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旧スプリアス規格の無線機はいつまで使える?現行ルール

この記事でわかること

「旧スプリアス規格の無線機は2022年11月30日まで」と記憶している方が多いのですが、このルールは2021年(令和3年)8月の総務省令改正で変わりました。2026年8月時点の正確な現行ルールは次のとおりです。

場面 旧スプリアス規格機の扱い
免許(登録)を受けている無線機の継続使用 当分の間、使用可能。ただし他の無線局の運用に妨害を与えない場合に限るという条件付き
新規の免許・増設・取替(工事設計変更) 原則不可(旧規格に基づく免許等が可能だったのは2017年11月30日まで)
旧規格の技適(技術基準適合証明等)の効力 当分の間有効。一部の設備(Wi-Fi等)は新規格の技適とみなされ恒久的に有効

出典: 総務省 電波利用ポータル「スプリアス発射の強度の許容値に係る技術基準の改正に伴う経過措置」(2026年8月時点で確認)

つまり、「今すぐ使えなくなる」わけではないが、「もう新しい免許には使えず、無条件でもない」というのが現在地です。この記事では、経緯・現行ルールの正確な中身・業務用とアマチュアそれぞれの実務・今後の見通しを解説します。

スプリアス規格の改正とは(前提知識)

無線局のアンテナ設備
旧スプリアス規格機の使用は「当分の間・妨害を与えない場合に限り」の条件付きで継続できる

スプリアスとは、無線設備から発射される目的外の不要な電波のことです。不要電波は他の無線局への混信源になるため、国際的な基準見直し(ITUの無線通信規則改正)を受けて、日本でも2005年(平成17年)12月に無線設備規則のスプリアス許容値が強化されました。

  • 旧スプリアス規格: 2005年11月30日以前の技術基準によるもの
  • 新スプリアス規格: 2005年12月1日以降の強化された技術基準によるもの

この切り替えのため、旧規格の無線機には経過措置(使用期限)が設けられてきました。スプリアスの技術的な意味は「空中線電力(送信出力)の基礎知識」もあわせてご覧ください。

経緯: 「2022年11月30日まで」が「当分の間」になった

時期 出来事
2005年(平成17年)12月 スプリアス許容値の技術基準を強化(無線設備規則改正)
〜2017年(平成29年)11月30日 経過措置期間。2007年11月30日までに製造された無線機器は、この日まで旧規格に基づく免許・予備免許・工事設計変更が可能だった
当初の予定 免許済みの旧規格機の使用期限は2022年(令和4年)11月30日まで
2021年(令和3年)8月 新型コロナウイルス感染症の影響による移行遅れを考慮し、無線設備規則改正省令(平成17年総務省令第119号)附則第3条・第5条を改正。使用期限を「当分の間」に延長
2022年(令和4年)12月1日以降 旧規格機の使用に「他の無線局の運用に妨害を与えない場合に限り使用できる」という条件が付された
旧スプリアス規格の無線機の使用期限が2022年11月30日から当分の間に延長された経緯と、継続使用と新規免許の違いを時間軸で示した図
継続使用は当分の間 ・ 新規免許には使えない

ここで押さえるべきは、延長されたのは「免許を受けている無線機の使用」だけだという点です。旧規格機で新しい免許を取ったり、増設・取替したりする道は開かれていません。

現行ルールの正確な中身

使えるのは「免許(登録)を受けている」旧規格機

旧規格に基づく無線機器が免許(登録)を受けている場合、2022年12月1日以降も当分の間、使用できます。免許を受けていない旧規格機を新たに使い始めることはできません。

「妨害を与えない場合に限る」という条件の意味

2022年12月1日以降の旧規格機の使用には、「他の無線局の運用に妨害を与えない場合に限り、使用することができる」という条件が付されています。これは単なる注意書きではなく免許の条件です。総務省は改正の資料で、当初の移行期限以降の旧規格機の使用について、新スプリアス規格による無線局の運用に比べて「その位置付けを劣位とする」と説明しています(出典: 総務省「新スプリアス規格への移行期限の延長」資料)。実務上は次のことを意味します。

