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衛星携帯電話の免許と利用方法|イリジウム・サーストン

この記事でわかること

山間部、離島、海上など、携帯電話の電波が届かない場所でも通信を確保できるのが衛星携帯電話です。災害対策やBCP(事業継続計画)の手段としても注目されています。

この記事では、イリジウムやThuraya(サーヤ)などの衛星携帯電話の種類、電波法上の取り扱い、免許・届出の要否、利用料金の目安、災害時の活用方法を解説します。

衛星携帯電話とは

衛星携帯電話は、人工衛星を経由して音声通話やデータ通信を行う携帯端末です。地上の基地局を経由する通常の携帯電話とは異なり、衛星の電波が届く範囲であれば場所を選ばずに通信できるのが最大の特徴です。

項目 衛星携帯電話 通常の携帯電話
通信経路 端末 → 衛星 → 地上局 端末 → 基地局 → ネットワーク
通信エリア 衛星の覆域内(全球または地域) 基地局の電波到達範囲
屋内利用 困難(空が見える場所が必要) 可能
災害時の耐性 高い(地上設備に依存しない) 低い(基地局被災で不通)

主な衛星携帯電話サービス

イリジウム(Iridium)

項目 内容
運営会社 Iridium Communications(米国)
衛星軌道 低軌道(LEO):高度約780km
衛星数 66基(予備含め75基以上)
通信エリア 全球(南極・北極含む)
日本での取扱事業者 KDDI等

イリジウムは全球カバーが特徴で、海上や極地でも利用可能です。日本国内ではKDDIがサービスを提供しています。

Thuraya(サーヤ)

項目 内容
運営会社 Thuraya Telecommunications(UAE)
衛星軌道 静止軌道(GEO)
通信エリア 欧州・中東・アフリカ・アジアの一部
日本での利用 サービスエリアに日本の一部が含まれる

Thurayaは静止衛星を利用しており、カバーエリアが限定される一方、比較的低コストで利用できるのが特徴です。

ワイドスター(Widestar)

項目 内容
運営会社 NTTドコモ
衛星 N-STAR / きく8号 等
通信エリア 日本国内(領海含む)

NTTドコモが提供する国内向け衛星電話サービスです。日本の衛星を利用しているため、国内でのサポート体制が充実しています。

電波法上の取り扱い

技適取得済みの端末

日本国内で正規に販売されている衛星携帯電話端末は、技術基準適合証明(技適)を取得しています。技適マークが付された端末を使用する場合、利用者側での無線局免許申請は不要です。

技術基準適合証明を受けた無線設備のみを使用する携帯移動地球局は、免許を受けることを要しない。 ― 電波法 第4条 第2号(要旨)

また、技適取得済み端末の利用にあたって無線従事者資格も不要です。

技適のない端末の場合

海外で購入した衛星携帯電話端末など、技適マークのない機器を日本国内で使用することは原則として電波法違反になります。

端末の状態 日本国内での利用
技適マークあり(正規品) 利用可能(免許不要)
技適マークなし(海外版等) 利用不可(電波法違反)

海外で購入した端末を日本で使いたい場合は、技適の取得や特例制度の利用を検討する必要がありますが、現実的には日本国内の正規代理店から購入するのが確実です。

登録局としての届出

衛星携帯電話の一部は、免許ではなく登録の手続きにより利用が認められるものもあります。登録局の場合は、総合通信局への届出が必要です。利用するサービスや端末の種類により異なるため、サービス事業者に確認してください。

衛星携帯電話の料金体系

衛星携帯電話の利用には、以下の費用がかかります。

初期費用

費用項目 目安
端末購入費 5万〜20万円程度(機種による)
契約事務手数料 3,000〜5,000円程度

月額・通話料金

費用項目 目安
基本料金(月額) 4,000〜10,000円程度
通話料(1分あたり) 50〜200円程度(発着信先による)
データ通信料 従量制が一般的

衛星携帯電話は通常の携帯電話に比べて通話料金が高めです。緊急時・非常時の通信手段として位置づけ、日常的な利用には通常の携帯電話を使う、という使い分けが一般的です。

災害時の活用

衛星携帯電話が災害に強い理由

衛星携帯電話は、地上の通信インフラに依存しないため、以下のような災害時に威力を発揮します。

  • 地震: 基地局の倒壊や停電で携帯電話が不通になった場合
  • 台風・水害: 基地局や回線が浸水・損壊した場合
  • 大規模停電: 長時間の停電で基地局のバッテリーが枯渇した場合

自治体・企業のBCP対策

多くの自治体や企業が、BCP対策として衛星携帯電話を導入しています。

導入主体 活用例
自治体 災害対策本部と避難所間の連絡手段
医療機関 災害時の緊急通信、DMAT(災害派遣医療チーム)への配備
建設・土木 山間部の工事現場での通信確保
報道機関 災害現場からの中継・連絡

利用時の注意点

通信環境の確認

衛星携帯電話を利用するには、端末から衛星が見通せる環境が必要です。

  • 屋内: 原則として利用不可(窓際であれば通じる場合がある)
  • ビル街: 高層ビルに囲まれた場所は受信困難
  • 森林・渓谷: 樹木や地形により遮蔽される場合がある

各サービスのエリア確認

サービスによって通信エリアが異なるため、利用場所がエリア内かどうか事前に確認してください。イリジウムは全球カバーですが、Thurayaは日本全域をカバーしていない場合があります。

SIMカードとローミング

衛星携帯電話には専用のSIMカードが必要です。海外で利用する場合は国際ローミングの設定が必要になることもあります。契約時にサービス事業者に確認しましょう。

衛星通信全体の免許制度

衛星携帯電話は、衛星通信サービスの中でも利用者にとって最も手軽に利用できるカテゴリです。VSAT地球局のように専用アンテナの設置工事や免許申請が必要なものと比較すると、手続きの負担は格段に少なくなります。

衛星通信の免許制度全体については「衛星通信のライセンス取得|地球局免許の申請ガイド」を、VSAT局の免許については「VSAT(衛星通信)の免許申請|手続きの流れと費用」をご覧ください。

まとめ

衛星携帯電話に関する要点は以下のとおりです。

  • 技適取得済みの正規端末であれば、免許申請・届出は不要
  • 技適マークのない海外版端末は日本国内で使用不可
  • 無線従事者資格も不要で、誰でも利用可能
  • イリジウム・Thuraya・ワイドスターが主なサービス
  • 災害時・BCP対策として自治体や企業での導入が進んでいる
  • 通話料金は通常の携帯電話より高額

衛星携帯電話の導入を検討している企業・自治体の方は、サービスの選定からBCP計画への組み込みまで、行政書士を含む専門家への相談が有効です。

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