この記事でわかること
石油化学プラントや工場では、タンクの側板・煙突・配管・塔槽などの高所点検にドローンが活用され始めています。足場や高所作業を減らし、安全に点検できるためです。消防庁・厚生労働省・経済産業省など関係省庁も、プラントでのドローン活用に関する検討・情報発信を行っています。
一方で、プラント点検は設備への近接(30m未満)や防爆・危険物エリアという特有の論点があります。この記事では、必要な飛行許可と安全対策を整理します。
プラント点検で該当しやすい特定飛行
| 特定飛行 | プラント点検での典型例 | 必要な手続き |
|---|---|---|
| 人・物件から30m未満 | タンク・煙突・配管に近接して撮影 | 承認 |
| 目視外飛行 | 広いコンビナート内を機体が見えない範囲まで | 承認 |
| 地表150m以上 | 高い煙突・フレアスタック付近 | 許可 |
| 人口集中地区(DID)上空 | 市街地に隣接する工場 | 許可 |
設備への近接点検が前提のため、30m未満飛行の承認はほぼ必須です。特定飛行の全体像は「ドローン飛行許可の申請方法|DIPS2.0での手順を解説」、インフラ点検全般は「ドローンによるインフラ点検|飛行許可と法的要件」をご覧ください。

屋内飛行と航空法の関係
プラント点検では、屋根と壁で囲われた屋内空間での飛行は航空法の規制対象外です。一方、屋外や半屋外(上方が開いた設備)は通常どおり航空法の特定飛行の対象になります。タンク内部などの閉所点検は航空法の対象外ですが、別途、酸欠・有害ガス対策など労働安全衛生上の管理が必要です。

防爆・危険物エリアの重要な注意
プラント特有の最重要ポイントが防爆です。
- 引火性の蒸気・可燃性ガスが爆発の危険のある濃度に達するおそれのある箇所では、ドローンの使用が現時点で認められていません(労働安全衛生規則第280条)
- 防爆対応ドローンの実証は各社で進んでいますが、危険箇所の点検は限定的です
- タンク・配管からの落下予測範囲を30m以内に収める、公道から30m以上離すなどのリスク管理が求められます
航空法の許可・承認とは別に、消防法(危険物施設)・高圧ガス保安法・労働安全衛生法などの保安規制を所管部署と確認することが不可欠です。

DIPS2.0での申請の流れ
航空法の許可・承認は、国土交通省のオンラインシステムDIPS2.0(ドローン情報基盤システム)から申請します。プラント点検で30m未満飛行や目視外飛行の承認を得るまでの大まかな流れは次のとおりです。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1. アカウント開設 | DIPS2.0に開設者(法人・個人)の情報を登録 |
| 2. 機体・操縦者の登録 | 使用する機体と操縦者の技能・飛行経歴を登録 |
| 3. 飛行形態の選択 | 30m未満・目視外・150m以上など該当する特定飛行を選ぶ |
| 4. 飛行マニュアルの選択 | 標準マニュアルか独自マニュアルかを選ぶ |
| 5. 申請書の作成・提出 | 飛行の目的・日時・区域・安全対策を記載して提出 |
| 6. 審査・許可承認 | 補正対応を経て許可書・承認書が交付される |
審査には一定の期間がかかるため、点検スケジュールから逆算して余裕をもって申請することが重要です。設備への近接を伴うプラント点検では、標準マニュアルの制限(人・物件から30m以上を確保する等)を超える運用になりやすく、安全対策を記載した独自マニュアルの準備が必要になる場合があります。特定飛行の申請手順は「ドローン飛行許可の申請方法|DIPS2.0での手順を解説」で詳しく解説しています。
反復点検は包括申請、単発は個別申請
申請には、期間や区域を限定してその都度取得する個別申請と、一定期間・広い範囲をまとめて取得する包括申請があります。使い分けの目安は次のとおりです。
| 区分 | 向いているケース |
|---|---|
| 個別申請 | 特定の日時・場所での単発点検、催し場所上空など包括の対象外の飛行 |
| 包括申請 | 定期点検として同じ形態の飛行を反復・継続する場合(最長1年単位で取得可能) |
定期点検として反復する場合は、包括申請で30m未満・目視外などをまとめて取得しておくと効率的です。手順は「ドローン包括申請とは?個別申請との違いと申請手順」をご覧ください。
飛行日誌の作成・保管
特定飛行を行う場合は、飛行日誌の記載が義務づけられています。飛行日誌は「飛行記録」「日常点検記録」「点検整備記録」で構成され、いつ・どこで・誰が・どの機体で飛行したか、機体の点検・整備を実施したかを記録します。プラント点検のように反復して飛行する現場では、記録の抜け漏れが起きやすいため、点検ごとに確実に記載・保管する運用を整えておくことが求められます。飛行日誌は許可・承認の条件を守って運用している証拠にもなり、事故発生時の原因究明にも用いられます。
プラント点検で行政書士に依頼するメリット
プラント点検は、航空法の許可・承認だけでなく、防爆・危険物・保安に関する複数の法令が絡む点で、他の空撮・点検より調整が複雑です。行政書士に依頼することで、次のような負担を軽減できます。
- 特定飛行の該当性の整理 — 30m未満・目視外・150m以上などのうち、どの承認・許可が必要かを飛行計画に沿って整理
- 独自マニュアルの作成支援 — 設備近接や防爆エリアに配慮した安全対策を反映したマニュアルの作成
- DIPS2.0申請の代行・補正対応 — 申請書の作成、審査での補正指示への対応
- 関連法令の確認の道案内 — 消防法・高圧ガス保安法・労働安全衛生法など、所管部署に確認すべき事項の整理
ドローンの飛行許可申請の代行は、書類作成を業として行う行政書士が対応できる分野です。
よくある質問
Q. タンクのすぐ近くを飛ぶと必ず承認が必要?
タンク・配管(物件)から30m未満に近づくため、原則として30m未満飛行の承認が必要です。
Q. 危険物のタンクヤードで自由に飛ばせる?
可燃性ガスが爆発危険濃度に達するおそれのある箇所では使用できません(労働安全衛生規則)。消防法・高圧ガス保安法等の保安規制も確認が必要です。
Q. タンク内部の点検は航空法の許可が要る?
屋根・壁で囲われた内部は航空法の対象外です。ただし酸欠・有害ガス・閉所作業の安全管理が別途必要です。
Q. 定期点検を毎回申請するのは大変。まとめて取れる?
同じ形態の飛行を反復する場合は、包括申請で一定期間分をまとめて取得できます。区域や機体・操縦者を登録しておけば、点検のたびに個別申請する必要がなくなり、実務の負担を減らせます。
Q. プラント点検の申請は自分でもできる?
DIPS2.0から自ら申請することは可能です。ただしプラント点検は独自マニュアルの作成や、防爆・保安規制との整合が必要になりやすく、書類作成や補正対応に手間がかかります。負担を抑えたい場合は行政書士への依頼を検討するとよいでしょう。
まとめ
- プラント点検は30m未満飛行がほぼ必須、目視外・150m以上も該当しうる
- 屋内(囲われた空間)は航空法対象外、屋外設備は対象
- 防爆・危険物エリアは航空法以外の保安規制(消防法・高圧ガス保安法・労働安全衛生法)を要確認
- 反復点検は包括申請が効率的
太陽光設備は「太陽光発電設備のドローン点検|飛行許可と手続き」、送電線は「送電線・鉄塔点検のドローン|飛行許可と安全対策」もご覧ください。