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FPVドローンの無線局変更申請|VTX交換時の手続き

この記事でわかること

FPVドローンのVTX(映像送信機)を別の機種に交換したり、出力や周波数を変更したりする場合、無線局の変更申請が必要です。変更申請をせずに新しいVTXで電波を出すと電波法違反になります。

この記事では、変更申請が必要なケースと不要なケース手続きの流れ必要書類保証認定の再取得届出と申請の違い費用を解説します。

FPVドローンと電波法の関係

アマチュア無線局の免許は、申請時に届け出た工事設計(VTXのスペック)に基づいて交付されます。VTXを別の機種に交換するなど、工事設計の内容が変わる場合は、総合通信局に変更の手続きを行わなければなりません。

免許人は、無線局の目的、通信の相手方、通信事項、放送事項、放送区域、無線設備の設置場所若しくは基幹放送の業務に用いられる電気通信設備を変更し、又は無線設備の変更の工事をしようとするときは、あらかじめ総務大臣の許可を受けなければならない。

― 電波法 第17条第1項

工事設計の変更には、事前に許可を受ける「変更申請」と、事後に届け出る「届出」の2種類があります。変更の内容によってどちらの手続きが必要かが変わります。

変更申請を怠った場合の罰則

VTXを交換したにもかかわらず変更申請をせずに電波を発射した場合、以下の罰則の対象となります。

第十七条第一項の規定に違反して無線設備の変更の工事をした者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

― 電波法 第112条第1号

さらに、免許に記載のない無線設備で電波を発射した場合は、無免許開設に準ずる扱いとなり、電波法第110条の1年以下の懲役または100万円以下の罰金が適用される可能性もあります。「VTXを交換しただけ」という認識で変更申請を怠ると、思わぬ法的リスクを負うことになります。

必要な手続きの全体像

VTXの変更内容に応じた手続きのフローは以下のとおりです。

VTXの変更が発生
  ↓
【判定】変更申請 or 届出 or 手続き不要?
  ↓
変更申請の場合:
  JARD保証認定(再取得)→ 変更申請書を提出 → 許可 → 運用開始

届出の場合:
  変更届を提出 → 運用開始

手続き不要の場合:
  そのまま運用継続

変更申請が必要なケース

以下の変更を行う場合は、事前の変更申請(許可申請)が必要です。

変更内容 具体例 保証認定
VTXを別の機種に交換 TBS Unify Pro → Rush Tank Ultimateに交換 必要
空中線電力(出力)の変更 25mW → 200mWに変更 必要
周波数の追加・変更 5.8GHz帯のみ → 5.7GHz帯を追加 必要
電波の型式の変更 アナログVTX → デジタルVTX(HDZero等)に交換 必要
送信機の追加(増設) 1台目に加えて2台目のVTXを追加 必要

これらの変更は、免許の工事設計の根幹に関わる変更であるため、変更後の工事設計について改めてJARD(またはTSS)の保証認定を受ける必要があります。

届出で済むケース

以下の変更は、事後の届出のみで済みます。

変更内容 具体例
免許人の住所変更 引っ越しをした場合
免許人の氏名変更 結婚等で氏名が変わった場合

これらは工事設計の変更ではないため、保証認定の再取得は不要です。

手続き不要のケース

以下の場合は手続き不要で、そのまま運用を継続できます。

ケース 理由
同一型番・同一スペックのVTXへの交換 工事設計に変更がないため
VTXの出力設定を免許の範囲内で変更 例: 免許上200mWで、運用を25mWに変更
アンテナの交換(同一型式) 工事設計書の記載が変わらないため
カメラの交換 VTXの工事設計に影響しないため

重要な判断基準は、「工事設計書に記載した内容が変わるかどうか」です。VTXの型番・出力・周波数・電波の型式のいずれかが変わるなら変更申請、変わらないなら手続き不要です。

判断フローチャート

VTXを交換する際の手続き判断は、以下のフローで行えます。

VTXを交換する
  ↓
VTXの型番は変わるか?
  ├─ はい → 変更申請が必要(JARD保証認定+変更許可申請)
  └─ いいえ → 同一型番の同一リビジョンか?
        ├─ はい → 手続き不要
        └─ いいえ(リビジョン違い)→ スペックに変更があるか?
              ├─ はい → 変更申請が必要
              └─ いいえ → 手続き不要
VTXの出力設定を変更する
  ↓
免許上の空中線電力の範囲内か?
  ├─ はい(例: 免許200mW、運用25mW) → 手続き不要
  └─ いいえ(免許の空中線電力自体を変更する) → 変更申請が必要
周波数帯を追加する
  ↓
現在の免許に含まれていない周波数帯を使いたい?
  ├─ はい(例: 5.8GHzのみ→5.7GHzを追加) → 変更申請が必要
  └─ いいえ → 手続き不要

