です。
保証認定を受ける前に確認すべきこと
VTXの周波数設定の確認
FPVドローンのVTXは多くの場合、工場出荷時に日本のバンドプランに適合しない周波数が設定されていることがあります。保証認定を申請する前に、以下を確認してください。
- 使用するチャンネルがアマチュア無線のバンドプラン内に収まるか
- 出力の上限がアマチュア局の免許範囲内か
- 不要な周波数チャンネルをファームウェアで無効化できるか
日本のアマチュア無線のバンドプランでは、画像伝送が可能な5.8GHz帯の周波数は5,690〜5,725MHz、5,730〜5,755MHz、5,757〜5,760MHz、5,762〜5,765MHz、5,770〜5,810MHzの範囲に限定されています。海外製VTXの全チャンネルがこの範囲に入るとは限らないため、使用可能な周波数帯を事前に確認することが大切です。
周波数帯の詳細は「FPVドローンで使える周波数帯|5.7GHz・5.8GHzの違い」で解説しています。
保証認定が不要なケース
以下のケースでは保証認定が不要です。
- 技適マーク付きのVTXを使用する場合: 技適マーク(技術基準適合証明)を取得したVTXであれば保証認定は不要。ただしFPVドローン用VTXで技適マーク付きの製品は非常に少ない
- 2.4GHz帯のデジタルFPVシステムのみを使用する場合: DJI FPVシステムなど技適取得済みの2.4GHz帯システムでは保証認定も開局申請も不要
技適マークの確認方法は「ドローンの技適確認方法|技適マークと技適番号の調べ方」をご覧ください。
まとめ
2024年3月31日をもってTSSがアマチュア局保証業務から撤退し、現在はJARDのみが保証認定を行っています。
- TSSは2024年3月31日で業務終了: 新規申請は不可
- JARDが唯一の保証機関: 2024年2月から料金改定(基本保証料5,500円)
- 過去にTSSで受けた保証は有効: 新たな保証が必要になった場合のみJARDに申請
- 審査期間: 通常1〜3週間、繁忙期は3〜5週間
- 申請方法: 電子申請(メール)と書面申請(郵送)の2択
保証認定に必要な系統図の作成方法は「FPVドローンVTXの系統図の書き方|開局申請に必要」で、FPVで使える周波数帯の詳細は「FPVドローンで使える周波数帯|5.7GHz・5.8GHzの違い」で解説しています。FPVドローンの開局費用の全体像は「FPVドローンの開局にかかる費用一覧」もあわせてご確認ください。