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SaaS事業者の電気通信事業届出|必要なケースと手順

この記事でわかること

SaaS事業を展開する中で「自社のサービスは電気通信事業に該当するのか?」と疑問に思う事業者は少なくありません。とくにチャット機能やメッセージ機能を備えたSaaSは、電気通信事業の届出が必要になる場合があります。

この記事では、SaaS事業者が電気通信事業の届出を必要とする具体的なケース、判断基準、届出の手順、不要なケースを解説します。

SaaS事業と電気通信事業の関係

電気通信事業とは、電気通信設備を使って他人の通信を媒介するサービスを事業として提供することです。SaaSであっても、ユーザー間の通信を仲介する機能があれば該当する可能性があります。

SaaSで届出が必要になるケース

サービスの機能 届出の要否 理由
ユーザー間のチャット機能 必要 ユーザー間通信の媒介に該当
ダイレクトメッセージ機能 必要 ユーザー間通信の媒介に該当
掲示板・フォーラム機能 必要の可能性あり 不特定多数間の通信媒介
ビデオ通話・音声通話機能 必要 ユーザー間通信の媒介に該当
メール転送・中継機能 必要 通信の媒介に該当

SaaSで届出が不要なケース

サービスの機能 届出の要否 理由
データ管理のみ(CRM等) 不要 他人の通信を媒介しない
レポート・分析ツール 不要 情報の提供のみ
タスク管理ツール(通信機能なし) 不要 ユーザー間通信なし
自社からの通知配信のみ 不要 自社からの一方的な送信
ECサイト 不要 商品販売であり通信媒介ではない

判断のポイント

判断のポイントは「ユーザーとユーザーの間の通信を自社設備で媒介しているか」です。

  • 自社 → ユーザーへの一方向の情報提供は該当しない
  • ユーザー → 自社への問い合わせ受付は該当しない
  • ユーザー ⇔ ユーザーの通信を仲介する場合は該当する

届出の手順

SaaS事業者が電気通信事業の届出を行う場合の手順は以下のとおりです。

必要書類

書類 内容
電気通信事業届出書 総務省の様式第8
ネットワーク構成図 サービスのシステム構成
法人の登記事項証明書 法人の場合
サービス概要説明書 どのような通信サービスを提供するか

届出の流れ

  1. 自社サービスが電気通信事業に該当するか判断
  2. 届出書の様式を総務省HPからダウンロード
  3. ネットワーク構成図を作成(クラウド構成でも可)
  4. 管轄の総合通信局へ提出
  5. 届出受理通知を受領

届出は審査がなく受理制です。書類に不備がなければ速やかに受理されます。

ネットワーク構成図のポイント

SaaS事業者の場合、クラウドサービス(AWS、GCPなど)上で構築していることが多いです。構成図には以下を記載します。

  • 利用するクラウドサービスの名称
  • ユーザー端末からクラウドまでの通信経路
  • 通信を媒介する部分(チャットサーバー等)の位置付け

届出後の義務

届出を行った後は、電気通信事業者として以下の義務が生じます。

義務 内容
通信の秘密の保護 ユーザーの通信内容を保護する義務
利用者への説明義務 サービス提供条件の説明
変更届出 届出内容に変更が生じた場合の届出
廃止届出 サービスを終了する場合の届出
外部送信規律への対応 Cookie等の外部送信に関する規律

外部送信規律については「外部送信規律とは?対象サービスと対応方法を解説」をご覧ください。

よくある質問

Q. APIでチャット機能を実装している場合も届出が必要?

必要になる場合があります。自社のサービス上でユーザー間のチャットを実現している場合、バックエンドの実装方法にかかわらず届出が必要です。ただし、他社のチャットサービス(Intercom等)を単に埋め込んでいるだけの場合は、通信を媒介しているのはチャットサービス提供元であり、自社は該当しない可能性があります。

Q. β版・テスト段階でも届出は必要?

一般ユーザーに提供する段階であれば、β版でも届出が必要です。社内テストのみであれば不要ですが、外部ユーザーが利用する場合は「事業として」の要件を満たす可能性があります。

Q. 海外のSaaSを日本で販売する場合は?

日本国内でサービスを提供する場合は、日本の電気通信事業法に基づく届出が必要になる場合があります。海外法人が直接提供する場合と、日本法人が代理販売する場合で対応が異なります。代理販売の場合は「媒介等業務届出とは?通信サービスの代理販売に必要な届出」もご覧ください。

Q. 届出を行政書士に依頼できる?

依頼できます。電気通信事業の届出は行政書士の業務範囲です。ネットワーク構成図の作成も含めて代行を依頼できます。費用や依頼の流れは「電気通信事業の届出代行|行政書士に依頼するメリット」をご覧ください。

まとめ

SaaS事業者の電気通信事業届出は、ユーザー間の通信機能の有無がポイントです。

  • 届出が必要: チャット、メッセージ、通話などユーザー間通信を媒介する機能がある場合
  • 届出が不要: データ管理、分析ツールなど通信媒介機能がない場合
  • 手続き: 届出書+ネットワーク構成図を総合通信局へ提出
  • 届出後の義務: 通信の秘密の保護、変更届出、外部送信規律への対応

電気通信事業の届出の全体像は「電気通信事業の届出が必要なケース|SaaS・Webサービス向け」、届出と登録の違いは「電気通信事業の届出と登録の違い|判断基準を解説」をご覧ください。

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