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アマチュア無線のスプリアス規制|旧基準機器の対処法

この記事でわかること

アマチュア無線の世界で長く議論されてきたスプリアス規制。古い無線機を使っている方にとって「自分の無線機はまだ使えるのか」は切実な問題です。

この記事では、スプリアス規制の基本的な仕組み旧基準と新基準の違い旧基準機器の使用可否と移行期限の延長経緯、そして具体的な対処法を解説します。

スプリアスとは

スプリアスの定義

スプリアス(Spurious Emission)とは、送信機が本来の信号以外に発射する不要な電波のことです。日本語では「不要発射」とも呼ばれます。

「スプリアス発射」とは、必要周波数帯幅外における一又は二以上の周波数の電波の発射であつて(中略)情報の伝送に影響を与えないで低減することができるものをいう。

― 無線設備規則 第2条第1項第63号

全ての送信機は多かれ少なかれスプリアスを発射しますが、スプリアスが強すぎると他の無線局や通信システムに干渉を引き起こします。このため、電波法はスプリアスの強度に上限値(許容値)を定めています。

なぜ規制が変わったのか

国際電気通信連合(ITU)がスプリアスの許容値を厳格化する勧告を出したことがきっかけです。日本もITUの勧告に基づき、2005年(平成17年)に無線設備規則を改正し、スプリアスの新基準を導入しました。

必要な資格・条件

スプリアス規制は全てのアマチュア無線局に関係します。特定の資格や条件は必要ありませんが、自局の無線設備が旧基準と新基準のどちらに該当するかを確認する必要があります。

確認方法は以下のとおりです。

  • 技適番号を確認: 2007年(平成19年)11月30日以前に技適を取得した機器は旧基準の可能性が高い
  • メーカーに問い合わせ: メーカーのWebサイトや問い合わせ窓口で確認
  • JARL(日本アマチュア無線連盟)のリスト: JARLが旧基準機器のリストを公開

旧基準と新基準の違い

比較項目 旧基準(2005年改正前) 新基準(2005年改正後)
スプリアスの許容値 緩い(-40dBc〜-50dBc程度) 厳しい(-43dBc〜-60dBc程度)
適用開始 改正前から 2005年12月1日
対象機器 2005年以前に製造・技適取得した機器 2005年以降に製造・技適取得した機器
移行期限 当初2022年11月30日(後に延長)

新基準は旧基準より約10〜20dB程度スプリアスの許容値が厳しくなっています。

申請の手順

Step 1: 自局の機器が旧基準か新基準か確認する

まず、所有する無線機が旧基準・新基準のどちらに該当するかを確認します。

確認方法:

  1. 製造年・技適取得年で判断: 2007年11月30日以前に技適を受けた機器は旧基準の可能性が高い
  2. メーカーの公式情報で確認: 多くのメーカーが自社製品のスプリアス対応状況を公開している
  3. JARLのスプリアス確認サービス: JARLが旧基準機器のリストを提供している

Step 2: 対処法を選択する

旧基準機器を所有している場合、以下の対処法があります。

対処法1: そのまま使い続ける(経過措置期間中)

移行期限の延長により、旧基準機器は当面の間、引き続き使用可能です(後述の移行期限の経緯を参照)。ただし、将来的には対応が必要になる可能性があります。

対処法2: フィルターを追加する

送信機の出力段にローパスフィルター(LPF)やバンドパスフィルター(BPF)を追加することで、スプリアスを新基準の許容値以下に抑えられる場合があります。

フィルターの種類 効果 費用の目安
ローパスフィルター(LPF) 高調波を抑制 3,000〜10,000円
バンドパスフィルター(BPF) 特定帯域以外を抑制 5,000〜15,000円

