目次
この記事でわかること
日常生活やビジネスの中で、ワイヤレスイヤホン、車のリモコンキー、トランシーバー、IoTセンサーなど、免許なしで使える無線機器は数多く存在します。これらの機器が免許なしで使えるのは、電波法上の「微弱無線局」または「特定小電力無線局」の制度に基づいています。
この記事では、微弱無線局と特定小電力無線局の制度概要、対象機器、技適の要否、違反時のリスク、両者の違いを解説します。
電波法上の免許不要局
電波法は原則として無線局の開設に総務大臣の免許を求めていますが、一定の条件を満たす無線局は免許を受けずに使用できます。
次の各号に掲げる無線局については、(中略)免許を受けることを要しない。
― 電波法 第4条
免許が不要な無線局として、電波法では以下の3つの類型が定められています。
| 類型 | 根拠条文 | 技適の要否 |
|---|---|---|
| 微弱無線局 | 電波法第4条第1号 | 不要 |
| 小電力無線局(特定小電力無線局を含む) | 電波法第4条第2号 | 必要 |
| 空中線電力が著しく微弱な無線局 | 電波法施行規則に基づく | 不要 |
微弱無線局の制度
微弱無線局とは
微弱無線局は、発射する電波が著しく微弱で、他の無線局の運用に影響を与えないとみなされる無線局です。電波法施行規則で定められた電界強度の基準値以下であれば、免許も技適も不要で使用できます。
発射する電波が著しく微弱な無線局で総務省令で定めるものは、(中略)免許を受けることを要しない。
― 電波法 第4条第1号
微弱無線局の基準
微弱無線局の電界強度の基準は、周波数帯によって異なります。
| 周波数帯 | 電界強度の上限(3メートルの距離で測定) |
|---|---|
| 322MHz以下 | 500μV/m以下 |
| 322MHz〜10GHz | 35μV/m以下 |
| 10GHz〜150GHz | 3.5fW/m以下(または500μV/m以下) |
| 150GHz超 | 500μV/m以下 |
微弱無線局の具体例
| 機器の例 | 用途 |
|---|---|
| ワイヤレスマイク(微弱型) | 小規模な会議や家庭用 |
| ラジコンの送信機(微弱型) | おもちゃのラジコン |
| FMトランスミッター | 車内でスマホの音楽をカーラジオに飛ばす |
| 盗難防止タグの通信 | 一部の商品管理タグ |
微弱無線局の注意点
- 技適は不要だが、基準値を超える電界強度の電波を発射すると電波法違反
- 「微弱」を謳う海外製品でも、日本の基準を満たさない場合がある
- 基準を超えているかどうかの判断は専門的な測定が必要
特定小電力無線局の制度
特定小電力無線局とは
特定小電力無線局は、一定の技術基準を満たし、技適(技術基準適合証明)を取得した機器を使用する場合に限り、免許不要で使用できる無線局です。微弱無線局よりも大きな出力が認められる代わりに、技適の取得が必須となります。
技術基準適合証明を受けた適合表示無線設備のみを使用する無線局であって、総務省令で定めるものは、(中略)免許を受けることを要しない。
― 電波法 第4条第2号(趣旨を要約)
特定小電力無線局の種類と用途
| 種類 | 用途 | 周波数帯の例 | 出力の上限 |
|---|---|---|---|
| 特定小電力トランシーバー | レジャー、イベント、業務連絡 | 421MHz帯、422MHz帯 | 10mW/20mW |
| テレメーター用 | 環境計測、設備監視 | 420MHz帯、1,200MHz帯 | 10mW |
| テレコントロール用 | 機器の遠隔制御 | 420MHz帯、1,200MHz帯 | 10mW |
| データ伝送用 | IoTセンサー、データ通信 | 920MHz帯 | 20mW |
| 体内植込型医療用 | ペースメーカーの遠隔監視 | 400MHz帯 | 規定出力以下 |
| 動物検知通報用 | 害獣検知、放牧管理 | 150MHz帯、420MHz帯 | 10mW |
920MHz帯の特定小電力
920MHz帯(920.5〜928.1MHz)は、IoT・M2Mの分野で広く利用されている周波数帯です。LPWA(Low Power Wide Area)ネットワークの一部もこの帯域を使用しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 周波数帯 | 920.5〜928.1MHz |