  • 自局の旧規格機が混信・妨害の原因になった場合、使用継続の前提が崩れる(混信時に譲るべき側になる)
  • 総合通信局から改善指導・設備更新を求められた場合、応じる必要がある
  • 妨害の申告を受けた側に立てば、旧規格機であることは相手方の是正根拠になる

なお、この条件への切り替えにあたって免許人側の手続きは不要です。既存の免許状に付されていた旧スプリアス規格の使用期限の条件は付されていないものとみなされ、代わりに上記の条件が付されているとみなす読替え規定が置かれており、変更や再免許で新たに免許状が発給される際に文言が書き換えられる仕組みです(出典: 同資料)。

旧規格の技適の効力と「みなし新規格」の設備

旧規則に基づく技術基準適合証明・工事設計認証の効力も、当分の間有効です。さらに、旧規格と新規格の規定に整合性がある一部の無線設備は、旧規格の技適のまま新規格の技適とみなされ、期限なく有効です(無線設備規則改正省令附則第5条第2項)。対象には次のような設備が含まれます。

  • 2.4GHz帯・5GHz帯等の小電力データ通信システム(Wi-Fi等)
  • 2.4GHz帯移動体識別用の特定小電力無線局(周波数ホッピング方式)
  • Ku帯VSAT地球局(50W以下)、インマルサット携帯移動地球局 など

つまり、Wi-FiルーターやBluetooth機器のような身近な免許不要局は、スプリアス問題を実務上気にする必要がほぼありません。影響を受けるのは、免許・登録を受けて使う業務用無線機・アマチュア無線機が中心です。

業務用無線の実務(免許局・登録局)

自局の無線機が旧規格か確認する方法

  1. 無線機の型番とメーカーの適合リストを確認する(主要メーカーは新スプリアス規格への対応状況を公表しています)
  2. 技適番号を総務省データベースで検索する。検索結果の詳細画面にはスプリアス規格の新旧(新スプリアス規定によるものか)が表示されるため、証明・認証の年月日とあわせて確認できます(技適検索のやり方|出てこない5つの原因と番号の正しい入力
  3. 判断がつかなければ販売店・メーカーまたは総合通信局に照会する

目安として、2005年12月以降に技適を受けた機種は新規格です。2000年代前半以前の無線機を使い続けている場合は要注意です。

参考までに、総務省の資料によれば、携帯電話等の包括免許局等を除く国内の無線局の約8割にあたる約215万局が新スプリアス規格への移行を完了しています(令和3年時点)。残っているのは、更新サイクルの長い業務用設備や趣味用途の古い機体が中心です。

新スプリアス規格へ移行する3つの方法

旧規格機を使い続ける以外に、新規格へ移行する方法は3つあります。

JARDの基本保証(開設保証)とスプリアス確認保証を、これから免許を受ける送信機か、すでに免許済みの旧スプリアス機かで判定する図
新規・増設=基本保証 ・ 免許済み旧規格機=確認保証
方法 手続き 実務上の評価
1. 機器の更新 新規格対応機へ交換し、変更手続き 最も一般的で確実
2. フィルタ等の付加 変更申請→許可→工事→スプリアス値の測定→届出 機器が大型化しコストも高く、選ばれにくい
3. 実測による確認 校正された測定器で実測し、許容値内であれば「スプリアス発射及び不要発射の強度確認届出書」を総合通信局へ提出 測定環境があれば機器を替えずに済む

再免許・設備更新のタイミング

旧規格機の継続使用は認められていますが、次の場面で実務的な壁に当たります。

場面 何が起きるか
増設・取替 旧規格機は使えない。新規格機での変更手続きが必要
故障・修理不能 代替機は新規格機になる。工事設計の変更を伴えば変更手続き
混信トラブル 「妨害を与えない場合に限る」条件により、設備更新を求められる可能性

なお、船舶・航空関係などで使われる型式検定合格機器(周波数測定装置、EPIRB、SART、ナブテックス受信機等)には別の経過措置が置かれており、一部の機器は新規則の検定合格とみなされます。海事・航空系の設備を持つ場合は、機器の区分ごとに個別の確認が必要です。