迷った場合は、管轄の総合通信局に電話で問い合わせるのが最も確実です。総合通信局の連絡先は「総合通信局の管轄エリアと役割」をご覧ください。

手続きの詳細

Step 1: 変更内容を確認する

まず、現在の免許状と工事設計書の内容を確認し、何が変わるのかを明確にします。

確認項目 現在の免許内容 変更後 変更の有無
VTXの型番 TBS Unify Pro32 Rush Tank Ultimate 変更あり
空中線電力 0.025W 0.2W 変更あり
周波数 5,755〜5,850MHz 5,755〜5,850MHz 変更なし
電波の型式 F8W F8W 変更なし

この例では、VTXの型番と出力が変わるため変更申請が必要です。

Step 2: 新しいVTXの書類を準備する

変更後のVTXについて、以下の書類を準備します。

書類 内容
変更申請書 総務省の所定様式(電子申請システムで作成可)
工事設計書(変更後) 新しいVTXのスペックを記載
系統図(変更後) 新しいVTXに合わせて作成
新しいVTXのスペック表 メーカーの公式資料

工事設計書の書き方は開局申請時と同じです。系統図の作成方法は「FPVドローンVTXの系統図の書き方|開局申請に必要」をご覧ください。

変更前と変更後の比較表を作成する

変更申請をスムーズに進めるために、変更前と変更後の比較表を事前に作成しておくことを推奨します。

項目 変更前 変更後 変更の有無
VTXの名称 ○○(型番を記入) ○○(型番を記入) あり / なし
電波の型式 F8W F8W あり / なし
周波数 5,755〜5,850MHz 5,650〜5,850MHz あり / なし
空中線電力 0.025W 0.2W あり / なし
アンテナの型式 ダイポール パッチ あり / なし

この比較表はJARDの保証認定申請や総合通信局への変更申請の際にも参考になります。

Step 3: JARD保証認定を再取得する

新しいVTXの工事設計について、JARD(またはTSS)の保証認定を再度取得します。

項目 内容
申請の種類 変更(新規ではなく変更を選択)
費用 2,400円
審査期間 約2〜3週間
必要書類 変更申請書+新しい工事設計書+系統図+スペック表

JARDの保証認定申請の詳しい手順は「JARD保証認定とは?FPVドローンの開局に必要な手続き」をご覧ください。TSS保証認定を利用する場合は「TSS保証認定の手続きと費用」をご覧ください。

JARD保証認定(変更)の注意点

注意点 内容
申請の種類は「変更」を選択 JARDの申請フォームで「新規」ではなく「変更」を選ぶ
現在の免許番号の記入が必要 変更申請では既存の免許番号を記入する
二次業務確認書 5.7GHz帯を含む周波数変更の場合は再提出が必要
審査期間 変更の場合でも約2〜3週間(新規と同程度)

Step 4: 総合通信局に変更申請を提出する

JARD保証認定が完了したら、管轄の総合通信局に変更申請書を提出します。

電子申請の場合

  1. 総務省 電波利用 電子申請・届出システムLiteにログイン
  2. アマチュア局の変更」を選択
  3. 免許番号を入力して現在の免許情報を呼び出す
  4. 変更箇所(工事設計)を修正入力
  5. JARDの保証書を添付
  6. 申請手数料を納付

申請手数料

方法 費用
電子申請 1,500円
書面申請 1,800円

開局申請よりも手数料は安くなっています。

Step 5: 許可を受けてから運用開始

変更申請の審査期間は通常約2〜4週間です。

重要: 変更の許可が下りるまで、新しいVTXで電波を出してはいけません。 変更申請は事前許可制であり、許可なく変更後のVTXを使用すると電波法違反です。

許可が下りると、総合通信局から「変更許可通知書」が届きます。通知を受け取ったら、新しいVTXでの運用を開始できます。

変更申請の実例

実例1: アナログVTXの機種変更

変更内容: TBS Unify Pro32 HV(5.8GHz帯、25mW)をRush Tank Ultimate(5.8GHz帯、800mW対応)に交換。

必要な手続き: 1. Rush Tank Ultimateのスペック表・系統図を準備 2. 工事設計書の「空中線電力」を0.025W→0.8Wに変更(最大出力での記載) 3. JARDで変更の保証認定を取得(費用: 2,400円、約2〜3週間) 4. 総合通信局に変更申請を提出(費用: 1,500円、約2〜4週間) 5. 変更許可通知を受領後、Rush Tank Ultimateでの運用開始