| 出力 | 20mW以下 |
| 用途 | スマートメーター、環境モニタリング、物流管理 |
| 通信距離 | 数百メートル〜数キロメートル(環境による) |
特定小電力無線局の条件
特定小電力無線局として免許不要で使用するための条件は以下のとおりです。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 技適の取得 | 機器が技適マークを取得していること |
| 出力制限 | 総務省令で定める出力以下であること |
| 技術基準 | 電波法の技術基準(周波数安定度、スプリアス発射等)に適合 |
| 用途の制限 | 指定された用途の範囲内で使用すること |
技適マークの確認方法については「技適マークとは?確認方法と技適なし機器の扱い」をご覧ください。
微弱無線局と特定小電力無線局の比較
| 項目 | 微弱無線局 | 特定小電力無線局 |
|---|---|---|
| 免許 | 不要 | 不要 |
| 技適 | 不要 | 必要 |
| 出力 | 著しく微弱(基準値以下) | 10mW〜20mW程度 |
| 通信距離 | 数メートル〜数十メートル程度 | 数百メートル〜数キロメートル程度 |
| 主な用途 | ワイヤレスマイク、FMトランスミッター | トランシーバー、IoTセンサー |
| 規制の仕組み | 電界強度の上限で規制 | 技適による機器認証で規制 |
違反した場合のリスク
微弱の基準を超える機器の使用
「微弱」と表示されていても、実際の電界強度が基準値を超えている場合は不法無線局に該当します。特に海外製の安価な機器では基準を超える電波を発射するものが報告されています。
総務大臣の免許を受けないで無線局を開設した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
― 電波法 第110条第1号
技適なし機器の使用
特定小電力無線局の用途であっても、技適を取得していない機器を使用することは電波法違反です。
総務省による取締り
総務省は不法無線局の取締りを定期的に行っています。不法電波が検出された場合、機器の使用停止命令や刑事罰の対象となります。
業務利用での注意点
IoT機器での特定小電力の活用
IoT分野では、920MHz帯の特定小電力無線が広く活用されています。免許不要で利用できるため、大量のセンサーを展開する場合にコスト面で有利です。
ただし、以下の点に注意が必要です。
- 技適取得済みのモジュールを使用すること
- 出力の上限を超えないこと
- 同一エリアでの多数使用による自己干渉に注意
- 屋外での利用可否を確認すること(周波数帯により制限がある場合あり)
トランシーバーの選択
業務用のトランシーバーには、特定小電力トランシーバーのほかに、簡易無線(デジタル簡易無線)や業務用無線があります。
| 種類 | 免許 | 出力 | 通信距離 |
|---|---|---|---|
| 特定小電力トランシーバー | 不要(技適要) | 10mW/20mW | 数百メートル |
| デジタル簡易無線(登録局) | 登録制 | 5W | 数キロメートル |
| 業務用無線 | 免許制 | 5W以上 | 数キロ〜数十キロメートル |
通信距離が不足する場合は、出力の大きいデジタル簡易無線や業務用無線の利用を検討してください。
まとめ
微弱無線局と特定小電力無線局の制度について、要点を整理します。
| 項目 | 微弱無線局 | 特定小電力無線局 |
|---|---|---|
| 免許 | 不要 | 不要 |
| 技適 | 不要 | 必要 |
| 出力 | 著しく微弱 | 10mW〜20mW程度 |
| 主な用途 | ワイヤレスマイク、FMトランスミッター | トランシーバー、IoTセンサー |
| 違反時の罰則 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 | 同左 |
免許不要の無線機器は手軽に利用できますが、電波法のルールを遵守することが大前提です。特に海外製品の使用や大量導入の際は、技適の取得状況と出力の適合性を慎重に確認しましょう。
電波法全体の枠組みについては「電波法とは?基礎知識を解説」をご覧ください。