なお、350MHz帯・400MHz帯のアナログ簡易無線はスプリアス以前に2024年11月30日で使用期限が終了しています。古い簡易無線機は、スプリアスの新旧を確認するまでもなく使えないケースがあるため、「アナログ簡易無線は使用終了|今使うと違法・移行手順」も確認してください。

アマチュア無線の実務

アマチュア局では、旧スプリアス規格の古い無線機(いわゆるオールドリグ)を使っている方が多く、影響が大きい分野です。

  • 免許済みの旧規格機: 当分の間、使用継続可(妨害を与えない場合に限る)
  • 新規開局・増設・取替で旧規格機を使う場合: そのままでは申請できません。JARDの「スプリアス確認保証」を受けることで、新規格相当であることの保証を得て申請する方法があります
  • 対象機種かどうかは、JARDが公表するスプリアス確認保証可能機器リストで確認できます

アマチュア局の保証制度の全体像は「アマチュア無線のスプリアス規制|旧基準機器の対処法」で詳しく解説しています。

今後の見通し(2026年8月時点)

「当分の間」がいつまで続くかは、現時点で決まっていません。総務省は、新型コロナウイルス感染症の収束や社会経済状況等の回復を踏まえつつ移行期限を総合的に検討するとし、それまでの間も早期の新規格移行を促すとしています(出典: 前掲の総務省経過措置ページ)。

確実に言えるのは次の2点です。

  1. 新たな期限が告示されれば、その日をもって旧規格機は使えなくなる。期限の再設定は制度上予定されている
  2. 移行を先送りするほど、故障・混信・期限告示のリスクを抱え続けることになる

業務で無線を使う事業者は、設備更新計画に「新スプリアス規格への統一」を組み込み、再免許のタイミングで新規格機に揃えるのが現実的な対応です。

よくある質問

Q. 旧スプリアス機を今使うのは違法?

免許(登録)を受けている無線機であれば、当分の間は適法に使えます。ただし「他の無線局の運用に妨害を与えない場合に限る」という条件付きです。免許を受けていない旧規格機を新たに使い始めることはできません。

Q. 「当分の間」はいつ終わる?

未定です。総務省は社会経済状況を踏まえて移行期限を総合的に検討するとしており、新たな期限は告示等で示されることになります。本サイトでも動きがあれば更新します(未確定の期限を断定する情報にはご注意ください)。

Q. 旧規格機のまま再免許はできる?

免許済みの旧規格機の使用は当分の間認められているため、継続利用を前提とした再免許は可能なケースが一般的です。ただし増設・取替を伴う場合は新規格機が必要になり、局種や設備構成によって扱いが異なるため、再免許前に管轄の総合通信局または販売店に確認してください。業務用無線の更新手続きは「業務用無線の免許更新手続き|期限と手順を解説」をご覧ください。

Q. Wi-FiやBluetoothの古い機器も対象?

実務上ほぼ心配不要です。2.4GHz帯・5GHz帯の小電力データ通信システム等は、旧規格の技適が新規格の技適とみなされる対象設備に含まれています(無線設備規則改正省令附則第5条第2項)。

Q. 中古で古い業務用無線機を買っても使える?

要注意です。旧規格機は新規の免許・登録に使えないため、中古で入手しても免許を取れず使えない可能性があります。購入前に技適の年月日と新スプリアス規格への適合を必ず確認してください。

まとめ

  • 旧スプリアス規格機の使用期限は「2022年11月30日まで」から「当分の間」に延長済み(2021年8月の省令改正)
  • ただし免許済みの無線機に限り、かつ他局に妨害を与えない場合に限る条件付き
  • 新規免許・増設・取替には旧規格機は使えない(アマチュアはJARDのスプリアス確認保証という救済あり)
  • Wi-Fi等の一部設備は新規格の技適とみなされ恒久有効
  • 「当分の間」の終わり(新たな移行期限)は未定。決まり次第、旧規格機は使えなくなるため、設備更新は計画的に

自局の無線設備の適合状況の確認や、更新に伴う変更・再免許手続きに不安がある場合は、行政書士への相談も選択肢です(電波法の免許申請を行政書士に依頼する全ガイド)。

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