合計費用: 3,900円、所要期間: 約1〜2ヶ月

実例2: アナログVTXからデジタルVTXへの変更

変更内容: TBS Unify Pro32(アナログ、5.8GHz帯)をHDZero Race V3(デジタル、5.8GHz帯)に交換。

必要な手続き: 1. HDZero Race V3のスペック表・系統図を準備 2. 工事設計書の「電波の型式」をアナログの記載からデジタルの記載に変更 3. JARDで変更の保証認定を取得 4. 総合通信局に変更申請を提出 5. 変更許可通知を受領後、HDZeroでの運用開始

注意点: アナログからデジタルへの変更は電波の型式が変わるため、必ず変更申請が必要です。

実例3: 5.8GHz帯に5.7GHz帯を追加

変更内容: 5.8GHz帯(5,755〜5,850MHz)のみで開局済みの免許に、5.7GHz帯(5,650〜5,755MHz)を追加。

必要な手続き: 1. VTXが5.7GHz帯に対応していることを確認 2. 工事設計書の周波数を「5,755〜5,850MHz」→「5,650〜5,850MHz」に変更 3. JARDで変更の保証認定を取得 4. 総合通信局に変更申請を提出

注意点: 5.7GHz帯は気象レーダーとの共用帯域のため、二次業務確認書の提出が必要です。5.7GHz帯の詳細は「FPVドローン5.7GHz帯の開局申請|5.8GHzとの違い」をご覧ください。

実例4: VTXの2台目を増設

変更内容: 1台目のVTX(TBS Unify Pro32)に加えて、2台目のVTX(Rush Tank Mini)を追加登録。

必要な手続き: 1. 2台目のVTXのスペック表・系統図を準備 2. 工事設計書に2台目の送信機情報を追加 3. JARDで増設の保証認定を取得(費用: 2,400円) 4. 総合通信局に変更申請を提出

注意点: VTXの増設は「変更申請」で行います。2台目のVTXで別途開局申請をする必要はありません。1つの免許に複数のVTXを登録できます。JARD保証認定の増設手続きの詳細は「JARD保証認定とは?FPVドローンの開局に必要な手続き」をご覧ください。

変更申請の全体スケジュール

VTX交換に伴う変更申請の全体スケジュールを整理します。

工程 所要期間 備考
書類準備(工事設計書・系統図・スペック表) 1〜3日 系統図のテンプレートを活用すると効率的
JARD保証認定の審査 約2〜3週間 書類に不備がなければスムーズ
電子申請の入力・送信 約30分 JARD保証書PDFの添付を忘れずに
総合通信局の審査 約2〜4週間 混雑状況により変動
合計 約1〜2ヶ月 書類不備による差し戻しがあるとさらに延びる

変更申請中は旧VTXでの運用は継続可能ですが、新VTXでの運用は許可が下りるまで待つ必要があります。レースの予定がある場合は、余裕を持ったスケジュールで手続きを進めてください。

届出と申請の違い

電波法では、無線局に関する手続きに「届出」と「申請(許可申請)」の2種類があります。FPVドローンの変更手続きで混同しやすいため、違いを整理します。

項目 届出 申請(許可申請)
手続きのタイミング 事後(変更後に届出) 事前(変更前に許可を受ける)
総合通信局の審査 形式審査のみ 技術審査あり
JARD保証認定 不要 必要
対象となる変更 住所・氏名の変更 工事設計の変更(VTX交換等)
費用 無料 1,500円〜(申請手数料)

VTXの交換は工事設計の変更にあたるため、事前の許可申請が必要です。「届出を出せばよい」と勘違いして、許可なく新しいVTXを使うケースがあるため注意してください。

