電波申請ナビ Denpa Shinsei Navi

無線局免許の住所変更・社名変更・承継の手続き一覧

この記事でわかること

会社の移転・社名変更・合併・事業譲渡・代表者交代、あるいは個人事業主の引っ越しや相続。会社や事業の側に変化があったとき、保有する無線局免許にどんな手続きが必要かを、根拠条文つきで整理します。

まず全体の早見表です。

起きたこと 必要な手続き 根拠
免許人の住所が変わった(引っ越し・本社移転) 届出(遅滞なく) 電波法第21条第2項
氏名・社名(名称)が変わった(法人格は同一) 届出(遅滞なく) 電波法第21条第2項
代表者が変わった 免許記録の記載事項に応じて届出 電波法第21条第2項
無線設備の設置場所を移した 変更申請(許可)または変更届(内容による) 電波法第17条
相続が発生した 当然承継+遅滞なく届出 電波法第20条第1項・第9項
合併・分割(事業全部の承継) 総務大臣の許可(免許局) 電波法第20条第2項
事業の全部譲渡 総務大臣の許可(免許局) 電波法第20条第3項
登録局(デジタル簡易無線等)の譲渡・相続・合併・分割 当然承継+遅滞なく届出 電波法第27条の27

出典: 電波法(昭和25年法律第131号)第17条・第20条・第21条・第27条の27(e-Gov法令検索で2026年8月時点の条文を確認)

ポイントは3つです。(1) 住所・名称の変更は「届出」で済むこと、(2) 会社組織の変動(合併・譲渡)は免許局では「許可」が要ること、そして(3) 同じ組織変動でも登録局なら「届出」で済むことです。以下、ケース別に解説します。

業務用無線の通信設備
会社の移転・組織再編の際は、保有する無線局免許の手続きを漏れなく

ケース1: 住所変更・社名変更・代表者変更(免許人はそのまま)

免許人の住所(人)と常置場所(無線設備を置く場所)の違いと、引越しのケース別にどちらが変わるかを示した図
人の住所と局の場所は別 ・ ケースで片方だけ変わる

手続きは「遅滞なく届出」

引っ越しや本社移転で免許人の住所が変わった場合、また法人格はそのままで社名(名称)が変わった場合は、免許記録の記載事項の変更として遅滞なく総務大臣に届け出る必要があります。

免許人は、前項第一号に掲げる場合に該当しない場合において、免許記録に記録した事項に変更を生じたときは、総務省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を総務大臣に届け出なければならない。

― 電波法 第21条第2項

2025年10月の免許状デジタル化に伴い、従来の「免許状の訂正」は免許記録の変更という仕組みに変わりましたが、免許人側の義務が「遅滞なく届け出ること」である点は同じです。届出は電波利用電子申請から行えます(先にアカウント情報の住所・名称を更新してから変更届出を行う流れです)。

社名変更の場合は、総合通信局の案内により、変更内容を確認できる書類(登記事項証明書等)の添付を求められることがあります。管轄の総合通信局の案内に従ってください。

放置するとどうなるか

住所変更の届出を怠ると、電波利用料の納付書や再免許に関する通知が届かなくなります。通知が届かないまま納付を忘れれば督促・延滞金の対象になり、再免許の時期を逃せば免許自体が失効します。「通知が来なかった」は免責になりません。変更届を忘れていた場合の立て直し方は「無線局の変更届を忘れていた場合の対処法」で解説しています。

ケース2: 無線設備の設置場所の変更

免許人の住所(連絡先)ではなく、無線設備そのものの設置場所を移す場合は、電波法第17条の変更手続きになります。基地局の移設のように無線設備の変更工事を伴う場合は事前の変更申請(許可)が原則で、軽微な事項に該当する場合は届出で済みます。

「免許人の住所変更(届出)」と「設置場所の変更(17条の手続き)」は別物です。本社移転で事務所と無線設備の両方が動く場合は、両方の手続きが必要になります。許可と届出の判定基準は「無線局の変更は許可か届出か|軽微な変更の判定基準」をご覧ください。

ケース3: 相続(個人の免許人が亡くなった)

個人事業主などの免許人が亡くなった場合、相続人は免許人の地位を当然に承継します。

免許人について相続があつたときは、その相続人は、免許人の地位を承継する。

― 電波法 第20条第1項

承継した相続人は、遅滞なく、その事実を証する書面を添えて総務大臣に届け出る必要があります(同条第9項)。許可を待つ必要はなく、届出で足ります。

ケース4: 合併・分割・事業譲渡(免許局)

会社の合併・分割や事業譲渡で無線局を引き継ぐ場合、免許局では総務大臣の「許可」が必要です。届出とは重みが違う点に注意してください。

  • 合併・分割: 合併後存続する法人・新設法人、または分割により事業の全部を承継した法人は、総務大臣の許可を受けて免許人の地位を承継できます(電波法第20条第2項)
  • 事業の全部譲渡: 譲受人は総務大臣の許可を受けて免許人の地位を承継できます(同条第3項)

いずれも「無線局をその用に供する事業の全部」の承継が要件です。事業の一部だけを切り出す場合はこの承継スキームに乗らないことがあり、新規免許の取得が必要になるケースもあります。M&Aや組織再編のスケジュールに無線局の承継許可を織り込んでいないと、クロージング後に無線局だけ使えないという事態になりかねません。組織再編の予定がある場合は、早めに管轄総合通信局または行政書士に相談してください。