フィルターを追加した場合は、無線設備の工事設計の変更に該当する可能性があります。必要に応じて変更申請を行ってください。

対処法3: 新基準対応の無線機に買い替える

2005年以降に技適を取得した無線機は新基準に対応しています。特に古い機器を長年使用している場合は、性能面でも新しい無線機に買い替えるメリットが大きいです。

対処法4: 測定で新基準への適合を確認する

スプリアスを実測し、旧基準機器であっても実際の発射が新基準の許容値以内であることを確認する方法もあります。JARL等が測定サービスを提供している場合があります。

Step 3: 必要に応じて変更申請を行う

フィルターの追加や無線機の買い替えを行った場合は、無線局の変更申請が必要になる場合があります。電子申請Liteから手続き可能です。

変更申請の方法は「アマチュア無線の開局申請|電子申請での手順を解説」の手順を参考にしてください。

移行期限の延長経緯

スプリアス規制の移行期限は、以下のように何度も延長されてきました。

時期 出来事
2005年12月 無線設備規則改正。新基準のスプリアス許容値を施行
2007年11月 旧基準での技適・保証認定の受付を終了
当初の移行期限 2017年11月30日(旧基準機器の使用期限)
2017年 移行期限を2022年11月30日に延長
2021年 新型コロナの影響等を考慮し、移行期限を「当分の間」に再延長
2026年3月時点 旧基準機器は引き続き使用可能(具体的な期限は未定)

現時点では旧基準機器の使用期限は「当分の間」延長されており、具体的な廃止時期は定められていません。ただし、総務省は将来的に移行を完了させる方針を示しており、いつまでも使えるわけではない点に注意が必要です。

費用・手数料

スプリアス規制への対応にかかる費用は、選択する対処法によって異なります。

対処法 費用の目安
そのまま使い続ける 0円
フィルター追加 3,000〜15,000円(フィルター購入費)
新基準対応機に買い替え 20,000〜200,000円(機器によって大幅に異なる)
スプリアス測定 5,000〜20,000円(測定サービスによる)
変更申請手数料(電子申請) 1,950円

電子申請と書面申請の違い

変更申請が必要な場合の手続き方法の比較です。

比較項目 電子申請Lite 書面申請
変更申請手数料 1,950円 3,050円
手続き オンラインで完結 書面を郵送
審査期間 1〜3週間 2〜4週間

よくある質問

Q. 旧基準の無線機は今すぐ使えなくなる?

いいえ、現時点では引き続き使用可能です。移行期限は「当分の間」延長されており、2026年3月時点で具体的な使用禁止日は定められていません。ただし、将来的には使用できなくなる可能性があるため、計画的な対応を推奨します。

Q. 旧基準の無線機で新規に開局申請はできる?

2007年11月30日以降、旧基準での技適・保証認定は受け付けられていません。すでに免許を受けている旧基準機器は引き続き使用できますが、新たに旧基準機器で開局申請を行うことはできません。

Q. 再免許のときに旧基準機器は問題になる?

現時点では再免許の審査で旧基準を理由に拒否されることはありません。経過措置により旧基準機器の使用が認められているためです。再免許の手続きについては「アマチュア無線の再免許申請|期限切れ前にやるべきこと」をご覧ください。

Q. 自分の無線機がスプリアスの新基準を満たしているか測定する方法は?

スペクトラムアナライザ等の測定器で確認できます。ただし、測定器は高価であるため、JARL等の団体が提供する測定サービスを利用するのが現実的です。地域のアマチュア無線クラブが測定会を開催している場合もあります。

Q. FPVドローンのVTXにもスプリアス規制は適用される?

はい、適用されます。FPVドローンのVTXもアマチュア無線設備として使用する以上、スプリアスの許容値を満たす必要があります。保証認定の審査でスプリアス特性が確認されますので、保証認定を受けたVTXであれば新基準に適合しています。FPVドローンの周波数帯については「FPVドローンで使える周波数帯|5.7GHz・5.8GHzの違い」をご覧ください。

まとめ

アマチュア無線のスプリアス規制は、旧基準機器の取り扱いが焦点です。

  • スプリアスとは送信機が発射する不要な電波。他の通信に干渉を起こす
  • 2005年に新基準が導入され、許容値が約10〜20dB厳格化
  • 旧基準機器の移行期限は「当分の間」延長中(2026年3月時点)
  • 対処法はフィルター追加(3,000〜15,000円)、買い替え測定で確認の3つ
  • 旧基準での新規開局・保証認定は2007年以降不可

スプリアス対応で無線機を変更した場合の変更申請は「アマチュア無線の開局申請|電子申請での手順を解説」を、再免許の手続きは「アマチュア無線の再免許申請|期限切れ前にやるべきこと」を参考にしてください。

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