目次
この記事でわかること
衛星通信を利用するには、地上に設置する地球局の免許が必要です。地球局には用途や設置形態に応じた複数の種類があり、それぞれ免許手続きや技術基準が異なります。
この記事では、衛星地球局の種類(固定・移動・VSAT・携帯移動等)、各区分の特徴、免許手続きの違いを整理して解説します。
地球局とは
電波法上の定義
地球局は、地上に設置され、人工衛星局と通信を行う無線局です。電波法施行規則では次のように定められています。
「地球局」とは、地表又は地球の大気圏の主要部分の内にある一の場所に開設し、宇宙局と通信を行う無線局をいう。 ― 電波法施行規則 第4条(要旨)
地球局は衛星通信システムの地上側のインフラであり、衛星事業者だけでなく一般の企業や団体が開設・運用する場合も多い無線局です。
地球局と人工衛星局の関係
衛星通信システムは、宇宙にある人工衛星局と地上にある地球局で構成されます。
| 無線局の種類 | 設置場所 | 免許の申請者 |
|---|---|---|
| 人工衛星局 | 人工衛星上 | 衛星事業者 |
| 地球局 | 地上(陸上・海上・航空機) | 衛星通信の利用者・事業者 |
一般の企業や自治体が衛星通信を利用する場合、申請するのは地球局の免許です。
地球局の分類
設置形態による分類
地球局は、その設置形態に応じて以下のように分類されます。
| 地球局の種類 | 設置形態 | 具体例 |
|---|---|---|
| 固定地球局 | 特定の場所に固定して設置 | VSAT局、大型地球局 |
| 移動地球局 | 移動しながら通信 | 船舶地球局、航空機地球局、車載地球局 |
| 携帯移動地球局 | 持ち運び可能な小型局 | 衛星携帯電話 |
| 報告地球局 | データ収集・報告用 | 気象観測ブイ、環境モニタリング |
固定地球局
固定地球局は、特定の場所に固定して設置される地球局です。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 設置場所 | 建物の屋上、敷地内の専用スペース等 |
| アンテナ | パラボラアンテナが一般的(直径1.2m〜数m) |
| 用途 | 企業間通信、放送素材伝送、データバックアップ |
| 免許 | 総務大臣の免許が必要 |
固定地球局のうち、小型アンテナを使用するものがVSAT局です。
VSAT局
VSAT(Very Small Aperture Terminal)局は、固定地球局の一種で、小型アンテナを使用する衛星通信局です。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| アンテナサイズ | 通常1.2〜2.4m程度 |
| 周波数帯 | Ku帯、Ka帯、C帯 |
| 用途 | 離島・山間部の通信、災害時バックアップ |
| 免許 | 総務大臣の免許が必要 |
VSAT局は固定地球局の中でも比較的小規模な設備で運用できるため、企業や自治体での導入例が多くあります。VSAT局の免許申請の詳細は「VSAT(衛星通信)の免許申請|手続きの流れと費用」をご覧ください。
移動地球局
移動地球局は、移動体(船舶・航空機・車両)に搭載して運用する地球局です。
船舶地球局
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 設置場所 | 船舶上 |
| 通信衛星 | インマルサット衛星等 |
| 用途 | 海上での通信(安全通信、業務通信) |
| 免許 | 船舶局の免許として申請 |
| 必要資格 | 第一級海上特殊無線技士以上 |
航空機地球局
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 設置場所 | 航空機内 |
| 通信衛星 | インマルサット、イリジウム等 |
| 用途 | 航空管制通信、旅客向けWi-Fi |
| 免許 | 航空機局の免許として申請 |
| 必要資格 | 航空無線通信士 |
車載地球局
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 設置場所 | 車両上 |
| 用途 | 災害時の臨時通信、報道中継 |
| 免許 | 総務大臣の免許が必要 |
携帯移動地球局
携帯移動地球局は、利用者が持ち運んで使う小型の地球局です。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 具体例 | イリジウム電話、Thuraya電話 |
| アンテナ | 端末内蔵 |
| 免許 | 技適取得済みの端末であれば免許不要 |
| 必要資格 | 不要 |
技適取得済みの衛星携帯電話は、利用者が免許申請や届出を行う必要がなく、購入後すぐに利用できます。衛星携帯電話の詳細は「衛星携帯電話の免許と利用方法|イリジウム・サーストン」をご覧ください。
免許手続きの比較
各地球局の免許手続き一覧
| 地球局の種類 | 免許の要否 | 申請先 | 審査期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 固定地球局(大型) | 必要 | 総合通信局 | 数か月〜半年 |
| VSAT局 | 必要 | 総合通信局 | 2〜4か月程度 |
| 船舶地球局 | 必要 | 総合通信局 | 2〜4か月程度 |
| 航空機地球局 | 必要 | 総合通信局 | 個別協議 |
| 携帯移動地球局(技適あり) | 不要 | ― | ― |
免許申請に共通する書類
免許が必要な地球局に共通して必要な主な書類は以下のとおりです。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 無線局免許申請書 | 申請者情報、無線局の種別 |
| 無線局事項書 | 通信の相手方(人工衛星局の名称)、運用条件 |
| 工事設計書 | アンテナ仕様、送信出力、周波数等 |
| 衛星事業者の同意書 | 衛星の利用に関する同意 |
| 設置場所の図面 | アンテナ設置場所の詳細 |
技術基準
送信出力とアンテナ
地球局の技術基準は、使用する周波数帯や通信相手の衛星によって異なります。主な規定は電波法の無線設備規則に定められています。
| 技術基準の項目 | 内容 |
|---|---|
| 空中線電力(送信出力) | 衛星との通信に必要な出力。通常数W〜数十W |
| EIRP | 等価等方放射電力。アンテナ利得を含めた実効的な放射電力 |
| 不要発射の強度 | 隣接周波数帯への漏洩を一定以下に抑える |
| 周波数の偏差 | 許容される周波数のずれの範囲 |
干渉調整
地球局の設置にあたっては、既存の無線局への干渉がないことの確認が必要です。
- 同一周波数帯を使用する他の地球局との干渉
- 地上系の無線局との干渉(特にC帯の場合)
- 他の衛星システムとの干渉
干渉調整は、総合通信局の審査の過程で行われます。
包括免許と個別免許
地球局の免許には、個別免許と包括免許の二つの方式があります。
| 免許方式 | 内容 | 対象例 |
|---|---|---|
| 個別免許 | 1局ごとに免許を申請 | 大型地球局、VSAT局 |
| 包括免許 | 同一規格の複数局を一括して免許 | 同一仕様の移動地球局を多数設置する場合 |
包括免許の制度により、同一の技術基準に適合する無線局を多数開設する場合に、一括して免許を受けることができる。 ― 電波法 第27条の2(要旨)
包括免許は、同じ仕様の端末を多数展開する事業者にとって手続きの簡素化につながる制度です。
まとめ
衛星地球局の種類と免許区分のポイントは以下のとおりです。
- 地球局は固定・移動・携帯移動・報告の4種類に大別される
- 固定地球局(VSAT含む)は個別の免許申請が必要
- 船舶地球局・航空機地球局は、それぞれ船舶局・航空機局として免許を申請
- 携帯移動地球局(衛星携帯電話等)は、技適取得済み端末であれば免許不要
- 免許申請には工事設計書、衛星事業者の同意書等の書類が必要
- 包括免許により、同一仕様の多数局を一括で免許取得できる場合がある
地球局の免許申請は、局の種類や用途に応じて手続きが異なるため、事前に十分な確認が必要です。申請手続きにお困りの際は、電波法に精通した行政書士へのご相談をおすすめします。