費用の総額

VTX交換に伴う変更手続きの費用をまとめます。

手続き 費用
JARD保証認定(変更) 2,400円
変更申請手数料(電子申請) 1,500円
合計 3,900円

書面申請の場合は、変更申請手数料が1,800円となり、合計4,200円です。

よくある質問

Q. VTXの出力を下げるだけでも変更申請が必要?

場合によるです。免許上の空中線電力が200mWで、運用時に25mWに設定する(出力を下げる)場合は、免許の範囲内の運用なので変更申請は不要です。しかし、免許上の空中線電力を200mWから25mWに正式に変更する場合は、工事設計の変更として変更申請が必要です。

Q. VTXを壊してしまい、同じ型番の新品に交換する場合は?

同一型番・同一スペックであれば、工事設計に変更がないため手続きは不要です。ただし、同じ型番でもリビジョン違い(ハードウェアバージョンが異なる)でスペックが変わっている場合は変更申請が必要です。

Q. VTXを2台目に追加する場合の手続きは?

既存の免許に2台目のVTXを増設する形で変更申請を行います。手続きは通常の変更申請と同じです。2台目のVTXについてもJARD保証認定が必要です。

Q. 変更申請中に古いVTXは使える?

はい、使えます。 変更申請が審査中であっても、現在の免許に記載されている旧VTXは引き続き運用できます。新しいVTXの使用は、変更の許可が下りてからです。

Q. アンテナだけ交換する場合は?

アンテナの型式(ダイポール、パッチ、八木等)が工事設計書の記載と変わる場合は変更申請が必要です。同じ型式のアンテナ(例: ダイポール→別のダイポール)への交換であれば手続き不要です。

Q. 変更申請をせずに新しいVTXを使うとどうなる?

免許に記載のない無線設備で電波を発射した場合、電波法第110条により1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象です。VTXを交換したら、必ず変更申請を行ってから使用してください。

Q. 複数のVTXを同時に変更する場合、申請は1回で済む?

はい、1回の変更申請でまとめて変更可能です。たとえば、2台のVTXを別の機種に交換する場合、工事設計書に2台分の変更内容を記載し、JARD保証認定も2台分をまとめて申請できます。JARD保証認定は台数に応じた費用がかかる場合があるため、事前にJARDに確認してください。

Q. 変更申請の審査で不許可になることはある?

書類に不備がなければ不許可になることは稀です。差し戻しになる主な原因は以下のとおりです。

  • 工事設計書の記載とVTXの実際のスペックが不一致
  • 系統図の出力や周波数が工事設計書と矛盾
  • JARD保証書の添付漏れ
  • 申請手数料の未納付

差し戻しの場合は、不備を修正して再提出すれば処理されます。

Q. VTXのファームウェアをアップデートした場合、変更申請は必要?

原則として不要です。ファームウェアのアップデートによってVTXの出力・対応周波数・変調方式などのハードウェア仕様が変わらない限り、工事設計の変更には該当しません。ただし、ファームウェアのアップデートで新しい周波数帯のチャンネルが追加された場合に、免許範囲外のチャンネルを使用すると違法になります。アップデート後はチャンネル設定を必ず確認してください。

Q. 行政書士に変更申請を依頼できる?

はい、依頼できます。変更申請の代行費用の目安は以下のとおりです。

項目 費用の目安
変更申請の代行(書類作成+提出) 20,000円〜40,000円
系統図の作成のみ 5,000円〜15,000円

自分で手続きする場合の合計3,900円と比較して費用は高くなりますが、書類作成に不安がある場合や時間がない場合は行政書士への依頼が有効です。申請代行の相場は「ドローン申請代行の費用相場|行政書士に依頼するメリット」をご覧ください。

まとめ

FPVドローンのVTX交換は、変更申請を忘れがちな手続きです。

  • VTXの型番・出力・周波数・電波の型式が変わる場合は変更申請が必要
  • 変更申請は事前許可制(許可が下りるまで新VTXは使用不可)
  • JARD保証認定の再取得が必要(費用2,400円)
  • 変更申請手数料は1,500円(電子申請)、合計3,900円
  • 同一型番・同一スペックの交換なら手続き不要
  • 住所・氏名の変更は事後の届出のみで済む

FPVドローンの開局手順の全体像は「FPVドローンに必要な免許|アマチュア無線+開局申請ガイド」を、5.8GHz帯の開局手順は「FPVドローン5.8GHz帯の開局申請|手順と必要書類」をご覧ください。5.7GHz帯の開局は「FPVドローン5.7GHz帯の開局申請|5.8GHzとの違い」で解説しています。無線局の廃止手続きについては「FPVドローンの無線局廃止届|機体を手放すときの手続き」をご覧ください。

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