この記事でわかること
城郭・寺社・史跡・遺跡などの文化財をドローンで空撮し、記録・PR・3D計測に活用するニーズが高まっています。ただし文化財の空撮は、航空法だけでなく文化財保護法・条例・管理者の同意という複数のハードルがあり、通常の空撮より調整が多いのが特徴です。
この記事では、文化財・遺跡のドローン空撮で必要な許可・承認と、調整すべき相手を整理します。
文化財空撮は「複数の法令・調整」が必要
文化財の空撮で関係するのは、主に次の3つです。

| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 航空法 | DID上空・30m未満・催し場所上空などの許可・承認 |
| 文化財保護法・条例 | 重要文化財・史跡の毀損防止のための制限 |
| 管理者の同意 | 文化庁・教育委員会・寺社・城郭管理者等の許可 |
特に、国が指定する重要文化財やその周辺では、ドローンの飛行が禁止・厳しく制限されていることが多く、自治体の条例で文化財周辺の飛行を禁じている例もあります。航空法の許可を取れば飛べる、というものではない点に注意が必要です。

航空法で該当しやすい特定飛行
| 特定飛行 | 文化財空撮での典型例 | 必要な手続き |
|---|---|---|
| 人口集中地区(DID)上空 | 市街地・観光地にある文化財 | 許可 |
| 人・物件から30m未満 | 建造物・石垣・観光客に近接 | 承認 |
| 催し場所の上空 | 祭礼・縁日など人が集まる場所 | 承認(個別申請) |
| 目視外飛行 | 広い史跡・遺跡を一括撮影 | 承認(該当時) |
観光地の文化財は人が多く、催し場所上空や30m未満に該当しやすいため、第三者管理が重要です。特定飛行の全体像は「ドローン飛行許可の申請方法|DIPS2.0での手順を解説」、催し場所など飛行制限は「ドローンの飛行禁止区域一覧|確認方法と許可の取り方」をご覧ください。

調整すべき相手
文化財空撮では、撮影目的・時間・離発着地点・第三者距離などを明示して、複数の関係先に確認・申請します。
| 調整先 | 役割 |
|---|---|
| 文化庁・都道府県文化財課 | 国指定・県指定文化財の取扱い |
| 市町村の教育委員会・文化財担当 | 市町村指定文化財・史跡の管理 |
| 寺社・城郭等の管理者 | 敷地・上空の使用同意、離発着場所 |
| 警察・観光部局 | 観光客の安全、通報対応 |
私有地内の文化財は所有者の許可も必要です。これらの調整は文化財ごとに窓口が異なるため、早めの確認が欠かせません。
DIPS2.0での申請の流れ
航空法の許可・承認は、国土交通省のオンラインシステムDIPS2.0(ドローン情報基盤システム)から申請します。文化財空撮で申請するまでの流れは次のとおりです。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1. アカウント開設 | DIPS2.0に開設者の情報を登録 |
| 2. 機体・操縦者の登録 | 使用する機体と操縦者の技能・飛行経歴を登録 |
| 3. 飛行形態の選択 | DID上空・30m未満・催し場所上空など該当する特定飛行を選ぶ |
| 4. 飛行マニュアルの選択 | 標準マニュアルか独自マニュアルかを選ぶ |
| 5. 申請書の作成・提出 | 飛行の目的・日時・区域・安全対策を記載して提出 |
| 6. 審査・許可承認 | 補正対応を経て許可書・承認書が交付される |
ただし、DIPS2.0での申請はあくまで航空法上の手続きです。文化財の空撮では、この申請と並行して文化財保護法・条例に基づく制限の有無や、管理者の同意を確認する必要があります。航空法の申請手順の全体像は「ドローン飛行許可の申請方法|DIPS2.0での手順を解説」で解説しています。
催し場所上空は個別申請、単発の空撮も個別申請が基本
文化財空撮は、その多くが特定の日時・場所での単発の撮影であり、個別申請が基本になります。特に注意したいのが催し場所上空です。
| 区分 | 向いているケース |
|---|---|
| 個別申請 | 特定の日時・場所での単発空撮、催し場所上空の飛行 |
| 包括申請 | 同一形態の飛行を反復・継続する場合(催し場所上空は対象外) |
祭礼・縁日など多数の人が集まる催し場所の上空は、包括申請の対象外で、その都度の個別申請が必要です。人が集まる場所の上空を飛ぶため、審査でも第三者への安全対策が重点的に確認されます。申請区分の違いは「ドローン包括申請とは?個別申請との違いと申請手順」をご覧ください。
飛行日誌の作成・保管
特定飛行を行う場合は、飛行日誌の記載が義務づけられています。飛行日誌は「飛行記録」「日常点検記録」「点検整備記録」で構成され、飛行の日時・場所・操縦者・機体や、機体の点検整備の状況を記録します。観光地や催しの現場では第三者との距離管理が重要になるため、実施した安全対策とあわせて記録を残しておくと、管理者や自治体への説明資料としても役立ちます。
文化財空撮で行政書士に依頼するメリット
文化財空撮は、航空法の許可・承認だけでなく、文化財保護法・条例・複数の管理者との調整が絡むため、通常の空撮より調整が複雑です。行政書士に依頼することで、次のような負担を軽減できます。
- 特定飛行の該当性の整理 — DID上空・30m未満・催し場所上空など必要な承認・許可の整理
- DIPS2.0申請の代行・補正対応 — 申請書の作成、審査での補正指示への対応
- 調整先の整理 — 文化庁・教育委員会・寺社等の管理者や、条例による制限の確認事項の道案内
- 催し場所上空の個別申請 — 祭礼等での単発申請の作成支援
ドローンの飛行許可申請の代行は、書類作成を業として行う行政書士が対応できる分野です。
よくある質問
Q. 航空法の許可があれば文化財を空撮できる?
いいえ。文化財保護法・条例や管理者の同意が別途必要です。重要文化財周辺は飛行が禁止・制限されていることが多く、航空法の許可だけでは飛ばせません。
Q. 城や神社を撮りたい。まず何を確認する?
その文化財の指定区分(国・県・市町村)と管理者を確認し、文化財担当部署・管理者に飛行の可否と必要手続きを問い合わせます。並行して航空法の特定飛行該当性を確認します。
Q. お祭りの日に空撮するのは?
祭礼・縁日など多数の人が集まる場所の上空は催し場所上空に該当し、個別申請が必要です。観光客の安全管理も厳重に求められます。
Q. 航空法の申請と管理者の同意は、どちらを先に進める?
並行して進めるのが現実的です。管理者や自治体が飛行を認めない文化財では、航空法の許可を取っても空撮できません。まず指定区分と管理者を確認し、飛行の可否の見通しを得たうえで、DIPS2.0での申請を進めるとよいでしょう。
まとめ
- 文化財空撮は航空法+文化財保護法・条例+管理者の同意が必要
- 重要文化財周辺は飛行禁止・制限が多い(航空法の許可だけでは不可)
- 航空法ではDID上空・30m未満・催し場所上空に該当しやすい
- 文化庁・教育委員会・寺社等との早めの調整が成否を分ける
空撮を事業にする全体像は「ドローン空撮を仕事にする|許可と開業手続き」、ドローンショーなどイベント演出は「ドローンショーの飛行許可|イベント演出の手続きと安全対策」もご覧ください。