目次
この記事でわかること
無線局免許の申請や無線設備の仕様を確認する際に必ず登場するのが「空中線電力」です。一般に「送信出力」と呼ばれるもので、電波法における最も重要なパラメータの一つです。
この記事では、空中線電力の定義と単位、測定方法、電波法での出力制限、アマチュア無線・業務用無線・ドローンでの出力上限、そして微弱無線との境界までわかりやすく解説します。
空中線電力とは
空中線電力とは、送信機から空中線(アンテナ)に供給される電力のことです。「送信出力」や「送信電力」とも呼ばれ、無線設備がどの程度の強さで電波を発射するかを示す指標です。
電波法では、無線局の免許状に空中線電力の上限が記載され、これを超える出力で運用することは禁止されています。
無線局の免許状に記載された空中線電力を超えて運用してはならない。
― 電波法 第53条(要旨)
空中線電力の単位
空中線電力は主にW(ワット)とdBm(デシベルミリワット)の2つの単位で表されます。
| 単位 | 説明 | 主な使用場面 |
|---|---|---|
| W(ワット) | 電力の絶対値 | 免許申請書、無線機のカタログ |
| mW(ミリワット) | Wの1/1000 | 小電力機器、微弱無線 |
| dBm | 1mWを基準とした対数表記 | 技術文書、測定器 |
WとdBmの換算
| 空中線電力(W) | dBm |
|---|---|
| 0.001W(1mW) | 0 dBm |
| 0.01W(10mW) | 10 dBm |
| 0.1W(100mW) | 20 dBm |
| 1W | 30 dBm |
| 5W | 37 dBm |
| 10W | 40 dBm |
| 50W | 47 dBm |
| 100W | 50 dBm |
dBmは対数スケールのため、10dBm増えると電力は10倍になります。
空中線電力の測定方法
空中線電力の表し方には複数の種類があり、変調方式によって使い分けられます。
| 種類 | 定義 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 尖頭電力(PEP) | 変調包絡線の最大値における電力 | SSB(J3E)、パルスレーダー |
| 平均電力 | 十分長い時間にわたって平均した電力 | FM(F3E)、デジタル変調 |
| 搬送波電力 | 無変調時の搬送波の平均電力 | AM(A3E) |
アマチュア無線の免許申請では、通常尖頭電力(PEP)で空中線電力を記載します。
電波法での出力制限
アマチュア無線の出力上限
アマチュア無線の空中線電力は、無線従事者の資格の級によって上限が異なります。
| 資格 | 空中線電力の上限 |
|---|---|
| 第1級アマチュア無線技士 | 1kW(1000W) |
| 第2級アマチュア無線技士 | 200W |
| 第3級アマチュア無線技士 | 50W |
| 第4級アマチュア無線技士 | 20W(HF帯は10W) |
ただし、実際に認められる出力は免許申請時の審査結果によります。
業務用無線の出力例
| 無線局の種類 | 空中線電力の目安 |
|---|---|
| 特定小電力トランシーバー | 10mW以下 |
| デジタル簡易無線(登録局) | 5W以下 |
| デジタル簡易無線(免許局) | 5W以下 |
| MCA無線 | 数W〜数十W |
| タクシー無線 | 10W〜50W |
ドローン関連の出力
| ドローンの無線設備 | 空中線電力 |
|---|---|
| 2.4GHz帯送信機(技適付き) | 10mW〜1W程度 |
| 5.8GHz帯アナログVTX | 最大1W(アマチュア無線局として) |
| 5.7GHz帯業務用VTX | 技術基準による |
微弱無線との境界
電波法では、発射する電波が著しく微弱な無線局は免許不要とされています。
発射する電波が著しく微弱な無線局で総務省令で定めるもの
― 電波法 第4条第1号
微弱無線局の基準は周波数帯ごとに定められています。
| 周波数帯 | 電界強度の上限 |
|---|---|
| 322MHz以下 | 500μV/m以下(距離3m) |
| 322MHz〜10GHz | 35μV/m以下(距離3m) |
| 10GHz〜150GHz | 3.5fW/m以下(等価等方輻射電力) |
この基準を超える電波を発射する機器は、技適マークを取得するか、無線局免許を取得する必要があります。微弱無線に該当するかどうかは電界強度で判断されるため、空中線電力(W)だけでは判断できない点に注意が必要です。
よくある質問
Q. 空中線電力と実効輻射電力(ERP)の違いは?
空中線電力は送信機からアンテナに供給される電力です。実効輻射電力(ERP)はアンテナの利得を加味した電力で、実際に空間に放射される電波の強さを表します。アンテナ利得が高いほどERPは大きくなりますが、免許申請では通常空中線電力を記載します。
Q. 免許状の空中線電力を超えて運用するとどうなる?
電波法違反になります。免許状に記載された空中線電力の範囲内で運用することが義務付けられており、違反した場合は免許の取消しや罰則の対象となります。
Q. 出力を下げて運用することは問題ない?
問題ありません。免許状に記載された空中線電力は上限値であり、それ以下の出力で運用することは自由です。実際に、混信を避けるために必要最小限の出力で運用することが電波法で推奨されています。
Q. 技適付きWi-Fiルーターの出力はどのくらい?
一般的な2.4GHz帯のWi-Fiルーターは10mW/MHz(EIRP)程度です。5GHz帯では最大200mW(EIRP)の出力が認められている周波数帯があります。技適を取得しているため、利用者が出力を意識する必要は通常ありません。
まとめ
空中線電力は、無線設備が発射する電波の強さを示す基本的な指標です。
- 空中線電力: 送信機からアンテナに供給される電力(単位はW, mW, dBm)
- 測定方法: 尖頭電力(PEP)、平均電力、搬送波電力の3種類
- アマチュア無線: 資格に応じて10W〜1kWの上限
- 微弱無線: 電界強度で判断され、基準以下なら免許不要
- 免許状に記載された空中線電力を超えて運用すると電波法違反
- 必要最小限の出力で運用することが推奨されている
無線局免許の申請方法は「無線局免許の申請方法|種類と手続きの流れ」、電波法の罰則については「電波法違反の罰則|不法開設・技適なしの罰金と事例」をご覧ください。