なお、船舶局・航空機局には特則があり、船舶・航空機の運行者が変わったときは変更後の運行者が当然に地位を承継し、届出を行います(電波法第20条第7項〜第9項)。

ケース5: 登録局(デジタル簡易無線等)の承継

デジタル簡易無線の登録局など登録局の場合は、免許局と異なり、譲渡・相続・合併・分割のいずれも「届出」で承継できます。

登録人が登録局をその用に供する事業の全部を譲渡し、又は登録人について相続、合併若しくは分割(登録局をその用に供する事業の全部を承継させるものに限る。)があつたときは、(中略)その登録人の地位を承継する。

― 電波法 第27条の27第1項

承継した者は、遅滞なく、その事実を証する書面を添えて届け出ます(同条第2項)。免許局のような事前許可は不要です。

この違いは実務で効きます。たとえば社用のデジタル簡易無線を子会社に移す、事業譲渡で無線機ごと引き継ぐといった場面では、登録局なら届出ベースでスピーディに処理できます。登録局の各種手続きは「登録局の開設届出|包括登録と個別登録の手順」もあわせてご覧ください。

手続きの実務ポイント

無線局の変更手続きを、周波数・電波の型式・空中線電力の変更の有無と免許記載事項への影響で、変更許可・変更届・手続き不要の3つに判定するチャート
3要素が変わるなら許可 ・ 事前と事後の違い

電子申請の流れ

  1. 電波利用電子申請のアカウント情報(住所・名称等)を先に更新する
  2. 対象の無線局を選択し、変更届出(または承継の届出・許可申請)を作成する
  3. 必要に応じて証明書類(登記事項証明書・戸籍関係書類・契約書等)を添付する
  4. 送信後、審査状況を「申請状況確認」でフォローする

複数免許・複数局種を持つ会社の注意

免許局・登録局・包括免許(携帯電話の陸上移動局等)を併有する企業では、同じ「社名変更」でも局種ごとに手続き先・様式が分かれることがあります。漏れを防ぐには、自社の無線局を一覧化してから一括で手続きするのが確実です。複数局の一括処理は「複数の無線局をまとめて申請|一括申請と包括登録」で解説しています。

期限・タイミングの整理

手続き 期限
住所・名称変更の届出 遅滞なく(明確な日数の定めはないが、放置は通知不達・失効リスク)
相続・登録局承継の届出 遅滞なく(事実を証する書面を添付)
合併・譲渡の許可(免許局) 効力発生前に許可を得るスケジュールで逆算

よくある質問

Q. 住所変更の届出に手数料はかかる?

免許記録の記載事項の変更届出そのものに申請手数料はかかりません。ただし、変更後の内容を対外的に証明する免許事項証明書の交付を受ける場合は、交付手数料(電子申請440円・書面480円、2025年10月改定後)がかかります。

Q. 社名変更と本店移転が同時にあった。届出は1回でいい?

同一の変更届出でまとめて届け出られるのが通常です。電子申請の入力画面で変更事項を複数選択し、登記事項証明書等で両方の変更が確認できるようにしてください。判断に迷う場合は管轄の総合通信局に確認するのが確実です。

Q. 個人名義の無線局を自分の会社名義に変えられる?

個人と法人は別人格のため、単純な「名義変更」はできません。免許局では事業の全部譲渡として総務大臣の許可(電波法第20条第3項)による承継、登録局では届出による承継(第27条の27)を検討することになりますが、要件(事業の全部承継)を満たすかの判断が必要です。満たさない場合は、法人で新規に免許・登録を取得し、個人局を廃止する二段構えになります。

Q. アマチュア無線の引っ越し手続きは同じ?

考え方は同じですが、アマチュア局は常置場所の変更などアマチュア特有の整理があります。「アマチュア無線の変更申請|住所変更・設備変更の手順」をご覧ください。

Q. 手続きを忘れたまま再免許の時期が来てしまった

再免許申請の前に(または同時に)変更の届出を行うのが原則です。放置期間が長い場合の立て直しは「無線局の変更届を忘れていた場合の対処法」を参照のうえ、管轄総合通信局に事情を説明して指示を仰いでください。

まとめ

  • 住所・社名(名称)・代表者の変更は、電波法第21条第2項に基づき遅滞なく届出
  • 無線設備の設置場所の変更は別手続き(電波法第17条の変更申請・届出)
  • 相続は当然承継+届出(法20条1項・9項)
  • 合併・分割・事業全部譲渡は、免許局=総務大臣の許可(法20条2項・3項)、登録局=届出(法27条の27)と扱いが分かれる
  • 届出を放置すると通知不達→電波利用料滞納・再免許漏れ→失効の連鎖につながる
  • M&A・組織再編では、無線局の承継許可をクロージング前のタスクに組み込む

多数の無線局を保有する企業の変更・承継手続きは、漏れなく進めるのが意外に大変です。棚卸しから届出・許可申請まで任せたい場合は、行政書士への依頼も検討してください(電波法の免許申請を行政書士に依頼する全ガイド)。

この記事をシェア

このカテゴリの完全ガイドを見る

業務用無線の手続き 完全ガイド