この記事でわかること
ドローンの長距離飛行・目視外飛行において、中継局(リレー局)を使って通信距離を延ばす運用に関する電波法上の規定を解説します。
中継局の設置に必要な無線局免許の有無、免許申請の手順、運用上の注意点を整理します。特に、目視外飛行(BVLOS)の実用化に向けた長距離通信の構築を検討している方向けの情報です。
ドローンと中継局の概要
中継局を使う場面
ドローンの制御通信や映像伝送は、機体と地上局の間で直接電波を送受信する方式が基本です。しかし以下のような場面では、直接通信の距離・障害物の問題を解決するために中継局が利用されます。
- 山岳・丘陵地など地形による電波の遮蔽がある場所での飛行
- 建物が密集した都市部での電波到達距離の延長
- 長距離(数十km以上)の目視外飛行
中継局とは
中継局は、送信側の電波を受信して別の周波数や同じ周波数で再送信する無線局です。ドローンの運用では、地上の山頂や建物屋上などに中継局を設置して、ドローンと地上局の間の通信を橋渡しします。
電波法上の中継局の位置付け
中継局は無線局に該当する
中継局は電波を発射する無線局であるため、電波法第4条の規定が適用されます。
何人も、総務大臣の免許を受けなければ、無線局を開設してはならない。
― 電波法 第4条
電波を送受信・再送信する中継局は、技適機器の免許不要規定(電波法第4条ただし書き)の対象外となる場合が多く、無線局免許の取得が必要になるケースがあります。
中継局の種類と免許の要否
中継局の形態によって、電波法上の扱いが異なります。
| 中継局の形態 | 電波法上の扱い | 免許の要否 |
|---|---|---|
| 有線で接続した中継(光ファイバー等) | 無線局に非該当 | 不要(無線を使わないため) |
| アマチュア無線のレピーター | アマチュア無線局 | 開局申請が必要 |
| 業務用無線の中継局 | 陸上移動中継局等 | 免許申請が必要 |
| 実験目的の中継局 | 実験試験局 | 実験試験局申請が必要 |
ドローン運用での実務上の課題
現時点では、民間ドローンの商業利用向けに専用の中継局制度が整備されているわけではありません。中継局を設置して通信距離を延ばす運用は、以下のいずれかの形態で電波法の手続きが必要です。
- アマチュア無線局のレピーター: 趣味目的に限定され業務利用不可
- 業務用無線局の中継局: 専用の免許申請が必要
- 実験試験局: 技術試験・研究目的に限定
アマチュア無線レピーターの活用
趣味のFPVドローンでの利用
個人の趣味としてアマチュア無線を使ったFPVドローンを飛ばす場合、アマチュア無線のレピーター(中継局)を利用できることがあります。ただし、以下の条件があります。
- レピーターの開設者(免許人)の許可が必要
- アマチュア無線局の免許に基づいた適正な運用が必要
- 業務・有償目的では利用不可
アマチュア無線の開局申請については「アマチュア無線の開局申請|電子申請での手順を解説」をご覧ください。
業務用ドローンの長距離通信
LTE/5G通信の活用
業務用ドローンの長距離通信には、中継局を自分で設置する方法のほかに、LTE(4G)や5Gの携帯電話網を活用する方法があります。
LTE通信をドローンに搭載する場合の注意点については「ドローンのLTE通信利用と電波法上の注意点」をご覧ください。
免許取得が必要な専用通信システム
特定の業務用途でドローンに専用の長距離無線システムを搭載する場合、使用する周波数帯と出力によっては無線局免許の取得が必要です。
業務用に特化した周波数帯(例:920MHz帯の免許不要局等)を利用する場合は、総務省の電波利用ホームページや総合通信局に確認してください。
実験試験局としての中継局
実証実験での活用
中継局を使った長距離ドローン通信の実証実験を行う場合は、実験試験局として申請する方法があります。
実験試験局は、電波法に基づいて技術試験・研究目的で開設できる無線局です。実験期間・目的・使用周波数等を管轄の総合通信局に申請し、許可を受けた後に実験を行います。
実験試験局の申請の流れ
実験試験局の申請手順の概要は以下のとおりです。
- 実験の目的・期間・使用する周波数・電波の型式を決定する
- 申請書類(実験試験局申請書・工事設計書等)を準備する
- 管轄の総合通信局に申請書を提出する(電子申請も可能)
- 審査・免許交付後に実験を開始する
手数料の具体的な金額については、最新の情報を総務省公式サイトでご確認ください。
免許申請の手順
中継局として業務用無線局を開設する場合の申請手順の概要は以下のとおりです。
Step 1: 使用する周波数帯と電波の型式を確認する
ドローンの制御・映像伝送に使用する周波数帯を確認し、中継局で使用する周波数帯を決定します。
Step 2: 管轄の総合通信局を確認する
中継局を設置する場所を管轄する総合通信局を確認します。総合通信局は全国9か所(北海道、東北、関東、信越、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州、沖縄)に設置されています。
Step 3: 申請書類を準備する
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 無線局免許申請書 | 無線局の種別・目的・使用電波等を記載 |
| 工事設計書 | 無線設備の技術仕様 |
| 無線局事項書 | 設置場所・運用時間等 |
Step 4: 申請書を提出する
管轄の総合通信局に申請書を提出します。電子申請も可能です。
Step 5: 審査・免許状の交付
審査期間・費用については最新の情報を総務省公式サイトでご確認ください。
無線局免許の申請全般については「無線局免許の申請方法|種類と手続きの流れ」をご覧ください。
よくある質問
Q. 中継局の設置に土地の権利は必要?
電波法の申請とは別に、中継局を設置する土地・建物の所有者または管理者の許可が必要です。電波法の免許は電波を発射する権利を認めるものであり、土地の占有・使用は別の法律(民法等)が適用されます。
Q. 中継局の免許人は誰になる?
中継局を開設・運用する者(法人または個人)が免許人となります。ドローンの運用者が自分で中継局を設置して運用する場合は、その運用者が免許申請を行います。
Q. 山頂など過酷な環境に設置する中継局でも申請は同じ?
設置場所が山頂や遠隔地であっても、電波法上の手続きは同じです。ただし、設置場所の状況(電源確保、通信手段)によっては技術的な検討が必要です。設置場所の環境に合わせた機器選定と維持管理体制が重要です。
まとめ
ドローンの長距離運用における中継局は、電波法上無線局に該当するため適切な申請・手続きが必要です。
- 電波を発射する中継局は原則として無線局免許が必要
- アマチュア無線のレピーターは趣味目的のみ利用可能(業務不可)
- 業務用の長距離通信にはLTE通信の活用や専用無線局の免許取得を検討する
- 実証実験には実験試験局制度が活用できる
中継局の免許申請や長距離通信の制度設計については、行政書士または総合通信局にご相談ください。